イベントレポート

【2014 NAB Show展望】4K対応のストレージや映像関連製品が発表

〜Appleの4K対応が更に進展する可能性も

会期:4月5日〜10日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center

 現在、米ラスベガスでは国際放送機器展の「NAB Show」が開催されている。会期は現地時間の4月5日からスタートしているが、5日と6日はセミナーのみの開催で展示ホールは7日からオープンする。イベントの性格としてB2Bにフォーカスしており、名称のとおり放送機器全般が展示される。撮影用の機材はもちろんのこと、ライティングに利用するLED照明や、クロマキー合成のためのグリーンバックなどもある。ソフトウェアもプロ用のビデオ編集ソフトなどが主体だが、Adobeなどエンドユーザーにも知られた企業も出展をしている。

 筆者がNAB Showへ足を運ぶのは、2007年以来となった。主にプロ向けとは言え、機材やソリューションによってはハイアマチュアまでターゲットとなることから毎年それなりのアップデートはあるのだが、NAB Show単独で取材を行なうのはなかなか難しい。2014年は開催日程の都合が良く、Macworld | iWorld取材の延長戦のような格好で取材ができた。

 取材目的もThunderbolt 2対応のストレージや映像機器などが中心となる見込みで、製品によってはコンシューマが手を伸ばせるものも少なからず存在する。Macworld | iWorldでのThunderbolt機器はほぼストレージ製品だけだったが、NAB Showでは映像機器の展示もある。

AppleがNABに合わせて4K対応を更に進める可能性も

 今回もAppleはNABへの出展をしていないが、関連機器には見るべきものがありそうだ。本誌でも度々紹介しているように、2013年10月から出荷されている「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」と2013年12月から出荷されている「Mac Pro」は、いずれもThunderbolt 2のインターフェイスを搭載している。特にMac Proは、Intel Xeonプロセッサと、ワークステーションレベルのGPUを2基搭載して、4K映像の編集もターゲットにした製品だ。

 しかし、現状では4K映像編集ソリューションとしては不完全とも言える。前述したようにMac Proのパフォーマンスは4K映像の編集に耐えうるものだが、Mac Proからの映像出力では完全な4Kの出力が難しい。

 Mac Proに搭載されている映像出力が可能なインターフェイスは、前述のThunderbolt 2が6ポートと、HDMIが1ポート。HDMIは1.4aのインターフェイスで4K映像の出力は可能だが、高解像度のフレームレートが3,840×2,160ドットの場合は24Hz、25Hz、30Hzのいずれかで、4,096×2,160ドットの場合は24Hzとなる。

 一方Thunderbolt 2はディスプレイ出力としてDisplayPort 1.2に対応しているので、理論上の伝送速度は最大で21.6Gpgs(ただし、Thuderbolt 2の規格としては最大20Gbps)。Thunderbolt 2は4Kでも60fpsの出力が行なえるインターフェイスだ。しかし現在の市場にはThunderbolt 2対応のディスプレイはほとんどない。

 先日はDellが7万円を切る「P2815Q」を出荷して話題になったが、この製品の最大解像度でのリフレッシュレートが30Hzになっている。つまりP2815Qの場合は、HDMIで繋ごうがDisplayPortで繋ごうが30fpsの出力となる。仮に編集ソフトで60fpsの映像を作り上げても、正確なプレビューができないということになる。加えて、4K解像度の映像をPCクラスのサイズのディスプレイを使って30Hzで見るのはそれなりに辛いはずだ。

 待たれているのは、Thunderbolt 2に対応した新しい「Apple Thunderbolt Display」だろう。現行製品はThunderboltに対応して、27型で2,560×1,440ドットの解像度。拡張するUSBインターフェイスはUSB 2.0で、現行のMac製品に搭載されているUSB 3.0には対応せず、接続時にはUSB 2.0のHubとして機能する。ある意味で古い世代の製品になっていると言える。前述のように、Mac Proが4K映像編集にもフォーカスしていることを考えれば、純正品で4Kパネルを搭載したThunderbolt 2対応のApple Thunderbolt Displayは必要な製品とも考えられる。

現行の「Apple Thunderbolt Display」は、2011年から出荷されている製品

 もう1つの4K対応の課題はOSにもある。現行のOS X 10.9(Mavericks)で外部ディスプレイに出力をする場合には、ドットバイドットの出力しかできない。つまり、3,840×2,160ドットのディスプレイに画面表示をした際は、ディスプレイのサイズによってアイコンやテキストの見え方が変わってくる。40型超のTVならいいかも知れないが、27型ディスプレイでドットバイドットにすると、標準設定ではかなりアイコンや文字が小さく表示されることになる。

MacBook Pro Retinaディスプレイモデルの内蔵ディスプレイ解像度表示。ドット数ではなく、文字とスペースで示される。これと同じ仕組みが外部ディスプレイにも必要

 MacBook Pro Retinaディスプレイモデルは高精細なパネルを搭載しているので、標準設定では1ドットあたりの情報を縦横2倍の2ドットずつで表示する。つまり200%表示にすることで、13あるいは15型の高精細パネルでも、アイコンやテキストが実際に表示される大きさを維持しているのだ。4K対応の際には外部ディスプレイにも同じ設定を適用できるようにする必要がある。すると写真や動画などの映像はドットバイドットの4Kで、文字やアイコンは200%表示で作業ができるようになる。

 このOSのアップデートは、現在のOS X 10.9.2から、10.9.3へアップデートされることで実現すると一部で伝えられている。断言できないのは公言できないからだ。NDA(秘密保持契約)などお構いなしのサイトがβリリースを元にばんばん伝えていても、こちらとしては知らぬ存ぜぬを貫くしかない。スタンスとしてできるギリギリの抵抗は、そう伝えているサイトがあるが真贋は不明とすることだけである。いい加減、この不毛で正直者が馬鹿を見るルールはなんとかしなければならない局面に来ているはずだ。

 という真贋不明でソースも明らかでない情報と、現行のMacに必要な機器を考えれば、NAB Showのタイミングで、AppleがOS X Mavericksの10.9.3アップデートと、新しいApple Thunderbolt Displayを投入してくるのは十分に可能性のあるシナリオだ。製品発表会がないことを疑問に思う人もいるかも知れないが、このレベルの製品発表は、プレスリリースだけという例も多い。前述した2007年のNABにおいても、当日に発表されたのはFinal Cut Pro関連製品だけで、当時のMac Pro製品のアップデートなどは事前にプレスリリースが行なわれていた。

 念のため申し添えておくが、これはやりたい放題サイトが良く使うフレーズである「信頼できる関係者からの話」ではない。現行の技術やパーツ価格の動向、市場のニーズ、そして必要なソリューションなどから予測されるシナリオの1つに過ぎない。

 もちろん、Thunderbolt 2(あるいはDisplayport1.2)対応の4Kディスプレイが、必ずしもApple純正品である必要はない。規格自体は標準化されたものなので、ディスプレイメーカーなどが対応製品を投入してくる可能性がある。今回、NAB Showへと足を運んだのは、そうした製品を実際に確認するためと言える。

展示会開催前日に新製品が次々とリリース

 さて、展示ホールのオープンを翌日に控えた4月6日には、僚誌のAV Watchなどが伝えているように、ソニーのプレス向けカンファレンスが行なわれた。もちろん内容は4Kにフォーカスしたもので、4Kライブカメラシステムやカムコーダ、そしてミラーレスでフルHD XAVC S記録に対応する「α7s」の製品発表などが行なわれた。

 α7sは、ボディサイズこそα7やα7Rと同じだが、新開発の有効約1,220万画素、35mmフルサイズ「Exmor CMOSセンサー」を搭載する。このセンサーと画像処理エンジンの「BIONZ X」と組み合わせることで、常用ISO 100〜102,400、拡張50〜409,600を実現する(動画撮影時は常用ISO 200〜102,400、拡張200〜409,600)。あくまで米国における発表で、米国での発売日や価格も明確にはされていない。ざっくりとα7が数台分の価格になる見通し。

 競合となるのはキヤノンの「EOS X」シリーズで、既存のEマウント(アダプタ使用でAマウント)のレンズ資産を活かし、静止画・動画、民生用・業務用というカテゴリを超えてユーザーに訴求したいとしている。α7sの詳細は関連記事を参照いただきたい。ブース展示が始まってからは、あらためて続報もお届けする。

α7sの概要。sはSensitivityのs。有効約1,220万画素、35mmフルサイズ Exmor CMOSセンサーを搭載
α7sでの作例
Eマウント、Aマウントのレンズ資産を活かす。静止画・動画、民生用・業務用というカテゴリを超えてユーザーに訴求
撮影用のドローン。コントロールはいずれもプロポを使って行なう。小型の「Phantom 2 Vision+」はカメラ一体型。本体内のMicroSDに記録されるほか、Wi-FiでiOSデバイスやAndroidなどに映像を転送する

 また、同日夕刻にはInternational CESやMobile World Congress、あるいはIFAなどの併催イベントとしてお馴染みのShow StoppersもWynnホテルを会場に開催された。昨年(2013年)までは小規模にコンベンションセンターの一室で行なわれていたそうだが、2014年はやや規模を拡大して、International CESと同じWynnホテルでの開催となった。とは言え、CESに比べればまだまだ小規模で、出展者数も限られている。もちろんNAB Showに合わせたものだが、なぜか自動車の展示まであった。プロ向けのクラウドソリューションなども多いが、コンシューマ用途に近い製品や、面白い展示などを写真を中心に紹介して明日の展示ホールオープンの予告にする。

 CESやCP+などでも空撮用のドローンを出展した「DJI」は、カメラ一体の「Phantom 2 Vision+」などを展示。室内と屋外で飛行デモを行なった。搭載するカメラは1080p/30fpsの動画撮影が可能なものとなっている。飛行の様子と、撮影される映像などは動画を見てもらうのがいいだろう。

【動画】室内での飛行デモ。機体を振っても、カメラ部分はスタビライザーにより安定している
【動画】屋外での飛行デモ。コントロールはプロポを利用する
【動画】ドローン側からWi-Fi経由で送られてくる撮影映像。iOSデバイスなどでディスプレイできる
ジョン・ウェインの西部劇でもお馴染みの場所。ロケハンでナバホ族の人が馬に乗って突端に立っているところを空から撮影している。この人は普段は馬に乗った写真を撮ってくれる記念写真屋さんで、馬に乗る料金は2ドルと安い。ただし突端ではなく手前での撮影。ジョン・ウェイン風のカウボーイハットと、レプリカの銃も貸してくれる

 DJIはプロ向けにローター数を増やし、積載重量を増やした製品も出荷している。動画対応の一眼レフなどを搭載して空撮に利用する。Macworld | iWorldの取材とNAB取材の間に数日の余裕ができたため、休日代わりにモニュメント・バレー・ナバホ族公園への観光をしてきたのだが、偶然にも同じドローンを使った実際の撮影現場にも出くわした。

 映画「駅馬車」などで知られるジョン・フォード監督が撮影したジョン・フォード・ポイントでは、おそらくCMの撮影が行なわれていたようだ。岩の先端にいたのは、馬に乗った現地のナバホ族の人でいわゆるロケハンの状態だったが、実際にドローンが飛行してカメラテストを行なっていた。本来の主役はおそらく、後ろに控えていたキャンピングカーの中と思われるので、いったい誰が出演したかまでは分からないが、実際に利用されている現場を事前に見ることができたのはラッキーだったかも知れない。

一眼レフを積んで飛行するドローン
おそらく主役は、キャンピングカーの中に

 LaCieが、Thunderbolt 2に対応する3つの新製品を発表した。International CESで発表済みのSSD×2台で運用する「Little Big」に加えて、3.5インチのHDDを2台内蔵する「2big Thunderbolt 2」。これは6TB(3TB×2)、8TB(4TB×2)、12TB(6TB×2)の3モデルが用意される。また、5台のHDDでRAID 5/6を運用できる「5big Thunderbolt 2」も出展。こちらは10TB、20TB、30TBの3モデル。、そして最大8台のHDDを搭載できる1Uラックマウント型の「8big Rack Thunderbolt 2」はバナーのみが展示された。

「2big Thunderbolt 2」。デイジーチェーン可能な2つのThunderbolt 2インターフェイスと、USB 3.0インターフェイスを搭載。使用は排他。RAID 0で運用した場合の最大転送速度は420MB/sec
「5big Thunderbolt 2」。5台のHDDを搭載して、RAID 5/6でホットスワップも可能。最大1,050MB/sの転送速度。デザインは従来の5bigシリーズと同等
ニュースリリースとバナーのみで展示された「8big Rack」。1Uのラックに8台のHDDを搭載する。最大転送速度は1,330MB/sec。いずれも4K映像編集がターゲット
4月6日(現地時間)にHPが発表したディスプレイ新製品のDreamColor Displays「HP Z27x」と「HP Z24x」。それぞれ27型、24型の4Kパネル。キャリブレーション対応。価格はそれぞれ1,499ドルと599ドル。DreamWorks Animationと協力してカラーマッチングを行なう
何故か車の展示も。Elio Motorsが出展。前輪が2輪で後輪は1輪。2人乗りで、タンデムに乗車する。フリーウェイ走行時の燃費は84マイル/1ガロンで、市街地走行時は49マイル/ガロン。ガソリンタンクの容量は8ガロン(約30L)。価格は6,800ドル(約70万円)とのこと

(矢作 晃)