レビュー

Skylakeアーキテクチャを採用した「Core i7-6700K」レビュー

Core i7-6700K

 Intelは日本時間の8月5日、コードネーム「Skylake-S」の名で開発されてきたデスクトップ版の第6世代Coreプロセッサと、同CPUに対応する新ソケットのLGA1151、およびIntel Z170チップセットを採用する新プラットフォームを発表した。

 Skylake-Sは「Core i7-6700K」と「Core i5-6600K」の2製品が登場したが、今回は上位モデル「Core i7-6700K」と、MSI製のIntel Z170チップセット採用マザーボード「Z170A GAMING M7」を借用する機会が得られたので、ベンチマークテストで新たなメインストリーム向け製品の実力をチェックしていく。

定格4GHz動作のCore i7-6700K

 Skylake-Sこと第6世代Coreプロセッサは、14nmプロセスで製造されたCPU。デスクトップ向けには、新CPUソケットのLGA1151を採用する新プラットフォームで提供され、HaswellからBroadwellまで続いたLGA1150との互換性はなくなった。

 Skylake-SではCPUに統合されているメモリコントローラが、DDR4-2133とDDR3L-1600の2規格に対応、それぞれデュアルチャンネルでの動作が可能。ただ、これはユーザーが任意にメモリの規格が選択できるというわけではなく、利用可能なメモリについては、マザーボードが実装するメモリスロットの仕様次第となる。

 Core i7-6700Kは、Hyper-Threadingに対応した4つのCPUコアを持つ4コア8スレッドCPU。CPUコアの動作クロックは定格4GHz、Turbo Boost時最大4.2GHz。8MBのL3キャッシュ、16レーンのPCI Express 3.0コントローラ、DirectX 12に対応するGPU「Intel HD Graphics 530」などを備える。TDPは91Wで、製品パッケージには純正CPUクーラーが付属しない。

Core i7-6700KのCPU-Z実行画面
【表1】Core i7-6700Kの主な仕様

Core i7-6700KCore i7-4790K
製造プロセス14nm22nm
開発コードネームSkylake-SDevil's Canyon
コア数44
スレッド数88
CPUクロック(定格時)4.0GHz4.0GHz
CPUクロック(Turbo Boost時/最大)4.2GHz4.4GHz
L3キャッシュ8MB8MB
対応メモリDDR4-2133/DDR3L-1600DDR3-1333/1600
内蔵GPUコアIntel HD Graphics 530Intel HD Graphics 4600
GPUコアクロック(最大)1,150MHz1,250MHz
TDP91W88W
倍率アンロック
対応ソケットLGA1151LGA1150

 型番にKのサフィックスを与えられたCore i7-6700Kは、CPU倍率を上方変更してオーバークロック可能なアンロックモデルだ。Skylake-S世代のKモデルでは、倍率だけでなくベースクロックを1MHz刻みでオーバークロックすることが可能となっており、ここ数世代のCPUよりも細やかなチューニングが可能となった。なお、オーバークロック機能はIntel Z170チップセットとの組み合わせでのみ有効となる。

Core i7-6700Kでは、1MHz刻みでのベースクロック変更が可能となるほか、メモリ関連の設定もより細かく設定可能となる

LGA1151対応の新チップセット「Intel Z170」

 今回借用したMSI製マザーボードZ170A GAMING M7は、Intel 100 シリーズチップセットのオーバークロック対応モデル「Intel Z170」を搭載するATXマザーボードだ。4基のメモリスロットはDDR4に対応している。

MSI Z170A GAMING M7
DDR4メモリ対応のスロットを4基搭載

 Intel Z170チップセットでは、6基のSATA 6Gbpsポート、最大10基のUSB 3.0ポートをサポートしているほか、最大20レーンのPCI Express 3.0を提供する。このうち、チップセットが提供するPCI Expressバスに関しては、Intel Z97 Express(最大8レーン、PCI Express 2.0)から大幅に増強された。

 MSI Z170A GAMING M7では、この増強されたPCI Express 3.0レーンを活かして、接続にPCI Expressを利用する新世代のストレージ用インターフェイスであるM.2とSATA Expressを各2基ずつ実装している。

 新ソケットのLGA1151については、前述の通りHaswell/Broadwell世代のLGA1150との互換性はないが、CPUクーラーを固定するための穴の位置はLGA1150と同じなので、基本的にはLGA1150対応のCPUクーラーを流用できる。

Intel Z170チップセットのブロックダイアグラム
2基のSATA Express。4基のSATA 6Gbpsと物理的にポートを共有する形で実装している
32Gbps対応のM.2スロットを2基装備
LGA1151のCPUソケット周辺。CPUクーラーはLGA1150対応のものを取り付け可能。

ハイエンドGPUを搭載してのベンチマークテスト結果

 それでは、ベンチマークテストの結果紹介に移りたい。

 今回は、Core i7-6700KとZ170A GAMING M7の検証を行なうにあたり、センチュリーマイクロよりSkylake-Sで動作確認済みのDDR4-2133メモリと、NVIDIAよりGM200コア採用のハイエンドGPU「GeForce GTX 980 Ti」を借用した。

センチュリーマイクロのDDR4-2133メモリ。今回は1枚8GBのメモリを2枚使用した
今回借用したセンチュリーマイクロのDDR4メモリは、チップの配置や基板設計を改善して転送効率を高めたもの。一見して、従来のDDR4メモリとチップの配置が異なることが見て取れる
NVIDIAより借用したGeForce GTX 980 Tiのリファレンスボード

 また、今回はDevil's Canyon(Haswell)の最上位CPU「Core i7-4790K」と、2011年発売のSandy Bridge「Core i7-2600K」を比較用の製品として用意した。

 これまで最速の4コア8スレッドCPUであったCore i7-4790Kとの性能差と、大ヒットCPUであるCore i7-2600Kの買い替えモデルとしての実力。2つの観点でCore i7-6700Kを測るものさしにして貰えれば幸いだ。

【表2】テスト環境
CPUCore i7-6700KCore i7-4790KCore i7-2600K
マザーボードZ170A GAMING M7ASUS MAXIMUS VII GENEASUS MAXIMUS V GENE
チップセットIntel Z170Intel Z97Intel Z77
メモリDDR4-2133 8GB×2 (15-15-15、1.20V)DDR3-1600 8GB×2 (9-9-9-24、1.50V)DDR3-1333 8GB×2 (9-9-9-24、1.50V)
ストレージIntel SSD 510 シリーズ 120GB
ビデオカードNVIDIA GeForce GTX 980 Ti
グラフィックスドライバGeForce Driver 353.62
電源Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
OSWindows 8.1 Pro Update 64bit

 まずはCPU系ベンチマークテストの結果から確認していく。実施したベンチマークテストは、SiSoftware Sandra 2015 21.42(グラフ1~3、7~10)、CINEBENCH R15(グラフ4)、x264 FHD Benchmark 1.01(グラフ5)、Super PI(グラフ6)、PCMark 8(グラフ11)、PCMark 7(グラフ12)。

 CPUの演算性能を測定するSandra 2015「Processor Arithmetic」では、Core i7-6700Kが整数演算(Dhrystone Integer)でCore i7-4790Kを上回ったが、浮動小数点演算(Whetstone)では逆に3%程の差を付けられている。

 一方、拡張命令セットを利用する「Processor Multi-Media」では、僅かに逆転された「Multi-Media Quad-Int」を除き、整数演算(Integer)で25~30%、浮動小数点演算(Float)で11~20%の差を付けてCore i7-6700KがCore i7-4790Kに勝利した。

【グラフ1】Sandra 2015 21.42(Processor Arithmetic)
【グラフ2】Sandra 2015 21.42(Processor Multi-Media)
【グラフ3】Sandra 2015 21.42(Cryptography)

 3DCGのレンダリング性能を測るCINEBENCH R15では、1~2%と僅差ながらもCore i7-6700KがCore i7-4790Kを上回った。

 この時のCPUクロックをモニタリングしたところ、全コアを利用するテストにおいて、Core i7-4790Kが常時4.2GHzで動作していたのに対し、Core i7-6700Kは、ほぼ4.0GHzで動作していた。ベンチマーク中の動作クロックに5%の差があることを考慮すれば、Skylake-Sのクロックあたりの処理能力の高さが伺える。

 AVXを利用するx264 FHD Benchmark 1.01では、約8%の差を付けてCore i7-4790Kを上回ったCore i7-6700Kだが、最新の拡張命令セットを用いないSuper PIでは、逆に3~6%の遅れをとった。

【グラフ4】CINEBENCH R15
【グラフ5】x264 FHD Benchmark 1.01
【グラフ6】Super PI

 メモリの帯域幅を測定するSandra 2015の「Memory Bandwidth」では、DDR4-2133メモリに対応するCore i7-6700Kが26GB/sec超を記録し、DDR3-1600メモリ対応のCore i7-4790Kよりも6GB/secほど広いメモリ帯域を実現している。

 CPUが備えるキャッシュの帯域幅を測る「Cache Bandwidth」では、CPUクロックで劣るCore i7-6700KがL2キャッシュ~L3キャッシュの領域である256KB~8MBの範囲において、Core i7-4790Kより30~40%ほど広い帯域幅を記録した。メモリとキャッシュの帯域幅向上が、Core i7-6700Kの演算性能を高めているものと考えられる。

【グラフ7】Sandra 2015 21.42(Memory Bandwidth)
【グラフ8】Sandra 2015 21.42(Cache Bandwidth)
【グラフ9】Sandra 2015 21.42(Cache/Memory Latency - Clock)
【グラフ10】Sandra 2015 21.42(Cache/Memory Latency - nsec)

 PCMark 8では、「Work」で約3%ほどCore i7-4790Kを上回ったCore i7-6700Kだが、「Creative」と「Home」では若干ながらCore i7-4790Kの後塵を拝している。PCMark 7についても、「Computation」では約8%と比較的大きな差が付いているが、そのほかのテストは1~3%の差で優劣が分かれており、両CPUの間にそれほど大きな差はついていない。

【グラフ11】PCMark 8
【グラフ12】PCMark 7

 続いて、3D系のベンチマークテストの結果を紹介する。実行したベンチマークテストは、3DMark(グラフ13~16)、3DMark 11(グラフ17)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ18)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ19)、PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0(グラフ20)。

 3DMarkでは、Fire Strike、Sky Diver、Cloud Gateの3テストの総合スコアにおいて、Core i7-6700KとCore i7-4790Kの差は1%前後とほぼ互角と言っていい結果となった。3DMark 11についてもCore i7-4790Kの後塵を拝したものの、その差は3%未満に留まっており、それほど大きな不利はないと言える。

 3DMarkで最も負荷の軽いIce Storm Extremeについては、Graphics Scoreで10万ほどの大差が付いており、総合スコアでも12%の差が付いた。最も、ベンチマーク中は1,200~2,000fps程度で描画されているテストなので、この程度の差が付いているからと言って、ゲーム体験に差が生じるという訳ではない。

【グラフ13】3DMark - Fire Strike
【グラフ14】3DMark - Sky Diver
【グラフ15】3DMark - Cloud Gate
【グラフ16】3DMark - Ice Storm Extreme
【グラフ17】3DMark 11 [Extreme]

 ファイナルファンタジーXIVでは、DirectX 9でテストを実行した際に5%差でCore i7-4790Kを上回ったが、DirectX 11では逆転されている。MHFベンチマークにおいては、NVIDIA DSRを利用した4K解像度でのスコアはCore i7-2600Kを下回った。

 スコアの再現は取れるのだが、CPUの性能によって差が付いているというには、やや不可解な結果が散見される。既にドライバもUEFIも成熟している既存のプラットフォームと比べると、Skylake-SのLGA1151プラットフォームは、まだ改善の余地が残されているように思われる。この辺りは、今後の改善を期待したいところだ。

 なお、PSO2ベンチマークでは、1,920×1,080ドット時に26%ものスコア差を付けてCore i7-4790Kを上回っているが、このベンチマークテストはフレームレートの変化に対するスコアの上昇が大きいため、実際のゲームで20%以上優れた性能を発揮するという訳ではない。

【グラフ18】ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
【グラフ19】MHFベンチマーク【大討伐】 [フルスクリーン]
【グラフ20】PSO2ベンチマーク ver 2.0 [1,920×1,080ドット、フルスクリーン]

 ベンチマークテスト実行中の最大消費電力を測定し、まとめたものが以下のグラフだ。それぞれ使用しているマザーボードが異なるため、CPUのみの違いによる電力差という訳ではない点に注意して貰いたい。

【グラフ21】システム全体の消費電力

 アイドル時の消費電力は、Core i7-6700Kが45Wを記録し、比較用の2製品より約10W低い電力を記録した。アイドル時消費電力の差で10Wは大きいが、この数字はマザーボードによっても大きく左右される部分でもある。今回テストした組み合わせでは、Core i7-6700K環境のアイドル時消費電力が低いと言うのが妥当だろう。

 ベンチマーク中の消費電力についても、比較3製品の中でCore i7-6700Kが最も低い消費電力を記録している。CPU処理中心のCINEBENCH R15で、Core i7-4790Kに13~22W、Core i7-2600Kに10~16Wの差を付けている。Core i7-4790KよりTDPが3W高くなったCore i7-6700Kだが、CPUの消費電力自体はそれほど増加していないと見て良さそうだ。

CPU内蔵GPUを使ったベンチマークテスト

 次に、CPU内蔵GPUを利用して実行した3D系のベンチマークテストの結果を紹介する。なお、ここではCore i7-2600Kのスコアは省略している。

【表3】CPU内蔵GPUテスト環境
CPUCore i7-6700KCore i7-4790K
マザーボードMSI Z170A GAMING M7ASUS MAXIMUS VII GENE
チップセットIntel Z170Intel Z97
メモリDDR4-2133 8GB×2(15-15-15、1.20V)DDR3-1600 8GB×2(9-9-9-24、1.50V)
ストレージIntel SSD 510 シリーズ 120GB
ビデオカードIntel HD Graphics 530Intel HD Graphics 4600
グラフィックスドライバ10.18.15.4186 Beta10.18.14.4206
電源Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
OSWindows 8.1 Pro Update 64bit

 実行したベンチマークテストは、3DMark(グラフ22~25)、3DMark 11(グラフ26)、ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク(グラフ27)、MHFベンチマーク【大討伐】(グラフ28)、PSO2キャラクタークリエイト体験版 ver. 2.0(グラフ29)。

 3DMarkでは、Intel HD Graphics 530を備えるCore i7-6700Kが、Intel HD Graphics 4600を備えるCore i7-4790Kに対し、10~25%程度の差を付けて勝利した。描画負荷の軽いCloud GateやIce Storm Extremeより、Fire StrikeやSky Diverなどで大きな差を付けているのが印象的だ。

【グラフ22】3DMark - Fire Strike
【グラフ23】3DMark - Sky Diver
【グラフ24】3DMark - Cloud Gate
【グラフ25】3DMark - Ice Storm Extreme
【グラフ26】3DMark 11 [Performance]

 ファイナルファンタジーXIVやMHFベンチマークでは、Core i7-4790Kに対するスコア差は30~40%と3DMarkよりも大きな差が付いた。PSO2ベンチマークでは3倍以上のスコア差が付いているが、フレームレートの差で言えば1.5倍程度の差であり、実際に発揮される性能は、ファイナルファンタジーXIVなどのベンチマーク結果に近い。

【グラフ27】ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
【グラフ28】MHFベンチマーク【大討伐】 [フルスクリーン]
【グラフ29】PSO2ベンチマーク ver 2.0 [1,920×1,080ドット、フルスクリーン]

 ベンチマーク中の消費電力については、Core i7-6700Kが全ての条件で、Core i7-4790Kを下回った。

 CPU内蔵GPU利用時の消費電力比較では、メモリやマザーボードなど、CPU以外の機材が消費する電力の差が占める割合が大きい点に注意が必要だが、ベンチマークテストで20%や40%のスコア差を付けたテストでも消費電力で下回っているというこの結果からは、Core i7-6700Kの電力効率の高さが伺える。

【グラフ30】システム全体の消費電力

4コア8スレッド最高峰の性能と強化されたチップセット機能が魅力

 以上の通り、Core i7-6700Kの性能をチェックしてきた。Devil's CanyonのCore i7-4790Kを圧倒する性能とはいかないものの、同等以上の性能を持ちながら、チップセット機能の強化によって、高速な次世代ストレージの利用が容易になったことが、Core i7-6700KとIntel Z170チップセットの魅力と言える。

 今回は、Core i7-4790Kとの比較にフォーカスして紹介してきたが、CPU系のベンチマークテストでCore i7-2600Kに20~40%もの差を付けている点も見逃せない。Core i7-4790Kが特別な高クロックCPUであったからこそ、Core i7-6700Kに追随できているのであって、ほかの4コア8スレッドCPUからのアップグレードなら、大きな性能アップが期待できる。

 先日発売されたWindows 10に合わせてPCを新調しようと考えているユーザーにとって、Core i7-6700KとIntel Z170チップセットの組み合わせは、性能と拡張性に優れた、長く使えるPCを構築するのに適した選択肢となるだろう。

(三門 修太)