イベントレポート

アクションカムを使った全天球撮影や360度パノラマ動画

~FUJIFILMやGoogleらが展示

会場内のコンコースには、Photokina恒例の写真で構成された地球がある

 FUJIFILMは新コンセプトカメラとして「SWING CAM」を参考出展している。製品はプロトタイプとして展示された。水平方向に360度の回転に加えて、縦軸方向に180度のレンズ移動を行なうことで、ほぼ半球をカバーする撮影域を持つ。GoProなどのアクションカムが、撮影者を中心に移動するのに対し、こちらはカメラが固定された状態で被写体を追いかけることをコンセプトとしている。

FUJIFILMが参考出展した「SWING CAM」。プロトタイプとして公開された稼働機。水平方向に360度回転するのに加えて、縦軸方向にレンズが約180度移動する

 操作はスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスから行なう。マニュアル操作でマウント部分の回転や縦軸方向のレンズの移動そしてズーム操作などを行なえるが、顔認識機能を併用することで自動的に被写体を追いかけて撮影するモードもある。カメラとの接続は無線LANを利用する。自由度を増すために乾電池、あるいはバッテリ駆動を基本にしているが、Micro USB接続、あるいはACアダプタを使って給電を続ける固定カメラとしても利用できる。

 Photokinaの直前に開催されたIFAでは、こうした固定カメラはホームセキュリティの1つとして提案される展示が多かった。レンズを回転させるのではなく、より広角のレンズを搭載することで広い撮影範囲をカバーする。FUJIFILMの展示は、もちろんセキュリティカメラとしての利用も期待できるが、もう少しアクティブな使い道を提案したいとしている。一方でAppleがiOS 8から導入したHomeKitには対応する意向。特に日本や北米ではiPhoneのシェアが高いことから、一定のニーズが見込めるとしている。

こちらはデザインサンプル。開発が進めば、このスタイルで回転機構などを組み込んだ製品にしたい意向
三脚用のネジ穴を備えることで、写真のようにゴリラポッドなどを使った固定により任意の方向にレンズを向けて設置できる
スマートデバイス向けの操作アプリケーションのサンプル。マニュアル操作のほか、顔認識機能を使って、特定の被写体を追うようにレンズを回転させる

 同社はまた、複数のWi-Fi対応カメラを使ったマルチシューティング環境向けのアプリケーションも提案。こちらもタブレットなどをインターフェイスとして、リモート操作でズームや撮影機能を実現するとしている。

壁面に設置された3台のカメラ。無線LANによりiPadと接続されており、それぞれが撮影している映像をリアルタイムでモニタリングできる
第9ホールにある企画ゾーン。スマートデバイス向けのアプリケーションが紹介されている

 CyberLinkやDxOなど大手アプリケーションメーカーが自社ブースでの出展を行なう中、インディーズのアプリケーション開発者は、アプリエリアのスタンドでデモを行なっていた。とは言え出展社は2社。次回開催となる2016年までに、スマートフォンなどの市場がさらに成長すれば、こうした企画展示がさらに増えるかもしれない。

 DIRE STUDIOが出展していたのは「Mark II Artist's Viewfinder」。iPhone 5/5s向けのアプリで、市販される多数のデジタル一眼レフにおけるレンズの画角をシミュレートして、プレビューする。

 ハードウェアとしてはシュナイダー・オプティクスの「iPro Lens System」を利用。広角コンバージョンレンズで一定の画角を確保し、ソフトウェア的にプレビュー画面を表示する。使用するデジタル一眼レフカメラなどの種類を選べば、24mm、35mm、105mmなどそれぞれのレンズを使用した際に撮影可能な範囲が画面表示される仕組み。iPhone本体のセンサーを利用した水準器を備えているので、カメラのホットシューなどに固定してプレビュー用途などにも利用できる。アプリ内で地図を表示して撮影位置の情報なども記録する。

 現在はβバージョンで英語、独語、仏語、中国語に対応するとしている。日本語対応は検討中とのこと。ただしハンガリー語訳と日本語訳の担当が同じということで、一抹の不安は拭えない。この点について聞いたところ、開発者は元Microsoftのエンジニアで、在職中は日本語として適切な翻訳の提供も日本法人から強く求められた経験があるそうだ。機械翻訳をはじめ下訳はなんらかのアウトソーシングでも構わないが、リリース前にテクニカルタームや当該ジャンルに詳しい日本人が一度目を通すだけで、日本語で書いてあるが意味の分からないものが劇的に変わるという主旨を伝え、開発の進行を期待しておいた。

設定したカメラを利用した際に、レンズの画角に応じた撮影可能な範囲がプレビューできるアプリケーション
市販される多くのデジタル一眼レフやミラーレスカメラのプロファイルを登録してあり、使用するカメラを設定する
iPhone 5/5s本体のセンサーを使った水準器も搭載
シュナイダー・オプティクスのiPro Lensシステムをアクセリーとして利用することでiPhoneでもさらに広角の画角を確保する
DIRE STUDIOはほかにもMac向けのカメラ操作ソフトウェアや、総シャッター回数をカメラのシリアルナンバーごとに管理するソフトウェアも開発している
コンシューマ向けのアプリケーションは、Sortpadが展示されていた。カメラロールに記録された写真を、ジャンル別に分類するアプリ。自動検出ではなく、ロールを参照しながら写真を左右にスワイプして分類していく。左右にそれぞれ4カテゴリ、計8カテゴリを設定可能。風景や食べ物といったジャンルのほか、ゴミ箱や分類するだけでFacebookに投稿するカテゴリも設定できる

 アクションカムでは、業界標準の地位を確立したとも言える「GoPro」。自社純正で揃える各種マウントなどのアクセサリ類に加え、サードパーティからもさまざまな製品が出荷されている。またAPIを公開することで、サードパーティによる対応アプリも次々と登場し、単なるアクションカムにとどまらないツールとしての発展も見せている。

 Photokinaでも、GoPro関連のアクセサリを扱うブースはそれなりに目立った。それらは下記の写真を参照して欲しい。

ハードウェア、ソフトウェア、そしてエコシステムとしても大きなプラットホームへと成長したGoProのブース
3Dプリンタ用のモデリングデータとして提供されているGoProのマウンタ。最低4個からのGoProを利用した全天球撮影が行なえる。ソフトウェアベースでタイムラインを一致させて360度視界の動画撮影が可能。レンズ周辺はソフトウェアで拡大するため、GoProの台数を増やすことで品質を上げる
撮影者視点での全天球動画となるため、視聴にはOculus Riftが活用されている

 GoProを撮像素子搭載ユニットとして利用するサードパーティ製のレンズマウンタ。そのサイズ感から、ソニーがIFAで発表したレンズスタイルカメラのGoPro版にも見える。

望遠やマクロレンズを取り付け、モニター出力からプレビュー画像を表示する
POLAR PROの「PRO VieW」。iPhone 5/5s用のGoProマウンタ
BACK-BONE社の「RIBCAGE」。GoProを撮像素子搭載ユニットとして利用する
GoProブースの展示。やはり子供と動物には勝てない
同じくGoProブースの展示。いわゆるマトリックスごっこをするためのソリューション
Rolleiは、スキー用のゴーグルにアクションカムを一体化した製品を展示
POLAROIDも「Poraloid Cube」としてサイコロ状のアクションカムを販売。GoProには総数で及ばないものの各種マウンタなどの純正アクセサリを多数揃える。安価なアクションカムとして訴求する
日本企業のELMOも、アクションカムの「QBiC」を展示。3個あるいは4個でパノラマ状の動画撮影

 GoProを使った全天球動画にさまざまなアプローチが採られる中、最初から全天球動画撮影を意図した製品もいくつか展示されている。スタートアップ企業が中心で、プロトタイプの展示をしながら、Kickstarterを始めとするクラウドファンディングサイトで製品化を目指している。

ボール状のユニットに数多くのカメラユニットを内蔵する「PANANO」。“投げる”、“ドローンで吊す”などのさまざまな手段を使って周囲の情報を記録。ソフトウェアな後処理を加えて全天球動画を制作する。こちらも体験にはOculus Riftが用いられている
GIROTICの「360 Cam」。カメラユニット3基を内蔵する。LEDによる状況表示や、三脚用のネジ穴などを備える。電球用のソケット互換パーツを取り付けて、給電とユニットを一体化する仕組みも検討されている。現在はKickstarterで出資を募っている。完成以降に製品を入手できるのは299ドル以上の出資から
周囲360度をカバーする半球のレンズと240度の撮像素子を使って360度撮影に対応するアクションカメラの「360 FLY」
Photokineへの出展を行なったGoogle。Google Mapsを紹介して、写真に付いたジオタグ情報の活用や、マップ上からの写真検索などをデモンストレーションしている

 2014年のPhotokinaにはGoogleも出展している。Google Mapsを紹介するブースを構えて、ジオタグ情報の付いた写真の地図への掲載やストリートビュー、そして「Business View」として、店舗内写真などの撮影プロセスについて説明をしている。

 またGoogleはPhotokinaの「アクションカメラゾーン」にも、SanDiskとともに協賛を行なっている。このアクションカメラゾーンでは、持参するアクションカムはもちろん、GoProシリーズを始めとするアクションカムを貸し出していて、アトラクションに臨む際は、それを身につけて挑戦する。記録されたデータはSanDiskのスポンサードにより、メモリカードで提供される。

ビニールのボールに入って、水上をゴロゴロと転がるアトラクション。遊んでいる時の視界がそのままアクションカムへと記録されている
シートベルトの付いた椅子に座り、ロックが外れると同時に上空へと打ち上げられるアトラクション。アクションカムを持っていなくとも、写真のようにハーネス付きのGoProを貸し出してくれる。打ち上げの様子は動画を見ていただこう
アクションカメラゾーンの様子

(矢作 晃)