DDR400対応のメモリモジュール「PC3200」を試す
|
KINGMAX「TinyBGA DDR400」 |
3月にドイツで行なわれたCeBIT 2002では、DDR400に対応したチップセットのデモが多数行なわれた。DDR400は動作クロックが200MHzに達し、データレートは400Mbps/ピン(400MHz)に達し、64bit幅で3.2GB/secというPC800のDirect RDRAM 2チャネル分の帯域幅を実現する。
今回、DDR400を搭載したメモリモジュール“PC3200”を入手したので、そのパフォーマンスに迫っていきたい。
●3.2GB/secの帯域幅を1チャネルで実現するPC3200
今回取り上げるDDR400を搭載したPC3200の特徴は、データレートで400MHz(ピンあたり400Mbps)を実現し、1チャネルで3.2GB/secという帯域幅を実現するということだ。従来のDDR333を搭載したPC2700が2.7GB/sec、DDR266を搭載したPC2100が2.1GB/secであるのに比べて帯域幅が上がっている。
今回PC3200のサンプルとして利用したのはKINGMAXの“TinyBGA DDR400”だ。利用されているDDR400のメモリデバイスは、KINGMAXの刻印がされている50nsの製品で、パッケージはCSP(Chip Size Package)の一種であるTBGA(Tiny Ball Grid Array)が採用されている。
CSPは、これまで多くの読者が見慣れたTSOP(Thin Small Outline Package)に比べて実装方法を見直すことで、パッケージを小型にでき、さらに電気特性の改善などにより、高クロック動作が期待できる。今回利用した256MBのモジュールは、両面に128Mbitのメモリデバイスが16個搭載されていた。
TinyBGA DDR400のサンプル品。TBGAパッケージが採用され、チップは小型化されている |
●現時点では正式な対応チップセットはなく、オーバークロックで利用する
さて、冒頭でも述べたようにCeBITではDDR400に対応したチップセットSiS648、P4X400、nForceなどのデモが行なわれたが、これまでのところこれらのチップセットはリリースされていない。
今回のベンチマークテストで使用したASUS製のSiS645DX搭載マザーボード「P4S533」 |
最も製品版に近いと思われていたのはSiSだったが、オリジナルのSiS648はDDR400には対応せず、改良版のSiS648DXでDDR400への対応が追加されるというプランに変更されたため、最初の世代のSiS648ではDDR400に対応しない。
VIAもP4X333すらまだまともに市場に出回っていない現状では、P4X400はまだまだ先の話になるだろう。
このため、現時点でDDR400を利用する場合には既存のマザーボードをオーバークロックして利用するほかない。既に秋葉原では新興メーカーのAlbatronが独自にDDR400での動作を保証したマザーボードの予約が開始されているが、Athlon XPではシステムバスが2.1GB/secと、DDR266でも十分な帯域幅であるため、DDR333やDDR400にするメリットはあまり大きくない。
そこで、今回はSiS645DXを搭載したASUSのP4S533を利用することにした。P4S533はBIOSセットアップメニューにおいて、メモリクロックを設定できる。用意されている設定はシステムバス:DRAMのクロックが“1:1”、“4:3”、“4:5”、“4:6”(ただしシステムバスが133MHz時)で、システムバスが133MHz(データレートは533MHz)の場合は133MHz(DDRで266MHz)、100MHz(同200MHz)、166MHz(同333MHz)、200MHz(同400MHz)に設定することができる。
そのままでも一応の動作はしたが、時々Windowsが落ちるという症状に遭遇した。そこで、P4S533ではメモリにかける電圧を変更することができるので、それを利用して2.7Vへといわゆる“喝入れ”をしてみた(P4S533はメモリの電圧を2.7V、2.9Vにあげることができる)。すると、とりあえずはベンチマークが動作する程度には安定した。ただし、SYSmark2002のようにPCに長時間負荷がかかるようなベンチマークをやったところ、途中でリセットがかかってしまったので、必ずしも安定して動作していたとは言えなかったことも付け加えておこう。
●3Dベンチマークなどでは大きな効果を確認
それでは、実際のベンチマークなどを利用して効果を確認していこう。今回はメモリのパフォーマンスを見るために、マザーボードをP4S533に固定し、PC3200(DDR400搭載)、PC2700(DDR333搭載)、PC2100(DDR266)をCL=2とCL=2.5の2種類という合計で4種類のメモリを利用することにした。
最近のマザーボードにはメモリの設定で、レイテンシを細かく設定することができる。一般的には、CASレイテンシ、RAS to CAS Delay、RAS Precharge Timeの3つの数字を並べて表示する。例えば、CASレイテンシが2.5、RAS to CAS Delayが3、RAS Precharge Timeが3である場合には2.5-3-3と表記する。通常はマザーボードが、DIMM上に乗っているSPDからこれらのデータを読みとって設定するため、ユーザーが設定する必要はないのだが、BIOSセットアップでユーザーが明示的に設定することも可能だ。今回はPC2100に、2.5-3-3と2-2-2の2種類を用意した。
【テスト環境】CPU | Pentium 4 2.53GHz |
---|---|
チップセット | SiS645DX |
マザーボード | ASUS P4S533 |
チップセットドライバ | AGP Driver V.109 |
ビデオチップ | NVIDIA GeForce3(64MB、DDR SDRAM) |
ビデオドライバ | NVIDIA Detonator XP(v28.32) |
ハードディスク | IBM DTLA-307030 |
フォーマット | NTFS |
OS | Windows XP Professional |
グラフ1 | グラフ2 | グラフ3 |
グラフ4 | グラフ5 |
結果はグラフ1~グラフ5の通りだ。グラフ1はデータをメモリに転送してその転送にかかった時間を計測することで帯域幅を計測するStream for DOS(StreamD)だ。見てわかるように、帯域幅に比例してグラフが伸びていっていることがわかる。
グラフ2はPCMark2002のCPU Scoreだが、グラフを見てわかるようにほとんど差がないと言ってよい。これは、CPU Scoreに含まれるテストが、帯域幅に影響されるものが少ないためだ。このように、すべてのテストで効果があるわけではないことがわかる。
グラフ4、5はMadOnion.comの3DMark2001 Second Edition、id SoftwareのQuake III Arenaでは、明らかな効果がでている。これは、3Dアプリケーションでは帯域幅が性能に影響を与える率が大きいからだ。このような結果から、特に3Dなどでは大きな効果があると考えることができるだろう。
●とにかく性能を追求したいハイエンドユーザーであれば検討してみたい
このように、すべてのアプリケーションで効果があるというわけではないが、3Dアプリケーションなどでは効果があることがわかる。
今回はサンプル品でのテストであり、実際にどの程度の価格になるのかはわからないため、コストパフォーマンスに関しては不明だが、少なくともパフォーマンスアップがあることは確認できており、少しでも高いパフォーマンスを、というハイエンドユーザーであればチャレンジしてみる価値はあるだろう。
ただ、既に述べたように現時点ではDDR400を正式サポートしたチップセットはないので、本格的に使ってみようというのであれば、正式サポートチップセットを待つのがいいだろう。
□バックナンバー(2002年6月21日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]