これまでHDDメーカーが自社ブランドでコンシューマー向けの外付けHDDを販売している例は日本国内ではWestern Digitalくらいのものだった。そこに日立グローバールストレージテクノロジーズ(日立GST)がモバイルHDDで参入してきたのが今年7月のこと。さらに9月末には参入第2弾となる製品が店頭に並び始めた。その第2弾の製品のうちの1つが今回紹介する「LifeStudio MOBILE PLUS」だ。
●HITACHIブランドで出してきた外付けHDDHDDメーカーが自社ブランドでベアドライブ以外のHDD製品(USB外付けHDDやNAS)を手がける例はこれまで日本国内では目立たなかった。Western DigitalとSeagateは以前から積極的に展開していてラインナップも充実しているのだが、日本国内に入ってきているのはWestern Digital1社だけ。そこへ日立GSTが参入してきた格好になる。
国内ではUSB外付けHDDやNASはサードパーティー製のものが主流だ。サードパーティー製のHDD製品は使用しているドライブのメーカーや型番を表示していないことが多い。型番でメーカーが分かるようになっていることもあるが、パッと見で分かるようにはなっていない。その点HDDメーカー製の製品であれば中身のドライブの出どころは分かりやすくはっきりしている。
今回紹介するLifeStudioについてだが、少々変わった仕様の製品だ。基本的にはUSB外付けHDDなのだが、無料で利用できる3GBのクラウドストレージが付いてくる。さらに、4つあるモデルのうち2つのモデルは本体と合体するUSBメモリがセットになっている。HDDだけで完結しない昨今のストレージ事情を汲んだ仕様だ。
HDDメーカーの製品でLifeStudioと似た機能を持つものとして、Seagateの「FreeAgent DockStar」と「FreeAgent GoFlex Net Media Sharing Device」があるが、こちらはHDD自体をインターネット経由でどこからでもアクセスできるようにする機能を搭載したもので、インターネット経由でのストレージ利用にクラウドを使うLifeStudioとは異なる。
USBメモリ本体。使用時はLEDランプが点灯する | USBメモリ本体と端子をカバーするキャップは柔軟性のあるプラスチックパーツでつながっている |
USB HDD底面。縦長の足がある | 二股のUSBケーブル。マニュアルではこちらのUSBケーブルを使うことを推奨している |
●LifeStudioの仕様
LifeStudioは内蔵ドライブのサイズが異なる2つのシリーズがある。各シリーズはUSBメモリの有無でさらに2つのモデルに分かれる。2.5インチドライブを採用したシリーズは「MOBILE」、3.5インチドライブを搭載したシリーズは「DESK」の名が付く。MOBILEは2.5インチドライブを内蔵したドライブケースとクレードルが分離するデザインで、DESKは分離しない一体型デザインだ。ディスク容量はMOBILEが320GBと500GBの2種類、DESKが1TBと2TBの2種類。なお、HDDとUSBメモリはFAT32形式でフォーマットした状態で出荷されている。
【表1】LifeStudioのシリーズ及びモデルの違いモデル名称 | LIFESTUDIO MOBILE PLUS | LIFESTUDIO MOBILE | LIFESTUDIO DESK PLUS | LIFESTUDIO DESK |
ドライブサイズ | 2.5インチ | 3.5インチ | ||
容量 | 320/500GB | 1/2TB | ||
クレードル | 有り | 無し(一体型) | ||
電源 | 二股USBケーブル | ACアダプタ | ||
USBメモリ | 有り(4GB) | 無し | 有り(4GB) | 無し |
同梱ソフトはビュワーソフトの「LifeStudio」とバックアップソフトの「Hitach Backup」の2種類。PC上では332MBのUDFドライブとして認識される領域に保存されている。Windows及びMacに対応する。
LifeStudioのインストール画面。初期状態では言語が英語に設定されているので、右上のスライダーで日本語を選択する | インストール時はWindowsファイアウォールの警告が表示されるのでアクセスを許可するよう設定する | LifeStudioをPCに接続すると新たに2~3つのドライブが表示される |
USBメモリのmicroSDカードスロットはLEDランプのある側にある。microSDカードの出し入れはマイナスドライバを使うと簡単だ |
USBメモリには4GBのmicroSDカードが使われており、microSDカードを交換することで最大32GBまで容量を増やせる。USBメモリとLifeStudioの接続はUSBメモリ本体裏にある端子を使うので、一般のUSBメモリは使えない。LifeStudio本体とUSBメモリはペアリングされていて、他のLifeStudioのUSBメモリを接続しても認識しない。少々不便な仕様だが、USBメモリを他人のものと取り違えてデータを消してしまう事故を防げるメリットがある。
クラウドストレージは3GB(無料)と250GB(追加で年額49ドル)の2種類。LifeStudio本体分のコストはかかるが、DropboxやSugarSyncの無料プラン(2GB)よりも容量では負けていないし、250GBプランは年額249.99ドルのSugarSyncと比べるとコスト面でかなり頑張っている。
【表2】クラウドストレージの価格比較
サービス名 | 無料プラン | 有料プラン |
Dropbox | 2GB | 100GB(19.99ドル/月) |
SugarSync | 2GB | 250GB(249.99ドル/年) |
Google(参考) | 2GB | 200GB(50ドル/年) |
HITACHI BACKUP | 3GB | 250GB(49ドル/年) |
USB HDDとUSBメモリのベンチマーク結果は以下の通り(CrystalDiskMark3.0使用)。
LifeStudio MOBILE PLUS(500GB)のHDDベンチマーク結果 | LifeStudio MOBILE PLUS(500GB)のUSBメモリベンチマーク結果 |
●クラウドストレージと連携するHitachi Backup
同梱ソフトのHitachi Backupは名前の通りバックアップソフトだ。常駐してフォルダを監視し、変更があると即バックアップを行なう。バックアップ保存されているファイルは最大100世代前まで遡って取り出すことができる。デフォルトのバックアップ先はLifeStudio本体のHDDとクラウドストレージ「HITACHI BACKUP」の2種類。バックアップ先はLifeStudio以外も利用可能だ。バックアップ先としてUSBメモリを使う場合はもう1つの同梱ソフトであるHitachi LifeStudioを使う。Hitachi LifeStudioにはUSBメモリをバックアップ先として使うための専用の設定画面がある(何故かHitachi Backup側には無い)。
Hitachi Backupの画面。クラウドストレージのユーザー登録はHitachi Backupで行なう | Hitachi Backupのメイン画面。初期設定では、スイッチをオンにすれば、ユーザーフォルダをまるごとバックアップするように設定してある | USBメモリのバックアップ設定はHitachi BackupではなくLifeStudio側にある |
Hitachi BackupはWebブラウザでも利用できるが、ユーザー登録には同梱ソフトのHitachi Backupを使う。Hitachi Backupは現状LifeStudioのファームウェアとしてのみ出荷されているので、Hitachi Backupは実質LifeStudioユーザー専用のサービスになっている。Webのデザインを見るとLifeStudioユーザー以外にも開放していくことを考えているようだが現状そうはなっていない。
●ローカルやソーシャルとも連携するHitachi LifeStudio
Hitachi LifeStudioは写真、映像、音声ファイルを楽しむためのビューワソフトだ。ベースになったのは主にWebブラウザのプラグインとして配布されているcooliris。coolirisと比べると、ローカルのファイルが閲覧できるようになっているほか、ソーシャルサービス(Picasa、Facebook、Flickr)の自分のアカウントにログインしてファイルの閲覧とアップロードができるようになっている。ちなみに、coolirisはユーザー登録をするとブックマーク保存ができるようになるが、Hitachi LifeStudioでもそのアカウントは共用可能だ。
ファイルのアップロードについてちょっと注意したいのが一般公開状態でアップロードされてしまうこと。例えばPicasaの場合であれば「LifeStudio Photos」という一般公開設定のアルバムが作成されて、そこにファイルがアップロードされる。公開設定は後から変更できるので、ファイルを公開したくない場合は、最初は見られてもいい適当なファイルをアップロードしてアルバムを作成して、公開設定を変更してから本格的にアップロード、という手順を踏む必要がある。
LifeStudioでローカルのファイルを開いているところ | FacebookやFlickr、Picasaに保存した自分のアカウントのファイルをLifeStudio上で開ける。ローカルからのファイルのアップロードも可能 |
Hitachi LifeStudioが対応するファイル形式は以下の表の通り。AACには対応しないのでiTMSで購入したファイルは再生できない。
【表3】LifeStudioが対応するファイル形式(拡張子)画像 | jpg、jpeg、png、gif、bmp、tiff |
動画 | wmv、mov、m4v、mp4、swf、flv、avi |
音楽 | mp3、m4v、cdi、wma、wav |
ドキュメント | doc、pdf、xls、ppt、txt |
●まとめと感想
LifeStudioはバックアップとファイルの閲覧が簡単にできるように作られたHDD製品だ。バックアップに関してはOS標準の機能もあるがLifeStudioほど簡単ではないし、ビューワに関してはほかにも選択肢はあるが、Webとソーシャル、ローカル全部まとめて見渡せる仕組みはほかに見当たらない。日立GSTというブランドもあるし、なかなか魅力的な製品だと言えるのではないだろうか。
ただ、WebのHitachi Backupがまだ完全ではないのでその点は改善して欲しいところだ。それから、ちょっと気になったのが、Hitachi LifeStudioが重いこと。CULVノートではかなり厳しい状態だった。だから、Hitachi LifeStudioをインストールするのはそれなりにパワフルな環境に限定した方がいいだろう。
(2010年 10月 29日)
[Reported by 井上 繁樹]