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まだまだ続くSocket 370の進化を探る
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Intelは、米国時間1月3日に、同社のバリューPC向けCPUであるCeleronの最高クロック版となるCeleron 1.3GHzを追加した。Celeron 1.3GHzはTualatinの開発コードネームで知られる0.13μmの製造プロセスルールを採用した製品で、256KBのL2キャッシュを搭載している点が、特にオフィスアプリケーションなどで大きなアドバンテージになっている。
今回は、このCeleron 1.3GHzを取り上げて、バリューPC向けCPUの性能などを探っていこう。
●100MHzのシステムバス、256KBのL2キャッシュ、コア電圧は若干上がって1.5V
1.2GHz版と比べてコア電圧が上昇したいがいの大きな違いはない |
今回発表されたCeleron 1.3GHzは、以前の“新世代バリューPC向けCPU対決 ~Celeron 1.2GHz vs Duron 1.1GHz”( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011012/hotrev131.htm )でとりあげたCeleron 1.2GHzと、基本的な違いはない。
CPUコアは0.13μmプロセスのTualatinコアで、L2キャッシュは1.1GHz、1GHzまでの128KBから比べて倍になった256KBに増えており、L2キャッシュの効果が出やすいオフィスアプリケーションなどの性能は、従来の128KB版に比べて期待することができる(なお、すでに秋葉原ではTualatinコアの1.0A、1.1A GHzが投入されており、こちらとの差はクロックだけとなる)。システムバスも100MHzと変更はなく、従来のCeleron 1.2GHzとの性能差は純粋にクロックがあがった分だけと考えていいだろう。
ただし、コア電圧は若干上がっており、1.2GHzが1.475Vであったのに対して、0.025Vあがり1.5Vとなっている。これにより、発熱量が増えるため熱設計が厳しくなることが予想されるが、リテールパッケージにバンドルされているCPUクーラーは、1.2GHzと変更がないため、さほど大きな影響があるわけではないと考えていいだろう。
●オフィスアプリケーションではDuron 1.2GHzを大きくリード
今回もCeleron 1.3GHzの性能を見るために、いくつかのベンチマークを行なった。比較対象として用意したのは、Celeron 1.2GHz、Celeron 1.1GHzと1GHz(Coppermineコア)、Duron 1.2GHz、1.1GHz、1GHz、さらにはPentium 4 1.4GHzと1.5GHzを用意した。Pentium 4はメモリの種別も異なっており、直接の比較対象ではなく、アーキテクチャの特徴を見るための素材ととらえてほしい。テスト環境は表1の通りで、すべてのベンチマーク結果はこちらだ。
【表1:テスト環境】
CPU | Pentium 4 | Duron | Celeron |
---|---|---|---|
チップセット | Intel 850 | VIA Apollo KT266A | Intel 815E |
マザーボード | Intel D850MDL | EPoX EP-8KHA+ | Intel D815EEA2 |
BIOSバージョン | 10A.86A.0011.P05 | 1b02(11/02/01) | 20A.86A.0028.P15 |
チップセットドライバ | 3.10.1008(2001/10/8) | 4in1 v4.35 | 3.10.1008(2001/10/8) |
メモリ | Direct RDRAM(PC800) | DDR SDRAM(PC2100,CL=2.5) | PC133 SDRAM(CL=3) |
容量 | 256MB | ||
ビデオチップ | NVIDIA GeForce3(64MB、DDR SDRAM) | ||
ビデオドライバ | NVIDIA Detonator XP(v23.11) | ||
ハードディスク | IBM DTLA-307030 | ||
フォーマット | NTFS | ||
OS | Windows XP Home Edition |
グラフ1 | グラフ2 | グラフ3 |
グラフ4 | グラフ5 |
Tualatinコア(L2キャッシュ256KB)の1.3GHzと1.2GHz、Coppermineコア(L2キャッシュ128KB)の1.1GHzと1GHzでは大きな差がついており、こうしたタイプのアプリケーションではL2キャッシュの容量が大きければ大きいほど性能が高まっていることがわかる。Duronとの比較でもDuron 1.1GHz vs Celeron 1.1GHzではDuronが上回っているのに、逆に1.2GHz同士の比較ではCeleronがDuronを上回っている。DuronはL2キャッシュが64KBと、TualatinベースCeleronの1/4でしなく、ここで差がついていると考えていいだろう。
インターネットコンテンツ作成のアプリケーション(Adobe PhotoshopやPremiereなど)を利用する際の性能を指し示すのがSYSmark2001/Internet Contents Creation(グラフ2)だ。ただ、Duronのすべてのクロック、Celeron 1.1GHz、1GHzでは何度やってもベンチマークが完走しなかったため、スコアは掲載していない。見てわかるように、Office Productivityでは振るわなかったPentium 4だが、このInternet Contents Creationでは逆にPentium 4が上回っている。
グラフ3の3DMark2001、グラフ4のQuake III Arenaという2つの3Dアプリケーションだが、いずれもPentium 4>Duron>Celeronという順になった。また同じくVideo2000のMPEG-2エンコーダテスト(グラフ5)でも、同じような傾向が見られた。これは、システムバスとメモリバスの帯域幅が影響していると考えることができる。
PC133 SDRAMを採用しているCeleronでは、システムバスの帯域幅は0.8GB/secで、メインメモリの帯域幅は1GB/secとなっている。これに対してDuronでは、システムバスの帯域幅は1.6GB/secで、メインメモリの帯域幅は2.1GB/secとなっており、こうした大量のデータを転送する3DやMPEG-2エンコーダのテストでは、システムバスとメモリの帯域幅が広いDuronが有利なのだ。オフィスアプリケーション以外の、3Dやビデオ編集なども視野に入れている場合には、高帯域幅のメモリが選択でき、さらには高帯域幅のシステムバスをサポートするDuronに一日の長があると考えることが可能だろう。
●オフィスアプリケーションの性能を重視するならCeleron 1.3GHz
グラフ6 |
CPU+マザーボード+メモリをあわせた価格で、SYSmark2001/Office Productivityのスコアを割り、10,000をかけることにより、“1万円あたりのSYSMark2001/Office Productivity”を出したグラフがグラフ6だ。コストパフォーマンスではDuronやCeleron 1.2GHzに劣ることがわかる。そうした意味では、コストパフォーマンスを追求するというのであれば、Celeron 1.2GHzやDuron 1.2GHzのほうが魅力的な選択肢であることがわかる。また、同時に3Dやビデオ編集などでのパフォーマンスも追求したいというのであればDuronを選択したほうがよいのも、グラフ3、4、5の結果からわかる。
だが、オフィスアプリケーションの絶対スコアでは、Celeron 1.3GHzは飛び抜けたものを持っており、そうしたアプリケーションにおける性能を重視する、あるいはPGA370(いわゆるSocket 370)プラットフォームという枯れたプラットフォームを重視するというのであればよい選択肢となるだろう。
Intelは今後第2四半期中に、1.4GHz、第3四半期に1.5GHzとTualatinベースのCeleronをリリースし、第3四半期中にWillametteコアベースのCeleronへと移行することになる。そうした意味では、最高でも1.5GHzまではアップグレードすることが可能なわけで、今後のアップグレードパスも全くないわけではないことも付け加えておこう。
□AKIBA PC Hotline!関連記事
【1月12日】Tualatinコアの新型Celeronが続々と登場、1A~1.3GHzまで
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20020112/etc_newceleron.html
(2002年1月18日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]