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幹線道路沿いの居住者に認知症発症のリスク

〜カナダの研究者らが指摘

 2017年1月4日(現地時間)、医学誌The Lancetに認知症の発症数のうち、最大で10%ほどが排気ガスなどによる大気汚染に起因するものであるという論文が掲載された。この論文は、カナダの公衆衛生についての研究を行なう公共企業「Public Health Ontario」に所属するHong Chen医学博士らが投稿したものだ。

 同研究は当初、幹線道路沿いに住んでいること、つまり排気ガスに暴露することと、多発性硬化症/認知症/パーキンソン病の3つの神経疾患との関連性を調査するものであった。

 調査手法は、約440万人の20-50歳からなる多発性硬化症調査群と、約220万人の50-85歳からなる認知症/パーキンソン病調査群に対象者をわけ、対象者の住居から幹線道路への距離を調べ、その距離と各神経疾患との関連を調査するというものだ。神経疾患の発症と幹線道路への距離への関連は、個人がそれぞれもつ糖尿病や頭部外傷など、幹線道路への距離以外の発症リスクを考慮できるCoxハザードモデルを用いて評価した。

 調査を開始した2001年から2012年までに、調査対象者のうち約24万人ほどが認知症と診断され、幹線道路から50mの距離に住んでたグループと、201m-301 mに住んでいたグループを対照群(基準)として比較した際、認知症を発症する確率は7%ほど上昇した(ハザード比1.07)。さらに、50m-100m群と対照群の比較では4%の上昇、101-200m群では2%上昇となり、幹線道路までの距離と発症する確率に有意な相関が見られたとしている。一方で、多発性硬化症とパーキンソン病については有意な相関が見いだせなかったと結論付けている。