イベントレポート
【詳報】Qualcomm、ウェアラブル向け新SoC「Snapdragon Wear 1100」を発表
2016年6月1日 10:00
Qualcommは、COMPUTEX TAIPEI 2016が開催されている台北市内のホテルで記者会見を開催し、2月に発表したスマートウォッチなどのウェアラブル機器向けSnapdragon Wearの最新製品となる「Snapdragon Wear 1100」を発表した。
Snapdragon Wear 2100はスマートフォン寄りの汎用ウェアラブル機器向け
Qualcomm Atheros スマートウェアラブルセグメント 上級部長のパンカジャ・ケディア氏は、同社のウェアラブル向けSoCについて説明を行なった。ケディア氏は「我々の技術に基づいた製品は100種類以上登場しており、現在販売されているAndroid Wearスマートウォッチの80%がQualcommのSoCベースとなっている」と述べ、Qualcommのウェアラブル市場に対する真剣さを強調した。
現在一般的にスマートウォッチと呼ばれているものは、Appleの「Apple Watch」、Googleの「Android Wear」、「Tizen」などのそれ以外のOSを採用しているものに大別される。
Qualcommは特にAndroid Wearに強く、同社のSnapdragon 400は、ASUSのZenWatchシリーズ、LGのWatch Urbane、ソニーのSmartWatchシリーズなどに採用されている。従来はTIのSoCを採用していたMotorolaのMoto360も第2世代からQualcommのSnapdragon 400に切り替わるなど、Android Wearの世界では同社のSnapdragon 400が業界標準と言ってよい存在だ。
しかし、Snapdragon 400自体は元々はスマートフォン向けに作ったSoCで、スマートウォッチ用としては強力すぎる性能を持っており、スマートウォッチで使うには消費電力が大きい。このため、ウェアラブル専用のSoCとしての製品が設計され、新ブランド「Snapdragon Wear」が冠せられたのだ。
ケディア氏は「我々はウェアラブル向けのSoCをゼロから開発した。このため、新しいサブブランドが必要だと考え、“Snapdragon Wear”のブランド名を新しく作った。その最初の製品が2月に発表したSnapdragon Wear 2100となる」と述べ、サブブランドを作った意図を説明した。
Snapdragon Wear 2100は、Cortex-A7のクアッドコアに、各種センサーコア、カテゴリ3までのLTEモデムを内蔵しており、OSとしてはAndroidないしはAndroid Wearが動作する。ケディア氏によれば、ターゲットとされているのはスマートウォッチなど、よりスマートフォンに近い汎用のウェアラブル機器になるという。
Snapdragon Wear 1100はより低消費電力なデバイスをカバー
そして、今回のCOMPUTEX TAIPEI 2016の記者会見で新たに発表されたのが、「Snapdragon Wear 1100」という新しいSoCだ。
Snapdragon Wear 2100はCortex-A7のクアッドコアを採用しているが、Snapdragon Wear 1100ではCortex-A7のシングルコアになっていること、さらにLTEがカテゴリ1までとなっている点が特徴だ。これにより、ダイサイズを小さくできるので、パッケージも縮小可能なほか、消費電力も少なくなるというメリットがある。従来キッズ用のスマートウォッチなどで使われていたQualcommの6270/1655ではダイサイズが144平方mmだったのに対して、Snapdragon Wear 1100は79平方mmへとコンパクトになっているという。
ケディア氏によれば、Snapdragon Wear 1100のOSは、LinuxとRTOSとなっており、Android WearのようにリッチなUIなどは必要としない機器向けになるということだ。想定されているのは、子供用のスマートウォッチや、Fitbitのようなアクティビティトラッカーなどで、容量の小さなバッテリでも長時間駆動が可能な用途での利用を考えている。
ケディア氏はSnapdragon Wear 2100/1100を搭載した製品を提供するパートナーとして複数の企業を紹介。ODM/OEMメーカーにリファレンスデザインを提供するプラットフォームパートナーとしてBorqs、infomark、Aricent、SurfaceInkが、Snapdragon Wear 2100/1100を搭載した製品をリリースするパートナーとしてanda、infoMark、inWatch、Sk Telecom、weBandzなどが挙げられた。
なお、今回は大手OEMメーカーというよりは、ODMメーカーや設計専業のベンダーなどが呼ばれており、今後OEMメーカーへの売り込みが図られることになる。通常、9月の上旬に行なわれるIFAがこうしたコンシューマ向け機器のお披露目の場になることが多いので、Snapdragon Wear 2100を搭載したデバイスはそうしたところで登場してくるのではないだろうか。