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キログラムの「再定義」に向け新たな前進
~質量もいよいよ物理定数ベースに
2016年7月6日 12:59
質量の基本単位はキログラム(kg)だが、1kgの定義は「国際キログラム原器の質量」となっている。国際キログラム原器は金属の塊で、温度や電流など他の国際単位系と違い、唯一人工物を基準としている。人工物であるため、表面への吸着や洗浄など経年変化で僅かながら重量が変動してしまう。
そこで、キログラムに普遍的な物理量に基づいた定義を与える、つまりキログラムをより高精度に「再定義」する試みが以前よりなされている。2014年に開かれた国際会議で、キログラム再定義の決議が行なわれたが、精度が不十分と言うことで、2018年の会議へと繰り延べられた。
そういった中、米国物理学協会が6月に、キログラム再定義に向けた新たなマイルストーンに達したと発表した。
アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が開発した「NIST-4」と呼ばれる機械は、物質の質量とそれを釣り合わせるのに必要な電磁気力を比較することで、物理定数の1つである「プランク定数」を計測するものだ。プランク定数は、量子粒子の周波数とエネルギーの比例定数で、「h」で表わされる。そして、アインシュタインの相対性理論の帰結の1つである「E=mc^2」を用いて、hから質量を求めることができる。
このたびNIST-4は、初の計測を行ない、10億分の34という不確かさでhを求めた。2017年までには不確かさを10億分の20にまで減らせる見込みだという。
hの求め方には、原子の数を数える方法もあり、別の共同研究グループは、この方法でhを10億分の20の不確かさで求めている。
これらの研究結果の精度が国際会議で認められれば、計測で求められたプランク定数は不変の値となり、これまでは基準となる質量からプランク定数を計測していたのが、NIST-4などを用いてプランク定数から質量を計算することになる。また、極めてデリケートな扱いが求められるキログラム原器が不要となる。