レビュー
Windowsからのネットワークアクセスも可能なバッファローのWi-Fi接続HDDを試す
(2014/8/5 06:00)
株式会社バッファローが発売した「HDW-PDU3」シリーズは、無線LAN接続が可能なポータブルHDDだ。バッテリ駆動も可能で、スマートフォンやタブレットなどの外部ストレージとして利用できるほか、DTCP-IPに対応することでTVやレコーダで録画した番組を出先で視聴することもできる点などをアピールする。
スマートフォンやタブレットのストレージ容量を増強させる目的で、無線LANに接続できるストレージ関連製品は数多く登場している。しかし、HDDを利用したポータブルな製品は多くなく、大容量のストレージを持ち歩けるメリットがある。その意味では、DTCP-IP対応と大容量という2つのポイントは、よい相乗効果を持っている。
また、これだけの容量のポータブルHDDとなれば、モバイルデバイスよりも大きなデータを扱うことが多いPCの外部ストレージとしても兼用することを検討できる。製品ページでは大きく謳われていないが、本製品にはSambaが搭載されており、PCからネットワーク上の共有フォルダへアクセスする方法で利用することもできる。
今回、バッファローより本製品を借用できたので、このあたりの動きをチェックしてみたい。
バッテリを搭載するためサイズ/重量は大きめ
それでは、まずは本体の特徴などを見ておきたい。本製品は3.7V/3,020mAhのバッテリを内蔵することもあり、84×145×18mm(幅×奥行き×高さ)と、2.5インチHDDを利用するポータブルHDDとしては大きめ。重量も約265gあり、ズシリとくる。
外装は濃いグレーとシルバーのツートンカラーでデザインされており、濃いグレーの部分はラバー状の素材、シルバーの部分はプラスチックのような樹脂素材となっている。
インターフェイスは、短辺側にUSB 3.0とバッテリ充電用端子、長辺側に給電用USBポートを備える。USB 3.0接続時はバスパワー駆動させて利用することができるが、こちらのインターフェイスからの給電では内蔵バッテリへは充電されない。内蔵バッテリを充電するためには、付属の充電用ケーブルを利用してバッテリ充電用端子へ給電する必要がある。充電用ケーブルは、ミニプラグ-USB Aオス端子となっており、付属のUSB ACアダプタを始め、USBバスパワーによる充電が可能となっている。
長辺側のUSB Aメス端子は、内蔵バッテリをモバイルバッテリとして活用するための給電用ポートとなる。この機能は「おたすけ給電」と呼ばれ、任意のケーブルを介してスマートフォンなどを接続することで給電が可能だ。出力は5V/1A。ただし、無線LANで本製品へアクセスしている時には給電されないので、出先での利用シーンを考えると、事実上、本製品を全く使っていない時に活用する機能と言える。
ちなみに、借用品なので分解などは行なっていないが、内部は筐体とHDDを板バネ状の接続端子で接続した上に、HDDにゴム足も付けることで、宙に浮いたような状態になっていると言う。これにより、耐震性を高めている。
ネットワークドライブの割り当てなどが可能
では実際に、本製品をPCから利用してみたい。ここではWindows PCからの接続を試すが、この場合、1つはUSB 3.0での有線接続、もう1つはWi-Fiでの無線接続が可能だ。
有線接続の場合は、難しいことを考える必要はなく、単にUSB 3.0ケーブルを使って接続するだけだ。
無線接続の場合は、本製品の電源を入れた段階で、先述したラベルや背面に書かれたSSIDを持つアクセスポイントが起動するので、そこへPCを接続することになる。Windows上からはエクスプローラーなどから本製品へDLNAでアクセスが可能になるほか、Sambaも内蔵しているので、IPアドレスを直接入力することでネットワーク上のドライブとしてアクセスすることもできる。特筆したいのは後者だ。使い勝手は一般的なNASなどと変わらず、もちろんネットワークドライブの割り当てなどもできる。
無線LAN接続ストレージはスマートフォンなど専用アプリを利用することを前提として、PCからは何もできないかWebブラウザでの参照しかできないといった製品も少なくない。本製品はPCで、しかもエクスプローラーからアクセスしやすい作りになっており、PCのポータブル外部ストレージを無線で利用することも現実的だ。
もう1つ実用的な部分を挙げると、インターネットへのブリッジ接続に対応している点が挙げられる。PCやタブレットではポータブルWi-Fiルーターやスマートフォンのテザリングを利用して、Wi-Fi接続のみでインターネットへ接続している人も多いだろう。当然ながら、PCやタブレットをポータブルHDD側へ無線LAN接続すればインターネット接続は切断されるし、ルーター側へ接続すればポータブルHDDへ接続できなくなる。
本製品へ無線LANルーターへの接続情報を登録してブリッジ機能を利用すれば、HDDへのアクセスは維持したまま、無線LANルーター(からその先のインターネット)へ接続できる。
設定はWebベースのものが用意されており、Webブラウザから本製品のIPアドレスへHTTP接続することで表示できる。このWebベースのUIは、後述するスマートフォンのアプリとほぼ同一のもので、写真や動画などのビューワ機能を備えている。写真の日付別表示なども可能だ。設定も無線LANの設定含め一通り行なえるようになっており、PCのみで完結できる。
スマートフォンアプリからもフォルダ構造で参照可能
PC Watch的な視点では、ここまでに触れたようにPCからの使い勝手が気になるポイントとなるが、昨今の無線LAN対応ストレージの隆盛にはスマートフォンやタブレットの普及という背景があり、その使い勝手も重視されている本製品も専用アプリをiOS、Android向けに提供している。
ここではAndroid端末で試用するが、iOSも基本的には同じはずだ。アクセスするためのアプリとして「MiniStation Air2」を提供するほか、QRコードを読み取って無線LAN設定を行なうための「QRsetup」が用意されている。後者は必ずしも必要なアプリではないが、QRコードによる無線LAN設定は非常にラクなので使用をお勧めする。
MiniStation Air2では、ローカル(モバイルデバイス内)のデータと、HDW-PDU3内のデータを切り替えて参照できる。「写真」、「ミュージック」、「ビデオ」の項を選択すると、それぞれに合った分類でデバイス内の全ファイルを自動的に整理し、表示する。例えば、写真であれば日付別、ミュージックならばアーティスト別やアルバム別に切り替えて表示する。
さらにユニークなのは、スマートフォン/タブレットなどを主に置く製品では、難しい印象を回避するためもあって、表示するファイルの種類を限定することもある。しかし本製品は、デバイス内の全ファイルを、フォルダ構造そのままで表示することができるのだ。これが便利なのは、拡張子に縛られずファイルを扱えることで、Android/iOSで利用しない“とりあえず(忘れないように)ダウンロードしておいたファイル”を無線LANで本製品へ転送し、後でPCで利用することも現実的だ。また、500GB/1TBといった大容量のストレージを管理/参照する上でも、フォルダ別のアクセスは必要性が高いと思われる。
このほか、先に示したWebベースの設定画面と同様、各種の設定もスマートフォンアプリから行なえる。さらにスマートフォン/タブレットに新しい写真や動画が記録されたら、自動的に無線LAN HDDへ転送する「自動アップロード」機能も用意されている。スマートフォンやタブレットで写真だけでなく、動画を撮影する人も増えており、大容量HDDへの自動転送に対するニーズもありそうだ。
本格的な外部ストレージとして使えるポータブルWi-Fiストレージ
以上、HDW-PDU3を使用感をお伝えしたが、スマートフォン/タブレットだけでなく、PCからの使い勝手が非常に良い。特にネットワーク上の共有ドライブ/フォルダとしてアクセスするという使い方が、出荷状態で設定をなんら加えることなくできることがありがたい。
ちなみに、ケーブルを接続せずに利用する(やや雑な使い方もしてしまいそうな)ストレージとして、駆動部品があるHDDというパーツを用いることに抵抗を覚えるかもしれない。かく言う筆者もそう思う人間の1人で、SSD内蔵モデルがあるとうれしく思う。
もちろん本製品の内蔵ストレージにHDDを採用することで500GBや1TBという大容量を2万円台から購入できるというメリットを否定するつもりはないし、内蔵ストレージが低容量のSSDなのであればWi-Fi接続できるSDカードリーダなどを使えば良いという発想もある。だが、本製品が持つSambaなどの機能については他製品では得がたい部分があり、低容量であってもSSDモデルを望みたくなる。
ただ、本製品はDTCP-IPに対応することで、TV録画したデータを持ち運ぶという機能を提供していることも大きな特徴だ。こうした動画を中心とした使い方ならば、容量単価に優れるHDDにメリットがある。この機能は無線LAN接続の“HDD”を持ち運ぶことの動機を作り出しているとも言えるかもしれない。
玉に瑕なのはサイズや重量が大きめな点だが、むしろ、本格派の外付けストレージとしても使える機能を持った無線LAN対応ポータブルHDDとしてのメリットは得がたく、「無線LAN接続&バッテリ駆動が可能なポータブルNAS」と表現してもよいほど実用性が高い製品だ。