VIA Technologies DDR333 Summitレポート

本格普及は2003年となるDDR333

会期:2月20日
会場:台北国際会議中心


 20日に台北で行なわれたDDR333 Summitは、前半がVIA TechnologiesによるDDR333こと333MHzのDDR SDRAMをサポートした新チップセットApollo KT333の発表会、後半はDRAMベンダなどによるDDR SDRAMの現状を説明するプレスカンファレンスが行なわれた。

 この中で各メモリデバイスメーカーは、自社のDDR333への取り組み、さらには2004年頃に登場が予定されているDDR IIの現状などを説明した。本レポートではそうしたDDR333の現状、そしてDDR IIに関する各メーカーの発表などについてお伝えしていく。


●DDR333には3つのメモリモジュールが存在する

 いわゆるDDR333、333MHzのDDR SDRAMを搭載したPC用のメモリモジュールはPC2700となる。このPC2700のUnbuffered DIMM(つまりデスクトップPC用のメモリモジュール)には、こまかく見ていくと実は3種類ある。表1はHynix(ハイニクス=旧Hyundai Semiconductor)がDDR333 Summitで公開した、PC2700の各DIMMの仕様だ。

【表1:DDR333のメモリモジュール(Hynixが公開した資料より作成)】
パッケージ高さメモリ容量ガーバーデザイン
UnbufferedTSOP1.2インチ64MB~2GBPC2100と同等
TSOP1.2インチ64MB~2GB新デザイン
FBGA1インチ64MB~2GB新デザイン
RegisteredFBGA1.125インチ128MB~2GB新デザイン
SO-DIMMTSOP1.25インチ64MB~512MBPC2100と同等

 見てわかるように、UnbufferedのPC2700には、3つの組合せがあることがわかる。

(1)TSOP=PC2100ガーバー
(2)TSOP=新デザイン
(3)FBGA=新デザイン

 右側の、TSOP(Thin Small Outline Package)、FBGAというのはDRAMチップのパッケージのことだ。現在のPC2100(いわゆるDDR266=266MHzのDDR SDRAMを搭載したメモリモジュール)などで利用されている一般的なパッケージがTSOPだ。これに対して、FBGA(Fine-pitch Ball Grid Array)はより小形のパッケージで、電気特性がTSOPにくらべて優れているため、高クロック動作などハイパフォーマンス向けのパッケージと言われている。ガーバー(Gerber)とは、DIMMのデザイン仕様のことで、より互換性を高めるためにJEDEC(米国の電子工業会EIAの下部組織で、半導体の標準化団体)が決定しているメモリモジュールのリファレンスデザインのことを意味している。

 現在市場にあるDDR333のメモリモジュール、つまりPC2700はこの(1)に該当する。つまり、当初はDRAMベンダもチップセットベンダも、PC2100のガーバーにDDR333を搭載すれば十分だと考えていたのだ。ところが、実際にデザインを開始してみると、どうもそうではないというのが判ってきた。たとえば、いち早くDDR333をサポートしたSiS645では、DDR266を利用した時には最大で3スロットまでサポートされるのだが、DDR333では2スロットまでとなっている。つまり、DDR333ではそれだけ安定して動作させるのが難しいのだ。

 これを解決するために、現在JEDECにおいてPC2700の新しいガーバーの策定が進んでおり、そちらを利用すれば現在の(1)の組合せよりも安定性が増すとDRAMベンダは説明している。さらに、DRAMのパッケージを電気特性に優れたFBGAにする、つまり(3)の組合せにすれば、より安定性は向上するという。このガーバーの策定はほぼ終わっている模様だが、最終的にJEDECで最終仕様が確定するのは6月のミーティングにおいてとなるという。つまり、PC2700の本命はそのタイミングででてくる、新しいガーバーを採用した(2)ないしは(3)の組合せであると考えることができる。

FBGAパッケージのDRAMチップ。DDR333のような高速なメモリチップに今後使われるようになる。これまでのTSOPにくらべて小さく、電気特性に優れているのが特徴。下に見えるのが、そのFBGAパッケージのチップを利用したPC2700 こちらはこれまでと同じTSOPパッケージのPC2700。PC2100のガーバーにDDR333チップを組みあわせたのが、現在流通しているPC2700


●DDR333、DDR400と矢継ぎ早に対応するのはマーケティング上の理由から

 このように、メモリモジュールの技術的な理由からいって、現時点でDDR333を搭載したPC2700が安定したソリューションであるかと聞かれれば、まだまだ難しいとしか言いようがないのが現状だ。それなのに、SiS、VIA Technologies、さらにはALiもDDR333の導入にはかなり前向きであるという。これはどうしてなのだろうか?

 すべての関係者が指摘することは、これはマーケティング上の問題であるということだ。その背景には、SiSがマーケティング上の戦略を大きく変更し、アグレッシブに製品を展開しているということがある。以前は、SiSは統合型チップセットのみ、VIAはどちらかと言えば単体のチップセットに強いという棲み分けができていた。しかし、昨年(正確には一昨年)よりSiSは、方針を大きく転換。単体のチップセットにも参入し、VIAと直接競合する状況になった。

 SiSには大きな弱点があった。それがブランドイメージだ。これまでSiSは統合型に焦点を絞ってきたため、SiS=“安価”というイメージがついてしまっている。しかし、SiS645やSiS745といったような単体チップセットの市場では、“高性能”とか“先進的”といったイメージが成功への鍵になる。少なくともこの点ではVIAはSiSに大きく先行してきた。そこで、この状況をくつがえすために、昨年SiSは、SiS645でDDR333のサポートを、VIAよりも半年以上先行して行なった。これにより、イメージの分野でSiSは大きくポイントを上げたといっていいだろう。

 これに焦ったのが、VIAだ。SiSのアグレッシブな戦略は、“Intelを追いかける”というVIAのポジションを脅かしかねない。だから、急速にDDR333のサポートをはじめ、さらに次の武器として本来はKT333Aとしてリリースする予定だったものを、DDR400をサポートすることにしたKT400として第2四半期にリリースして、SiSに対抗していくという。SiSもDDR400をサポートするSiS648(Pentium 4用)を第2四半期にリリースするなど、両者の競争は激しさを増すばかりだ。

KINGMAX社が公開したDDR400を搭載したPC3200のメモリモジュール。帯域幅は3.2GB/secとなる

 このように、DDR333やDDR400に対応したチップセットは、マーケティング戦争の副産物で、技術的な要求からでてきた製品ではない。たとえば、KT400はAthlon XP/Duron用のチップセットだが、あいかわらずシステムバスは266MHzのままだ。このため、システムバスの帯域は2.1GB/secであるのに、メモリバスは3.2GB/secとなり、メモリバスだけ帯域幅が広いという状態になる。これでは、統合型チップセットでグラフィックスコアがメインメモリの帯域幅を使わないかぎり性能面でのメリットは小さいと言ってよい。

 また、そもそもDDR400を搭載したメモリモジュールは市場に登場するのだろうか? あるDRAMメーカーの関係者は「0.18μmや0.15μmで、DDR400のイールド(歩溜り)はほとんど0にちかい」としており、製造プロセスルールが0.13μmになれば若干のDDR400は採れるだろうという段階だ。DDR333 Summitの会場では、メモリモジュールメーカーのKINGMAXがDDR400を搭載したPC3200を展示していたが、これがリーズナブルな価格で市場に出まわるのかと言えば、難しいとしか言いようがないだろう。

 初期のDirect RDRAMのように、メモリモジュールに1枚で10万円近い価格がついていてもユーザーは購入するだろうか? 答えは言わずともよいだろう。



●DDR333はいつ普及するのか?~答えは来年と各メモリデバイスメーカー

 DDR Summitの質疑応答では、「DDR333を搭載したPC2700はいつごろ普及するのか?」という質問がでたが、各メーカーともに一致していたのは「少なくとも今年の終わりの段階では5~10%程度だろう」(エルピーダメモリ テクニカルマーケティング本部ジェネラルマネージャ 佐藤克之氏)という意見で、少なくとも今年DDR333が爆発的に普及すると見ているところは無かった。

 それでは、2003年についてはどうかと言えば、「今年はDDR266、来年はDDR333がメインストリームとなる」(Micron Technology PCデスクトップセグメント ジェネラルマネージャ ブレット・ウィリアム氏)、「DDR333がメインストリームになる」(Nanya ストラテジックプランニングディレクター ネルソン・チャン氏)というところもあれば、「もちろん高い価格がつけられるDDR333は大歓迎だが、まだ様子見の部分はある。エルピーダはDDR333に関してはTSOPのみで、2ソケットのソリューションではTSOPのみで十分だと考えている」(前出:佐藤氏)と若干の姿勢の違いがある。これは後藤氏がレポート( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0222/kaigai02.htm )で述べているとおり、Intelの2003年の動向がまだはっきりしていないためだろう。

 会場からは「IntelはDDR333をサポートするのか? Intelがサポートしなければメインストリームにはならないのでは?」という質問がでたが、DRAMベンダー関係者はやや苦笑して「ノーコメント」(前出:ウィリアム氏)とだけ述べた。Intelとの関係もあり、答えられないDRAMメーカーに代わり、後藤氏のインタビューでも既にお馴染みとなったDRAM業界のキーマンと言えるAMI2のデジー・ローデン氏がこの質問に実に興味深い発言をしていた。「2003年にはDDR333がメインストリームになる。これが質問への答えになると思う」と自信たっぷりに答えていた。つまり、2003年にDDR333がメインストリームとなるだけの根拠を彼はもっている、というわけだ。


●DDR IIのDIMMは240ピンに決定、SO-DIMM、Micro-DIMMは策定中

 また、SamsungやHynixはDDR IIに関する詳細な仕様を明らかにした。具体的には表2の通りだ。

【表2:DDR IIのDRAMデバイスおよびDIMMの仕様(Hynixが公開した資料より作成)】
DDR IDDR II
DRAMデバイス供給電力2.5V1.8V
電気信号SSTL_2SSTL_18
プリフェッチ2bit4bit
内部バンク数4バンク4バンク(8バンクは検討中)
パッケージ66ピンTSOPないしはFBGA60ボール、FBGA
データストローブシングルエンドディファレンシャル
クロック333/266/200Mbps667/533/400Mbps
オフチップドライバーキャリブレーション-対応
オンダイターミネータ-対応
Posted CAS-対応
DIMMDIMM構成x64、x72x64、x72
容量64MB~2GB256MB~4GB
高さ最大1.125インチ最大1.2インチ
ピン数184ピン240ピン
スタック数8層6層
DRAM構成x4、x8、x16x4、x8、x16
DRAM密度64Mbit~1Gbit256Mbit~2Gbit

 DDR IとDDR IIの最も大きな違いは、電圧とオンダイターミネータの有無だろう。DDR Iでは2.5V駆動となっているが、DDR IIでは1.8Vに変更されている。また、DDR IIではモジュール上にオンダイターミネータが搭載されており、これによりマザーボードのターミネータを無くすることができるため、マザーボードのコストを下げることができる。

 また、注目のモジュールだが、DDR IIではモジュールのピン数はDDR Iから変更されるという。Samsungのプレゼンテーションによれば、DDR IIのUnbufferedとRegisteredのDIMMは240ピンに決定され、SO-DIMM、Micro DIMMは現在JEDECのワーキンググループで検討されているという。


□VIAのホームページ(英文)
http://www.via.com.tw/
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~多数のKT333マザーボードが展示される
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0221/via.htm
【2月20日】VIA TechnologiesがKT333チップセットを正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0220/via.htm
【1月28日】Platform Conferenceレポート
μPGAパッケージのThoroughbredでモバイルPentium 4-Mに対抗するAMD
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0220/via.htm

(2002年2月22日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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