ビクター初のWindows XP搭載ミニノート「InterLink XP」
~Pentium III-M搭載機として世界最小/最軽量を実現



 日本ビクターから4月23日に発表されたInterLink XP(MP-XP7210/XP3210)は、Windows XPを搭載したA5サイズのミニノートPCである。同社は、以前からWindows CEベースのハンドヘルドPCを発売していたが、フルスペックのWindowsを搭載したPCは今回が初となる。

 このクラスのミニノートPCでは、CPUとしてCrusoeを搭載している製品が一般的だが、InterLink XPでは、より高性能なモバイルPentium III-M(MP-XP7210の場合)を搭載したことが特徴だ。なお、InterLink XPには、CPUとしてモバイルCeleron 650MHzを搭載した下位モデルのMP-XP3210も存在するが、ここでは上位モデルのMP-XP7210を取り上げる。

 今回は、正式出荷版とほぼ同等の評価機を入手したので、早速その試用感をレポートしてみたい。



●モバイルPentium III-M搭載により、携帯性とパフォーマンスを高い次元で両立

 InterLink XPは、いわゆるミニノートPCと呼ばれるジャンルに属する製品である。ミニノートPCは、フルスペックのWindowsが動作するマシンとしては、一番小さく軽い製品であり、高い携帯性を実現していることが魅力だ。

 ミニノートPCというジャンル自体は、以前からあったが、ここ数年あまり新製品が登場してこなかった。その理由として挙げられるのが、CPUの消費電力が増加したことによる熱設計の困難さである。しかし、一昨年、TransmetaのCrusoeが登場したことで、ソニーのバイオC1や富士通のLOOX S、東芝のLibrettoといった新製品が相次いで登場し、活気を取り戻している。2002年4月末にソニーから登場したバイオUも、Windows XPを搭載したミニノートPCであり、重さ約820gという世界最小/最軽量を実現したことで、話題を集めている。

 しかし、Crusoeを搭載したミニノートPCは、携帯性は確かに優秀なのだが、CPUのパフォーマンスがあまり高くないという弱点があった。Crusoeは、コードモーフィングソフトウェアと呼ばれる一種のエミュレータによってx86命令を実行する仕組みを採用しているので、同クロックのPentium IIIに比べると、パフォーマンスは低くなってしまう。当初に比べると、Crusoe自体の動作クロックも向上しているので、パフォーマンス面での不満も小さくはなったが、アプリケーションの起動の際などはやや動作が重いと感じることがある。現時点で最速のCrusoeは、バイオC1(PCG-C1MSX)やバイオUなどに搭載されているTM5800 867MHzだが、TM5800 867MHzのパフォーマンスは、Pentium III-M 600MHz程度といわれている。テキスト主体の作業には十分なパフォーマンスだが、画像のレタッチや動画編集などをおこなうには、やや力不足である。

 もちろん、ミニノートPCをあくまでセカンドマシンとして、限られた用途で利用するのなら、Crusoeのパワーでも特に問題はない。しかし、InterLink XPは、動画の再生や編集など、さまざまな用途に使えるミニノートPCを目指して、CPUとして超低電圧版モバイルPentium III 800MHz-M(MP-XP7210の場合)を搭載したことがウリだ。実際に試用してみたが、バイオUに比べて動作が全体的に軽快であり、ストレスを感じることもない。

本体表面 本体背面

 InterLink XPの本体のサイズは、225×152×28~29.5mm(幅×奥行き×高さ)で、ほぼA5サイズである。重量は約885g。Windows XP搭載ミニノートPCとしては、ソニーのバイオU(184.5×139×30.6~46.1mm、約820g)のほうがコンパクトで軽いが、バイオUはCPUにCrusoe TM5800 867MHzを搭載しているため、超低電圧版モバイルPentium III-M搭載ミニノートPCとしては、現時点で世界最小/最軽量を実現している。Libretto L5などに比べても、一回り小さくて軽いので、気軽に携帯できる。ボディの材質にはマグネシウム合金を採用しており、軽さと丈夫さを両立させている。

本体底面にMicroDIMMソケットが用意されており、標準で128MBのMicroDIMMが装着されている

 メインメモリは、標準で256MB実装している。オンボード128MB+MicroDIMM 128MBという構成になっており、MicroDIMMを256MBのものに交換することで、最大384MBまで増設することが可能だ。HDD容量は30GBで、ミニノートPCとしては大容量であり、不満はない。チップセットには、SiSの統合型チップセットSiS630STが採用されている。

 液晶ディスプレイとしては、ワイドタイプの8.9インチ低温ポリシリコンTFT液晶(1,024×600ドット)が採用されている。液晶のサイズや解像度は、富士通のLOOX S(S73AW/S73A)とまったく同じである。ワイドタイプの液晶は、縦方向の解像度が低いことが欠点だが、600ドットあれば一応満足できるだろう。液晶の輝度は高く、発色やコントラストも優秀だ。6.4インチXGA液晶(1,024×768ドット)を搭載しているバイオUに比べると、縦方向の解像度は低いが、ドットピッチは広いので、目への負担は小さい。



●デュアルパワーシステムによって長時間駆動を実現

 InterLink XPのような携帯性を重視したミニノートPCでは、バッテリ駆動時間が重要なポイントである。バッテリ駆動時間を伸ばすには、大容量のバッテリを搭載するのが最も有効であるが、大容量バッテリはそれだけ大きく重くなってしまう。つまり、バッテリ駆動時間をとるか、携帯性をとるかというのは、トレードオフの関係となるわけだ。その問題に対するビクターの答えが、目的に応じてバッテリ構成を選べるデュアルパワーシステムである。

本体内蔵のビルトインバッテリー(下)と脱着が可能なアウターバッテリー(上) アウターバッテリー(標準バッテリーパック)を本体背面に装着しても、本体の厚さは変わらない

 InterLink XPでは、本体に約2時間の連続駆動が可能なビルトインバッテリー(11.1V、1,250mAh)が内蔵されているが、さらに長時間駆動が必要なときには、標準添付のアウターバッテリー(標準バッテリーパック、11.1V、2,000mAh)を背面に追加装着することができる。アウターバッテリーを装着した状態では、約5.5時間の連続駆動が可能になる。アウターバッテリーを装着しても、合計重量は約1,055gで、十分携帯可能な範囲に収まる。なお、前記の連続駆動時間は最大値で、JEITA測定法1.0における駆動時間は、それぞれ約1.5時間、約4時間となる。ビルトインバッテリーのみでは、バッテリ駆動時間は長いとはいえないが、アウターバッテリーを装着すれば、バッテリ残量をあまり気にせずに利用できる。アウターバッテリー(標準バッテリーパック)を装着しても、本体の厚さは変わらず、奥行きが25mm増えるだけというのも嬉しい。

 さらに、オプションの大容量バッテリーパックをアウターバッテリーとして利用することで、約9時間(JEITA測定法1.0では約6.5時間)という長時間駆動を実現できる。

右側の一部のキーのキーピッチがやや狭くなっているが、配列はほぼ標準的である コントロールパネルの「TrackPoint」アプレットで、ポインティングデバイスに関する設定をおこなえる

 「半角/全角キー」が「ESCキー」の右に配置されていることや右の「ALTキー」と「CTRLキー」が省略されていることを除けば、キーボードの配列もほぼ標準的である。キーピッチは16mmで、慣れれば十分タッチタイピングも可能だ。ポインティングデバイスには、スティック状のデバイスが採用されている。日本IBMのThinkPadシリーズに採用されているTrackPointとほぼ同等のもので、操作性は良好だ。クリックボタンは3つ用意されており、中央のボタンにはスクロール機能などを割り当てることができる。また、スティックを垂直に押すことで、クリックボタンと同じ役割を果たす「Press-to-Select」機能も利用可能だ。


●MP3ファイルなどを高音質で楽しめるCCコンバーターを搭載

CCコンバーターでは、「より臨場感を」「標準」「より自然に」の3通りの音質を選択できる

 InterLink XPは、ビクター独自の高音質化技術「CCコンバーター」を搭載していることも特徴だ。CCコンバーターは、CDやMP3などのデジタル音楽データの波形を分析して、もとのアナログ音楽データを想定し、その波形に近づくようにリアルタイムで演算処理するデジタル信号処理技術である。

 MP3などは、人間の可聴周波数を超える高い周波数帯域をカットすることでデータを圧縮しているが、高周波数帯域には、可聴周波数帯域の高調波成分が含まれているので、単純に高周波数帯域をカットしてしまうと、楽器音などの臨場感やきらびやかさといったものが失われてしまう。InterLink XPでは、CCコンバーターによって、そのカットされた波形を復元し、音楽をより高音質で楽しめる。InterLink XPに搭載されているCCコンバーターはソフトウェア処理によるもので、PC上のあらゆる音声ファイルの高音質化を実現できる。

 ただし、本体内蔵のステレオスピーカー(キーボード手前のパームレスト部に配置されている)は、口径が小さく、音量を上げると音が割れてしまうので、音楽を楽しむにはやや力不足である。CCコンバーターの真価を発揮するには、高音質のヘッドホンや外部スピーカーを利用することが望ましい。


●本体に各種拡張ポート類を装備

 InterLink XPは、拡張性が高いことも魅力の1つだ。IEEE 1394準拠のi.LINKポート(4ピン)やUSBポート×2、外部ディスプレイポート(専用形状なので外部ディスプレイとの接続にはオプションの接続ケーブルが必要)、PCカードスロット(Type2×1)、SDメモリーカードスロット、マイク入力/ヘッドホン出力を装備しているほか、100BASE-TX/10BASE-T対応LAN機能と56kbps対応モデム機能も内蔵している。あとは、無線LAN機能さえ内蔵していてくれれば完璧なのだが、このあたりは今後の改良を期待したい。

本体左側面。i.LINKポート(4ピン)とSDカードスロット、PCカードスロットが用意されている。SDカードスロットのフタはダミーカード方式である 本体右側面。左から、ヘッドホン出力、マイク入力、USBポート×2、外部ディスプレイポート、LANポート、モデムポート、ACアダプタ接続ポートの順に並んでいる 本体背面。左端にあるのはアウターバッテリー接続用コネクタ。アウターバッテリー非装着時に、コネクタを保護するための保護キャップが付属する

PIXELA ImageMixerでは、動画をはじめとするマルチメディアコンテンツの編集や管理がおこなえる。トランジションも多数用意されているので、本格的な作品作りが楽しめる

 ビクターといえば、デジタルビデオカメラのメーカーとしても有名であるが、InterLink XPでは、i.LINKポートを標準装備しているので、デジタルビデオカメラを直接繋いで、動画のキャプチャをおこなうことが可能だ。マルチメディアコンテンツ編集管理ソフトの「PIXELA ImageMixer」もプリインストールされているので、取り込んだ動画を編集することもできる。



●性能、使い勝手ともに優秀だが、価格が高めなことが難点

 InterLink XPは、A5サイズ、重さ約885gというミニノートPCクラスの筐体に、一回り以上大きなサブノートPCクラスの性能を詰め込んでおり、製品としての完成度も高い。デュアルパワーシステムの採用によって、長時間のバッテリ駆動時間を実現していることも評価できる。価格がやや高め(店頭予想価格は21万円前後)なことが難点だが、携帯性とパフォーマンスの両方を重視する欲張りなユーザーには最適なマシンだ。

□製品情報
http://www.jvc-victor.co.jp/interlink/xp/index.html
□関連記事
【4月23日】ビクター、Windows XPを採用したA5サイズミニノート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0423/victor.htm
【6月3日】【Newpro】デュアルパワーシステム採用のPentium III搭載A5ミニノート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0603/newpro.htm

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(2002年6月6日)

[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


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