元麻布春男の週刊PCホットライン

DirectX 8.1に対応した「3DMark 2001 SE」を試す


●定番の3Dベンチマークソフト「3DMark 2001」

 MadOnionが開発/販売する「3DMark 2001」は、コンシューマPCの世界で最もポピュラーなベンチマークテストプログラムの1つだろう。3DMark 2001は、コンシューマ分野で大きなウェイトを占めるPCゲーム、特に3Dゲームでの性能を測るベンチマークテストだが、テスト結果の再現性の高さ、動作の安定性、新しいAPIへの素早い対応、といった点で高い評価を受けている。早い話、テストの度に極端に違うスコアが出てユーザーを悩ませたり、Revision Aの製品ではまともに動かなかったり、ということが極めて少ない。

 また、DirectXの最新版にいち早く対応してくれるため、テスト結果が時代遅れであることを心配する必要がない。どんなにしっかりしたベンチマークテストでも、3年前のAPIによるテストでは、現実のアプリケーション性能と合致しなくなる。厳密には、ベンチマークテストが採用するAPIの方が、実際のアプリケーションが採用するAPIより新しくても現実を反映しないわけだが、“将来を見越した性能”ということでむしろ好まれることが多い。これはベンチマークテストの結果が購入の際の参考にされることが多いこと、製品が購入後数年に渡って使われることを考えれば、当然と言えるだろう。

 そんな3DMark 2001が、「3DMark 2001 SE(Second Edition)」へとアップデートされた。アップデート方式は、フルパッケージ(約39.8MB)のみで、3DMark 2001に対する差分アップデート(アップデートパッチ)の提供はない。また、有償(39ドル95セント)である「3DMark 2001 Pro」オーナーの、「3DMark 2001 Pro SE」へのアップデートは無償。オーナーには、すでに3DMark 2001 Pro SEのリリースと、アップデート手順を告知した電子メールが届いているハズだ(ResultBrowserなど一部の機能を省略した無償版あり。もちろんベンチマークスコアそのものは同じ)。


●3DMark 2001 SEの変更点

 今回のアップデートが「3DMark 2002」ではなく、あくまでも「3DMark 2001 Second Edition」であるのは、アップデート内容が小幅にとどめられているからだ。3DMark 2001の総合成績である3Dmarksスコアの数字(画面1中央の「7378 3Dmarks」という数字)は、Game1:Car Chase、Game2:Dragothic、Game3:Lobby、Game4:Natureの4つのゲームテスト(実際のゲームシーンを模したテスト)のフレームレートを元に算出される(詳しくはヘルプ参照)が、これら4つのゲームテストの内容も、算出方式も、3DMark 2001 SEでは変更されていない(したがって、3DMark 2001と3DMark 2001 SEの3DMarks値は比較可能)。

画面1 画面2

 3DMark 2001 SEの最大の変更点であり、最大のセールスポイントは、DirectX 8.1に対応したということだが、上述した通り、この変更は3DMarksスコアの数字だけ見ていても全く反映されない。DirectX 8.1に対応したテストは、今バージョンから加わったAdvanced Pixel Shaderテスト(画面2)だけなのである。

 Advanced Pixel Shaderテストは、DirectX 8.1が備える4種類のPixel Shader(以下PSと略)中、新たに追加されたPS 1.2、PS 1.3、PS 1.4のうち、最も機能的に拡張された(DirectX 9に最も近い)PS 1.4を用いて画面2のようなシーンのレンダリングを行なうもの。PS 1.4の機能があれば、このようなシーンを1パスでレンダリングできる。

 ただし、実際に3DMark 2001 SEを実行してみればわかるが、PS 1.4に対応していないGeForce3でもAdvanced Pixel Shaderテストは実行され、ちゃんと描画もされる。これは、このテストがフォールバックオプションとして、PS 1.1での描画をサポートしているためで、そうでなければ、現状でAdvanced Pixel ShaderテストはRADEON 8500以外ではスキップされるテストになってしまうところだった。その代わり、PS 1.1によるシーンの描画には2パスを要するため、性能的に不利になる。ちなみにPS 1.1は、DirectX 8.0搭載のPS 1.0のバリデーションを実際のハードウェアの条件に合わせて緩和したもので、基本的にDirectX 8.0に対応したハードウェアであれば、ドライバの対応でPS 1.1対応とすることができる(DirectX 8.0対応ハードウェアであるGeForce3のドライバもPS 1.1対応になっている)。

画面3

 画面3は、RADEON 8500とGeForce3で実施した3DMark 2001 SEの結果(Windows Me、抜粋)だが、下から2番目のAdvanced Pixel Shaderテストの成績(Advaneced Pixel Shader Speed)が、RADEON 8500の75.6fpsに対し、GeForce3では46.5fpsと60%強にとどまっていることがわかる。

 画面3の時、両者の3DMarksスコアがそれぞれ8,795と7,339であり、GeForce3はおおむねRADEON 8500の83%強に達していることを考えれば、23%あまりの格差がPS 1.4とPS 1.1の差、と間違って捉えてしまうかもしれない。また、これは上でPS 1.4が1パス、PS 1.1が2パスと書いたことと辻褄が合わないようにも思うかもしれない。だがMadOnionによると、このAdvanced Pixel Shaderテストは、PS 1.4とPS 1.1の両方で同じ視覚効果を表現することを最重要視しているため、PS 1.4を用いた場合とPS 1.1を用いた場合で、内部処理が異なっており、異なるバージョンのPS間で直接フレームレートを比べるのには適していないという。性能的にも最適化されておらず、PS 1.1、PS 1.4それぞれ最適化することで、さらにそれぞれの性能を上げることができる、ということである。

画面4

 もう1つ、直接テストに関係しないが、3DMark 2001 SEでの改良点を記しておこう。それは、付属のSystem Infoユーティリティが、AGPの設定状態を表示可能になったことだ。

 画面4はRADEON 8500をIntel 850ベースのマザーボードにインストールした状態のものだが、AGP4xモードであること、AGPアパチャーサイズが256MBに設定されていること(BIOSセットアップによる)、Side Band Addressing(SBA)とFast Writeの両オプションがサポートされしかも有効になっていること、といった状況が見てとれる(SBAとFast Writeを無条件で有効にするあたりが、ATIのビデオカードがサードパーティ製チップセットとの間で相性問題を生じやすい、と言われる理由の1つかもしれない)。

 また、細かな点だが、3DMark 2001のSystem InfoではDirectX 8.0とDirectX 8.1を正しく識別できなかったが、SEではちゃんと識別するようになっている。


●OSによって安定動作しない?

 さて、ここまではSEになって改善された点について触れてきたが、最後に問題点も挙げておこう。それは、どうも日本語版のWindows XPで動作が安定しない、ということだ。とりあえず筆者はGeForce3とRADEON 8500の2つのビデオチップについて、Windows Me/2000/XPの3つのOSを組み合わせて実行してみたが、Windows XPではどちらのハードウェアも、スコアを得ることができなかった(GeForce3は3DMark 2001 SEの起動自体は可能だが、テストを始めるとすぐにデスクトップに落ちてしまう。RADEON 8500は3DMark 2001 SEの起動すらできない)。Windows 2000もスコアを得ることができたのはGeForce3だけで、RADEON 8500は3DMark 2001 SEをまともに起動することすらできていない(どうやらMFCのDLLがエラーになっているようだ)。

 結局、両方が安定して動作したのは、Windows Meだけという有様である。3DMark 2001 Second Editionのフィーチャーの1つが、Windows XPでの動作検証であることを考えると、なんとも不思議なのだが、日本語版OSに固有の問題なのだろうか? これだけが気になるところだ。

□MadOnionのホームページ
http://www.madonion.com/
□3DMark 2001のホームページ
http://www.madonion.com/products/3dmark2001/
□関連記事
【2月13日】定番3DベンチマークソフトのDirectX 8.1対応版「3DMark2001」SEがリリース(窓の杜)
http://www.forest.impress.co.jp/article/2002/02/13/3dmark2001se.html

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(2002年2月20日)

[Text by 元麻布春男]


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