元麻布春男の週刊PCホットライン

液晶用アームの導入は「リビングルームPC」を後押しする?


●撤去してしまった「リビングルームPC」

 以前、筆者はこのコラムでリビングルームPCについて、しばらく取り上げたことがある。また、実際にリビングルームにPCを置いていた。と、過去形で書いたのは、すでにリビングルームのPCを撤去してしまったから。今ではその場所に、民生用のDVD-RWレコーダーが鎮座している。

 リビングルームからPCを撤去した直接の理由は、MegaWaveやSKY PerfecPC!といった衛星系のネットワークサービスが打ち切られたことにある。逆にいえば、こうした衛星系のサービスが、筆者にとってリビングルームPCのキラーアプリケーションだったわけだ。筆者が使っていた衛星経由のデータ受信カードがソニー製のSKY PerfecTV!チューナーと接続するタイプだったため、衛星系のサービスを受けようと思ったら、PCをSKY PerfecTV!チューナーに隣接した場所に置くしかなかったのである(そうでなくても、衛星アンテナとの接続は場所を選ぶ)。

 リビングルームでPCを使っていて痛感したのは、汎用の用途において、TVはPCディスプレイの代わりにはならない、ということだ。高精細のPCディスプレイ用にデザインされたGUIはもちろん、PC用のコンテンツのほとんどは、高精細のPCディスプレイを短距離で利用することを前提に作られている。数メートル先のTVで利用するのには向いていない(Microsoftが開発中のFreestyleは、ある程度このあたりの事情にも配慮したものになるのだろうか)。

 逆に、PCディスプレイをTVの代わりに置く、ということも考えられるのだが、残念ながらPCディスプレイはせいぜい21~22インチで、TVのように画面サイズの大きなものがない。また、近距離で利用することを前提に作られた高精細のPCディスプレイでは、TVを表示することはできても、数メートル離れて見ると、どうも画像に迫力がない。結局、PCディスプレイもTVも、それぞれの用途に最適化されて作られているのである。リビングルームでPCとTVの両方のコンテンツを利用するのであれば、PC用とTV用、両方のディスプレイを用意しなければならない、というのが筆者の1年程度のリビングルームPC体験から得た結論だった。


●液晶の低価格化が後押しするリビングルームPC構想

 リビングルームPCを撤去した後、リビングでPCを全く使わなかったのかというと、決してそんなわけでもない。9月~1月のNFLシーズン(含むプレイオフとスーパーボウル)中、筆者は毎週リビングルームにノートPCを持ち込んでいた。SKY PerfecTV!では、ペイ・パー・ビューで毎週最大で4~6試合を見ることができるのだが、31チームあるNFLでは、ひいきのチームの試合が毎週オンエアされるとは限らない。そこで、TVで試合を見ながら、PC経由でインターネットラジオによるひいきチームの試合の実況を聞く、というスタイルが定着してしまった。運良く、ひいきチームの試合がオンエアされる週は、インターネット経由で試合のデータを追うために、PCを利用していた。

 このような形態は、リビングルームでのPC利用が週に1度という限られたものだから成り立つわけで、もっと使用頻度が高ければ、リビングルームにPCを置きたくなるだろう。問題は2台のディスプレイを設置しなければならないことだが、ここ最近の液晶ディスプレイの価格低下は、リビングルームのPC専用ディスプレイとして液晶ディスプレイを検討できるレンジにまで押し下げている。経済的な敷居はかなり低くなったといって間違いない。

 むしろ大きな問題は、リビングルームにどうやって液晶ディスプレイを共存させるか、ということだ。リビングルームのテーブルに、常時液晶ディスプレイを鎮座させておくわけにはいかない。かといって、利用するたびに液晶ディスプレイを取り出して結線しているようでは、ノートPCを持ち込んでいるのと変わらなくなってしまう。普段は液晶ディスプレイを邪魔にならないところに片付けておきながら、必要があればサッと引っ張り出して使う、みたいなことをしたいのである。


●液晶ディスプレイ用アームも低価格化

 これを実現する方法として、以前から考えていたのが液晶ディスプレイにアームを組み合わせる方法だ。アームを使うことで、必要なときだけ液晶ディスプレイを手前に引き出して使うことができれば良いのではないか、と考えたのである。

メルコの低価格液晶アーム「FTD-AR2」

 この方式の問題は、アーム自体の価格がばかにならないことだ。あまりたくさん売れる商品ではないせいか、3~4万円するものが少なくない。以前は液晶ディスプレイの価格自体が高かったため、価格バランスとしてはこれでもおかしくなかったが、15インチクラスならディスプレイ本体が値上がり傾向とはいえ、4万円程度で買える昨今、それと同じ金額をアームに払う、というのは誰しも抵抗を覚えるのではないだろうか。

 そんな中、ちょっと注目されるのが、メルコが発売した「FTD-AR2」というアームだ。何より注目なのはその価格で、標準価格が2万円を切る(19,800円)。すでに販売終了となっているFTD-AR1より5,000円安い。この価格にひかれて、ちょっと試用してみることにした。ここで組み合わせたのは、同じメルコのアナログタイプの15インチ液晶ディスプレイ、「FTD-X15AH」だが、メルコ製のディスプレイ専用というわけではない。

 FTD-AR2はVESA 75mm規格に準拠したディスプレイ用のアームで、耐荷重は6kgとなっている。重量的には必ずしも使えないとは限らないが、取り付け部が75mmタイプというのは、15インチまでの液晶ディスプレイ専用に近い(16インチタイプなどにいくつか例外はあるが)。アームとしては標準的なタイプで、色はグレー(カタログではシルバー)1色のみである。



●あれば便利。でも今のところは……

 FTD-AR2にFTD-X15AHを取り付け、実際にリビングルームのテーブルに取り付けてみたが、見た目的に違和感があることは否めない。アームやディスプレイがオフィス向けのライトグレーであるだけでなく、アームに取り付けられたディスプレイがテーブルに取り付けられている、ということ自体に無理がありそうだ。とはいえ、ウチは特にお客さんがくるわけでもないし、慣れの問題と片付けられなくもないだろう。

 むしろ問題は、リビングルームのテーブル用にはアームの長さが不足することだ。FTD-AR2は目一杯伸ばしても(この場合ディスプレイの高さが低くなる)、取り付け部からディスプレイまでの延長距離は359mmしかない。これは、オフィスのデスクなら十分な長さだが、リビングルームのテーブルにはちょっと足りない。15インチクラスのディスプレイと組合せることを前提に、オフィスでの大量導入に適したアームという感じだ。特に業務がPCだけでは完結せず、ペーパーワークを必要とする場合、液晶ディスプレイを手軽に移動させられるアームは便利だろう。使わない場合は、液晶ディスプレイを片付けておきたい、というニーズはリビングルームでも同様だが、アームの長さに対する要求がオフィスとは異なってくると思う。

 というわけで、FTD-AR2は筆者の求めているアームとは若干異なっていたが、実際にテーブルに取り付けてみて、ある種のシミュレーションをすることはできた。今回、テストということもあって、リビングルームに普通のミニタワー型のPCを持ち込んだが、ファンの音がかなり気になった。静音性が重要なテーマであることは間違いないところだ。

 それより大きな問題は、リビングルームPCで何をするか、ということである。上述した週に1度程度の利用なら、わざわざテーブルに液晶ディスプレイを固定するほどのことはない。あれば便利なのも間違いのない事実だが、なければならない、というほどのものでもない。前回取り上げたeHome構想でも実現すれば、また話は変わるのだろうが、それにはまだ多くのハードルがひかえている。

□メルコのホームページ
http://www.melcoinc.co.jp/
□製品情報
http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/f/ftd-ar2/
□関連記事
【3月7日】メルコ、2万円を切る液晶ディスプレイ用アームスタンド
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0307/melco.htm
【2000年5月17日】【元麻布】液晶ディスプレイと「リビングルームPC」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000517/hot93.htm

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(2002年3月28日)

[Text by 元麻布春男]


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