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●Intelが2003年にDDR333のサポートを検討
DDR333はニッチメモリに止まるのか、それとも次のメインストリームになるのか。おそらく、答えはイエスでもノーでもある。一言で言うと、DRAMベンダーの大手(の半数)は乗り気、チップセットベンダーも乗り気だが、完全なメインストリームになれるかは不鮮明、という情勢のようだ。
DDR333は、JEDECのコモンガーバーに沿った「PC2700」モジュールが登場する4月以降にゆっくりと立ち上がり始めると見られる。年内はAMDプラットフォームのハイエンドから浸透が始まる程度。しかし、来年になるとIntelプラットフォームにもDDR333が浸透して行き、2003年中盤にはメインストリームにある程度までは浸透するというコースになりそうだと、ある関係者は予測する。
もう少し細かく見よう。まず、DRAMのサプライヤ側を見ると、2強の片方のMicron TechnologyがDDR333に非常に熱心に動いている。Samsung Electronicsも、台湾で2月20日に開催された「DDR333 Summit」で、DDR333の歩留まりが2003年には80%に達するという見通しを明らかにしている。
チップセットサイドでは、VIA TechnologiesとSiSの双璧がDDR333で並んだほか、Intelもこの方向に動いていると見られる。というのは、確実性が高いソースを含めた複数の業界筋からそうした情報が入って来ているからだ。
ある情報筋は、IntelがDDR333を2003年のプラットフォームで採用すると伝えてきたという。また、別な筋は、IntelからDDR333のバリデーションプログラムを開始する計画があると聞いたという。だとすると、Intelの2003年のデスクトップチップセット「Springdale(スプリングデール)」は、DDR333で立ち上げることになった可能性が高い。
もっとも、DDR333サポートについては、まだIntelから何も聞いていないソースも多いため、確実ではない。検討段階なのかもしれない。少なくとも、OEMメーカーに正式に伝達されている話ではなさそうだ。しかし、Intelは昨夏以降、メモリサポートについてはDRAM業界の流れに従うという路線へ変更しており、大手DRAMベンダーの多くがその気になっているDDR333サポートを決めた可能性は高い。
ちなみにIntelのこうしたDRAM業界寄りメモリ路線への変化は、来週開催されるIntelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」のアジェンダにも如実に表れている。Intelは、IDFにJEDECのデジー・ローデン氏を招いて、将来のメモリ規格について、IntelとJEDECがどのように協力したかをプレゼンテーションすることになっている。つまり、以前ならRambusがいたポジションに、今はJEDECがいる。だとしたら、Intelのサポートメモリは、DRAM業界の大勢に沿ってゆくことになるだろう。
●DDR IIのプッシュバックでDDR333が台頭
DRAM業界でのDDR333の台頭の背景には、DDR II(DDR400/533)が昨秋の予想の2003年中盤からプッシュバックしたという事情がある。じつは、昨年後半、DDR IIが一気に盛り上がっていた背景には、Intelが採用を内定したことがあった。以前レポートした通り、Intelは、昨秋の段階では、2003年のSpringdaleでDDR IIを立ち上げるつもりだったからだ。Intelが使うなら、DDR IIは一気にそこそこのボリュームを占めるようになると期待されていた。
だが、多くの関係者が、現在この計画は2004年前半にまでプッシュバックされていると証言する。つまり、2003年前半に予定されているSpringdaleの登場時には、DDR IIはサポートされない(DDR IIサポート機能はあるがディスエーブル状態)らしい。IntelがDDR IIを遅らせた理由は、おもに次の2つのようだ。
(1)はDDR IIの規格が、ADT参加企業からの提案をベースに昨年9月に拡張されることになり、JEDECでの標準化作業が遅れたこと。Intelは、JEDECフルスペックのDDR IIの立ち上げを待つことにした、とある関係者は言う。(2)は電源電圧の変更。Intelは当初は電源電圧(Vdd)2.5VでDDR IIを立ち上げるつもりだったが、消費電力を抑える必要があるためVddもI/O電圧(Vddq)と同じ1.8Vで立ち上げることにしたという。Vddを1.8Vに下げるためには、プロセスも0.09μm以下が望ましいため、自動的に2004年あたりにずれ込むという。
こうした変化の結果、2003年のメモリは、突然、空白のまま残されることになってしまった。そこへ入り込んだのがDDR333だ。DDR IIが2003から立ち上がるのなら、DDR333はニッチに押し込められてしまうが、DDR IIが遅れるなら2003年はDDR333が占められるというストーリのようだ。
●0.13μmでないと立ち上げられないDDR333
しかし、DDR333に誰もがハッピーというわけではない。DRAMベンダーでも、すぐやる気組ともうちょっと待て組がある。それは、DRAMベンダー側の製造上の理由からだ。
DRAMは、同じシリコンウエーハから高周波数動作が可能なチップと低速でしか動作できないチップがミックスして採れる。そして、プロセスが縮小するに従って、より高速品の比率が高くなって行く。これはCPUと同じだ。
では、DDRの場合はどうなのかを見て行こう。DDRは最初は0.2xμmで製造が始まった。この段階では、DDR200の比率が非常に高かったが、0.17~18μmクラスへ移行するにつれてDDR266の比率が高くなって行った。そして、現在、先端メーカーで主力となりつつある0.15μmでは、ほとんどがDDR266以上になり、DDR200は姿を消しているという。
もちろん、この製品ミックスはDRAMベンダーによって差がある上に、DRAMベンダーの発表するデータも必ずしも真実とは限らない。しかし、0.15μmではDDR266がかなりラクなのは確からしい。つまり、DDRの製造を完全に0.15μmに移行し終わったメーカーは、ほぼDDR266だけになっているわけだ。また、プロセスが微細化すると、より低レイテンシのチップがより多く採れるようになる。例えば、0.15μmでは、DDR266B(CAS Latency=CLが2.5)だけでなくDDR266A(CL2)もかなりの割合を占めるようになっているという。
では、DDR333の比率と製造プロセスはどうなのか。多数派の意見は、0.13μmが必要というものだ。1月末に開催されたPlatform ConferenceのメモリのパネルディスカッションでElpida MemoryのJim Sogas副社長(Vice President of Sales)は「量産出荷には30~40%の歩留まりが欲しい。DDR333を大きなパーセンテージで採れるようにするには0.13μmが必要。そうすると、2003年が現実的」と語っている。
●DDR333がどれだけ採れるかがポイント
CPUの場合は、例えば2GHzが10%しか採れなくても製品として出荷して、高プレミア価格をつけてしまう。ところが、汎用DRAMの場合はそうした商売はできない。そのため、30%程度の歩留まりがないと、量産品として出せない(ペイしない)というのが一般的な話らしい。DDR333では、そのラインが0.13μmというわけだ。
DRAMでは0.13μmはまだ最先端のプロセスで、今年が立ち上げ時期。0.13μmが生産の主力になるのは今年後半以降、大半は年末から来年になる。だから、DDR333も年末から来年頭の立ち上げというのが、多数派の意見だ。
それで、0.13μmプロセスで、どれだけDDR333が採れるかは、また各社の言い分で違いがある。SamsungやMicronは、かなり高い比率、例えばSamsungは80%程度を2003年中に達成できるというロードマップをDDR333 Summitで示している。ただ、この手のロードマップは、1社が華々しいことを言うと、他社もそれに合わせて誇張してくるきらいがある。そのため、これがどこまで信じられるかはわからない。最大のポイントはDDR出荷量のうち、どの程度までがDDR333にできるかにある。
そもそも、IntelがDDR333を当初のサポート予定に入れていなかったのも、そうした理由からだ。ある業界関係者によると、Intelは昨年の早い段階で、DDR333も検討したという。その時、DRAMベンダーからDDR333の歩留まりの予測を聞き、その結果、Intelが満足できるライン(おそらく50%以上)に達しないと見たため、サポートしないことにしたという経緯があるという。IntelがDDR333をサポートしないとしたら、このあたりが原因となる。
逆を言うと、次のようになる。本当にDDR333 Summitでぶち上げられているように歩留まりが行くのなら、Intelも含めてDDR333へと流れるだろう。しかし、そこまで行かないなら、2003年もDDR333は完全なメインストリームには行かないだろう。
(2002年2月22日)
[Reported by 後藤 弘茂]