ソニーの世界最小/最軽量モバイルノートPC「バイオU」登場!!
~ユビキタス時代をきりひらく期待の新製品を速報レポート



バイオU「PCG-U1」

 ソニーから4月17日に正式発表されたバイオUは、Windows XPを搭載したノートPCとしては、世界最小/最軽量を実現した超小型モバイルノートPCであり、いつでもどこでもPCを使いたいというモバイラー待望の製品である。

 今回、正式出荷版とほぼ同等の評価機を入手したので、早速その試用感をレポートしてみたい。



●重さ約820g、B6サイズを実現し、いつでもどこでも持ち歩ける

 バイオUは、幅広い製品ラインアップを誇るソニーのバイオシリーズの中で、最小/最軽量のマシンであることはもちろん、OSとしてWindows XPを搭載したノートPCの中で、世界最小/最軽量を実現したことが最大のウリである。本体のサイズは、184.5×139×30.6~46.1mm(幅×奥行き×高さ)で、重量もわずか約820gしかない。サイズを数字でいってもあまりピンとこないかもしれないが、B5用紙を半分に折ると、ほぼバイオUと同じサイズになる。

バイオUとVHSビデオテープの大きさ比較

 ノートPCでは、よくA4サイズノートPCとか、B5サイズサブノートPCといった表現をするが、そうした例にならえば、バイオUはB6サイズミニノートPCと呼ぶことができる。横幅はVHSビデオテープよりも短く、片手で簡単に持ち上げることができる重さなので、女性のハンドバックなどにも十分入れることができるだろう。

 バイオUの「U」という文字は、「Ubiquitous」、「Ultimate Mobile」、「Unique」、「Useful」、「Ultra Compact」、「User Friendly」といった言葉の頭文字を意味してつけられているというが、まさに「いつでもどこでも」というユビキタスコンピューティング時代にふさわしい製品だ。

 筐体のデザインは、一連のバイオノートの流れを汲むもので、特別斬新というわけではないが、手堅くまとまっているという印象を受ける。ボディカラーは、シルバーと青みがかったグレーを基調としたもので、いかにもバイオノートらしい。

 バイオUは、ハードウェア、ソフトウェアともにさまざまな工夫が凝らされたマシンであるが、まずはハードウェア面から見ていこう。

 バイオUでは、CPUとしてTransmetaのCrusoe TM5800 867MHzが採用されている。Crusoe TM5800は、0.13μmプロセスルールで製造された最新製品で、動作クロックもCrusoeシリーズの中では現時点で最高クロックとなる。Crusoeは、同クロックのPentium III-Mなどに比べると処理性能は劣るが、消費電力や発熱が小さいというメリットがあるため、携帯性を重視したミニノートではよく用いられている。バイオシリーズでも、ミニノート「バイオC1」や「バイオGT」にCrusoeが採用されている。

Micro DIMMスロットには、標準で128MBのMicro DIMMが装着されている

 メインメモリは、標準で256MB実装しているが、その構成はオンボード128MB+MicroDIMM 128MBとなっており、Micro DIMMを256MB品に交換することで、最大384MBまで増設可能だ。Crusoeは、コードモーフィングソフトウェアと呼ばれるソフトウェアによってx86命令をCrusoeのネイティブ命令に変換しながら実行する仕組みを採用しており、そのコードモーフィングソフトウェアのワークエリアとしてメインメモリから16MBが引かれるので、実質的に利用できるメモリは240MBとなる。標準状態でも、それほどストレスなくプリインストールされているWindows XP Home Editionを利用することができた。

 HDDとしては、通常のノートPCで使われている2.5インチHDDよりも小さくて消費電力の小さな1.8インチHDD(東芝製)を搭載している。容量は20GBで、このクラスの製品としては合格点をつけられる。


●両手で持って使うことを前提に設計されたポインティングデバイス

 バイオUは、キーボードとポインティングデバイスにも特徴がある。キーボードのピッチは約14mmと、サイズのわりには広いのだが、その代わりキー配列はかなり変則的なものとなっている。バイオUでは、主要なキーのキーピッチを広くとるために、通常のキーボードよりも縦が一列増えている。通常はEnterキーの左側にある「む」「ろ」などのキーが数字キーの上に移動しており、「め」キーもカーソルの右側にあるなど、キー配列にはかなりの違いがある。アルファベットキーの配列はそれほど変わらないが、「;」や「:」キーがEnterキーの下にあるなど、やはり変則的な部分もある。特に、かな入力のユーザーは、最初はかなり戸惑うのではないだろうか。

 ポインティングデバイスとして、ワイドスティックと呼ばれるボタン状デバイスが採用されている。ワイドスティックの使い方は、TrackPointに代表されるスティック状デバイスとほぼ同じで、指を乗せてポインタを動かしたい方向に力を加えることで、ポインティング操作を行なう。

 ワイドスティックは、キーボード右上部分に配置されており、クリックボタンは、反対にキーボード左上部分に配置されている。この配置からも想像ができると思うが、バイオUのポインティングデバイスは、本体を両手で持って使うことを前提に設計されているのだ。ソニーではこのスタイルを、モバイルグリップ・スタイルと呼んでいる。

 バイオUは、机の上において使うというよりは、ちょっとした空き時間に立ったまま利用するという使い方が想定されているのであろう。モバイルグリップ・スタイルでは、キーボードも全ての指を使ってタイピングするのではなく、主に両手の親指を使ってタイピングすることになる。HP200LXなどでいう「両手打ち」である。

 バイオUの横幅は、特に手が大きいわけではない筆者が両手でもったときに、ちょうどよいサイズであり、中央部分のキーも無理なく親指で操作できる。もちろん、全ての指を使ってタッチタイピングするのに比べると、効率は落ちるが、練習次第で結構高速に入力できるようになるものだ。また、ワイドスティックとは別に、バックボタン付きのジョグダイヤルも装備している。

 なお、バイオUでは、モバイルグリップ・スタイルでの入力を支援するために、「ThumbPhrase」(サムフレーズ)と呼ばれる独自の文字入力システムを装備していることも特徴であるが、ThumbPhraseについては、後ほど詳しく取り上げる。

バイオUのキーボードは、通常のキーボードよりも縦が一列増えており、配置も変則的である 両手で本体を持ったときに、それぞれの手の親指でワイドスティックとクリックボタンを操作すると、しっくりくる 中央にある「G」や「H」キーも両手に持ったまま親指で押すことができる


●高精細な6.4インチXGA液晶を搭載

 液晶パネルとしては、6.4インチXGA液晶を搭載している。サイズは小さいものの、解像度はXGA(1,024×768ドット)なので、二回り以上大きなB5サイズサブノートやB5ファイルサイズサブノートと同じ情報量を一度に表示できる。6.4インチXGA液晶は、バイオGTでも採用されていたが、B5サイズミニノートに使われている10.4インチXGA液晶に比べて、ドットピッチは約6割に縮小されている。文字も約6割のサイズで表示されるので、視力の弱い人にはかなり辛い。しかし、バイオUでは、ワンタッチで解像度を800×600ドットに切り替えられる「ZOOM IN」ボタンが装備されており、800×600ドットに切り替えることで、文字の見づらさも解消される。

1,024×768ドットモードでは、かなり文字が小さくなってしまう 液晶右の「ZOOM IN」ボタンを押すと、解像度が800×600ドットにワンタッチで切り替わる(もう一度押せば、1,024×768ドットに戻る)


●USBポート×2とi.LINKポートを装備するなど、拡張性も十分

 今度は、拡張性について見てみよう。本体には、拡張ポートとして、USBポート×2、i.LINK(IEEE 1394)ポート×1、ディスプレイアダプター専用ポート×1、マイク入力、ステレオヘッドホン出力、バイオ関連製品専用電源供給ポート×1が装備されているほか、マジックゲート対応メモリースティックスロットと、PCカードスロット(Type2×1)を装備しており、サイズを考えると十分な拡張性を持っているといえる。また、モデムは内蔵していないが、100BASE-TX対応のLAN機能を内蔵しており、LAN環境にすぐに接続できることも評価できる。

 理想をいえば、ホットスポットの数も急激に増えているので、無線LAN機能も標準装備してほしかったところだが、やはり筐体サイズの制限があるため、今回は搭載されなかったのであろう。無線LANを利用する場合は、PCカードスロットに無線LANカードを装着して使うことになる。

 バイオ関連製品専用電源供給ポートは、i.LINKポートの横に配置されており、オプションのi.LINK対応CD-RW/DVD-ROMドライブ(PCGA-CRWD1)やi.LINK対応DVD-ROMドライブ(PCGA-DVD1)を接続した場合、1本のケーブルのみで、ドライブの電源を供給することができるようになっている。

本体右側面。マジックゲート対応メモリースティックスロットを装備している 本体後面。左から、LANポート、i.LINKポート、バイオ関連製品専用電源供給ポート、USBポート×2、ディスプレイアダプター専用ポート、ACアダプタ接続ポートの順に並んでいる 本体左側面。左から、マイク入力、ヘッドホン出力、PCカードスロットの順に並んでいる


●くさび形のバッテリを本体底面に装着

 バイオUのような携帯性を重視したミニノートでは、バッテリ駆動時間が重要なポイントである。バイオUの公称バッテリ駆動時間は約2.5~4時間と幅があるが、最低限の水準はクリアしているといえる。バッテリはくさび型をしており、本体の底面奥に装着して利用する。デザイン的にはバッテリが本体に格納されるほうがスマートだが、このサイズでバッテリを内蔵するのはやはり厳しかったのであろう。バッテリの容量は、11.1V、1,800mAhで、いわゆる3セルバッテリである。現時点では、大容量バッテリは用意されていないが、バッテリパックの重さは182g程度と比較的軽いので、より長時間バッテリで利用したいのなら、予備のバッテリパックを持ち歩けばよいだろう。

バイオUのバッテリパック。重量は182g(実測値) バッテリパックを取り外したところ


●スタンバイボタンで、高速にスタンバイ・レジュームが可能

キーボードの上部中央にスタンバイボタンがある

 キーボードの上部中央に、スタンバイボタンが配置されていることもユニークだ。スタンバイボタンを押せば、いつでもスタンバイ状態に移行する。スタンバイ状態への移行は5~7秒程度、復帰(レジューム)は10秒前後で完了する。また、動作中に電源ボタンを押すと、ハイバネーション動作が行なわれる。ハイバネーション状態では、バッテリを消費しないが、ハイバネーション状態への移行は約20秒、ハイバネーションからの復帰は約32秒かかるので、スタンバイと使い分けるとよいだろう。


●入力予測変換機能を備えた「ThumbPhrase」を搭載

 バイオシリーズは、単にハードウェアが優れているだけではなく、その製品コンセプトを十分に活かすためのソニー独自アプリケーションが多数プリインストールされていることが大きな魅力である。

ThumbPhraseでは、携帯電話のように12個のキーだけで、全ての文字を入力する仕組みになっている。ThumbPhraseで使われるキーは、キートップにオレンジ色で文字が書かれている

 バイオUでも、ソニーのオリジナルアプリケーションが多数インストールされているが、その中でも特筆したいのが、バイオU専用に開発された文字入力システム「ThumbPhrase」である。バイオUでは、クリックボタンの右側にThumbPhraseを起動するための専用ボタン(サムフレーズボタン)が用意されており、サムフレーズボタンを押すことで、ThumbPhraseが起動する。

 ThumbPhraseは、ソニー製携帯電話などでお馴染みのPOBoxと呼ばれる予測変換機能をベースにしたもので、すべての文字を入力しなくても、頭文字をいくつか入力するだけで、その文字から予測される単語や文章をリスト表示する。リストに表示されている単語や文章の選択は、ジョグダイヤルを上下に回すことで行ない、ジョグダイヤルを押し込むことで、その単語が確定される。すると、自動的にその単語につながる可能性が高い単語がまたリストに表示されるので、少ないキー操作で文章を入力できる。一度単語を確定すると、その単語を学習していくので、使えば使うほど手になじんで、入力効率が上がる。

 また、ThumbPhraseでは、文字の入力を通常のキーボードで行なうのではなく、左手で操作する12個のキーだけで入力を行なう。この入力方式は、携帯電話などで一般的に使われている方法である。たとえば、あ行の文字を入力する場合は、オレンジ色で「あ」と書かれているキーを押すごとに「あ」→「い」→「う」→「え」→「お」→「ぁ」→「ぃ」→「ぅ」→「ぇ」→「ぉ」→「あ」→「い」…と入力文字が変わっていく。一見面倒なようだが、ThumbPhraseと組み合わせることで、左手で12個のキーを押し、右手でジョグダイヤルを操作することで、次々に文章を入力できるので非常に便利だ。

 筆者は、ソニー製携帯電話SO503iを所有しているので、POBoxの便利さはよく知っている。ただし、SO503iでは、右手一本でキーとジョグダイヤルを操作できるのに対し、バイオUでは両手を使って操作をしなければならないので、当初違和感があったが、モバイルグリップ・スタイルで利用するには、両手で操作するほうが自然である。また、右手一本で入力する場合と違って、指をあまり動かさずに入力できるので、むしろこちらのほうが使いやすいと感じた。

「ほ」と打つだけで、「ほ」で始まる単語がリストに表示される 「ほん」まで打てば、「ほん」で始まる単語に絞られてくる

ジョグダイヤルで「本日」を選んで確定すると、「本日」に続くと予想される単語が並ぶ ジョグダイヤルで「は」を選んで確定すると、「本日は」に続くと予想される単語が並ぶ。このように、学習を続けていくと、文字キーをあまり打たずに、ジョグダイヤルだけでどんどん文章が入力できる


●ソニーの本気を感じられる製品であり、今後の発展が楽しみ

 バイオUには、ThumbPhrase以外にも、さまざまなオリジナルアプリケーションがプリインストールされている。たとえば、「FlyingPointer」もバイオUで初めて搭載されたオリジナルアプリであり、バイオUとi.LINKケーブルまたはLANでつながった他のバイオとの間で手軽にファイルのやりとりを行なうことができる。また、OpenMG対応音楽管理ソフトの「SonicStage Ver.1.1 for VAIO」や動画編集・加工ソフトの「MovieShaker Ver.3.3」といった、バイオシリーズではお馴染みの人気ソフトもプリインストールされているので、さまざまな用途に活用できる。

 バイオUは、ユーザーの自由な想像力をかき立ててくれるマシンであり、実売15万円という思い切った価格設定にも、ソニーの自信と本気が感じられる。Windows 95時代は、こうした重さ1kg以下のミニノートもいくつかのメーカーから発売されていたのだが、その後はLOOX Sなどを除いてあまり見かけなくなってしまった。しかし、ホットスポットが充実してきたことや、AirH"などの定額サービス登場といった追い風を背にして、バイオUや日本ビクターのInterLinkのように魅力的な製品が登場してきたことで、再びこの市場が盛り上がることを期待したい。

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【4月17日】ソニー、世界最小/最軽量のモバイルノートPC「バイオU」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0417/sony1.htm

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(2002年4月26日)

[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


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