レビュー
RAID対応外付けUSB HDD WD「My Book Duo」
~バックアップにもワークエリアにも使えるハイエンド製品
(2014/8/26 06:00)
WDの外付けUSB HDDは、据え置き型やポータブル型、性能などでいつくかのブランドに分かれる。今回試用する「My Book Duo」は、据え置き型で、HDDを2台内蔵し、RAIDにも対応するハイエンドモデルとなる。
USB HDDの用途は人それぞれだと思うが、その多くはPCなどのデータのバックアップだろう。特にノートPCは、持ち運ぶことも多いため、本体の落下や紛失などで、中のデータも失われてしまう可能性が高いため、普段からバックアップを取ることを心がけたい。NASもバックアップには好適だが、利用するPCの台数が少ないなら、安価なUSB HDDの方がコストパフォーマンスの面では良いだろう。
また、転送速度が高速な製品であれば、ワークエリアとして使うこともできる。HDDはランダムアクセスには弱いが、例えば高画素の写真や動画の編集などであれば、発生するのは基本的にシーケンシャルアクセスだ。HDDも、シーケンシャルなら150MB/sec程度出るものもあるので、ストレスを感じることなく作業できるだろう。
My Book Duoは、そのいずれの用途にも対応できる製品だ。標準で2/3/4/6TBのHDDを2台内蔵し、RAID 0/RAID 1/独立したドライブの3つからドライブ構成を選択できるので、大事なデータのバックアップならRAID 1(ミラーリング)、速度重視ならRAID 0(ストライピング)というように選べるからだ。価格は2TB×2が37,800円、3TB×2が45,800円、4TB×2が60,800円、6TB×2が85,800円。
シーケンシャルアクセスは300MB/sec超
今回ウエスタンデジタルジャパンから6TB×2のモデルを借用し、評価した。
まず、性能を見てみよう。採用されているHDDは、先だって発表されたばかりの同社NAS向けとなる「WD Red」シリーズの6TB。本製品はNASではないが、製品の位置付けから、このドライブを採用したのだろう。
セットアップは簡単で、PCのUSB 3.0ポートに繋ぎ、HDDの中に保存されているセットアッププログラムを実行するだけだ。これで、ドライバやいくつかのソフトウェアがインストールされるので、「WD Drive Utilities」を実行すると、ドライブの構成を変更できる。出荷時はRAID 0になっているので、これがもっとも高速だ。
この状態でベンチマークを実施した。利用したのは、CrystalDiskMark 3.0.3 x64で、PCはCore i7-4500U、メモリ4GB、Windows 8.1 Pro Update(64bit)搭載のNECパーソナルコンピュータ製ノートPC「LaVie GタイプZ」を使った。
結果としては、シーケンシャルリードが329.9MB/sec、シーケンシャルライトが305.8MB/secといずれも300MB/secを超える速度が出た。ハイエンドSSDには及ばないが、これだけの速度が出ていれば、GBクラスのデータでも、ストレスなく扱うことができる。また、NASと比較すると、Gigabit Ethernet対応モデルでも、理論上の最大性能は1Gbps(約125MB/sec)なので、スタンドアロンで使い、速度を重視するなら、NASよりもMy Book Duoの方がお勧めできる。
次に、バックアップ用途の使い勝手を見てみよう。バックアップ用途でもRAID 0のまま運用しても構わないが、この場合、どちらかのドライブが故障するとデータが失われてしまうので、安全重視ならRAID 1にしたい。WD Drive UtilitiesのRAID管理で、構成を「ミラー」とすれば、RAID 1になる。データがない状態では変更にかかる時間は1分にも満たない。ただし、構成を変更するとデータは全て削除されるので、すでに保存したデータがある場合は、いったん待避させる。
この状態での性能は、リードが167.9MB/sec、ライトが166.7MB/secと、RAID 0のちょうど半分となる。また、データは両方のドライブに同じものが保存されるので、容量は1台分となる。それでも、2~6TBの容量があるので、一般的PCなら数台~数十台分のバックアップができる。後述する、バックアップの設定で、ファイルの履歴を複数保存する場合でも、余裕を持って対応できるだろう。
バックアップに当たっては2つのソフトが用意されている。1つは、WD標準の「Smart Ware Pro」だ。本ソフトを使うと、データの種類別か、ファイル/フォルダ単位でのバックアップが取れる。標準では、該当ファイルの変更を自動的に検知して、都度バックアップする「連続バックアップ」と、日時を指定してバックアップする「定期バックアップ」を選べる。また、ファイルの履歴を保存することもできるので、複数の履歴を残しておけば、万が一、誤ってファイルを上書きしても、その前のバージョンのファイルを復元できる。ちなみに、本ソフトはDropboxと連携させ、クラウドにバックアップすることもできる。
また、別途ダウンロードが必要となるが、無償でAcronisの「True Image WD Edition」を利用することもできる。こちらでは、ディスクのイメージをバックアップできるので、万が一システムが起動できなくなった場合などに、ドライブ全体を元の状態に戻すことができる。
ハードウェア暗号化チップによりシステムに負荷をかけず暗号化
外付けストレージを仕事で使う場合は、セキュリティが気になるが、本製品にはAES-256bit準拠のハードウェア暗号化チップが搭載されている。付属の「WD Security」ソフトを起動すると、パスワードロックをかけられるようになり、データは暗号化される。
WindowsもProエディションにはBitLockerという暗号化機能があるが、本製品は暗号化をハードウェアで行なえるため、システムに負荷をかけずに暗号化できるという利点がある。
実際、RAID 0/1両方で、暗号化をオンにした場合の性能も計測してみたところ、暗号化を使わない場合と同じ性能を確認できた。BitLockerもさほど大きな負荷はかからないが、Proエディションでない場合はそもそも使えないので、個人でもセキュリティが気になる場合は、My Book Duoの暗号化機能をオンにしよう。
なお、暗号化をオンにした場合、「ユーザーの自動ロック解除を有効にする」をオンにしておけば、同じユーザーなら利用のたびにパスワードを入れる必要がないので、煩わしさが減る。別のPCに繋ぐ場合は、HDDと別のドライブとして認識される仮想光学ドライブにパスワードロック解除ソフトが入っているので、パスワードを知っていれば、他のPCでも問題なく利用できる。ただし、RAIDを使わない「独立したドライブ」モードでは暗号化は使えない。
もう1つセキュリティに関して気をつけなければならないのが、ドライブ/ディスクの処分時だ。製品自体を廃棄したり、中古として売る場合など、ややもすると、未処理のまま処分してしまうことがある。暗号化をかけておけば、人手に渡った際にデータが読み取られる可能性は低くなるが、それでも全くのゼロではない。個人情報や機密情報が含まれるなら(含まれない方が少ないと思うが)、処分の際は消去を実行し、データ漏洩を未然に防ごう。
My Book Duoには2種類のデータ消去方法がある。1つは、WD Drive Utilitiesに備わる「ドライブの消去」。こちらは、詳細な情報が公開されていないのだが、少なくともローレベルフォーマットや、全域へのゼロ書き込みなどを行なうものではなく、簡易的なもののようだ。もう1つは、True Image WD Editionの「DriveCleanser」を利用するもので、こちらは「U.S. Standard, DoD 5220.22-M」など堅牢な消去を実施できるので、確実を期すならこちらを利用したい。
このほかハードウェア面の特徴として、本製品は、USB外付けHDDとしては類を見ないくらい、内部へのアクセスがしやすい。NAS的な用途を想定しているからだろう。本体上部のボタンを押すと、蓋が開くので、内部にもある蓋の蝶ネジを手で回すと、ドライブを挿抜できる。最終的にはドライブのガイド用のネジはドライバーで着脱する必要があるが、RAID 1で運用していて、片方のドライブに異常が出た時などは、迅速に作業できる。また、USB 3.0×2を備え、ここに別のUSB外付けHDDを繋ぐこともできる。
NASより安価な大容量ストレージ
以上のように、本製品は本格的なNASと比べて安価ながらも、性能はNASより高く、セキュリティ性も備えたUSBストレージだ。性質上、複数のマシンで同時利用はできないが、RAID 0時のシーケンシャルアクセス性能はメインストリームSSD並なので、バックアップや大きなデータのやりとりという用途では、NASやSSDよりも威力を発揮するだろう。