【COMPUTEX 2010レポート】【Intel、AMD、NVIDIA、MS編】
各社のタブレット、新ノートPC、3D立体視ソリューションなどが展示

会期:6月1日~6月5日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 COMPUTEXは開幕4日目を迎え、海外からの参加者の中には帰り始める人も多く、全体的にはまったりとして雰囲気の中で引き続き展示会が続いている。最終日となる土曜日は一般の来場者が参加できる一般参観デーとなるので、商談や取材などを行ないたい関係者にとっては4日が最終日となる。

 各ブースでは引き続いて新製品などの展示が行なわれているのだが、本レポートではOEMメーカーではなく、コンポーネントベンダーであるIntel、AMD、NVIDIA、そしてOSベンダーのMicrosoftブースに焦点を当ててレポートしていきたい。各ブースとも、展示の中心は、OEMメーカーの採用製品であり、その傾向から各ベンダーが2010年にアピールしたい製品が透けて見えてくる。

●IntelブースにはAtom Nシリーズベースのタブレット器機が多数展示される

 Intelは、TWTC南港ホールの4階のまさに中央という一等地にブースを構えており、同社のさまざまな製品を採用したOEMメーカーの器機などを展示している。

 Intelブースでもっとも注目なのは、COMPUTEXでもっともホットな製品と言ってよいタブレット機器だろう。iPadの登場で急速に注目を集めつつあるタブレット機器市場だが、IntelもAtomベースのデザインなどをOEMメーカーに提案しており、2011年初頭には、ウルトラモバイルPCやタブレットPC向けにMoorestownをリファインしたOak Trail(オークトレイル、開発コードネーム)を計画しているが、現時点ではその準備が整っていないため、ネットブック向けに提供しているPine Trail-Mベースの製品となっている。すでに別記事で紹介している、ASUSの「Eee Pad」MSIの「WindPad」など、台湾のOEMメーカーが今回展示した製品はいずれもPine Trail-Mベースとなっている。Intelブースにはそれら2社の製品以外にも、Gemsta、Amtec、Compal、NFS、CZCといったメーカーのタブレット端末が展示されていた。

 このほか、Intelが力を入れて展示していたのが、組み込み向けのソリューションだ。デジタルサイネージ(電子広告看板)や、Atomベースのスロットマシン、NASなどが展示されており、来場者に対して組み込み向けのAtomの将来が目に見えてわかるような工夫がされていた。

南港ホールの4階に設置されたIntelブースCZCの「P10T」、OSはMeeGoNFSの「NPAD」、OSはMeeGo
Compalの「NEZ00」。画面は印刷で動作していなかったASUSの「Eee Pad」、OSはWindowsMSIの「WindPad」、OSはWindows
Amtecの「T10H」製品名もメーカーも不明なタブレット端末、画面は印刷で動作していなかったGemstaの「GIGA9」、やはり画面は印刷で動作していなかった
成長市場向けの小型POS、AtomベースCore 2 Duoで作られている自動販売機。タッチパネルで購入するものを選び、FeliCaで購入できるCore i7が搭載されているスロットマシン。そのうち国内にもCore i7で動くパチンコとかでてくるかも?
Atom CE4100(TV用Atom)を利用したSmart TVセットトップボックス発表されたばかりの倍率ロックが解除されているCore i7-875Kのデモ

●ULV版Core i5搭載の東芝ノートPCが展示される、ネットノート後継か?

 このほかIntelブースにはノートPCも多数が展示されていたが、すでにプロセッサ自体が1月に発表された製品であることもあり、多くのメーカーは製品を発表済みで、特に目新しい製品はなかった。

 しかし、唯一目にしたことなかった製品としては、東芝の“New Ultra-Thin Satellite”と書かれたノートPCがあった。なお、製品名を表示する看板にはSatelliteと書かれていたのだが、ボディに書かれていたブランド名は“PORTEGE”(米国で東芝が利用しているノートPCのブランド)になっていた。

 搭載されているCPUはCore i5-520UM(1.06GHz、Turbo Boost時1.86GHz)という超低電圧版(ULV版)が搭載されており、デザインもぱっと見、薄型となっている。GPUは搭載されておらず、Core i5-520UMに内蔵されているIntel HD Graphicsを利用する形となっている。ストレージは9.5mm厚の2.5インチHDD(MK3252GSX)が利用されており、3GBのメインメモリが搭載される形となっていた。

 デザイン的には、東芝がネットノートとして国内販売している「dynabook MX」に非常に似ており、もしかすると、そのあたりの後継製品なのかもしれない。というのも、この夏にはIntelがCalpellaのCULV版を投入する予定となっており、この“New Ultra-Thin Satellite”がその後継となるのかもしれない。

Intelブースに展示された東芝の“New Ultra-Thin Satellite”。ただしボディにはPORTEGEと書かれていたCPUはCore i5-520UMデバイスマネージャ表示
右側面左側面

●AMDブースにも東芝の“New Ultra-Thin Satellite”が展示される

 AMDのブースは、Intelブースの斜め向かいぐらいで、こちらも南港ホール4階のメイン通り沿いにあり、AMD製品を搭載したOEMメーカーの製品を多数並べていた。

 その中でも注目を集めたのが、東芝の“New Ultrathin Satellite”と書かれたノートPC。この製品は前出のIntelベースの製品とほぼ同じ筐体を採用しており、CPUが違う同製品だと考えるのが妥当だろう。ただし、このAMDベースの製品はキーボードが操作できない状態になっており、どのようなCPUが採用されているのかを確認することができなかった。

 このほか、AMDではRadeonシリーズを利用した3D立体視のソリューションを展示していた。利用されているGPUはRadeon HD 5470で、電子シャッター方式の眼鏡を利用したデモが行なわれていた。これまでAMDの3D立体視のデモはほぼ例外なく偏光眼鏡方式でのデモになっていたので、電子シャッター方式のデモがAMDの公式のモノとしては初めて行なわれたということができる(なお、前日にはMSIがRadeon HDを搭載した3D立体視対応AIOを公開している)。そうした意味では、AMDも徐々に3D立体視のソリューションを充実させているようだ。

AMDブース東芝の“New Ultrathin Satellite”、前述の東芝の新ノートブックのAMD版だと思われるが詳細は不明Radeon HDシリーズを利用した3D立体視のデモ。電子シャッター方式を利用したAMDのデモは今回が初めて

●3D Vision、Optimus、新IONをアピールしたNVIDIA

 NVIDIAは、TWTCホール3の近くに仮設のテントを作り、その中でさまざまな展示を行なっている。今回NVIDIAはGeForce GTX 480/470の下位モデルに相当するGeForce GTX 465を発表したが、それに関する展示は1台マシンがあっただけで、特にフォーカスされていないようだった。

 今回NVIDIAが力を入れて展示していたのが3D Vision関連だ。特にGeForce GTX 480/470を2枚利用し、120Hzのリフレッシュレートに対応した液晶ディスプレイを3枚利用して3つの画面で3D立体視を楽しむことができる3D Vision Surroundのシステムが3台も用意されており、FPSや自動車ゲームなどを楽しむことが可能になっていた。また、3D Vision Surroundのデモでは、3D TV用の拡張ソフト3D TV Playを利用したデモも行なわれていた。パナソニック、ソニーの3D TVにNVIDIAのGPUを利用したPCを接続し、3D立体視でPCゲームやBlu-rayが楽しめる様子がデモされた。

 このほか、Optimusを搭載したPC、従来はION2と呼ばれていた新IONなどを搭載したOEMメーカーの製品が展示されていた。

NVIDIAのブースではGeForce GTX 480を利用した3D Vision Surroundのデモが複数台用意されていたソニーのVRABIAを利用した3D TV Playのデモ。当初はPanasonicに対応だったが、その後サムスンとソニーの3D TVもサポートに追加されている
3D Visionのエミッター(眼鏡と同期するための赤外線出力)が内蔵されたASUSのノートPC。確かに便利だが、飛行機の中で3D Visionで映画を見るといったことは、いろいろな意味で抵抗がありそうだ新ION(ION2)のネットトップを利用したBlu-ray 3Dのデモ。NVIDIAの公式見解だと、ION2ではBlu-ray 3Dは再生できないはずなのだが…

●MicrosoftブースにもWindowsベースのタブレット端末が多数展示される

 MicrosoftもTWTC南港ホールの4階にブースを構えており、Windows 7に対応した製品などの展示を行なった。目立つところに置かれたのは、Windows 7を搭載したタブレット端末で、FIC、CZC、Viliv、Great Wali、Malata、2goPCなどのタブレット端末が展示された。

 そのほか、OSにWindows Embedded Standard 2009を採用したキーボード付きスマートフォン「xpPhone」が展示された。xpPhoneは中国のin Technologyが開発した端末で、携帯電話、GPS、PCの3つが1つのデバイスにまとまった製品というのが売りとのことだ。見た目は、ウィルコムが発売した「D4」に似ている。なお、CPUはAMDのGeodeが採用されており、メインメモリは512MB/1GB、8/16/32GBのSSD、ディスプレイは4.8型(800×480ドット)というスペックになっている。

 このほか、米国iiView社の42型液晶一体型PCなどが展示され、注目を集めた。

MicrosoftブースFICの「Tycoon」はAtom N455を搭載した1,024×600ドットの10.1型タッチパネルを搭載しているIntelにも展示されていたOZCの「P10T」、Atom N455を採用している
「viliv X10」はCPUにAtom Z530/520を採用して、10型のフルWXGA(1,366x768ドット)パネルを搭載している、WWANも搭載されているGreat Waliの「Gbook-T3」。CPUはCeleron SU2300、ディスプレイは11.1型のタッチパネルMalataの「PC-A1001」。CPUはAtom N450、10.1型のタッチパネルを採用
2goPCの「Slate」。CPUはAtom N450、10.1型のタッチパネルを採用中国のin Technologyの「xpPhone」iiViewの42型液晶搭載AIO。AIOというよりはTVにPCが入ったと言うべきか……

●日立がSSDを内蔵した光学ドライブを展示、将来のロードマップも

 日立は、X12BC25と呼ばれる光学ドライブを展示した。X12BC25はBDコンボドライブ(Blu-rayのリードとDVDの読み書き)だが、単なる光学ドライブではなく同時にSSDも内蔵しており、1つのドライブでSSDと光学ドライブを利用できるという“ニコイチ”な光学ドライブになっている。ノートPCやAIO(液晶一体型PC)はスペースに余裕がないので、HDDとSSDの両方を内蔵することが難しくなっている。現状ではSSDの容量が十分ではないため、SSDをシステムドライブに、HDDをデータ保存用にと使いたい場合でも、ノートPCやAIOだと難しいことが多い。

 そうした時にX12BC25を利用すれば、物理的には1つの光学ドライブとHDDで、SSD/HDD/光学ドライブを内蔵させることが可能になる。現時点では、SSDと光学ドライブ、それぞれにSATAポートが必要で、PC側もそれに合わせて複数のSATAポートをケース側に実装しなければならないが、2011年に投入される予定の第2世代以降では、ドライブのSATAポートはポートマルチプライヤを利用して1ポートのみとなるので、SSDと光学ドライブをそのまま利用できることになる。

 日立はこのドライブを「HyDrive」と呼んでおり、今後OEMメーカーに対して採用を呼びかけていくという。説明員によれば、価格はSSD+光学ドライブと同じレベルになり、特にそれにプレミアムをつけようという考えはないという。スペースの少ないノートPCやAIOでも、SSDとHDDの両搭載ができるようになる可能性があるので、要注目といえるだろう。

日立のX12BC25。SSDと光学ドライブが一体になった製品最初の世代の製品にはデータコネクタは2つ搭載されているロードマップによると、2011年にでる第2世代の製品はポートマルチプライヤによりSATAコネクタは2つでSSDと光学ドライブを接続することができる
ASUSの「Eee Top」にすでに採用されているHGSTが展示した7mm厚の2.5インチHDD「Travelstar Z5K320」。より薄型のPCなどを製造することが容易になる

(2010年 6月 4日)

[Reported by 笠原 一輝]