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NEW PRODUCTS TESTREPORT

カノープス
MTV2000
VideoGate1000
高画質テレビ録画カードの後継機とMPEG-アナログビデオ変換カード
TEXT:天野 司 Tsukasa Amano


●さらなる高画質録画を目指したMTV2000

MTV2000はメインカード部とサブカード部の2段構成。インターフェイス類はMTV1000と変わらない
 カノープスの「MTV2000」は、同社のテレビキャプチャカード「MTV1000」の上位機種となる製品だ。テレビキャプチャカードは最近の人気アイテムだが、その中でもMTV1000は、安定した画質が得られるMPEGハードウェアエンコーダチップの搭載と、画質最重視という設計方針のためか、他製品よりもかなり高価格であるにもかかわらず、トップクラスの人気を得ている。

 今回のMTV2000を一言で説明すると、MTV1000の機能をそのまま継承し、画質重視設計をさらに推し進めた製品と言える。まずテレビチューナー部は、CATV対応などの基本機能はそのままに、映像が二重三重に映る「ゴースト」を低減する「ゴースト・リデューサ」機能が新たに追加された。また、新規にデジタル画像処理チップを搭載することで、3D Y/C分離機能および3Dデジタルノイズリダクション(以下、3D DNR)機能も利用できるようになった。

 ハードウェアの構成はMTV1000によく似ている。MTV2000のハードウェアは、メインカードとサブカードの2枚構成になっているが、このうちメインカードに関してはMTV1000とほぼ同様の構成となる。メインカードだけをMTV1000と見比べると、サブカード接続用のコネクタが新規に追加されている以外、違いを探すのも難しいほどだ。よく見るとMTV2000ではビデオデジタイザチップSAA7114Hが搭載されていた部分が空きランドとなっているが、これは同等の機能がサブカードに搭載されたためだろう。

チューナーとMPEGエンコードチップを持つメインカード部。その構成はMTV1000にかなり近いものとなっている サブカード部。ゴースト・リデューサチップやデジタル画像処理用チップが搭載される

 サブカードには、デジタル処理用のチップが新たに2つ搭載されている。メインカードがほぼ同等ということを考えると、MTV2000での強化点はすべてこのサブカード上に搭載されているわけで、まさにMTV2000の肝と言ってよい部分だ。

 画像処理チップの1つ目はNEC製のゴースト・リデューサチップ「μPD64031AGJ」で、これはテレビ放送にしばしば見られるゴースト(画像が二重三重にぼやけて見える現象)を低減する機能を持つ。この機能はテレビ放送にあわせてゴースト除去用信号が送られていなければ利用できないが、最近ではほとんどの放送局がこの信号を送り出している。とはいえ、一部の地域や放送局によっては利用できない場合もあるので注意したい。

 もう1つは松下製の「MN673794」で、3D Y/C分離および3D DNR、オートゲインコントロール(AGC)機能などをサポートするデジタル画像処理専用チップだ。3D Y/C分離、3D DNRはいずれも時間軸方向の画像の相関性を利用して画像処理を行なうもので、1フレーム内でフィルタ処理を行なう2D Y/C分離やノイズフィルタなどに比べてはるかに高精度な処理を行なえることが特徴となる。ノイズリデューサはテレビチューナーにしか効果がないが、こちらの処理はテレビチューナーはもちろん、アナログビデオ入力にも効果がある。

 ただし、MTV2000の場合、これらの機能のうち、3D Y/C分離と3D DNRは同時に利用できないという制約がある。もっとも3D Y/C分離は、原理的に3D DNRを適用するのに近いノイズ低減効果を持っているため、両者が同時に利用できないということはそれほど大きな問題とはならないはずだ。使い分けとしては、S入力の場合は3D DNRを、コンポジットおよびテレビチューナーの場合は3D Y/C分離を利用するとよいだろう。

テレビ視聴、MPEG再生にはおなじみのMEDIACRUISEを用いるが、パネルデザイン(スキン)には新しくBlack Squareが追加されている
 これらの設定は、後述するバンドルソフトのMEDIACRUISE上の画質調整によって全チャンネル一律に決められる。そのため、チャンネルごとにゴーストリダクションを使用する/しないといった設定は行なえない。これはやや残念な仕様だが、予約録画の際に使用するTV Recording Managerからは、個々の予約ごとに設定を変更することができる。つまり、番組ごとに設定できるわけだ。この辺りはやや統一されていない感じもするが、うまく使い分けたいところだ。

 以上に挙げた以外のハードウェアについては、乱暴な言い方をすればMTV1000となんら変わらない。MTV1000が開発された段階でMTV2000のような製品を予想するのは難しかっただろうが、なまじハードウェアが似ているだけに、MTV1000の既存ユーザーは複雑な思いをするかもしれない。

 ソフトウェアのほうもMTV1000とほぼ同じ構成だ。テレビの視聴やキャプチャされたファイルの再生にはすでにおなじみとなったマルチメディアプレイヤー「MEDIACRUISE」を使用する。また予約録画は専用ソフト「TV Recording Manager」を用いる。なおMEDIACRUISEでは、パネル面のデザインを変更する「スキン」として新たにスクエアな外見を持つ「Black Square」が加わった。MEDIACRUISEのパネルは、この種のプレイヤーとしてはかなり大型で、狭い画面ではじゃまになりがちだっただけに、この新スキンの追加は喜ばしい。

 なおMTV2000には、松下電器産業製のDVD-RAM対応ビデオ編集ソフト、DVD-MovieAlbum for Canopusが新たに付属する。これを使用すれば、MTV2000でキャプチャされたMPEGファイルを、DVD-RAMメディアにダイレクトに記録することができるようになる。この記録は、手動はもちろん予約録画の場合にも有効だ。DVD-RAMへの記録フォーマットはDVD Video Recording フォーマット(DVD-VR)となり、DVD-VR対応のプレイヤーを用いて再生することができる。なおこのDVD-MovieAlbumは、既存のMTV1000ユーザーにも優待販売が行なわれる。

画面下部がTriple3Dで利用できる3Dデジタルフィルタ。3D Y/C分離と3D DNRを同時に指定することはできない
 キャプチャ画質だが、これだけクオリティに気を配った製品だけに、良好な画質を得ることができる。テレビチューナー、アナログ入力とも、これまで高画質と言われてきたMTV1000で録画したものを段違いと言ってもよいほど上回っている。MTV1000と同じエンコーダチップを採用しているので、原理的には同等の画質となるはずなのだが、これだけの画質差が生じるというのは、やはりエンコード前の画質、すなわちチューナーで受信した後のゴースト低減処理と3D Y/C分離や3D DNRの効果が高いことを示している。

 逆に言えば、テレビの受信状態が十分によく、良好な画質のソース映像が得られる場合には、ここまで極端な画質の差は生じないかもしれない。筆者宅は、正直言ってあまりテレビ放送の受信状態がよいほうとは言えないが、今回はこれがMTV1000とMTV2000の画質差を際立たせることになったのだろう。

●MPEGファイルをアナログ出力するVideoGate1000

VideoGate1000。S-VIDEOおよびコンポジットビデオのほかD1出力端子も備えている
 MTV2000と同時期に発表された「VideoGate1000」は、PC上に取り込まれたり、PC上で作成されたりしたMPEGファイルを、アナログビデオ信号で出力するビデオ出力カードだ。MTV1000/2000は、高価なカードでありながらビデオ出力機能を持たないことが1つの欠点と言われていたのだが、VideoGate1000は、そうした欠点をカバーするためのものと考えることができる。

 VideoGate1000が出力できるのは、PC上にあるMPEG-1/2ファイルだが、ここで注意してほしいのは、出力する内容を「ファイル化」する必要がある。すなわち、MTV1000/2000でスリップ再生している内容などはビデオ出力できないのである。

 出力端子はD1色差出力のほか、S-VIDEO信号およびコンポジットビデオ信号の3通り。D1出力は専用のD1端子から出力されるが、S映像およびコンポジット映像は、7ピンのMiniDIN端子に複合されての出力となる。そのためコンポジット出力を行なう場合には、付属の専用変換ケーブルを使用する。このほか、ステレオ音声出力用のRCA端子も用意されている。

 対応するフォーマットはMPEG-1/2のみで、デコードはソフトウェアによって行なわれる。さらに、出力できるのはMEDIACRUISEによって再生された場合だけで、これ以外のMPEG再生ソフトを用いた場合には、アナログ出力はされない。逆にMEDIACRUISEによって再生できるMPEGファイルであれば、MTV1000/2000で作られたファイルに限らず、ほかのMPEGファイルでも再生することができる。ただし、DVD-Videoだけは、MEDIACRUISEで再生可能であっても、VideoGate1000からは出力できない。これは、VideoGate1000がコピー防止技術であるマクロビジョン信号の出力に対応していないためであろう。

マシンにVideoGate1000をインストールすると、MEDIACRUISEのMPEG出力先として選択できるようになる MTV1000/2000とVideoGate1000を組み合わせると、パラメータ変更による画質への影響を直接見ることができる「オンザフライプレビュー」が利用できる

 MTV1000/2000と組み合わせた場合に限っては「オンザフライプレビュー」と呼ばれる特殊な再生も可能だ。これはMTV1000/2000でエンコードした内容をディスクに保存することなく直接ビデオ出力する機能で、画質調整やエンコードパラメータを変えることによるビデオ出力画像の変化をダイレクトに確認するための機能だ。

 MTV2000とVideoGate1000で気になるのはやはりその価格だろう。確かに良好な画質が得られるのは確かだが、これらをあわせて購入すれば、そこそこ高級なAV機器が買えてしまう。もちろん、PCでテレビ放送を録画・再生することには、AV機器で単に録画再生を楽しむのとは異なる魅力があるので、これらの投資がむだと言うわけではないのだが、そうした部分にどれほどの意味を見いだすかが、今回紹介した2つの製品を購入する場合の鍵となるだろう。

・問い合わせ先:カノープス株式会社
・TEL:078-992-5846(カスタマーサポート)
・URL:http://www.canopus.co.jp/

●製品名:MTV2000
・標準価格:64,800円
・対応スロット:PCI
・対応放送:VHF1~12ch、UHF13~62ch、CATV
・C13~C63ch(音声多重/ステレオ放送対応)
・インターフェイス:テレビアンテナ(F型コネクタ)×1、S-VIDEO/VIDEO IN(専用端子)×1、LINE IN×1、LINE OUT×1
・対応OS:Windows XP/Me/2000
・付属ソフト:MEDIACRUISE、TV Recording Manager、DVD-MovieAlbum for Canopusなど

●製品名:VideoGate1000
・標準価格:22,800円
・対応スロット:PCI
・インターフェイス:D1出力端子×1、S-VIDEO/VIDEO(付属変換ケーブル使用) OUT×1、LINE OUT×1
・対応OS:Windows XP/Me/98/2000

■写真撮影
若林直樹(STUDIO海童)

□カノープスのホームページ
http://www.canopus.co.jp/
□製品情報
http://www.canopus.co.jp/catalog/mtv2000/mtv2000_index.htm(MTV2000)
http://www.canopus.co.jp/catalog/videogate/videogate1000_index.htm(VideoGate1000)
□関連記事
【1月11日】カノープス、3D Y/C分離回路搭載のTVキャプチャカード「MTV2000」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0111/canopus.htm
【2001年12月21日】カノープス、MPEG-1/2動画をTVに出力するカード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011221/canopus.htm
【2月13日】【小寺】こだわりの暴走列車「カノープス MTV2000」(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20020213/zooma47.htm


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