CeBIT 2002 Hannoverレポート

NVIDIA、VIA、SiSがDDR400に対応したチップセットをデモ
~DDR400対応チップセットは競争の賜物か、それとも徒花か?

NVIDIAによるDDR400のデモ。現行のnForceを利用してデュアルチャネルのDDR400でデモをしてみせた

会場:Hannover Messe
会期:3月13日~20日(現地時間)



 今年のCeBIT 2002は、まるでチップセットメーカーの発表の場になってしまったのかと思えるほど、多くの新しいチップセットが発表された。

 ATI Technologiesは同社の統合型チップセットRADEON IGPシリーズを投入し、NVIDIAもnForce 420シリーズの後継となるnForce 620/615-Dシリーズを発表、さらにVIA TechnologiesもP4X333を投入した。これにより、Intel、AMD、ATIを除くほぼすべてのメーカーがDDR333に対応した製品を発表したことになり、サードパーティのチップセットでは、ほぼDDR333化された製品が揃ったことになる。

 ところが、DDR333プラットフォームがでたばかりだというのに、各社とも急速に次を見すえた動きを始めている。それがDDR400こと、400MHzのDDR SDRAMを採用したチップセットだ。なんとCeBITの会場では、NVIDIA、VIA、SiSの3社がDDR400に対応したチップセットを実際に動かして見せ、次の焦点がそちらにあることを印象付けた。


●nForce 620-DをDDR400で動かして見せたNVIDIA

 CeBITの3日目にDDR333をサポートしたnForce 620/615-Dを発表したNVIDIAだが、CeBITの自社ブースでは、nForce 620-Dを搭載した、ASUSTeK ComputerのA7N333というマザーボードを展示していた。ただ、A7N333と表示されていたのは最初だけで、なぜか2日目以降はテープでマスキングされて見えないようになっていた。基本的にはnForce 620/615-Dは、nForce 420/415-Dのメモリのクロックを333MHz対応にしただけの製品で、KT266AとKT333のような関係であると考えていいだろう。

 さて、NVIDIAは表には展示していなかったものの、バックステージでnForceをDDR400で動作させるデモを行なっていた。利用されていたのは、nForce 620-Dのリファレンスマザーボードで、SamsungのDDR400メモリモジュールを利用してライブデモが行なわれた。

 nForce 620-Dは、仕様上は400MHzに対応していないため、実際にはメモリバスはクロックアップとなっているが、とりあえずは問題なく動作しているようだ。nForceのメモリはデュアルチャネル(128bit)での動作が可能だが、今回のデモでもデュアルチャネルで動作していた。つまり、DDR400の1チャネルの帯域幅は3.2GB/secとなるので、デュアルチャネルでは6.4GB/secに達するという。

 現時点では技術デモであり、具体的な製品として登場する予定は未定ということだが、nForce 420がDDR333対応となってnForce 620となったように、今度はnForce 620がDDR400対応になって登場する可能性は十分にあると言えるだろう。

NVIDIAが利用したSamsungのDDR400メモリモジュール(PC3200) DDR400のDRAMチップ。K4H280836D-ICB4という型版が刻印されている NVIDIAのプレスカンファレンスにおけるDDR400のデモを説明するスライド

NVIDIAによるDDR400のパフォーマンス比較。DDR400にする事により3DMark2001でのパフォーマンスが向上していることがわかる ASUSTeK ComputerのA7N333。型版から考えてnForce 620-Dをサポートすると見られるが、なぜか2日目以降は型版のところにテープが貼られていた


●SiS648でDDR400のデモを行なったSiS、会場ではAGP 8X対応のSiS330をデモ

SiSによるSiS648+SiS330を利用したデモ。DDR400+AGP 8Xという世界初のデモ

 既報のように、SiS(Silicon Integrated Systems)は、DDR400に対応したPentium 4用チップセットのSiS648を展示し、実際に動かして見せた。SiS648は、SiSが先日リリースしたSiS645DXの後継として計画されているチップセットで、メモリがDDR400に対応することと、AGPがAGP 3.0に規定されている8Xに対応するという点が大きな特徴となっている。今回のSiS648のデモでは、ビデオカードにAGP 8XをサポートするSiS330を搭載したカードが利用されており、実際にAGP 8Xモードで動作させていた。

 SiS648は、現在サンプルステージで、OEMメーカーに対して提供が開始されているという。既にECSはSiS648を搭載したマザーボードを展示していたように、既にデザインを行なっているメーカーもあり、マザーボードの出荷はさほど遠い話では無さそうだ。



●VIAもP4X333をDDR400でデモ

DDR400のシステムでQuake III Arenaを動作させている様子

 VIA Technologiesが記者会見を開催してP4X333を発表したことは既にお伝えしたとおりだ( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0315/cebit07.htm )。この中で、VIA Technologiesは、P4X333のメモリクロックを400MHzで動作させるデモを行なった。つまり、DDR400との組合せでライブデモを行なったということだ。デモではQuake III Arenaが利用され、DDR400メモリを搭載したP4X333搭載マザーボード上でQuake III Arenaのdemo1を実行してせみた。

 現時点ではあくまでデモだったが、VIAのシー・ウェイ・リン氏(シニアプロダクトマーケティングディレクター)は「将来的にはDDR400に対応したP4X333の次期バージョンをだす計画がある」と述べ、DDR400への対応の意向を明らかにした。



●問題はDRAMの価格、DRAMベンダはDDR400の歩留まりはかなり低いと見る

 このように、NVIDIA、SiS、VIAの3社はDDR400を利用したデモを公開した。確かに、DDR400を導入することで、メモリの帯域幅は3.2GB/secとなり、帯域幅がボトルネックとなっているアプリケーションでは意味がでてくるだろう。

 だが、今回デモされたDDR400がメインストリームになると考えている関係者は、実は多くない。その最たる理由は、DDR400の供給が限られたものになると考えられているからだ。下のスライドは、2月に台北で行なわれたDDR333 Summitにおいて、Micron Technologyが公開したスライドだ。これで判るように、DDR400のところは“破線”あつかいになっていて、実際にどうなるかは不確定要素が多いことを示している。

Micron TechnologyがDDR333 Summitで示したDDR SDRAMのロードマップ Micron TechnologyがDDR333 Summitで示したDDR SDRAMの予測

 現在、チップセットメーカーがとり組んでいるDDR400は、現行のDDR SDRAM(いわゆるDDR I)の延長上にあるチップセットで、DDR IのDDR400(以下、DDR II400と区別するためにDDR I400とする)となっている。ところが、DRAMベンダの多くは、DDR333の次はDDR I400はニッチに留まり、DDR II533ないしはDDR II400へとジャンプすると考えているのだ。

 仮にDDR I400が登場したとしても、実際にそれがメインストリームになるのは2004年以降で、DDR II400やDDR II533が既にスタートしているはず。それでは、結局DDR I400はコモディティDRAMとならずに消えていくだろうと考えているのだ。例えば、Micron Technologyが示した、今後のDRAM市場の予測のスライドでは、DDR I400はニッチな(僅かな)市場に留まると予測されている。

 もう1つの理由は、技術的問題だ。DDR I400とDDR II400では、同じ400MHzだがセル自身のクロックが異なっている。DDR I400ではプリフェッチが2bitであるため、セル自身のクロックは200MHz。これにたいしてDDR II400ではプリフェチが4bitであるため、セル自身のクロックは100MHzとなっており、DRAMメーカーにとってはDDR II400の方が作り易くなっている。

 このため、同じプロセスルールで作れば歩留まりもDDR II400の方が上がると考えられており、DDR I400に熱心なのはSamsung(実際、今回のDDR400のデモにはSamsungのモジュールが利用されていた)ぐらいという状況で、Micron、Hynix、エルピーダ、Infineonは様子見という段階で、中には作らないと明言しているメーカーもある。

 このように、DDR I400はDRAMベンダの姿勢から言えば、かなりニッチな製品に留まりそうだ。


●DDR I400がメインストリームになることはない、DDR333の次はDDR II533?

 DDR I400がニッチな製品に留まるということは、かつて、登場したばかりの時期のDirect RDRAMのように、高い価格レンジに留まることが予想される。

 それでも、各チップセットベンダがDDR I400をサポートするのはなぜなのだろうか? そのあたりの事情をマザーボードベンダの担当者は「あんなのマーケティング上の問題だよ」と切ってすてる。つまり、チップセットベンダ間の競争の激化が、このDDR400戦争とも言うべきデモラッシュを引きおこしたというのだ。

 各チップセットベンダともこの傾向は否定していない。「確かに今の所はマーケティング上の問題だ」(SiS インテグレイテッドプロダクトディビジョン プロダクトマーケティングエンジニア スタンレー・イェイ氏)、「他社との競争からこうした製品を計画したというのは否定しない」(VIA Technologies プロダクトマーケティングシニアディレクター シー・ウェイ・リン氏)と、各社ともにマーケティング上の理由、つまり他社との競争の中で、DDR I/400のサポートを急がなければならなかったということを認めている。

 これは、以前KT333の発表の時にも指摘したように、チップセットベンダは他社との差別化のために、どんどん新しい技術を採用しなければ取りのこされてしまうという恐怖感に駆られているためだ。実際には、あまり意味がなかったとしても、数字の効果は絶大で、333よりも400をサポートしているチップセットの方が高機能であるというイメージをユーザーに持たせやすいからだ。そういった意味では、今の所はマーケティング上の理由が先行している感が強いというのが業界関係者の一致した見方だ。

 ただ、「DDR400は1チャネルで3.2GB/secの帯域幅を実現する。これはユーザーにとってはメリットがあるといえ、メーカーとしてはユーザーに選択肢を提供していくのは当然のこと」(SiS スタンレー・イェイ氏)という意見や、「今後、一部のDRAMメーカーはDDR400のメモリモジュールを提供し始める。それをテストする環境も必要だ。当社としてはDRAMメーカーと強いパートナーシップを結んでおり、これをサポートする必要があるし、確実にパフォーマンス面ではユーザーにメリットがある」(VIA シー・ウェイ・リン氏)という見方もある。確かに、どんなにコストを払ってもパフォーマンスが欲しいというユーザーもいるわけで、そうしたユーザーにとっては、いち早くDDR400を利用できるようになるかも知れないことを示唆した今回のデモは歓迎していいだろう。

 そのように考えると、今回のDDR400は最終的にはメインストリームになる可能性は低いため、パフォーマンスをそれほど重視しない、一般的なユーザーにはあまり関係のない話になりそうだが、常にパフォーマンスを重視するハイエンドユーザーにとっては要注目という製品になりそうだ。

□CeBIT 2002のホームページ(英文)
http://www.cebit.de/homepage_e/

(2002年3月18日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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