【COMPUTEX 2011レポート】
【VIA Technologies編】VIA QuadCore搭載ノートPCや子会社製ARM SoC搭載タブレットなどを展示

TICCの二階に設置されていたVIA Technologiesのブース

会期:5月31日~6月4日(現地時間)

会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 5月に、1つのパッケージ上に2つのCNQダイを統合したクアッドコアプロセッサVIA QuadCoreを発表したばかりのVIA Technologiesは、COMPUTEXではTICC(Taipei International Convention Center、台北国際会議センター)に自社ブースを構え、搭載製品の展示を行なっている。

 展示の中心は、VIA QuadCoreを搭載した製品の展示だが、同時にVIAが発展途上国向けなどに出荷しているARMプロセッサを搭載したタブレット製品などを展示した。

●TDP18W、1GHzのVIA QuadCoreの実働デモを行なう、実際の搭載製品も展示

 今回のVIAブースの大きな目玉は、5月に発表したばかりのVIA QuadCoreだ。VIA QuadCoreの詳細は別記事を参照していただきたいが、簡単に言うとNano X2(開発コードネーム:CNQ)で知られるデュアルコアプロセッサのダイを、パッケージ上で2つに統合したクアッドコアCPUになる。IntelやAMDなどがリリースしているネイティブのクアッドコアのような形に比べると、性能的に有利ではない設計なのは事実だが、その代わりに低コストで製造することができるため、VIAにとって適した設計となる。

 VIAは5月の半ばの発表イベントの席上で、VIA QuadCoreを搭載した製品はCOMPUTEXで展示されると説明したが、公約通り、ノートPCと液晶一体型PC(AIO)が展示された。ただし、どちらも新規の製品と言うよりは、台湾のOEM/ODMメーカーがすでに発売しているNanoおよびNano X2を搭載した製品を、VIA QuadCoreに置き換えたという製品になる。

 VIA QuadCoreの最上位SKUとなるL4600(1.2+GHz)のTDPは27Wで、NanoおよびNano X2の最上位SKUと同じTDPになっている。さらに、パッケージサイズ、ピンともに互換となっているため、既存のマザーボードを利用して容易にクアッドコアにできる。

 また、今回VIAはオースティンの発表イベントでは公開していなかった、下位SKUとなる1.0+GHzの展示および実働デモを行なった。1.0+GHzのSKUは、TDPが18Wになっており、ファンレスでの駆動も可能になる。実際、今回のデモではヒートシンクだけで動いている様子が公開されていた。

 VIA Technologiesの副社長兼マーケティングディレクターのリチャード・ブラウン氏によれば「VIA QuadCoreは現在サンプル出荷中だ。第3四半期あたりから搭載した製品が市場に出回るだろう」と、出荷プロセスが予定通り進んでいることを強調した。

VIA QuadCoreのロゴVIA QuadCoreの1GHz+のデモ。TDPは18Wになるので、ファンレスでの動作も可能
台湾のODMメーカーが製造している「N17WA」。VIA QuadCore 1.0+GHz、チップセットはVX900、15型液晶を搭載した低価格向けノートPCQuadSine(台湾ローカルのOEMメーカー)のAIO(液晶一体型PC)の「Q215C1」。1.2+GHzのVIA QuadCoreを搭載

●Nano X2搭載のミニPCやSmart TV向けのソリューションなどを展示

 VIAブースではこの他にも、いくつかの注目製品が展示されていた。ZOTACの「ZBOX Mini PC」と呼ばれる製品は、プロセッサとしてNano X2、チップセットはDirectX 9(Direct3D 9)対応GPUを内蔵したVX900を搭載しており、マザーボード上のSO-DIMMスロット(1ソケット)にDDR3のSO-DIMMを実装することが可能になっている。ストレージは2.5インチのHDD/SSDを、SATA接続で搭載することができる。ディスプレイ出力はHDMI、DisplayPortで、eSATA、USB 3.0、Gigabit Ethernet、オーディオ出力などを備えている。現時点ではプロセッサはNano X2だが、VIAの展示員によれば将来的にはVIA QuadCoreを搭載した製品も展開が可能だということだ(前述したようにピン互換であるため)。

 また、VIAはいわゆるSmart TVと呼ばれる、TVにクラウドアプリケーションやWebブラウザを統合したTV向けのソリューションを展示していた。x86プロセッサのSmart TV向けのソリューションと言えば、IntelのAtom CE4200シリーズ(開発コードネームSodaville)などが知られており、GoogleのSmart TV向けOSであるGoogle TVを搭載したTVやセットトップボックスなどに採用されている。

 今回VIAが展示した同社のNanoプロセッサベースのソリューションもそうしたAtom CE4200シリーズを搭載したTVやセットトップボックスと同じ発想で作られているが、OSはGoogle TVではなく、TinyOSやWindows XPなどが搭載されていた。実際に動作していたのは、LenovoのセットトップボックスとTCLのTVで、いずれもTinyOS上に独自のUIをかぶせた形で、TVやオンデマンドビデオ、ネットへのアクセスなどを実現していた。

ZOTAC ZBOX Mini PC。プロセッサはNano X2を搭載しているが、将来的にはVIA QuadCoreを搭載した製品展開も可能TCLのSmart TVの55B8200。プロセッサはNano U3100を採用し、OSはTinyOS
PEGATRONが製造しているLenovoのSmart TV製品。Nano U2257を採用し、OSはTinyOSかWindows 7/XPLenovoの次世代Smart TV向けセットトップボックス、A30。Nano U3300を搭載している、OSはTinyOSGIGA-BYTEのSmart TV向けセットトップボックス MD900。Nano U3100を搭載し、OSはUbuntuまたはWindows XP

●Wonder Media社製低価格SoCを利用した激安タブレット、10.1型の試作品も展示

 日本ではあまり知られていないものの、VIAはすでにARMプロセッサのビジネスを数年前から開始している。それを担っているのが、100%子会社のWonder Media社で、同社はARMコアを内蔵したSoCとなる“PRIZM”を、タブレットやスマートフォン向けなどに出荷している。

 PRIZMの最初の製品となったのがWM8650で、ARM9コア(600MHz)、2Dグラフィックス/720pビデオデコーダ内蔵、DDR2/DDR3メモリ対応などのスペックを持っており、すでに中国のベンダーなどからタブレットに搭載されて市場に出荷されている(一部は日本でも販売された例がある)。その特徴は、タブレットの市場価格が99ドル以下という非常に安価な市場をターゲットにしていることだ。実際、中国のベンダーが発売するタブレットは、市場での価格が1万円前後と、他のタブレットに比べると圧倒的に安価な価格設定になっているのだ。このため、高クオリティ志向の日本市場はともかくとして、中国などの成長市場では今大きく注目されているSoCなのだ。

 Wonder Mediaでは、5月に新製品となるWM8710を発表しており、ARM11コア(800MHz)、OpenGL ES 2.0に対応したGPU、1080p動画の再生が可能なハードウェアデコーダ(H.264対応)などのスペックになっており、実際にWonder Mediaが試作したAndroid 2.3搭載のタブレットを展示していた。展示されていた10.1型液晶を採用したタブレットのリファレンスデザインでは、Androidの壁紙の中では比較的重い“水”に設定されていながら、ストレス無く動いていた。Wonder Mediaの関係者によれば、WM8710も基本的に低価格を狙っており、既存のAndroidタブレットに比べると圧倒的に安価な価格設定が可能だということだった。

PRIZM WM8710を搭載した10.1型タブレット。OSはAndroid 2.3.1になっていた中国のメーカーが販売しているWM8650を搭載した7型タブレット。OSはAndroid 2.2を搭載しており、99ドル以下という非常に安価な価格帯で販売されている

(2011年 6月 6日)

[Reported by 笠原 一輝]