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AMDがモバイル版Hammerの計画を前倒し、来年中盤には投入へ


●0.13μm版Hammerをモバイルに

 AMDはモバイル版「ClawHammer(クローハマー)」の投入を前倒し、来年中盤にはリリースすることにした。HammerノートPCの登場が、約2四半期早まったことになる。モデルナンバーで言えば、おそらく3000+クラスのパフォーマンスが、来年の中盤にはノートPC市場にもたらされることになる。

 AMDは、昨年11月のアナリストカンファレンスでは、モバイル版ClawHammerは次世代の90nm(0.09μm)プロセス技術で製造し、来年後半に登場すると説明していた。しかし、現在の計画は、その前に0.13μm(130nm)プロセス版のモバイルClawHammerを出す計画に変わっている。「モバイル版のClawHammerは、最初は130nmテクノロジで登場、来年後半に90nmプロセスが利用可能になったら移行する」とAMDのマーティン・ブース(Martin Booth)ディビジョンマーケティングマネージャ(Dvision Marketing Manager, Mobile Products Group)は説明する。

 オリジナルの計画で90nmまでHammerアーキテクチャのモバイル投入を待っていたのは、90nmになればよりTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)が下がるためだったと思われる。しかし、90nmで製品が安定して採れるようになるのは、推定では2003年の後半も遅くなってから。AMDとしては、モバイル市場へのHammerアーキテクチャの投入を早めるために、多少TDPが高くても0.13μm版でモバイルに投入することにしたと思われる。

「最初のバージョンのHammerはフルサイズのパフォーマンスノートPC市場をターゲットにする。しかし、90nm版では熱設計枠(Thermal Envelop)が下がるので、薄型軽量(Thin & Light)などにも入っていけるだろう。基本的に、Hammerはモバイル市場の全分野をターゲットとする」とブース氏は説明する。

AMDのCPUコアの推定ロードマップ

●モバイルにも64bitアーキテクチャを

 はじめにハイエンドデスクトップやワークステーション市場に新CPUを投入、次にメインストリームからバリューのデスクトップ市場に落とし、さらに同じアーキテクチャのCPUをモバイルに持ってくる。この方式はウォータフォール(滝)と呼ばれる伝統的な手法で、AMDはHammer世代でも同じアプローチを取る。しかし、対するIntelは、今後はモバイル向けには専用設計のCPU「Banias(バニアス)」を投入する。専用設計をした方がモバイル市場に最適化した製品を開発できるとIntelは言うが、ブース氏はそれに対して次のように反論する。

「単一のCPUデザインとインフラの方がアドバンテージが大きい。例えば、我々の方式ではHammerの64bitテクノロジをトップツーボトムで迅速に提供できる。また、現在はCPUに多くの機能を搭載できるため、モバイル向けの機能も(同じCPUコアに)搭載できる。それに、Intel(のBanias)はPentium 4のバスと、Pentium IIIの基本アーキテクチャをまだ使う。それほど変わったわけではない」

 AMDは現在のモバイルAthlon XP/Duronに、省電力機能PowerNow!を搭載しているが、ClawHammerも同様の省電力機能を備えるという。ただし、PowerNow!の機能が拡張されるかどうかは明らかにされていない。

●AMDはUMA向けのHammerも計画か

 もっとも、Hammerの場合、PowerNow!は問題を引き起こす可能性がある。それは、メインメモリDRAMのコントローラをCPU側に内蔵しているからだ。そのため、PowerNow!でCPUの周波数が下がると、その分、メモリアクセスのレイテンシも増えてしまうと思われる。VIA Technologiesのシー・ウェイ・リン(Che-Wei Lin)シニアディレクタ(Senior Director of Product Marketing)によると、これはチップセット側にとって重大な問題だという。グラフィックス統合チップセットの場合、PowerNow!によってグラフィックスコアからのメモリアクセスレイテンシが増えてしまうからだ。このHammerアーキテクチャでのメモリアクセスレイテンシは、デスクトップでも問題だが、PowerNow!がある分、モバイルの方がさらにクリティカルだ。

 もっとも、AMDもこうしたHammerのグラフィックス統合チップセット問題は認識しているようだ。あるチップセットベンダーによると、AMDはこの問題を解決するために、現在、別バージョンの「Hammer」ファミリCPUを計画しているという。これは、UMA(統合メモリアーキテクチャ)に最適化したメモリインターフェイスを備える“第2世代Hammer”だ。このチップについては、次のコラムで説明するが、このUMA対応版Hammerでレイテンシの問題はある程度解決する可能性がある。

 とはいえ、チップセットベンダーは慎重に構える。「モバイル向けのHammer用チップセットは、UMAの他にローカルフレームバッファをサポートする製品も計画している。フレームバッファ用メモリをチップセット側に持つことで、レイテンシの問題は解決できる」とVIAのリン氏は説明する。モバイル向けK8チップセットは、UMA版とローカルフレームバッファ版でピン互換にするという。

●45Wのデスクノート向けCPUも投入

 AMDはモバイル全体の戦略も多少組み替えた。まず、AMDはノートPCに新しいカテゴリを加えた。「新しいカテゴリはデスクトップ代替で、デスクノート(Desknote)タイプのもの、これはデスクトップCPUを搭載したノートだ」、「このタイプでは、45Wの熱設計(Thermal)となる。ただし、熱設計電力は上がっても、平均消費電力は低く抑える」とブース氏は説明する。

 Desknoteは、今回のCOMPUTEXのひとつのトピックスで、一部のベンダーが出展していた。この手の、デスクトップCPUを使う省スペースデスクトップ代替ノートは、以前からある。Intelはこの市場をそれほど重視しないが、今回、ブース氏はデスクノート市場が成長市場であるとして、AMDとして積極的に認知してゆく、つまり製品を提供して行く方向性を示した。

 AMDは昨年11月、35W、25W、16Wの熱設計枠(Thermal Envelop)それぞれに、モバイルCPUを提供して行く戦略を示した。現在はこれに45W枠が加わっている。熱設計枠が広がる分、理論的にはより高周波数のCPUを提供できることになる。

 もっとも、45Wというのは新しい話ではない。実際には昨年の秋まではSFF(Small Form Factor)デスクトップ向けCPUは45Wというラインがあり、AMDもそれに向けて動いていた。デスクノートは、それが、ノートPCという形態へと置き換わったと見なすこともできる。つまり、SFFデスクトップとノートという形態の違いだけで、CPUメーカー側から見ると同じ45Wの熱設計枠に収まるCPUを提供するだけという話だ。SFFは昨秋以来、Intelに追い立てられたOEMベンダーの必死の努力によって熱設計枠が大幅に上がっており、もはや45Wという声は聞こえてこない。その分、その下のノートPCで45Wという新しいカテゴリが産まれたというわけだ。

 一方、AMDはこの春から提供し始めた0.13μm版モバイルAthlon XP(Thoroughbred:サラブレッド)では、薄型ノートPC市場に参入する。そのため、μPGAパッケージ版も出す予定で、現在このμPGA版のサンプル出荷を開始している。このほか、ブース氏はモバイルに266MHz FSB(フロントサイドバス)版をオプションで提供することも説明した。266MHz FSBはμPGA版でも提供される。

●不鮮明な部分も残るロードマップ

 モバイルのロードマップではHammerの前倒しと、Duronブランドが不鮮明になった以外はほぼアップデートはない。「夏期に新Athlon XPへの移行が進む。そして、今年後半の遅くにはBartonを投入する。主な違いはL2キャッシュサイズを2倍にすることで、性能は大幅に伸びる。Duronは年末まで続き、あとは市場の要求による」とブース氏は言う。あるOEMベンダーは「“市場の要求”という言葉は、生産を止めることをやんわりと説明した表現」という。

 ちなみに、Thoroughbredの後継となる「Barton(バートン)」は台湾ファウンダリUMCでも製造されると推定される。同じ0.13μm世代でも、UMCの製造プロセスはAMDと異なるため、UMC版BartonはAMD製造版とTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)や消費電力が異なる(おそらく下がる)と見られる。しかし、ブース氏はそれについては、まだコメントできないとした。

 AMDはモバイルCPUでは、熱設計枠毎に価格体系を変えている。あるOEMベンダーは「同じ周波数でも、TDPが変わると価格が変わる。高TDPになればなるほど安くなる」と言う。ブース氏も、まだ低消費電力版の価格は公開していないとしながらも、そうした価格戦略を取っていることを認める。「価格戦略はセグメント毎に異なる。その市場で、競争力のある価格に設定している」(ブース氏)という。実際、Intel CPUも、通常電圧版よりLV(低電圧)版の方が価格が高く設定されている。AMDの戦略は、それに対抗するというわけだ。


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【6月7日】【海外】AMDのRichard Heye副社長がHammerの現状について答える
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0607/kaigai01.htm


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(2002年6月11日)

[Reported by 後藤 弘茂]

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