レビュー

携行用から3画面以上、スティックPCにも好適

~タッチ対応のフルHDモバイル液晶「On-Lap 1303I」

Gechc On-Lap 1303Iと付属品。タッチ対応の13.3型モバイル液晶

1台あると重宝

 例えるなら、アイデア文具や便利なキッチン用品とでも言ったところだろうか。

 普段、常用するわけではないが、特定の用途でやたらと便利で、まさにかゆいところに手が届く。そんなグッズのPC版とも言えるのが、GeChicから販売されているモバイル液晶「On-Lap」シリーズだ。

 2014年末に、フルHD化やMini DisplayPort対応などで大幅に機能強化された「On-Lap 1303H」が発売され注目を集めたが、今回取り上げる「On-Lap 1303I」は、そのタッチ対応モデルとなっている。

 従来モデルとの違いも含め、まずは、そのスペックを見ていこう。画面サイズは13.3型で解像度は1,920×1,080ドットのフルHDで、10点マルチタッチに対応した投影型静電容量タッチパネルを採用している。

 「モバイル液晶」と呼ばれる通り、持ち運びを前提としたコンパクトかつ軽量なサイズとなっており、USBポートからの給電で動作可能。入力もHDMI、DisplayPort、VGAと豊富で、ステレオスピーカーまでも内蔵されている製品だ。

 発売は6月下旬で、店頭予想価格は45,000円前後となる。

正面
背面
側面
HDMI、DisplayPort、VGAと入力が豊富

 従来モデルの1303Hとの違いは、タッチ対応であることに加え、明るさが250cd/平方mと若干低くなっていること、サイズは全く同じだが、重量が900gと重くなっていることの2点のみとなる。

 確かに、非タッチ対応のOn-Lap 1303Hは、実際に手に取ったときの軽さが印象的で、良い意味で見た目を裏切る製品だったが、本製品は見た目とと手に取ったときの重さが順当なイメージとなっている。とは言え、重量は900gと軽量で、USB給電でも動作する手軽さから、持ち運んで使うという用途に適している。

 最近では、出張などの外出先に、ノートPCとモバイル液晶を持ち込んで、デュアルディスプレイ環境で使う人も少なくないが、こういった状況に、さらにタッチ操作をプラスできる画期的な製品となっている。

 もちろん、設置場所や電源に気を配らなくて済むため、自宅やオフィスの据置型PCのサブディスプレイとしても利用可能だし、サーバーなど普段ディスプレイを接続してないPCのメンテナンスなどにも適している。

【スペック表】
On-Lap 1303IOn-Lap 1303H
タッチ対応×
サイズ13.3型
解像度1,920×1,080ドット
色数1,677万色
明るさ(cd/平方m)250300
コントラスト比700:1
視野角上下178度/左右178度
映像入力端子Micro HDMI
Mini Display Port
ミニD-Sub15ピン
スピーカー1Wスピーカー×2
ヘッドホン端子
カバー/スタンドカバースタンド付属
消費電力5V/2A
重量900g(カバースタンド320g)599g(カバースタンド320g)
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)345×226×10.5mm345×226×10.5mm

USB給電のみでも結構イケる

 使い方は簡単だ。

 On-Lap 1303Iには、Micro USB-USBケーブル×2、USB電源アダプタ、HDMIケーブル×1が同梱されている。

 据え置きで利用するのであれば、Micro USB-USBケーブルの内、1本を本体の電源ポートに接続し、付属のUSB電源アダプタ経由で電源へと接続。もう1本は、タッチ機能を有効化するために、本体のUSB入力ポートとPCのUSBポートに接続。最後にHDMIケーブルをPCに接続すれば、PCの画面が表示されることになる。

 設定はほとんど必要ない。タッチ用のドライバはWindows 8.1で自動的にインストールされるため不要だ。唯一、初回にOn-Lap 1303I側の言語設定画面が右上に表示されるが、「日本語」を選択する程度で構わない。

 一方、モバイル環境で使う場合は、ケーブル2本で接続することも可能だ。本製品の本体左側面、一番下のUSBポートは、タッチ入力とUSB給電を兼ねたポートになっており、電源ポートを利用せず、HDMIとUSB、2本のケーブルのみで動作させることが可能となっている。

 実際に試してみたところ、IntelのNUC(BOXDC3217BY)、MicrosoftのSurface Pro 3など、ほとんどの場合、外部電源なしのUSB給電のみで動作させることができたので、外出先など、On-Lap 1303I用に電源が確保できない場所での利用も問題なさそうだ。

IntelのNUCに接続したところ。USB給電で問題なく動作する
Surface Pro3に接続。今回はオプションのDisplayPortケーブルの入手が間に合わなかったため、HDMIに変換して接続。こちらもUSB給電のみで問題なく動作

 ただし、一部のPC(後述するスティックタイプのPCなど)では、電力が不足し、画面が点灯と消灯を繰り返したり、画面は表示できるものの、タッチ操作をしようと画面に触れると、電源が落ちてしまう場合があったが、この場合でも、明るさや輝度を落とすことで(40以下が目安)、動作させることが可能だった。

 基本的には、コンセントから電力を供給した方がいいが、USB給電のみでも実用は問題なさそうだ。

 なお、映像入力用のケーブルは、前述したように標準ではHDMIケーブルのみが同梱されている。DisplayPort(Display Port)やVGAケーブルはオプション扱いとなっているので、必要なら一緒に購入することをおすすめする。

USBで十分な電力が供給できない場合は、明るさや輝度を落とすことで利用できる場合がある

画面表示+操作を兼ねたデバイス

 品質も問題ないと言えそうだ。モバイル液晶とは言え、解像度がフルHDと高いためにPCの操作は快適にできるうえ、明るさやコントラストも十分で実用上は全く困らない。表面が光沢があるので、若干、写り込みが気になるが、YouTubeなどの動画もきれいに表示され、品質的には全く問題ない印象だ。

 肝心のタッチ操作も快適だ。Windows 8.1を利用すれば、Windowsストアアプリなどのタッチ操作を前提としたアプリを使って快適に操作可能。地図アプリなどでマルチタッチを利用して拡大、縮小してもタッチ操作に画面がピタリと追従し、デスクトップ上の小さなボタンやチェックボックスなどの細かな部分も正確にタッチできる。

 イメージとしては、タッチ対応のノートPCを操作しているのと、さほど変わらない印象だ。

スクロールやピンチなどの操作も快適
細かな部分の操作も意外に苦労しない

 これまでのモバイル液晶は、デュアルディスプレイとしてデスクトップを拡張したり、自分が見ているのと同じ画面を他の人にも見せる簡易プレゼン用など、あくまでも画面を表示するための用途がメインだったが、このOn-Lap 1303Iは、画面の表示に加えて、マウスやキーボードの代わりとしてPCを操作できるのが大きなメリットだ。

 今流行のスティックPCなどで使うのにも非常に都合が良い。試しに、マウスコンピューターの初代スティックPC「m-Stick MS-NH1」で利用してみたが、なかなか快適だった。

 MS-NH1はHDMI直結となるため、メス-メスのHDMIアダプタを別途用意し、前述したようにMS-NH1のUSBポートを使ってOn-Lap 1303Iに給電する場合は輝度を落とす必要があるが、画面表示だけでなく、Windowsの操作用デバイスとしても使えるため、別途キーボードやマウスを接続しなくても済む。さすがに文章を作成するなど、長文入力は厳しいが、スクリーンキーボードを使って文字を入力できるので、スティックPC本体とOn-Lap 1303Iのみで、一通りの作業ができてしまう。

 現在は、リビングのTVなどに繋げる用途が多いスティックPCだが、On-Lap 1303Iとの組み合わせなら、モバイルでの利用も面白そうだ。

スティックタイプのPCで利用すれば、画面表示に加えて、マウスやキーボードの代わりとしても動作する
接続する際は、HDMIのメスーメスアダプタが必要

カバーやスタンドなどの完成度も高い

 持ち運びの際の扱いやすさも考慮されている。付属のカバーは、液晶表面側に被せれば画面の保護に、背面側に被せればスタンドとして利用できるようになっている。

 実際にカバンなどに入れて持ち運ぶ場合でも、しっかりとカバーを付けておけば画面にキズが付くような心配はない。海外出張などでスーツケースに入れる時も安心だろう。

 設置する場合も、スタンドを固定するためのラッチが3カ所用意されているので、本体の角度を好みに合わせて設定できる。ノートPCのようにキーボードで操作したり、画面を長時間眺めるなら垂直に近い角度で、タッチ操作メインで使うなら水平に近い角度にセットすると使いやすくなる。

 さすが、この分野の先駆者だけあり、細かな部分までしっかりと考えて作り込まれているという印象だ。

持ち運ぶときはカバーとして利用
使うときはスタンドとして使える

色々な使い方が考えられる

 以上、GeChicのタッチ対応モバイル液晶On-Lap 1303Iを使ってみたが、なかなか完成度の高い製品と言えそうだ。

 持ち歩く頻度が高い場合は軽量なタッチ非対応のOn-Lap 1303Hがオススメだが、若干の重量増を考慮しても、タッチ対応であることを重視したいケースは少なくない。例えば、前述したスティックタイプのPCであれば、キーボードやマウスの接続や持ち運びから解放されるメリットの方が大きいこともある。

 また、先にも少し触れたが、サーバーのメンテナンスなどにも都合がいい。Windows Server 2012 R2など、タッチ操作でも使えるサーバーなら、サーバールームなどで次から次へとサーバーに繋いで画面を確認したり、場合によっては、そのままタッチ操作でサーバーの設定をしたり、再起動したりすることができる。

 と言うわけで、ポイントとなるのは、ディスプレイだけでなく、キーボードやマウスの代わりにもなるという点だろう。ここに価値を見いだせるのであれば、多少の重量増はあるものの、タッチに対応した本製品を選ぶメリットが見えてくるはずだ。

画面を見ながら操作も同時にできるので、サーバーのメンテナンスにも便利。タッチでもCtrl+Alt+Delを入力できる

(清水 理史)