LucidLogixがVirtuの新技術「Virtu Universal」をアナウンス
「Virtu Universal」および新技術「Virtu Vsync」のロゴ |
会期:5月31日~6月4日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
Taipei International Convention Center
マルチGPUテクノロジーを提供する企業として認知度を高めているLucidLogix。このLucidLogixの創業者兼社長のOffir Remez氏から、同社が次に提供を予定しているアップデートの概要およびデモの説明を受けたので、その内容を紹介する。
●Intelだけでなく、AMDでもノートブックでも利用できる「Virtu Universal」Intel Z68で利用できる機能として注目されたVirtuは、CPU内蔵GPUと外付けビデオカードをWindows上で仮想的に動作させ、動的に切り替えて利用するもの。例えば動画エンコード時は内蔵GPUを利用し、ゲーム実行時には外付けGPUでレンダリングする、といったことを行なえる。ただしこのVirtuは、第2世代Coreシリーズのデスクトッププラットフォームでのみ利用可能なテクノロジーだ。
このVirtuの普及についてRamez氏は、COMPUTEXで40製品を超える採用マザーボードを見ており、おそらくIntelプラットフォーム製品の半数がIntel Z68、45%がIntel H67になっているとし、今後のさらなる促進に期待を寄せた。
そして、今回のアップデートの1つは、このサポート範囲を広げるというもの。「Virtu Universal」と呼ばれる製品で、提供開始は7月中旬を予定している。
サポート範囲は現在使われるPCプラットフォームのすべてをカバーするといっても差し支えないもの。CPUまたはチップセット内蔵グラフィックスを持ち、PCI Express接続でのビデオカードが利用できる環境であれば、デスクトップ・ノートブックを問わず利用できるようになる。CPUはIntel/AMDを問わず、チップセットやCPU内蔵グラフィックスもIntel、AMD、NVIDIAのチップセットをサポート。Intel G41などの旧来の環境でも実行可能だ。
また、今回のCOMPUTEXでマザーボードが展示された、AMDの次世代APU「Llano」や、Bulldozerアーキテクチャに基づくCPUである「Zambezi」(いずれも開発コードネーム)でのサポートも表明。もっとも後者に関してはGPUをCPUに内蔵していないため、チップセットでの対応ということになる。
またノートブックへのサポートに合わせ、モバイル環境におけるパワーマネージメント機能も実装した。CPUまたはチップセット内蔵グラフィックスでの処理実行中には、外付けビデオカードをシャットダウンして電力を抑制するというものだ。NVIDIAのOptimus Technologyでも似た仕組みを採用していることは周知のとおりだが、Virtu Universalでは、NVIDIAがサポートしない環境でも同じような発想に基づく機能を利用できるようになる。
現行のVirtuに対し、多数のプラットフォームをサポートするVirtu Universalの特徴 | Virtu Universalで採用されるVirtu Control Panelの新しいユーザーインターフェイス。左が現在のユーザーインターフェイス | こちらは新しいユーザーインターフェイスにおけるプロファイル管理のタブ |
●垂直同期のフレームレートリミットなしにティアリングを回避できる「Virtu Vsync」
もう1つのアップデートが「Virtu Vsync」と呼ばれるテクノロジーを実装することだ。
ディスプレイの垂直同期(V-Sync)をオフに設定した状態で3Dゲームをプレイすると、ディスプレイの表示更新前に次のフレームが送られてきてしまうために、画面上に描画のズレが生じるティアリングと呼ばれる現象が起こることがある。垂直同期をオンにすれば基本的にはティアリングが発生しなくなるものの、一方でフレームレートのリミットがディスプレイのV-Sync(60Hz=60fps)で頭打ちになる。また、表示の更新間隔が遅くなることによりマウスやキーボードのレスポンスが悪くなったように感じることにもなる。例えば60Hzであればレスポンスは16.6msということになる。
Virtu Vsyncは、ティアリングを発生させず、かつフレームレートのヘッドルームも取り払うというテクノロジーだ。
その仕組みは、簡単にいえば、内蔵GPUがディスプレイ処理を担当、外付けGPUがレンダリングを担当することで実現する。
まず、CPU/チップセット内蔵GPU側をV-Sync有効、外付けGPU側をV-Sync無効に設定し、ディスプレイをV-Syncを有効にした側へ接続する。内蔵GPUではレンダリング処理における冒頭および最後の数パートを処理させ、大半の処理を外付けGPU側で行なう。ディスプレイコントロールはV-Syncを有効にした内蔵GPUで行ない、ディスプレイへ出力するのである。
レンダリング処理の一部は内蔵GPUでも処理されるが、このステージはDirectXに依存しない部分であるため、例えばDirectX 10対応の内蔵GPU、DirectX 11対応の外付けGPUという組み合わせにおいて、DirectX11対応タイトルを実行することも問題ない、とRemez氏は説明している。
パフォーマンスのサンプルとして、V-Sync有効時のフレームレートを60fpsとしたときの差で、Batman Benchmarkにおいて2.35倍、H.A.W.Xで2.18倍、Resident Evil(バイオハザード)5で1.46倍などのデータが示された。
またデモにおいては、Core i5-2540M+GeForce GT 540M、Core i7-2630M+GeForce GT 540Mの2つのノートPCで、前者でVirtual Vsyncを有効、後者が単純にV-Syncを有効にした状態で比較。性能がより低い環境である前者のほうが高いフレームレートを発揮するということを示している。
(2011年 6月 6日)
[Reported by 多和田 新也]