イベントレポート

クロスプラットフォーム開発ツール「Xamarin」が無償化

クロスプラットフォーム開発ツールXamarin

 アメリカ サンフランシスコで開催されているソフトウェア開発者向けカンファレンス「Build 2016」。その2日目の基調講演は極めて開発者寄りの内容だった。

 おなじみの赤いシャツを着て登壇したのはクラウド&エンタープライズグループ担当バイス プレジデントのスコット・ガスリー氏だ。ガスリー氏は、ハイパースケールプラットフォームとしてのAzureを強調し、あらゆるサイズの企業にとって、選択とその柔軟性をもたらすとアピールした。Azureは、Fortune 500の85%以上の企業が賛同するMicrosoftのクラウドサービスだ。

クラウド&エンタープライズグループ担当バイス プレジデントのスコット・ガスリー氏
広大な敷地に広がるAzureクラウドの拠点の1つ
Azureはあらゆるものをエンタープライズにもたらす
選択と柔軟性が特筆すべきAzureの特徴
現在のAzureの状況

 この日、ガスリー氏から明らかにされたハイライトはXamarinの無償化だ。

 昨年(2015年)のBuild 2015において、Microsoftは“Windows Bridge”構想を明らかにし、JavaやC++のコードで書かれたAndroidアプリをUWPに橋渡しする「Project Astoria」、Objective Cで書かれたiOSアプリをUWPに橋渡しする「Project Islandwood」を声高らかに打ち上げた。だが、その進捗は頓挫に近い状態だった。特に、Astoriaは、AndroidアプリをAPKファイルからGoogleサービスをMicrosoftの同等サービスに置き換え、サブシステムを使って直接UWPとして動作させる野心的なことを考えていただけに、そのフェードアウトが懸念されていた。

 昨年の発表時は、日本マイクロソフト執行役デベロッパーエバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏から「ほかのプラットフォームと統合などといっている場合ではない。なりふりかまわず何でもやる」といった言葉も聞かれたほどで、会場が大喝采に包まれたのを記憶している。

 そんなMicrosoftが、代替ソリューションとしてXamarinを買収したことを発表したのはつい先月の2月のことだ。クロスプラットフォーム開発の世界ではよく知られるソリューションで、以前からMicrosoftとは密接なパートナーシップを結び協業してきた経緯がある。

 今回の基調講演では、iOSアプリの開発デモが披露され、リアルタイムでコードの変更が反映されるシミュレータでデバッグする様子で会場を沸かせた。

 そして、そのデモに続き、ガスリー氏がその買ったばかりのXamarinを無償で提供する宣言をしたのだ。具体的には「Xamarin for Visual Studio」が、VS Enterprize、Professional、そして、Community Editionに無償提供されるという。もちろん会場は大歓声に包まれた。

 さらなる驚きは、Xamarinのランタイムをフルオープンソース化するという発表だった。

 基調講演では、「Xamarin Test Cloud」のデモも披露された。こちらは、デバッグテストをログとして記録し、それをテストクラウドに送り、端末の種類を選べばシナリオとしてのログをプレイするだけで端末ごとの動作確認ができるというものだ。Gathrie氏は、これでデバッグの世界が一気に変わると興奮気味に語った。

 一方、IoTについても触れられた。BMWの事例が紹介され、Azureを使った同社のサービスが、この当日から全米のBMWオーナーにアプリが提供されることが発表された。

 また、Azure FunctionのPreviewの開始、Azure IoT UpdateやAzure Servece Fabricなどをアナウンス、Azure Functionのデモでは、クラウドからデモンストレータの着ているシャツにコマンドを送り電飾をオンにするといった様子が披露された。

シミュレータを使った開発デモ
Xamarinが無償提供されることがアナウンスされた
さらにランタイムがオープンソース化
デバッグ環境としてのXamarin Test Cloud
端末を選んでシナリオログを走らせることができる
Azureを使ったBMWアプリの概念図
今日から全米のユーザーにアプリを提供
シャツに電飾をともしたAzure Functionのデモ

(山田 祥平)