イベントレポート

大脳にシリコンダイを埋めて神経を電気で刺激する

開発したニューラルインターフェイスSoCのシリコンダイ写真

 人間の大脳とコンピュータを何らかの形で接続し、コンピュータで脳神経の信号を読み取ったり、コンピュータから脳神経に刺激を与えたりすることは、従来から研究されてきた。四肢を動かす信号を取得すれば、義手や義足などの義肢の開発に役立つ可能性がある。音響センサーやイメージセンサーなどで外界から取得した信号をコンピュータで大脳が理解できる形に変換して脳神経に送れば、聴覚や視覚の代用となるかもしれない。そのほかにもさまざまな応用が考えられる。

 大脳とコンピュータを電気的に接続するためには、生体に多数の電極を埋め込み、有線あるいは無線で信号をやり取りする必要がある。だが、ケーブルや電源装置などの存在は、生体にとって非常に大きな負担となりかねない。

 生体の負担を軽くするには、小さく、軽く、無害で、外部と非接触で信号と電力をやり取り可能なモジュールが望ましい。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)の研究チームは、そのような機能を備えたシリコンダイ(ニューラルインターフェイスSoC)を開発した。そして開発成果をVLSIシンポジウム(「VLSIシンポジウム」の概要は既報を参照)で発表した(講演番号C6.1)。

3mm角のシリコンダイに必要な回路をほぼ全て集積

 カリフォルニア大学サンディエゴ校が開発したシリコンダイ(ニューラルインターフェイスSoC)は、外形寸法が3×3×0.25mm(幅×奥行き×高さ)と小さい。このシリコンダイを生体内部に埋め込んで、外部と電力および信号をやり取りする。シリコンダイは必要な回路素子のほぼ全てを集積しており、外付け部品は1つもない。製造技術は180nmのSOI CMOS技術である。

 生体に埋め込んだSoCはアンテナコイル(L)とキャパシタ(C)を搭載している。このLC共振回路に、外部から190MHzの高周波無線によって電力を供給する。SoCは整流回路とバイアス発生回路を搭載しており、これらの回路を通じて必要な電源を各部に与える。電源電圧は0.8Vである。

 シリコンダイの表面には、4個の小さな電極を1個のユニットとする、16ユニットの電極が形成してある。この電極を通じて神経に電気刺激を与えたり、神経の電気信号をセンシングしたりする。センシングした信号は、アナログフロントエンドとアナログデジタル変換回路を通じてデジタルデータとなる。データの送受信はASK変調の無線で実施する。

 試作したニューラルインターフェイスSoCは、電気刺激として-3.3〜+3.9Vの電圧パルスを発生できる。発生電流は最大145μAである。今後は、実験動物にSoCを埋め込んで、性能を評価する予定だという。

ニューラルインターフェイスSoCの模式図と内部ブロック図。左上は生体の大脳にSoCを埋め込む様子。外部のトランシーバモジュールと無線で電力とデータをやり取りする。中央上と右上はシリコンダイの外観。周縁部にアンテナコイルを配置している。下はSoCの内部ブロックである

(福田 昭)