イラストレータ山本 州のワコム「Bamboo Fun」レビュー


 ワコムのグラフィックタブレットの「Bamboo」の新シリーズが10月3日に発売される。Bambooシリーズはコンシュマー向けプロダクトである。筆者はイラストレーターであるが、日頃タブレットは使用していない。今回、発売に先駆けて「Bamboo Fun」(Medium)の評価機を借用する機会を得たので、タブレット初心者の視点からレビューをしてみたい。なお、レビューではWindows XPのノートブックで使用してみた。

【18時8分訂正】記事初出時、発売日を10月7日としておりましたが、正しくは10月3日です。お詫びして訂正します。

暖色系の色合いがほっとさせてくれるパッケージ パッケージ背面。タブレットの使用法が書かれている。指で操作できることが写真でアピールされている

●新しくなった外観
ノートブックの横に置いた状態。本機はMediumサイズで、A4サイズより少し大きい程度だ

 新しくなったBambooシリーズは、これまでの象徴的だった中央のホイールがなくなり左右非対称になった。まず目に付くのがその薄さと形状だ。薄さを感じるフラットなデザイン。入力装置なので、ある程度薄いのは当然なのかもしれないが、なだらかな曲面によってさらに薄く見えるよう、視覚的効果を高めている。アーティステックな外観に仕上げたプロダクトデザインは好感が持てる。

 他方、コンシューマ向けということで、親しみやすさも忘れていない。Bamboo Funには独立したペン置きのようなものは付属していないが、本体の端に、ジーンズのポケットに付くネームタグのようなペンホルダーがあり、ここに差し込んで保管できるようになっている。実用的なパーツであるが、カジュアルでケータイのストラップのような存在感があり愛着が湧く。

 残念ながらBamboo Funには持ち運び用のポーチはついていない。Bambooと同じように、保護という観点から、本体デザインにマッチした見栄えのいいポーチがあれば良かったように思う。

入力面の端に4つのボタンがあるのみ。シンプルだ。2つ目と3つ目のボタンの間にLEDが点灯する 本体側面。単に薄いだけでなく、薄く見えるようにデザインがなされている。なだらかなカーブが美しい
端についているペンホルダー。ネームタグのようである ペンを指した状態

●ドライバインストール〜設定は簡単、シンプル

 本機のドライバのインストールについては面倒な操作が全くなかった。付属のディスクやガイドブックを納めている箱の上には、3つのアイコンで使用方法が示されており、万が一、全くマニュアルを読まずに始める人がいても、ドライバディスクを入れ忘れることはないだろう。

 インストールを始めると、利き手を設定する画面が表示される。これによってファンクションキーをどちらの手で操作するか決められる。筆者は右効きであるが、このようなユニバーサルデザインに対応したデバイスには感心する。これまでの左右対称の「Bamboo」シリーズのファンも安心して乗り換えられるだろう。

付属ディスクのパッケージ記されているインストール手順 インストーラーのメニュー画面 インストール中に利き手の設定をする

●わかりやすいチュートリアル

 インストールが終わると早速使いたくなるところだが、筆者はタブレット初心者なので、インストールCD-ROMに納まっているチュートリアリルを受けた。このチュートリアルではマルチタッチ・ジェスチャーと呼ばれる指先によるコントロールと、ペンによるコントロールの基本を学ぶことができる。時間にして30分程度なのだが、たいへん分かり易く、ある程度の説明ごとに、擬似デスクトップによる演習を行なうステップバイステップの方式なので、基本動作を一通りスムーズにマスターできた。

チュートリアル画面。アニメーションと音声でわかりやすく解説 説明のあとにはすぐ演習。もし間違えてもヒントで教えてくれ。 ほんの30分でメキメキ上達できる

●新インターフェイス、マルチタッチ・ジェスチャーが快適

 新しくなったシリーズはペンだけではなく、直接指先でタブレットをなぞって自由自在な操作ができるようになった。タブレットPCや、iPhoneなど流行のタッチ式デバイスのように、2本指での操作を可能にしている。

 デスクトップ上では、ファイルの選択や移動、ファイルの閲覧も、指先をタブレット上で滑らし、クリックしたいところで軽くたたくだけでよい。また、2本の指を滑らせる事で、上下左右方向のウィンドウスクロールも可能となっている。さらにアプリケーションが対応していれば画面の拡大/縮小をすることもできる。

 これらの操作は横に並んでいるファンクションキーを全く必要としないので、ガジェット的にも楽しいし、大きなタッチパッドとして捉えれば、ノートブックについているものより操作感も格上である。

 対応しているアプリケーションは付属の「お絵かき系」以外にもウェブブラウザのほか、Google EarthやOffice(2003以降)など、幅広い。ちなみに、筆者のWindows XP搭載PCのようにメモリが少ない旧機種でも、全くラグなく快適に操作ができた。これまでのBambooシリーズにはマウスが付属していたが、このタブレットがあればマウスを使う必要はないだろう。

ウェブサイトやブログなど縦長いページに便利。スクロールや拡大/縮小が可能である 画面の拡大/縮小にもマルチタッチ・ジェスチャーが活躍

●初心者にはやや慣れが必要なペン操作

 付属のペンを使って操作をしてみた。付属のペンは、体感的な重さは少し立派なボールペンか万年筆といった感じであり、コードレス、電池レスだ。ペンでのカーソル移動の場合は、タブレットの表面を滑らせる指での操作と違って、タブレットの表面3〜5mmほど浮かして操作する必要がある。タブレットとペンが接しているときはマウスでの左クリック状態と認識されるので、ドラッグ状態になってしまうためだ。

 またマルチタッチ・ジェスチャーで操作しているときは気にならなかったが、タブレットとモニターの座標が相対的になっているので、例えば「スタートメニュー」のような左下のアイコンを選択するときはタブレットの左下端、ウィンドのクローズボタンを選択する場合はタブレットの右上端と、タブレット全体を駆け巡る必要がある。タブレット自体がそんなに広い訳ではないが、マウスや指での操作が手首だけなのに対して、肘や、肩の運動も必要となるので、慣れが必要となる。

 筆圧感知についても少し注意が必要だ。新Bambooシリーズは筆圧感知レベルが512から1,024に拡張されており、筆圧の強弱をつければ手書きのような線が引ける。ただ、グラフィックアプリケーションで絵を書く際、デフォルトの筆圧感知の設定では、筆者の筆圧が弱く感知され、多少筆圧をかけて描かないと細い線になってしまった。

 強くこすると、静かな環境の場合、ペン先とタブレットの摩擦音とテクスチャ感が気になった。これはタブレットの表面がマット仕様によるものと考えられるが、強く擦ることで表面が傷つくのではないかと筆者のみならず、初心者は心配するかもしれない。だが、実際は従来のBambooシリーズよりタブレット面の耐久性が強くなっているらしく、傷はつかないようだ。なお、強く擦り続けるとペンの芯のほうがすり減るらしく、替芯が3本付属されている。気にせずしっかりグリグリ描いていこう。

 ペンには側面に2つの役割をするスイッチと、上部に消しゴムの役割をするスイッチが付いている。今回はこれらのスイッチをあまり使う事が無かった。設定によって有効に使う事ができると考えられるのだが、これらのスイッチもペン操作に慣れないうちは握ったときに押してしまったりして、誤操作につながってしまう。むしろ初心者のペン操作としては、タブレットのタッチ面の端にあるファンクションキーを上手に組み合わせて使ったほうがうまくいくように感じた。

 ペンタブレットを完全にモノにするには少し時間がかかりそうだが、描いていきながら自分のペンの設定やファンクションキーのボタンの割り当てなどを調整していくことで、自分好みのタブレットになっていくだろう。

付属のペン。しっかりした持ちごたえだ 筆圧やボタンの割り当ての設定はコントロールパネルでできる。筆圧などをうまくカスタマイズしたい 付属のペン先の替芯と芯抜き。すり減ると取り替えられる

●初心者でもハマる! 写真にラクガキ

 ペンタブレットの購入理由でもっとも多数と思われるのはコミックやイラストの入力デバイスとしての用途であるが、ペンによる入力に慣れるまで、少し時間がかかるのではと感じた。

 他方、撮影した写真などにラクガキやメッセージを書き加えるのは容易だ。こちらは既に画面が埋まっているので書ききれない部分があっても問題なく、気軽に始められるからだ。ヘタでも失敗しても愛嬌ある感じになるので、楽しみながら手が進むし、そうする中でペン操作に慣れることができる。グリーティングカードやブログ、写真共有など、趣味に活用するとよいだろう。

写真にメッッセージを加えるのは楽しい

●ペイントソフトで発揮されるペンの動き

 ペンの設定を整え、慣れてくれば、手描きのように自由に絵を描く事ができる。Bamboo Funにはタブレットの特性を活用できるペイントや写真補正、動画編集のアプリケーションが多数付属しているので、ペンに触れる時間が長いほどより深い楽しみ方が広がる。

 特にペイントソフトでは、筆や鉛筆、パステルなど筆の種類や、筆の太さなどを設定して、ペンでの操作で本当の画材で描いているように再現できるだろう。レビューの試用時間内では、透明水彩絵の具のようなたっぷり水気を含んだぼかしや、にじみを充分に活かしたような表現が難しく、単純に水性マーカーで描いたような感じになってしまった。この点についてはノウハウとテクニック、それにハイエンドなペイントソフトが必要なようだ。

 他方、鉛筆やパステルなどの固めの画材の描写は初心者にも快適だ。間違えたら何度でも完全に消せるし、鉛筆のあとも全く残らない。粗さや透明度を変えれば重ね塗りのような表現も可能だし、実際のパステルのように色を重ねすぎて色が濁ることもない。ペンの動かし方、力のかけ方で表情のある線を重ねることができる。

 筆者は普段画材の素材感を活かすようなイラストを描いてないのだが、素材の雰囲気が出るようなイラストにチャンレンジしてみたくなる魅力がペンタブレットとペイントソフトの連動にはある。

Corel Painter Essentials 4を使用してみたところ。筆圧検知のおかげで手描きのようなイラストを描くこともできる

●初心者は買って損無し

 短いレビューの期間では充分にペンタブレットに慣れたわけではないが、タッチパネルの機能だけでも充分に面白いアイテムであるといえる。Windows XPでもタッチパネルによる操作によってWindows 7のタブレットPCや最新型のデバイスのような面白い操作、快適な操作を味わう事ができる。マウスが無くても全く困らなくなる。

 特にホームユースでノートブックを使用している人にはお薦めである。小さなトラックパッドで無理な角度で親指でクリックすることより、大きなタブレット上で自由に動かすことの快適さを感じることができるだろう。

 また、パソコンをメールとネット閲覧程度しか使わないユーザーにとっても、写真に書き加えるような使い方によって、写真交換や日記、ブログ、さらには料理等のハウツーなど、自分発信の情報もおもしろみが増えることうけあいである。家族でPCを「寝かしてしまっている」人に薦めてみるのもよいのではないだろうか。有意義な使い方が見つかるかもしれない。もちろん、絵を描く事を趣味とする人にとっても、最初の、そして最新のタブレットとして活躍するはずである。

 仕事で使用するにも問題ないようだ。ただし、付属のアプリケーションはいずれも初心者、ホームユース用なので、別途ハイエンドのアプリケーションの購入が必要だ。

 最後に敢えて問題を挙げるとするならば、本体がA4サイズ程度の大きさなので、作業スペースをかなりとってしまう点だ。Smallサイズの小さなタブレットもあるが、おそらく大きなMediumサイズのほうが操作はしやすい。筆者はPCの作業スペースが狭いため、今回、打合わせ用のテーブルで試用した。タブレット購入の際には予め設置スペースを考えたい。

(2009年 9月 24日)

[Reported by 山本 州(raregraph)]

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