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【特別企画】容量不足? バックアップ? まとめてSynologyのNASが解決!

~今日から始めるNAS生活 前編:NASのイロハ

 ここ数年でストレージ界の一大勢力となってきた「NAS」。慣れた外付けHDDや手軽なクラウドではなく、わざわざNASを選ぶメリットはどこにあるのだろうか? 前編となる今回は、「NASってどうなんだろう?」という漠然とした疑問を持っている人に向け、Synologyの協力の下、NASのイロハをお届けする。

データの保存先やバックアップ先にお困りのあなたに

 「撮り貯めてきた写真やビデオでHDDの空き容量が限界。いい加減DVDに書き出すのも疲れた……」。

 「iPhoneでiCloudバックアップの容量不足が表示された。容量追加に料金を支払うかどうか迷ってる……。」

 このように、データの保存先やバックアップ先の容量不足に頭を悩ませている人も少なくないことだろう。

 もちろん、PCなら、内蔵、外付けを問わずHDDを交換/増設するという手もあるが、ノートPCやタブレットが主流になりつつある現在では、内蔵の交換は難しく、外付けの場合もケーブルで機動性が失われることを考えると、決して最適な解とは言い難い。

ノートPCやタブレットが主流になってきた現在では、機動性が失われる外付けHDDは決して最適な解とは言い難い

 一方、スマートフォンだけでなく、PCでも利用する機会が多いクラウドストレージも、無料で使える容量は数GBと限られているため、本気で使おうとすると、結局のところ有料サービスへの加入が避けられなくなる。料金はサービスによって差があるものの、1TBほどで月額1,200円前後。年間で1万円を超える出費が継続的にかかることを考えると、これも即断できないところだ。

 しかも、最近では、データを単に保存するだけでなく、安全に保管することが重要視される時代になってきた。

 PCの故障やスマートフォンの紛失、SSD/HDDの劣化など、誰の身にも起こりうるトラブルから大切なデータを守るには、単にデータを保存するだけでなく、二重三重にデータを複製して保管したり、いろいろな場所に分散して保管することが求められる。

 また、少し前に話題になったランサムウェアなど、データを勝手に暗号化して身代金を要求するような悪質なマルウェアに感染した場合、仮にマルウェア本体を駆除できたとしても暗号化されたデータを復元することは困難だ。万が一、被害を受けた場合は、過去のバックアップからデータを復元するしかない。

 このような被害に備えるにはデータのバックアップが必須で、これもローカルのストレージやクラウドのバックアップ領域を大きく圧迫する要因となってきている。

 そこで注目され始めてきたのがNASだ。

 文字通り、ネットワークに接続するストレージとなるNASは、もともと企業でデータ共有やバックアップの目的で使われてきた経緯もあり、大容量を実現しやすい上、RAIDなどでデータの安全性を確保でき、最近ではスナップショットによる履歴管理やクラウドとの連携も可能になっている。

 ネットワーク経由でさまざまな機器から使えるのも大きなメリットで、「PCは外付けHDDでスマートフォンはクラウド」などといったように、これまで個別に用意してきたデータの保管/バックアップ先をNASに統合できる。1台で複数台、さまざまなプラットフォームのデータ保存先/バックアップ先として活用できるため、ストレージ環境をシンプルにできるのも大きなメリットとなる。

 現状、何らかの理由で、データの保存先やバックアップ先に悩みを抱えている場合、NASという選択肢が、その解決策となる可能性が大きいわけだ。

PCやスマートフォンのデータ保存先として注目が集まっているNAS。さまざまなプラットフォームから使えるうえ、データの保管、バックアップ、メディア配信と、複数用途に活用できる

外付けHDDやクラウドと比べたNASの優位性とは?

 とは言え、価格を考えると圧倒的に外付けHDDの方が有利だし、運用管理が不要なクラウドのメリットも大きい。NASの優位性はどこにあるのだろうか?

 以下の表は、データの保存やバックアップを目的とした3つのソリューション(外付けHDD、クラウドストレージ、NAS)の特徴を比較したものだ。

【表1】ストレージの特徴
外付けHDDクラウドストレージNAS
設置場所PC付近クラウド家庭内/社内
クライアント主にPCPC/スマートフォンPC/スマートフォン
インターフェースUSB/eSATA/ThunderboltWANLAN
接続形態1対11対多1対多
共有・外部アクセス×
速度×
代表的な容量1~6TB5GB~1TB~
用途データ保存・バックアップデータ保存・バックアップ多種多様
初期導入費用1万円前後(2TB)なし本体2.5万円(2ベイ)+HDD1.5万円(3TB×2)
月額費用なし1,200円前後(1TB)基本的になし
初期設定簡単(接続)簡単(アプリ設定)やや手間
メンテナンス基本的に不要不要必要
データ喪失の恐れ可能性あり限りなく低いまれにあり

 こうして比べてみると、NASの柔軟性が改めてよく分かる。家庭内への設置が必要になるが、その場所はネットワークで接続可能な範囲となるため、置き場所を選ばない。対応するプラットフォームも豊富で、PC、スマートフォンはもちろん、TVやSTBなどからのメディア共有なども可能。外出先からのアクセスも可能になっている。

 外付けHDDに比べて価格は高いものの、複数ドライブを備えることから容量的には圧倒的に優位。もちろん、クラウドのようにメンテナンスフリーではなく、データが消失する可能性も「ゼロ」とは言えないが、最近のNASやHDDは信頼性が高くなっているため、滅多なことではデータが消えてしまうようなトラブルには見舞われることはないだろう。

 唯一の懸念となりなそうなのは、設定や使いこなすのが「難しいのではないか?」という点だが、これも心配は不要だ。

 最近のNASは、HDDの装着から、OSのインストール、最低限の設定、データの保存やバックアップといった基本的な使い方はもちろんのこと、外出先からのリモートアクセスやスマートフォン対応、各種クラウドサービスとの連携など、高度な機能ですらグラフィカルな設定画面から、ウィザードを数クリックするだけで設定できるようになってきる。

 さすがに、繋ぐだけで使える外付けHDDほどではないが、普段、PCやスマートフォンを使って、さまざまな作業が問題なくできるレベルなら、問題なくNASを使いこなすことができるだろう。

注目が集まる海外製NAS

 では、具体的にどのようなNASを選べばいいのだろうか?

 現状、NASは大きく2つの勢力に分かれている。1つは古くから存在する国内周辺機器メーカー製のNAS、もう1つはこの1~2年で急に存在感を高めてきた海外製のNASだ。

 国内の中小のビジネスシーンでは、販売網やサポート網が充実している国内メーカーの存在感が大きいが、個人向けでは、むしろ海外製のNASの人気が高まりつつある。

 実際、価格調査サイトのランキングなどを見ても、NAS全体のランキングで売れ筋1位となっているのは「Synology」の「DiskStation DS216j」となっており、国内メーカーを押さえて海外メーカーがトップを獲得している。

最近、人気の高いSynologyのNAS。左のDS216+II(黒)は右のDS216j(白)よりもCPU性能が高く、4K動画のエンコードなども行ないたいヘビーユーザーにお勧め

 「Synology」というメーカーに馴染みがない人もいるかもしれないが、台湾に本社を置く同社は、海外では非常に知名度が高く、特にソフトウェアの開発能力の高さでは高い評価を受けているNASベンダーだ。

 現在、主流となっているデスクトップ風のGUIをいち早く採用したのもSynologyである上、スマートフォン向けのアプリはAndroidやiOSだけでなくWindows 10 MobileやApple TV向けのアプリも開発されていたりと、その圧倒的なソフトウェア開発力に定評がある。

 NASのトレンドを作るアイデアも豊富で、最近では、ブラウザから使えるOfficeアプリ(文書作成、表計算)を搭載したり、開発者にはなじみの深いslack風ビジネスチャットアプリをNASに提供するなど、他社が後から追従するような革新的な機能を積極的にNASに投入するメーカーとしても知られている。

デスクトップ風のUIをいちはやく採用するなどソフトウェア開発力の高さで知られるSynologyのNAS。機能も非常に豊富

 実際にどのような機能が使えるのかをまとめたのが以下の表だ。データ保存やバックアップといった基本はもちろんのこと、マルチメディアや生産性、各種サーバーなど豊富な機能を備えている。

【表2】SynologyのNASの主な機能
保存データの保存、同期、検索
バックアップクライアントバックアップ、履歴保持、TimeMachine、スナップショット、クラウドバックアップ
共有ファイル共有、ファイル転送、共同作業
マルチメディア写真管理、音楽管理、動画管理、動画トランスコード
生産性メール、カレンダー、チャット、オフィス、ノート
管理アカウントとグループ管理、AD/LDAP連携
ネットワークリンクアグリゲーション、クイックコネクト、DDNS
サーバー機能DHCPサーバー、DNSサーバー、Syslogサーバー、Webサーバー、プリントサーバー、メールサーバー、RADIUSサーバー、Directoryサーバー、VPNサーバー、プロキシサーバー、SSOサーバー
セキュリティクラスタリング、ファイアウォール、IDS、2段階認証、SSL証明書、アンチウイルス
モバイル対応DS finder、DSM mobile、DS cloud、DS file、DS cam、DS photo、DS video、DS note、MailPlus
アドオンパッケージ多種多様(別表参照)

 中でも、アドオンパッケージが使えるのは、海外メーカーらしいポイントだ。主なアドオンを以下の表に掲載するが、これらの機能は全てパッケージとして提供されており、スマートフォンでアプリを追加する場合と同じ感覚で、設定画面からワンクリックで簡単に導入できるようになっている。

 かつて、自宅にサーバーを設置していたようなヘビーユーザーであれば、似たようなオープンソースのソフトウェアをコマンドを駆使してサーバーに導入した経験があるかもしれないが、SynologyのNASなら、インストールに苦労したり、最低限のセキュリティを保った設定を調べるなどという無駄な苦労をしなくて済むわけだ。

パッケージを追加することでさまざまな機能を簡単に追加できる
【表3】主なアドオンパッケージ
カテゴリアドオン内容
バックアップCloud Station ServerPCやスマートフォンとデータを同期
Cloud Station ShareSyncNAS同士で共有フォルダを同期
Cloud Syncクラウドサービスとデータを同期
Hyper Backupスナップショット機能などを備えた高度なバックアップ機能
マルチメディアAudio Station音楽データの参照や再生
iTunes ServeriTunesのサーバー機能
メディアサーバーDLNAサーバー機能
Photo Station写真データの管理や参照
sMedio DTCP Move保護された番組のDTCP-IPムーブ
Video Station動画データの管理と再生
ビジネスMailPlus/MailPlus Serverメールサーバーとクライアント
Office文書と表計算アプリ
Calendarカレンダー
Chatビジネスチャット
Note Stationメモアプリ
ユーティリティCardDAV Server連絡先の同期
CMS複数台のNASの管理
Directory ServerLDAPによるアカウント管理
DockerDockerによるコンテナ型仮想環境
exFAT AccessexFAT対応の外付けドライブ対応
MariaDBデータベースサーバー
Wordpressコンテンツ管理
セキュリティAntivirus Essentialアンチウイルス
Intrusion PreventionIDS/IPS
Surveillance Station監視カメラの管理

 このほか、Synologyだけでなく、海外製のNASはHDDレスで販売されるため、自分の使い方に合わせてHDDを選べるというメリットもある。最近ではHDDの故障率が話題になることもあるが、それを参考に搭載するHDDを選んだり、予算が許せば10TBのHDDなども選択可能。予算やニーズに合わせて選択できる自由がある。

 HDDの増設やアップグレードも簡単で、ホットスワップに対応したモデルなら、稼働中かどうかに関わらず、空いているスロットにHDDを追加して容量を拡張でき、1台ずつであればHDDをより大容量のものに交換することも簡単にできる。最初は1~2TBのHDDでスタートして、将来的に4TB、6TB、さらに10TBなどとアップグレードしていくこともできる。

 しかも、SynologyのNASは、この逆も可能で、特定のモデルで使用中のHDDを取り外して、別モデルに装着してもデータや設定を維持したまま稼働させることができる(簡単な設定が必要)。本体の故障に対応しやすい上、将来的により高性能なモデルに買い換えてもデータを維持するのが容易だ。

 もちろん、コストを重視したり、サポート体制を重視したりと、NASを選ぶポイントは用途や好みによって異なる。バックアップなど特定の用途に使うことが決まっているなら、単機能でシンプルな製品を選ぶのも1つの方法だ。

 しかし、せっかくNASを導入するのであれば、ほかにはない革新的な機能をいち早く体験でき、柔軟性も高い製品を選んでおいた方が、後々、用途が拡大した時でも対応しやすいだろう。

HDDを自分で選んで、自分で装着可能。大容量化も簡単。内部に装着するタイプ(DS216j、左写真)とトレイで前面から装着するタイプ(DS216+Ⅱ、右写真)がある

基本のファイル共有とバックアップだけでも満足度は高い

 「いや、容量不足を解消したいだけなので……」、「バックアップさえできれば十分」という場合でも、SynologyのNASを選ぶメリットは大きい。

 まず、性能が高い。最近では国内メーカーも、海外勢に対抗するために性能をウリにする製品が増えてきたが、SynologyのNASは、2万円前後のエントリーモデルでもシーケンシャルリードで100MB/sを超える製品がほとんどで、ほぼGigabit Ethernetの限界を上回る速度を実現できるようになっている。

 容量不足解消のためには、写真や動画などの大容量のデータを大量にNASへと移行する必要があるが、そういったシーンでも時間を無駄に浪費することはない。もちろん、複数台のPCからのバックアップなどでも同様だ。

DS216jのベンチマークテスト結果。有線LANで接続したPCからCrystalDiskMark 5.1.2を実行したところ、シーケンシャルで118MB/sをマークした

 用途やプラットフォームごとに、豊富なアクセス方法やツールが提供されるのもSynologyならではのメリットだ。

 例えば、ファイルの読み書きだけでも、Windowsファイル共有、Macファイル共有、ブラウザ(File Station)、スマートフォン用アプリ(DS file)などと複数方式が用意される。普段、PCからファイルを読み書きする時は共有フォルダを参照し、外出先から自宅にアクセスするときはブラウザからFile Stationを使ったり、スマートフォンからDS Fileでアクセスすればいい。

スマートフォン向けのアプリも提供され、さまざまなプラットフォームから利用可能

 Cloud Stationと呼ばれる同期機能を使えば、複数台のPCのフォルダやスマートフォンのストレージを同期させることも可能で、OneDriveやDropbox的な使い方もできる。

 バックアップも同様で、同社が無償で提供する「Cloud Station Backup」というソフトを利用することで、指定したフォルダのバックアップや履歴管理ができるほか、Windowsの「ファイル履歴」の保存先として設定したり、macOSの「Time Machine」のバックアップ先としても設定できる。

無償のツールも豊富に用意されており、バックアップもアプリを利用して簡単に実行できる

 つまり、主に使うプラットフォームが何であっても、さまざまな場所で使う可能性があっても、用途が何であっても、SynologyのNASなら豊富な機能によって対応できてしまうことになる。

 というわけで、前編となる今回はNASのメリットや特徴、実際の製品選びのポイントについて解説した。次回は、Synologyの2ベイNAS「DS216j」をベースに、実際のファイル共有やバックアップ方法について解説する。

製作協力:Synology