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IntelのHammerキラー「Prescott」の姿が明らかに


●Prescottは90nm(0.09μm)プロセス+Hyper-Threading+α

Intel、Louis Burns(ルイス・バーンズ)副社長兼事業本部長
 IntelがPentium 4後継の次世代CPU「Prescott(プレスコット)」について、正式にアナウンスした。ただし、ちょっとだけ。IntelのLouis Burns(ルイス・バーンズ)副社長兼事業本部長(Desktop Platforms Group)は、キーノートスピーチの中でPrescottについての概要を説明した。

 今回、正式に明らかにされたのは以下のポイントだ。

・2003年後半に登場
・90nm(0.09μm)プロセスで製造
・NetBurst(Pentium 4)アーキテクチャをベース
・マイクロアーキテクチャを拡張
・Hyper-Threadingテクノロジをイネーブル
・プラットフォームは以下をサポート

 ・統合またはディスクリートグラフィックス
 ・IEEE 802.11a/b 無線LAN
 ・GbE(Gigabit Ethernet)
 ・USB 2.0
 ・Serial ATA

 明らかになった情報は少ないが、ここからは多くのことが推測できる。今回明らかになったPrescottのフィーチャの中でもっとも重要なのは、90nmプロセスで製造されることだ。このことから、次の4点が推測される。

・最終的に5~6GHzレンジを達成可能
・Pentium 4より低いTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)
・モバイル向けも同時またはより早いタイミングで登場
・90nmの製造キャパシティ拡大に時間がかかるため移行には若干時間がかかる


●ハイパフォーマンスだけど比較的クールなPrescott

現行のPentium 4を4GHzで動作させるデモ
 製造プロセスが現在の130nm(0.13μm)から90nmへと1世代微細化すると、同じアーキテクチャでもCPUの周波数は、1.5~1.6倍以上に向上する。つまり、0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)を1世代微細化すれば、最終的に3GHzをラクに超えることができる。同じ法則を当てはめると、Prescottは5GHzを超える周波数を達成できることになる。ちなみに、バーンズ氏のキーノートスピーチでは、現行のPentium 4を4GHzで動作させるデモも行なわれた。

 プロセス技術の微細化により、TDPや平均消費電力も下がる。実際、IntelはOEMに対してPrescottのThermal Envelop(熱設計枠)はNorthwood並みだと説明したという。IDFに出展していたあるヒートシンクベンダーは、「Prescottでも現在のPentium 4用とほとんど同じヒートシンクが利用できる」と語っていた。

 Intelは90nmプロセスのP1262で、「高誘電率(High-k)ゲート絶縁膜」素材を使う予定でいる。ゲート絶縁膜の素材を従来のSiO2から、High-kに変えると、トランジスタが小さくなり過ぎたことで増える傾向にあるリーク電流(漏れ電流)を減らすことができる。そのため、Intelの90nm世代CPUは、待機時のリーク電流が減り、また、TDPtypの値も減ると見られる。

Intel Desktop CPUコアの移行推測図
 そのため、Prescottは迅速にモバイルセグメントにも投入されると見られる。過去3回のプロセスチェンジでは、Intelはモバイルに最新プロセスを先行して投入してきた。今回も同じ戦略を採るとするなら、モバイルPrescottが先に出ることになる。IntelがPrescottで、CPUのブランド名やマーケティングを大きく変えるとするなら、主力であるデスクトップが先行することになるだろう。だがその場合でも、それほど遅れることなくモバイルPrescottが登場すると見られる。

 ただし、新プロセス技術を使うトレードオフもある。新プロセス技術は、最初は製造キャパシティが限られるため、製造量が限られることだ。Intelは、通常全てのPC向けCPUを新しいプロセスに置き換えるのに、18~24カ月ほどかかる。そのため、PrescottがPentium 4を完全に置き換えるのにも3~4四半期かかると見られる。

 それからプロセスの微細化による、もうひとつの問題点は、電力密度(Power Density)が向上してしまうことだ。Power Densityが高いと、ヒートスプレッダで効率よくダイ(半導体本体)の熱を分散させないと、熱によるダイの破壊などの心配が出てくる。このあたりをどう解決して行くかは、今後明らかになるだろう。


●PrescottでHyper-Threadingがついに使えるように

 Prescottのフィーチャでもうひとつ重要なのはHyper-Threadingがイネーブルされること。現在、Pentium 4アーキテクチャはもともとHyper-Threadingを前提に開発され、0.18μm版Pentium 4(Willamette:ウイラメット)からHyper-Threadingテクノロジが密かにインプリメントされていたことが明らかになっている。つまり、Pentium 4登場から2年半かけて、ようやくHyper-ThreadingがPCでもイネーブルされる(その間は単に使われない機能となっている)ことになる。

 デスクトップ/モバイルPCへのHyper-Threadingの導入が遅れた理由は、ソフトウェアがマルチスレッド化されていないからだ。

 Intelのパット・ゲルシンガ副社長兼CTO(Patrick Gelsinger, Vice President & Chief Technology Officer)はIDFでのプレスブリーフィングで「これまでスレッド化されたアプリケーションは全然なかった。サーバー向け以外は、ワークステーション向けがわずかにあるだけだった」、「しかし、次の2年ですべてのアプリケーションがスレッド化されるだろう」、「そのためのツールを提供して行く」と、Prescottに向けてIntelがソフトウェア面でのイネーブリング活動を活発化させることを示した。

 Prescottでは、NetBurstアーキテクチャをベースとしながらも、マイクロアーキテクチャの拡張が行なわれることも重要だ。バーンズ氏は、Hyper-Threadingはマイクロアーキテクチャの拡張とは別なフィーチャとして語っている。とすると、Hyper-Threading以外にも、新しい拡張が行なわれることになる。

 1カ月ほど前、このコラムではIntelが64bit拡張アーキテクチャをPrescottにインプリメントするだろうと予測した。しかし、IA-32の64bit拡張は、Prescottの登場時点ではPC側ではまだイネーブルされない可能性が高い。そのため、Prescottではそれ以外の機能拡張が行なわれると思われる。また、そのほかのソースからの情報として、PrescottではFSB(フロントサイドバス)も、533/667MHzに拡張されることがわかっている。

 ちなみに、IntelはPrescottと同世代のサーバー&ワークステーションCPUとして「Nocona(ノコーナ)」を用意している。Noconaは、基本的にPrescottと同コアだと思われるため、PrescottのフィーチャはいずれもNoconaに当てはまると見られる。

 Prescottに対応するチップセットは「Springdale(スプリングデール)」になる。つまり、バーンズ氏がアナウンスしたPrescottのプラットフォームは、イコールSpringdaleの機能を示している。これは、以前レポートした通りだ。

□関連記事
【1月10日】【海外】IntelがIA-32の64bit拡張「Yamhill」を開発している理由
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0131/kaigai01.htm

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(2002年3月1日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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