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【インタビュー】バッファローが語る「転換期の無線LAN、これからは11ac+ビームフォーミング」

〜スマートフォン時代の無線LANとは?

名古屋に本社のある株式会社バッファロー

 新しい無線LAN規格であるIEEE 802.11ac Draft(以下、11ac)。アンテナ3本の上位モデルで理論値1,300Mbpsというギガビット超えの通信ができるという高速さはもちろんだが、スマートフォン時代に最適な通信規格としても注目を浴びているという。

 そう語るのはデジタル家電やPC周辺機器メーカーの雄、バッファロー。国内初の11acルーターを発売した同社は、実測915Mbpsという高速性に加え、端末移動を追跡するビームフォーミングなど「スマートフォン時代」を意識して設計したという。

 そこで今回はそうした同社の無線ルーター「WZR-1750DHP」「WZR-1166DHP」のポイントなどを同社開発陣に語っていただいた。お話を伺ったのは同社開発部のR&D Nagoya課 課長の山田大輔氏、同HW係係長の中武寛氏、同第一FW係の稲田哲也氏、そしてマーケティングを担当するBBSビジネスユニットBBS事業課BBS係 係長の中村泰之氏だ。

最上位モデル「WZR-1750DHP」。1,300Mbps(5GHz帯)+450Mbps(2.4GHz帯)での通信が可能
ミドルレンジの「WZR-1166DHP」。同じく866Mbps(5GHz帯)+300Mbps(2.4GHz帯)で通信できる

家でスマホを使うための「ビームフォーミング」

中村泰之氏。担当はマーケティング
ビームフォーミングのイメージ
ビームフォーミングがない場合

−−今回の製品の最大のウリは「ビームフォーミング」だとお伺いしていますが、まず、その仕組みを簡単に教えて下さい。

中村氏 無線LANの電波は、通常、同心円状に全方向に広がるものなのですが、子機の距離や方向を判別し、電波を適切に届けることで、転送速度・安定性を向上させる、というのがビームフォーミングです。

 最近は、家の中でスマートフォンやタブレットを使う、というシチュエーションも多いと思いますが、家の中で移動すると、電波が薄いところでデータを受け取れない、といったことが出てきてしまいます。しかしビームフォーミング対応のルーターと子機(スマートフォンなど)をセットで使えば、子機を追いかけ、最適な電波を届けるように調整します。

 実際、例えばビームフォーミングなしの場合だと電波をロストしてしまう場合であっても、ビームフォーミングがあれば減衰を防ぎ、接続できること確認していますし、最高スループットは実測で約2倍に向上することを確認しています。

 また、壁を隔てた場所や、一戸建ての2階や3階などでも効果があり、当社の測定結果では3階で15Mbpsだったところが26Mbpsになり、YouTubeなどもしっかり再生できるようになりました。

 こうしたことから、今回の製品の最大の特長はこの「ビームフォーミング」だと考えています。

山田大輔氏。Wi-Fi関連の開発を統括したとのこと
中武寛氏。担当はハードウェア開発
ルーター内部の全体像。パフォーマンスを考慮した結果のサイズ、レイアウトとなっているという

中武氏 また、ビームフォーミングを搭載したことで、電波の出し方を自動調整できるので、外部アンテナ、いわゆる“ツノ”が無くなったのも違いですね。お客様にアンテナの向きを合わせてもらうより、むしろ“ポン置き”で使えた方が便利だろうという発想で、ツノを排除して内蔵アンテナにしています。

−−ユーザーにアンテナの向きを変えてもらう形だとビームフォーミングに何らかの影響があるんでしょうか。

山田氏 いえ、外部アンテナがあってもいいんです。ただ、モバイルデバイスは家のどこでも使われるじゃないですか。場所に応じて最適なアンテナの方向があるんですけれども、アンテナの向きをいちいち調整してもらう、というのはちょっと時代遅れだろうと。国によってはアンテナを外に出すべきとしているところもあるんですが、ユーザーエクスペリエンスを考えると、すっきりさせた方がいいというのはトレンドとしてもありますね。

稲田哲也氏。担当はファームウェア

稲田氏 ちなみに11nまでの製品でアンテナが2本以上あると、個人的にも両方垂直に立てたくなるんですが、実際のところは垂直ではなく、2本を直角にする方が効果が高くなるんですよ。もちろん子機の位置による、というのもありますが。ただ、そういうのはお客様としてもなかなか理解しにくい部分ではありますので、内蔵固定のアンテナとすることで手間もかからず、最適な状態で使える設計にしています。

中村氏 11nの頃は20cmくらいの長さの3本のツノを立てる製品があって、“ベアークロウ”なんて言って社内でプロモーションをしていたこともあったんですけども(笑)、ビームフォーミングのように新しい技術で長いアンテナがなくなって、かつ以前よりも高性能なものができあがってしまうのは、革新的なことだと感じているところです。かつてのフィーチャーフォンのように伸ばして使うアンテナがあったのが、いつの間にかなくなっていたのと似ていますよね。


中央のカバーされている部分が汎用CPU。その右隣と右下に見えている正方形のICがBroadcomの無線チップ

−−「ビームフォーミングは効果が少ない」と言っている他社さんもありますが、この見解の違いはどこからくるものなのでしょうか?

山田氏 我々は世界中のチップベンダーさんと常にお付き合いさせていただいています。各社の開発用システムボードを使って性能評価しており、どのプラットフォームで製品化するのが最適かを調べたうえで物作りを進めているんですね。

 ハードウェアメーカーによってはいろいろなしがらみがあったり、プラットフォームの制約があったりして、「このチップを使わないといけない」というところもあると思うんですが、我々は多くのチップベンダーの中から良いものを選んで提供でき、そのための研究開発を行なっています。また、「ビームフォーミング」と一口で言っても、ベンダーによって性能に違いがあり、我々が調査した中では今回採用したBroadcomのチップの性能が高かったわけです。

 実際、ビームフォーミング付きの11acで、3x3(アンテナ3本)の1,300Mbpsに対応しているのは現在、Broadcomのチップのみでして、これを採用しているのは国内では当社とアップルだけです。Broadcomのチップは多くのスマートフォンでも使われているため、「同じチップベンダー」ということで通信が安定しやすいのもメリットです。

−−つまり、他社は御社とは異なるチップを使っていて、パフォーマンスが出にくくなっていることが考えられるということでしょうか。

山田氏 そうですね。実際に我々の製品ではビームフォーミングで速度が出ていますので(笑)。

「スマホを家で使う」=無線LANの転換期?

「スマホがリモコンになる」というWi-Fiリモコン
別途アプリをインストールすることなく接続設定が可能なAOSS2に対応。Wi-Fiでしか通信できないタブレットなどでも初めから使える
電波の到達範囲を確実に広くする「中継機能」の解説

−−そのほか、注目してほしい機能としてはどんなものがありますか。

中村氏 ビームフォーミングと同様、スマートフォン時代を見据えたコンセプトとして、スマートフォンやタブレットでの設定が簡単になる「AOSS2」や「Wi-Fiリモコン」も以前から導入しています。

 また、中継機能というものもあります。我々は1つのルーターで3階まで届く製品を作ってはいますが、お客様の環境によってはどうしても電波の届きにくい場所があると思います。そんな時に、ルーターを中継機として電波の届きにくいエリアに追加していただければ、より広い範囲で高速にお使いいただけます。11ac対応製品だけでなく当社の他のルーター製品にも中継機能は搭載されていますし、他社製品にも中継機として利用することができます。

中村氏 実は、今はまさにWi-Fiの市場が大きく転換しているタイミングだと考えています。これまでは一家に1台ルーターがあって、そのルーターから出た電波がPCの置いてある場所に届けばよかった。でも、これからはスマートフォンやタブレット、Ultrabookのような家のどこで使うか分からないものを前提に、家の隅々まで電波が届く環境が当たり前になっていくだろうと。

 そして、必要なら中継器として2台目を導入していただいて、「電波が届くだけ」でなく、安定して高速通信できる環境を作っていただく。中継機能を付けているのもそういう理由ですね。買い足しをより簡単にしていただけるように、ということです。

左奥に見えるのがUSB 3.0ポート

 あとは、優先順位を決めて通信帯域を確保することで「ストリーミング動画を見ながらファイルをダウンロードしてもストリーミングには影響が出ない」といったことができる「アドバンスドQoS」や、国内で唯一USB 3.0ポートを搭載しているところですね。たとえばUSB 3.0のHDDをつないで、簡易NASとしてお使いいただくこともできます。

世界最高速を目指してCPUも強化

バッファローのルーターはデュアルコアCPUを搭載。2個の無線CPUは2.4GHzと5GHzとで処理を分けることもできるが、実際にはさらに細かい処理の分担を行なっている

−−CPUなどのハードウェアはいかがでしょうか?

中村氏 CPUについては汎用のデュアルコアCPU+無線CPU 2つという構成で、他社のシングルコアCPU+無線CPU 1つの構成とは大きく異なるところです。

 他社製品は汎用CPUが無線CPU 1つ分の役割も担っていますが、弊社では汎用CPUは汎用CPU、無線CPUは無線CPUだけと、完全に分けて処理しています。有線のルーティングとか、USBポートをNASとして使えるようにするとか、そういったものを汎用CPUで処理する際、CPUを分けていないと、少なからず処理速度に影響が出てしまうんです。

山田氏 汎用CPUをデュアルコアにしているのは、処理量の増大で、従来は1コアのCPUを使い、11nで300〜450Mbps対応とするのがトレンドだったんですけども、正直言うと、それだと1コアCPUでは足りないんですよ。

 例えば「有線-無線間のスループットが200〜300Mbps出ます」とパッケージで謳っていても、実はそれだけでいっぱいいっぱい、ということなんです。無線LANをハイパフォーマンスで使いつつ、NASにアクセス、インターネットのルーティングもして欲しい、というところまで行くと、実際には処理が間に合っていない製品も多い。ですので、CPUリソースが多ければ多いに越したことはないわけです。

−−とすると、CPUコアは今後どんどん増えていく方向に?

山田氏 そうなりそうですね。ルーターにはたくさんの機能が載っていますが、ユーザーにとっては「あれもこれもやりたい」という希望がありますから、それを広げていくと処理量としてはデュアルコアでも足りないくらいです。社内でもそういったマルチコアのチップの評価を進めているところです。

−−デュアルコアCPUということで、ソフトウェア開発の面で苦労されたところもあったのではないかと思いますが。

稲田氏 今回ソフトウェア開発部門に課せられた使命は、動作の安定した製品であることは大前提として、「世界最速」の製品を作りなさい、というものでした。

 しかし、世界最速といっても、他社が同じBroadcomのチップを使ったら同等のパフォーマンスが出てしまうんじゃないか。そう思われてしまうのは、独自のファームウェアを国内で作っている我々としては看過できない。実際に海外ではBroadcomチップのルーターを作っているメーカーもありますので、やはりそれを超えなくては、ということで開発を進めました。

 例えば、Broadcom自身による設計では、汎用CPUコアが2つある場合、有線と無線とでコアを分けて処理する形になっていて、850Mbpsくらいがスループットの目標値として設定されていました。実際、設計はその方が楽なのですが、有線と無線とできれいに分けた場合に、CPUの処理能力を本当に使い切っているのかという疑問がありました。

 そこでCPUのパフォーマンス試験を行なってみると、無線はものすごい負荷であるものの、クロックが800MHzということもあって、それでも余裕がありました。なので、「無線専用」という形で縛らずに、無線の処理はもちろん最優先で行ないつつ、残りの空き部分をルーターの処理などで再利用できるように設計したことで、850Mbpsを超えた915Mbpsを実現するチューニングを施すことができました。

−−915Mbpsという通信速度もそうですが、2製品の価格を見ると、ハイエンドやミドルレンジに寄っているかと思います。何か戦略上の理由があるのでしょうか。

中村氏 一番の理由は性能面ですね。ローレンジ向けの製品は作ろうと思えばできるんですが、それだと11acにしたのに遅いじゃないか、ということになってしまいます。そこで、ある程度コストはかかってしまいますけれども、11acらしい性能を実現できるハイエンドのものに切り替えていただこうという狙いです。

 これから11ac対応端末が増えてくれば、今や11nがローレンジに移り変わったように、ローレンジの11ac対応ルーターを出していくこともあるかと思うんですが、まず初めに11acの良さを浸透させるためには、「11acって速いんだよ」というのをユーザーのみなさんに認識していただくための性能を出さなければいけません。そういう意味で現在はハイエンド寄りの製品を投入しています。

−−ということは、さらに高性能なハイエンド製品も今後出てくるということに?

中村氏 検討しています。もちろん普及価格帯の製品も考えています。

山田氏 速くしたとはいえ、デュアルコアで高々800MHzで、スマートフォンのプロセッサに比べるとまだまだ見劣りするところもありますよね。性能を向上させる余地はまだあると思いますので、そのあたりについても取り組んでいます。

側面がラバーコーティングになった新しいデザイン

−−少し前に戻りますが“ツノ”がなくなったことを含め、最近の御社のルーターはデザインがかなり変わりましたね。

中村氏 今までの筐体は多くがツヤ有りの黒い筐体でした。AV機器と並べて使うというのが2〜3年前は非常に多かったので、それに同調するピアノブラックが多かったわけです。でも、今はスマートフォンやUltrabookとのデザインの親和性というところで、先進感を出したかった。

 今回は側面にラバーコーティングを施して、質感には非常にこだわっています。ルーターを見えないところに隠してしまう人もいると思うんですが、リビングに置いても恥ずかしくない、先進的なデザインを目指しました。また、アンテナを内蔵したのは、技術的にそれが可能になったというのもありますが、省スペース化と、スタイリッシュさをアピールしたい、という意図もあります。

山田氏 最近は会社の方針としてもデザインを重視しているところがあります。今回のデザインをベースに、いろいろなバリエーションの製品を作っていこうという動きもありますね。国内に限らず海外でもデザイン的に強い製品を提供していく考えがありますので、そういった活動をどんどん進めていこうとしています。

 ちなみに、この2製品と同じフォルムのルーター「WZR-D1100H」は、工業製品を対象にしたドイツのデザイン賞である「iFデザイン賞」を受賞しました。

本社受け付けに並ぶバッファロー製品の数々
同社のルーター製品「WZR-D1100H」はドイツの「iFデザイン賞」を受賞したという

電波暗室と3階建て家屋を自社所有検証→試行錯誤を高速化

左上、上、右上にみえる銀色のパーツが2.4GHzのアンテナ。それに隣り合うように位置している小さな基板が5GHz用のアンテナ
USB 3.0ポートの周囲はシート状の吸収体で覆われている
アンテナの位置、CPUの放熱など、筐体はベストパフォーマンスを発揮するための設計が施されているという

−−では、開発にあたって苦労されたことがあれば教えてください。

中武氏 採用チップが今までより高クロックで、しかもデュアルコア、Gigabit Ethernetのスイッチも1パッケージですので、この周囲の発熱が特に大きく、放熱対策に苦労しました。

山田氏 ほかにもアンテナが3本あるので、電力を増幅して電波にするPA(Power Amplifier)チップも3つあるのですが、それぞれ結構電力を消費して熱を出しますし、Gigabit Ethernetのポートもフルでサポートしているので、これも熱源です。この製品に限りませんが、熱設計は非常に苦労するところですね。

中武氏 あと、USB 3.0ポートも搭載しているんですが、実はUSB 3.0のデータ伝送の周波数と、2.4GHzの無線LANの周波数が干渉してしまうんです。しかもUSB 3.0のコネクタの近くに2.4GHzのアンテナがあり、ここはシート状の吸収体で電磁波を抑えることにしました。

 それとアンテナの配置ですね。今回は外部アンテナなしの設計ですので、お客様がルーター本体をどの方向に置いたとしても電波が飛ぶように、3つのアンテナを1つずつ水平・垂直・斜めなどといったように細かい組み合わせを試しつつ、アンテナの向きを細かく調整しています。

アンテナがそれぞれ異なる向きに取り付けられている

−−具体的にはどういった手順で調整されているのでしょう。

中村氏 当社では、電波法の認証時に使われるものと同等の電波暗室を保有しています。その上で、実環境に沿った鉄筋コンクリート造りの家屋も市街地にあります。できあがった製品をここで計測して、お客様の現場でも問題ないであろうことを確認したうえで出荷しています。また、後者の家屋は鉄筋なので電波が届きにくく、実環境としてもかなり厳しい建物です。

山田氏 社内の電波暗室で実際に機器を稼働させ、アンテナ自体を曲げたり、削ったりしながらスループットを測るという検証も繰り返しやっています。今申し上げた測定用の家屋でもスループットを測り、どこに子機(スマートフォンなど)があっても速度が極端に落ちるようなポイントが出ないように設計しています。

中村氏 そういった試行錯誤は、当社の電波暗室のような精度の高い計測環境がないとできません。自前で設備がなければ、外部に依頼して計測することになるのですが、我々は同じ建物の中に開発スタッフがいて計測環境もあるため、何度も試行錯誤できるんですね。非常に泥臭い、手間のかかる作業ではあるんですけれども、最適解を探すという作業を社内でできるのが強みです。

売れ行きは「予定の2倍以上」、スマートフォンの対応も順調

11ac対応のスマートフォンなどの例。ビームフォーミング対応機器はまだ少ないが、これからの対応増が期待される

−−ところで、このルーター2機種の売れ行きや評判はいかがでしょう。

中村氏 当初予定していた台数の2倍近く売れています。3対1くらいの割合でフラッグシップの「WZR-1750DHP」が売れていますね。速度アップを期待して購入されているというのもあるでしょうし、実際に大幅に速度アップしているのも大きいようです。ユーザーの11acに対する関心は非常に高いと思います。

−−ユーザーだけでなく、業界としても11acへの取り組みは熱心に感じます。

中村氏 2013年夏モデルのスマートフォンの約6割が11ac対応になったことに非常に驚いています。11ac対応ルーターを発表した時に、携帯電話メーカー様などからルーターの貸出要望も多くいただきました。

 11nでは、実はスマートフォンの場合に1x1(アンテナ1本)でしかつなげず、速度をそれほど出せないという事情がありました。ところが11acになると、アンテナ1本でも11nで現在最も高速な450Mbpsに近い433Mbpsに達します。タブレットやスマートフォンのように省電力でアンテナ性能も限られている端末では、11acは通信高速化の糸口になっているといった点で、関心が高いのではないかなと思っています。

ハードルは可能な限り低く、けれど裏でやっていることはものすごく

検証施設の風景。ルーター等の無線機器を設置し、一定距離から通信速度等を計測する

−−ネットワーク製品に関わらず、御社の最大の強みというと、どういうところになるでしょうか。

中村氏 豊富な製品ラインナップと、チューニングを内製しているところ、ベンダーさんとの付き合いが広いこと、海外拠点もあり、国内だけでなく海外の情報も収集して物作りを展開できるというのが強みですね。

山田氏 他社では1製品に数年かかるなど、製品サイクルがそんなに早くなかったりもするんですが、我々はどんなに長いプロジェクトでも6カ月程度の開発体制でやっていますので、先進の技術をいち早く導入して、いいものを世界中のお客様にすばやく提供できるという点では自信をもっています。

中武氏 開発部門としては、ファームウェアを内製しているところも推したいですね。日本国内のプロバイダーとの接続情報をフィードバックしていただいて、WAN側が必ずインターネットにつながるようにしていますし、無線LAN側はいろいろなデバイスが発売されていますが、それらに対する相性問題などもいち早く解消しています。

稲田氏 特に今回の製品はフラッグシップモデルということで、何か問題があればすぐさまサポートさせていただき解決する、という体制で、迅速なファームウェア開発を心がけています。当社での対応と並行してBroadcomにも連絡し、二人三脚でやらせていただいています。

−−最後にユーザーや読者にメッセージをいただければ。

中村氏 以前は、「ルーターは難しい」というイメージがあったと思うんですけれども、我々が目指しているのは、誰もが簡単に使って通信速度などを意識することなく便利に使っていただくこと。日々の生活の中に溶け込んでいて気づかないけれども、実はルーターがそれを支えている、というところですね。

 今回のルーターで個人的に気に入っているのは、スマートフォンだけで多くの操作ができることで、これがルーターの新しい使い方につながるんじゃないかなと感じています。店頭に立つと、「ウチでもつながるの?」と「私でも使える?」という2つを常に問われるんです。この2つは永久不変のテーマだと思っていて、それを技術によっていかに克服して具体的な製品として提案できるか、常に進化させ続けられるかが求められていると思います。

 PCをいちいち開いて設定を行なうのは古い。スマートフォンなどのモバイル端末と簡単につながって、簡単に操作できて、HEMSやゲートウェイのような機能を含め家の情報を集約できるものにする。ハードルは可能な限り低く、けれど裏でやっていることはものすごく高度・高性能なもの、というのを目指していきたいですね。

−−本日はありがとうございました。

電波暗室、検証用3階建て家屋を公開

 バッファローの本社ビル内には、電波法の認証時に用いられるものと同等の性能を備えた「電波暗室」のほか、数々の実験用設備が設けられている。

 また、それとは別に名古屋市内には3階建ての鉄筋コンクリート造りの家屋も所有しており、ユーザーの実使用に即した環境に近い状況で認証通過後の製品の性能測定などを行っている。インタビューと合わせ、これら設備への立ち入りも許可されたので、写真とともにご紹介したい。

【電波暗室】
電波暗室の入口。これより大きな電波暗室が、ほかにもう1つあるが、使用中のため撮影・見学ができなかった
電波暗室の内部。手前のターンテーブルに載せたルーターなどの無線機器から電波(無線通信)を発生させ、奥にある装置で電波強度などを計測する
内部の壁面を埋め尽くす三角錐は電波を吸収するためのもの。素材は柔らかいスポンジ状
こちらはシールドルームの入口。内部の壁面は金属となっており、部屋の内部と外部とで電波を完全に遮断できるようになっている。スループットの計測や、WPS等の接続試験などに用いられる
2つ横に並んだシールドボックス。機器を1個だけ入れられる程度のサイズとなっている。例えば2台の機器間通信をアッテネータにより減衰させ、擬似的に遠距離の通信を再現するのに使われる
より再現性の高い試験を行なうため、内部でアンテナを立てるのではなく、写真のコネクタを基板に直に接続して減衰試験を行なうこともできる。また、理想環境でのスループットの計測にも利用できる
冷蔵庫大のシールドボックス。複数の子機を1つのアクセスポイントにつなげ、3日間〜数週間もの長時間に渡って通信を行い、異常が発生しないか検証したりするのに使用される
【実環境を想定した検証施設】
名古屋市内にある鉄筋コンクリート造りの3階建て家屋
この家屋ではユーザーの実使用環境に近い状況で通信速度の計測などを行なえる
こちらは1階の別の部屋。鉄筋コンクリートの壁を隔てた向こうがルーターを設置した部屋となる。電波環境としてはかなり厳しい
2階のリビングと台所。実際には計測ポイントの横に座って記録することになる
建物内に何カ所もある計測ポイントと機器の設置方向は、床に貼ったガムテープで明示されている
3階。板張りや畳張りなど、実際の環境に即したさまざまな部屋が用意されている
階段の踊り場にも計測ポイントが設けられている

(日沼 諭史)