後藤弘茂のWeekly海外ニュース

2006年のDDR IIIへの道
--JEDECのキーパースン、デジー・ローデン氏インタビュー(3)

 DDR IIはいよいよ規格策定の最終段階に入っている。次世代DRAMの開発促進を行なうAdvanced Memory International(AMI)の社長兼CEOで、JEDEC(米国の電子工業会EIAの下部組織で、半導体の標準化団体)のBoard of DirectorsのChairを務めるデジー・ローデン(Desi Rhoden)氏に、規格化の状況をうかがった。その模様を全4回にわたってお届けする。


●業界に異なる見方があるDDR IIのUnbuffered DIMM

[Q] あるソースからDDR IIではUnbufferedタイプのフルサイズDIMMがなくなり、デスクトップもUnbuffered SO-DIMMを使うことになると聞いた。ところが、別なソースはUnbuffered DIMMもあるという。意見の対立があるのか。

[ローデン氏] わかった、説明しよう。確かに、業界内の一部は、UnbufferedのフルサイズDIMMはもうやめたいと考えている。彼らは、UnbufferedはSO-DIMMへと市場が完全に移ると信じている。それは事実だ。

 しかし、今のところ、我々はDDR400/533向けの240ピンDIMMで、RegisteredとUnbufferedの両タイプ(の規格)を持っている。これに、UnbufferedのSO-DIMMとMicro DIMMで、実質的に4つのタイプのDIMMがある。つまり、DDRと同じ種類のDIMMを継続して提供できるようにする。

 業界内の設計者の一部は、UnbufferedでフルサイズのDIMMを嫌がっており、彼らはフルサイズDIMMの設計は採用しない道を選んだ。これは、オープンビジネスなので、それももちろんOKだ。しかし、業界としては、どちらの設計もやっている。

 フランクに言うと、これはユーザーデシジョンだ。もし、ユーザーがSO-DIMMを選ぶというなら、それはそれでいい。業界では両方を作っているのだから。あるユーザーが一方を取り、あるユーザーが違う方を取るのは自然なことだ。

 しかし、業界の一部には、UnbufferedでDIMMとSO-DIMMの両方が規格化されても、ユーザーがSO-DIMMだけを選ぶと信じている人もいる。つまり、市場がより小さなラップトップ、より小さなデスクトップへと向かい、すべてが小サイズになってゆくと考えている。これが正しい予想かどうかは、私はわからない。

[Q] DDR IIではUnbufferedでは2スロット限定になるのか。

[ローデン氏] 今のDDRでも、Unbufferedでは2スロットだ。だから、2スロットオンリーになるというのは非常にありえる話だ。これは、システムシミュレーションに依存する。

 ただし、私は、マザーボード設計者、チップセット設計者、システム設計者、そのいずれも2スロットしか必要ないと考えていると信じている。なぜなら、メモリはもう十分に容量が大きい。2スロットで十分な容量を確保できる。だから、我々も2スロットにフォーカスしている。


●2006年をターゲットにするDDR III

[Q] 第3世代のDDR III規格について聞かせて欲しい。DDR IIIについての活動はいつスタートしたのか。

[ローデン氏] 2001年6月の東京でのJEDECミーティングでスタートした。その時、我々はテストグループを作った。そして、最初のディスカッションは次の9月のラスベガスのミーティングで行なった。DDR IIIをスタートさせたのは、6月にDDR IIの予備スペックが完成したからだ。

 これも通常のサイクルだ。我々は、ある世代(のメモリ技術)の予備スペックを作り終えたら、次の世代についての話し合いを始める。

[Q] DDR IIは2003年をターゲットに開発してきたと聞いた。DDR IIIは何年をターゲットにしているのか。

[ローデン氏] 2006年のタイムフレームにフォーカスしている。つまり、2006年頃にはスペックが確定しているということだ。これも、これまでのサイクル通りだ。歴史的に見ると、DRAM技術はおよそ3年毎に次の大きなステップへと発展して来た。場合によっては2年や4年だったこともあるが、平均では2.5~3年で移行する。

 そのため、3年置きにCOMDEXで新しいDRAM技術を見ることができる。思い出して欲しい、3年前のCOMDEXでは、最初のDDR200システムが出展された。実際には、動作していなかったが(笑)。同じことが、今年のCOMDEXでも起きる(DDR400が出展される)だろう。非常にロジカルだ。

[Q] 2006年とするとDDR IIIのプロセス技術のターゲットは0.10μm以下、0.08μmあたりになるのか。

[ローデン氏] 我々は、今の時点では特定のプロセス技術にフォーカスしていない。多分、0.10μmより下にはなるが、今の段階ではまだ正確には言えない。

 今、DDR IIIについて何をしているかというと、まず、ユーザー側が、どのタイムフレームでどんな技術を必要としているかをとりまとめている。次にサプライヤ側が、その時点で何ができるかをまとめる。それから我々が、ユーザーの望みと、サプライヤに可能なことの間で、トレードオフをする。つまり、そのタイムフレームのプロセス技術で可能な設計の範囲内で、できる限りユーザーの望みに沿うものを提供しようとする。その調整が終わってから、初めてスペックの定義を始めることになる。

 しかし、正確にどのプロセス技術で量産が始まるかは、かなり後にならないと予測できない。例えば、DDR400/533の定義を始めた時には、我々はどのプロセスで出荷するのか見えなかった。だが、今、もう十分に近づいているので、見通すことができる。


●3容量世代に渡る各DRAM技術

[Q] 容量世代ではどうなのか。DDR IIIは1GB世代から始まるのか。

[ローデン氏] DRAM容量は、基本的に2~3年で2倍になる。そのトレンドに従うと、各DRAM技術の世代は、典型的には3世代の容量に渡ることになる。

 つまり、現在のDDRは128MB、256MB、512MBの3容量世代に渡る。これが第2世代のDDR IIになると、たぶん512MB、1GB、2GBの3世代に渡ることになる。この前後の容量も作られることがあるが、メインは3世代だ。

 例えば、DDRは最初は64MBだったが、それはほとんど使われなかった。今日の128MBになると、DDRもかなり出ているが、SDRAMも非常に大きなボリュームだ。しかし、これが256MB世代になると、DDRの方がボリュームが大きくなるだろう。それでも、SDRAMも256MBでまだ存在することに疑いはない。2世代のDRAM技術がオーバーラップしている。

 同様に、第2世代DDRもおそらく256MBから始まるが、最大ボリュームは512MB~2GBになるだろう。再び、現在のDDRとオーバーラップすることになる。この法則に従えば、簡単に予測することができる。第2世代DDRは、第3世代DDRと、後半の容量世代でオーバーラップすることになる。

DRAMの容量世代と技術世代

[Q] DDR IIIはADTの広帯域規格「ADT H」と当初から統合が図られると聞いている。あなたは、実際にはADTにも関与していると聞いた。これはどうなるのか。

[ローデン氏] ADTとJEDECの関係をもう一度整理しよう。ADTは完全にJEDECの活動の内側で、非常にオープンに活動してきた。JEDECは常にシミュレーションを行なうアシスタントを必要としている。つまり、エンジニアリングリソースを将来に向けての活動に提供してくれる企業を必要としている。それがADTが行なっていたことだ。

 だからADT Hと呼ばれるような形で(メモリ技術の規格が)議論されたわけではない。業界内で産まれたアイデアは、将来の技術のために集められて、JEDECで議論される。業界の誰もが参加できるし、我々は第3世代のDDRに対して、すでに多くのアイデアを集めている。

[Q] そうすると、ADTでシミュレーションをしていた技術はDDR IIIに採用される技術の候補に入っていると考えていいのか。例えば、ADTで検討していたストローブレスアーキテクチャも入っているのか。

[ローデン氏] DDRにストローブ信号を入れた時から、ストローブ信号なしでもできる技術があると指摘する声もあった。そうしたテクノロジ自体は、確かにある。しかし、第3世代DDRに、どんなシグナリング技術を使うかは、今のところまったくわからない。


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(2002年2月22日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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