イベントレポート

Lenovo Tech World基調講演詳報

〜メーカーとして初めてWindows 10搭載PCの8月出荷を公言

Lenovo Tech Worldで基調講演に登壇するLenovo 会長兼CEOのヤン・ヤンチン氏

 Lenovoは、同社の本社がある中華人民共和国北京市内のChina National Convention Center(CNCC、北京国家会議中心)で、初のグローバル向けプライベートイベントとなるLenovo Tech Worldを開催し、今後の新方針に関する講演や、幹部による記者会見などを行なった。

 この中でLenovoの会長 兼 CEOのヤン・ヤンチン氏は、開発中製品のコンセプトモデルを公開した。公開されたのは「Magic View」という名のスマートウォッチ、および「Smart Cast」と呼ばれるスマートフォン。

 Magic Viewは、光学反射を利用したディスプレイを備えたスマートウォッチで、「世界初のセカンダリディスプレイを備えたスマートウオッチ」とのこと。Smart Castは、スマートフォンの上部に回転可能なレーザープロジェクタを備えており、それを仮想タッチ画面として利用したり、普通のプロジェクタとしても利用することができる。

 ヤンチン氏の基調講演には、Intel CEOのブライアン・クルザニッチ氏、Microsoft CEOのサティヤ・ナデラ氏、Baidu CEOのロビン・リー氏といった業界のリーダーも登壇するなど豪華な顔ぶれが揃うことになった。

Lenovo初のグローバルなプライベートイベントとなるLenovo Tech World

 Lenovo Tech Worldは、Lenovoが初めてグローバルな規模で行なうプライベートイベントということもあり、世界中から3,800人以上の来場者を集めて行なわれた。メインイベントはこの記事で紹介する基調講演になるが、それ以外にも同社のディストリビューター向けの説明会、同社ユーザーの交流イベントなど、多数のセッションが行なわれた。

 CEOのヤン氏は「Lenovoはハードウェアだけを作る企業だと思われている。しかし、これからの来たるべきインターネットプラス時代には、デバイスの革新性、接続性、インフラ、これら全てが重要になる」と述べ、Lenovoが新しい時代に向けて大きく変わりつつあるのだとアピールした。

 実際、これまでのLenovoは言ってみればPC一辺倒の企業で、売り上げの多くがPC由来の売り上げになっていた。しかし、昨年(2014年)の段階でスマートフォンも市場3位、タブレットも市場3位と、売り上げの多様性が増してきており、今後はIBMからx86サーバー部門(System X部門)を買収したこともあり、バックエンドのITインフラの部分にも事業を拡大しようとしている。PCでの市場シェア1位という圧倒的な購買能力を、スマートフォン、タブレット、サーバーなどの市場にも拡大して、スケールメリットを出していく、それがLenovoの戦略だ。

 しかしユーザーからすると、Lenovoはデバイスを大量に作って売るメーカーだと考えられていたため、あまり革新的な製品をリリースするメーカーだとは思われなかった側面がある。実際のところは、2-in-1デバイスの新しい形を作ったと言っても過言ではないYOGAシリーズをいち早く送り出すなど、革新的な製品も出しているのだが、スマートフォンやタブレットの市場シェアで1位、2位を占めるAppleやSamsungといったメーカーに対抗していくためには、そうしたスマートなデバイスも作れるメーカーであると認識される必要があり、今回のようなイベントの開催に至ったと言っていい。

デバイスの革新性、接続性、インフラの3つをこれからのLenovoはアピールしていくという
Lenovo 上級副社長 兼 モバイルビジネス事業部事業本部長 リゥ・ジン氏は2月のMWCで発表されたVIBE Shotを紹介
中国の有名な女優ファン・ビンビンさんが登壇し、Lenovoのスマートフォンの宣伝役に任命されたことが発表され、一緒にセルフィー写真を撮影した

ユニークな2画面スマートウォッチなどが公開される

 今回のキーノートでは多くの新製品が紹介されたが、グローバルな観点で注目に値するのは3つの試作品だろう。

 最初に紹介されたのはMagic Viewというスマートウォッチの試作機。Magic Viewは世界初の2画面スマートウォッチで、子会社Motorola Mobilityが米国などで販売しているMoto 360に似たデザインだが、リストバンド部分に2つ目のディスプレイが用意されている。

 このディスプレイは、光の反射を利用してディスプレイを画面の中に描く。このため、目の焦点を遠くに合わせたまま、視界の中に時計を移動すると画面が見えるイメージだ。簡単に言ってしまうと、スマートグラスで採用されているような小型プロジェクタが時計の中に入っている感じだ。基調講演後に実際に触ることができたが、中で動画が再生されていることが確認できた。すぐ実用になるかどうかは別にして、技術としては大変面白い。

 もう1つの製品は、上部にプロジェクタと赤外線モーションセンサーが入ったスマートフォン「Smart Cast」。レンズを回転させてプロジェクタの代替として使ったり、机に向けて照射して、赤外線モーションセンサーと組み合わせることで、仮想タッチスクリーンとして使うことができる。

 基調講演のデモでは、中国の有名なピアニストであるラン・ラン氏が、仮想タッチ画面上に表示されたピアノの鍵盤で音楽を奏でたり、本物のピアノを弾いている横で、ヤンチン氏がSmart Castを利用して演奏に参加する様子がデモされた。

 基調講演終了後には、実際に触れられるSmart Castが公開され、OSはAndroid 4.4.2であることなどを確認することができた。また、プロジェクタ部分は360度回転できた。ただ、現状では完全に試作といって趣で、このまま発売されそうにはない。将来的に、この技術を応用したスマートフォンが市場に登場する展開は十分にあり得る。

 また、ヤンチン氏の講演では、もう1つのプロトタイプ製品として、スマートシューズが公開された。スマートシューズには、LEDのオン/オフで表現されるディスプレイが用意されており、簡単な文字やマークなどが表現できるようになっている。ユーザーの気分、例えばハートマークを表示したり、ちょっとした文字を表示したりという使い方が可能になる。

 また、このシューズの中にセンサーが入っており、歩数計などとしても活用できるという。このスマートシューズ向けにはSDKが公開され、サードパーティのソフトウェアベンダーがアプリを開発したりすることができる。

新しい技術の紹介は、Lenovo 上席副社長 兼 CTOのピーター・ホテンシャス氏が行なった。同氏は長年IBM PC部門でThinkPadの製品開発を担当してきたベテランエンジニアだ
Magic Viewには2つ目のディスプレイがバンド部分にある
Magic Viewの内部構造
光学反射を利用した仮想ディスプレイの仕組み
見た目はMoto 360にかなり近いMagic View
2つ目のディスプレイ部分。このままだと何も見えないが
焦点を変えていくと、このように中で動画が再生されているのを見ることができる
現状ではこのようにちょっと位置をずらすと見るのが難しい
OSはAndroid Wearではなく、Lenovoが独自にカスタマイズしたAndroid
SmartCastを紹介するヤンチン氏
プロジェクタだけでなく、赤外線モーションセンサーも入っており、仮想タッチパネルとして利用することができる
中国の有名なピアニストであるランラン氏とヤンチン氏がピアノとSmartCastを利用して演奏
Smart Castを使っている様子
このように仮想キーボードとしても利用することができる
プロジェクタとして使っている様子
このようにレンズ部分が360度回転する仕組み
裏側のカメラ部分のところにはスタンドもあり、自立するようになっている
側面部にはスイッチとMicro USBポートがある
OSはAndroid 4.4.2となっている。言語はドイツ語、英語、スペイン語、中国語の4つだった
レンズが回転していなければ普通のAndroidスマートフォンのように見える
スマートシューズでは、スマートフォンで絵などを靴側のLEDで表示できる
靴に入っているセンサーなどを活用して活動量計として利用することもできる
スマートシューズの動作サンプル
LEDが入っている以外は普通のシューズに見える

Intel、Microsoft、Baiduといった業界のトップ企業がゲスト講演

 このほか、今回のイベントには業界のリーダーとも言うべき3社のCEOがゲストスピーカーとして駆けつけるという豪華な講演となった。

 登壇したのは、Intel CEOのブライアン・クルザニッチ氏、Microsoft CEOのサティヤ・ナデラ氏そして中国の検索最大手のBaidu CEOのロビン・リー氏。

 Intelのクルザニッチ氏は、Lenovo製品にも多数採用されているIntel RealSenseをアピールした。RealSenseの3Dカメラが内蔵されているタブレットで、ヤンチン氏の3Dスキャンを行ない、それを3Dプリンタで出力してプレゼントするデモを行なった。

 しかもそのプレゼントは、最近盛んにアピールしているEdisonを利用したドローンを利用して運んでくるという演出付きで、会場は大いに盛り上がった。なお、ヤンチン氏は、クルザニッチ氏にそのお礼として、同社が同日発表したThinkPad 10をプレゼントし、「このIntelプロセッサを採用したThinkPad 10は8月に発売する」と述べ、Windows 10が搭載されたPCの出荷時期をOEMメーカーの中で初めて具体的に明らかにした。

 これまでのところ、Microsoftは公式にRTM(Release To Manufacturing)バージョンのリリース時期などを明らかにしていないが、PC業界では既にOEMメーカーに対してMicrosoftから7月リリースされるということが通知されており、各メーカーがそれに併せて8月に製品が出荷できるように準備をしている段階にある。今回のヤンチン氏の発言は、それをOEMメーカーとして初めて公式に認めた形となった。

 その後、MicrosoftのCEOであるサティヤ・ナデラ氏が登壇した。ナデラ氏はWindows 10の概要や、Windows 10に搭載される新しい音声認識の機能であるCortanaについての説明を行なった。

 今回Lenovoは、同社の検索サービスであるREACHitをCortanaに連携させることを発表した。REACHitではローカルファイルやMicrosoftのクラウドサービスだけでなく、Google Drive、Dropbox、Boxなどのクラウドストレージも含めて検索できることが特徴で、Cortanaの音声認識機能を利用してこれらのクラウドストレージ上にあるファイルも検索することができるようになるという。

 また、Baidu社のロビン氏は、同社のディープラーニングの成果を披露した。ディープランニングをバックエンドサーバーに利用しているBaiduの音声認識サービスを利用して、韓国語を中国語に変換したり、韓国語のメニューをスマートフォンのカメラで読み取って、それを中国語に変換するなどのデモが行なわれた。

 Baiduは現在ディープラーニングに力を入れており、米国でディープラーニングの著名な研究者を招いて研究しているなど、中国でその成果に基づいたサービスを提供しており、今回のデモにもそれらが使われたのだ。

 このように、今回のLenovo Tech Worldでは、業界のリーダーが多数招かれ、Lenovoと業界とのパートナーシップが強調されたほか、ユニークな試作が公開され、興味深いイベントとなった。ただ、テクニカルな説明などはあまり多くなく、もう少し技術に振った内容があってもいいのではと感じたのも事実で、来年以降のイベントではそのあたりが課題となるだろう。

 ヤンチン氏は講演の最後に「来年またお会いしましょう」と最後に挨拶したので、おそらく次回以降もあると考えられる。今後どのように進化していくのか楽しみだ。

Intel CEOのブライアン・クルザニッチ氏(右)が、ヤンチン氏の3DモデリングをRealSenseで計測
Atomプロセッサが搭載されているとみられるファブレットでは、Windows 10 Mobileが搭載されていると、クルザニッチ氏。来年には登場すると述べた。IA版のWindows 10 Mobileの投入時期についてIntelが公式に発言したのはおそらく初めてだと思われる
ドローンに釣られてプレゼントが運ばれてきた
ヤンチン氏に3Dモデルがプレゼントされた
ヤンチン氏はThinkPad 10をクルザニッチ氏にプレゼント
Microsoft CEOのサティヤ・ナデラ氏(右)も登壇
MicrosoftがWindows 10に搭載するCortanaに、LenovoのREACHitが対応
Baidu CEOのロビン・リー氏(中央)は、ディープラーニングの成果などについて語った

(笠原 一輝)