イベントレポート
【Microsoft基調講演】6億台のPCがWindows 10へと変わる大きな波
~ベンダーやソフト開発者にとって再び魅力的なプラットフォームへ
(2015/6/5 20:14)
MicrosoftはCOMPUTEX TAIPEI 2015の2日目(6月2日)に、会場の1つであるTICCで講演をし、7月29日の正式リリースが決定したWindows 10の具体的な機能や解説を行なった。この中で、同社OEM担当執行役員 ニック・パーカー氏はWindows 10の無償アップグレードや、Microsoftが目指す、ユーザーの生産性向上を図るためのプロダクティビティの再定義など、Microsoftの今後の指針を示す講演となった。その時の模様をお伝えする。
クライアント側のWindows IoTとサーバー側のAzure IoTサービスを一体的に提供
パーカー氏は、Microsoftが昨年(2014年)からメッセージとして使っている「モバイルファースト、クラウドファースト」(モバイルとクラウドが最優先)というお馴染みの標語から講演を開始した。パーカー氏は「弊社のミッションは、どんな個人に対してもどんな組織に対しても、より上を目指すことを助けるものだ」と述べ、「インテリジェントクラウド」、「生産性とビジネスプロセスの改善」、「よりよいパーソナルコンピューティングの実現」という3つの要素について話をした。
インテリジェントクラウドという点では、Microsoftが東芝とIoT(Internet of Things)ソリューションで提携したことが発表され、東芝製センサーなどのデバイスを、Microsoftのクラウドサービス「Azure」と連携させていく。今回のMicrosoftの基調講演では、そうした東芝のIoTデバイスとして、ドライブレコーダが紹介されており、今後そういった機器から収集されたビッグデータがMicrosoftのAzureサーバー上で動くクラウドサービスで運用されていくようになる。
Intelの記事でも触れたが、IoTというとスマートウォッチなどのデバイス側だけに注目が集まるが、実際にはそこから収集されたデータはクラウドに格納され、さらに言えばそれが匿名データで扱われ、ビッグデータとして活用されることになる。従って、クラウド側にどういうシステムを構築していくのかが重要になる。
MicrosoftはWindows 10世代で、Windows 10 IoT CoreというSKUを用意しており、クライアント側にはこれを利用する。サーバー側としては以前より用意しているWindows Azureというクラウドコンピューティングのプラットフォームを提供しており、クライアント側のOSからクラウド側まで一体的に提供できることがMicrosoftの強みになる。
パーカー氏は東芝とMicrosoftの提携について触れ「東芝のIoTデバイスはMicrosoft.net micro frameworkを利用してデータを取得し、Azure IoTサービス、Azure Machine Learningを利用して解析を行なう」と述べ、Microsoftが提供するOSとサービスを一体的に利用すれば素早くIoTの事業展開ができるようになるとアピールした。また、同様にCrestronの例でも同様のスキームで実現できると説明した。
パーカー氏はこうしたAzureのIoTソリューションを展開するパートナーとして、BenQ、Wistron、Advantechなどを紹介し、今後もパートナーを増やしていくと述べた。
Windows 10とMicrosoft純正ソフトウェア・サービスの組み合わせでさらなる生産性向上を実現
続いてパーカー氏は、生産性やビジネスプロセスの改善というテーマに話を移していった。もともとWindowsは、生産性を向上させるプラットフォームとしてビジネスユースで使われることが多かったが、日本などの先進国市場では一般消費者向けに使われることも多く、Windowsは徐々に2つの側面を持つようになっていった。
そしてWindows 8ではどちらかと言えば、後者の側面が重要視され、最初の開発コードネームでMetro、後に正式にModern UIと呼ばれるようなタッチ優先の新しいスタートメニューが導入されるようになった。しかし、それが受け入れられたかと言えばそうでもなく、結果としてWindows 7的なスタートメニューが復活したWindows 10に繋がっていったのはよく知られている。
そうした経緯もあり、MicrosoftはWindows 10で盛んに生産性の向上をアピールしている。パーカー氏は「我々はプロダクティビティの再定義を行なう。Windows 10と、我々の提供するOffice 365、Skype、OneDrive、OneNoteといったソフトウェアやサービスとさまざまなデバイスを組み合わせて利用することで、ユーザーの生産性は大きく向上する」と述べ、同社が提供するOffice 365(今年の後半にはOfficeの新しいバージョンとなるOffice 16が導入される)、コミュニケーションツールのSkype、クラウドストレージサービスのOneDrive、記録ツールサービスのOneNoteなどをWindows 10と組み合わせて利用することで、ユーザーの生産性が大きく向上するはずだとした。Microsoftはこれらのアプリケーションやサービスを、既にWindowsだけでなく、AndroidやiOSといった他のプラットフォームにも提供を開始しており、どのプラットフォームでも利用できるというのも大きなメリットになりつつある。
そして、引き続き個人向けの使い方の話題として、Windows 10の特徴について触れ、Universal Windows Appsが異なる種類のデバイス(PC、スマートフォン、タブレット、Xboxなど)で共通して使うことができ、OSのアップデートが適時提供され、さらにWindows 10へのフリーアップグレードが提供されることなどを挙げた。
パーカー氏は「Windows 10では製品の寿命が尽きるまで無償アップグレードが続くなど、従来のWindowsとはアップグレードの考え方がまったく違う」と述べ、Microsoftが従来のようにOSのバージョンが上がる度にアップグレード料金を取る従来の考え方を捨て、全てのユーザーに対して無料で新機能を提供し続けるという新しいアップグレードポリシーを強調した。さらに「既に多くの開発者が興味を持っており、Windows 10のアプリを開発している。ベータテスターは400万人参加しており、96もの新しいデバイスが準備されている」と述べ、Windows 10への注目度は日々増しているとアピールした。
7月29日の正式リリース時にはWindows 10のアップグレードと搭載デバイスが投入される
パーカー氏の後を受けて登壇したのは、Microsoft Windows & Searchマーケティング担当執行役員トニー・プロフェット氏。同氏はBuildでも紹介されたUniversal Windows Appsの特徴や、ストアの特徴などを紹介。そのほか、6月1日から開始したWindows 10へのアップグレード予約に関しての説明も行なった。なお、この際に、アップグレード可能なWindows 7やWindows 8、Windows Phone 8.1はいずれも「正規版」であると盛んに強調しており、正規版ではないWindows 7/8は対象にならないとアピールしたいようだった。
また、プロフェット氏は「7月29日の正式リリース時には、アップグレードの提供と、Windows 10をプリインストールしたデバイスが販売開始される」と明確に述べ、7月29日はWindows Updateなどを通じたアップグレード版の配布と、OEMメーカーからWindows 10プリインストールPCの販売が開始される日付であることを確認した。
Windows 10のパッケージ版の扱いがどうなるかについては、今回特に言及がなかったものの、“正式リリース”というのはRTM版の完成を意味するので、それからパッケージに封入するDVDなどをプレスする時間がかかるだろうから、必然的にパッケージ版の提供は遅くなることになる。
その後、Microsoft オペレーティングシステム事業本部長 ロアンヌ・ソンズ氏が登壇し、やはりBuildで紹介されたWindows 10の紹介に時間が費やされた。この紹介は講演の半分近い時間を占めるものだったが、内容的にはBuildでデモされたことやそれ以前の発表会でも紹介された内容だったため詳細は割愛する。
全世界に15億ユーザー、そのうち6億台は4年以上前のPC、Microsoftはそこに大きなビジネスチャンスを見出す
最後にパーカー氏が再び登壇し、OEMメーカーのマシンを紹介した。その様子は別途記事になっているので、そちらを参照いただきたいが、東芝の4Kディスプレイを搭載した2-in-1デバイス、HPの2-in-1デバイス、Dellの狭額縁XPS15など、各社のWindows 10デバイスが紹介された。
講演の最後にパーカー氏は「Windows 10は7月29日にリリースされる。既に市場には15億人のWindowsユーザーがおり、そのうちの6億台は4年以上前に販売されたPCだ。これらの代替だけでも大きな市場で、我々と共に売り上げをシェアしていって欲しい」と詰めかけた台湾のOEMメーカー、ODMメーカーなどに呼びかけ、Windows 10という新しい波へ一緒に乗って欲しいと気勢を上げた。