米Apple、ラスベガスでApple Special Eventを開催
|
4月15日 開催
会場:Venetian Hotel(ラスベガス)
米Appleは15日(現地時間)、16日から開催されるNAB 2007に先だって「Apple Special Event」を開催した。
イベント開催直前の12日には次期OSである「Leopard」の発売延期を正式に発表、またクアッドコアXeonを2基搭載する8コアのMac Proをプロ向けハイエンド製品としてラインアップに追加したばかりとあって、そのイベント内容が注目されていたが、ビデオ製作用アプリケーションスイート「Final Cut Studio 2」とサーバアプリケーション「Final Cut Server」の2製品の発表が行なわれた。
この日のプレゼンテーターは、プロフェッショナル向け製品のプロダクトマーケティングを担当するRob Schoeben副社長 |
今回のApple Special Eventは、ラスベガスの目抜き通りに位置するベネシアンホテルのボールルームに2,000名を超える招待客を招いて開催された。定刻から10分ほど遅れてイベントはスタート。この日の講演者は、同社のプロフェッショナル向け製品のプロダクトマーケティングを担当するRob Schoeben副社長だった。
冒頭、Schoeben副社長は同社のFinal Cut(関連製品)のユーザー数が世界中で80万人を超えていることをアナウンス。ポップなアレンジでカバーされたWonderful WorldをBGMに、Final Cutを用いて制作された映画、音楽のプロモーションビデオ、CMなどをはじめとする著名な映像コンテンツを数分のラッシュ映像にして紹介した。BGMにWonderful Worldが使われているのは講演で何度も使われたフレーズ「It's a Final Cut World」にかけたもの。
最初に発表されたのは「Final Cut Server」。膨大な映像コンテンツの管理とポストプロダクションが必要な放送関連のプロフェッショナルに向けたサーバアプリケーションだ。Schoeben副社長は映像制作の現場から寄せられた数多くのフィードバックを元に(買収元の旧製品から)ブラッシュアップされた同製品の有効性を強調。スモールビジネスから、世界各国にまたがるニュースメディアまであらゆる規模のワークグループにスケーラブルに対応可能としている。
特徴は、100を超えるファイルタイプを管理・カタログ化、確認用のサムネールと作業用クリップの自動生成、IPTC、XMP、XMLベースのメタデータを使った検索や、クライアントのアクセス管理など多岐にわたるもの。さらに、米CBSのニュース制作担当者の現場の声をビデオ映像で紹介してみせた。
クライアントはMacとPCのクロスプラットホームに対応。同時アクセス可能なクライアント数が10に制限される10クライアントライセンス版は999ドル、同時アクセスクライアント数に制限のないアンリミテッドクライアントライセンス版は1,999ドルで提供される。米国での出荷時期は今夏。日本国内向けは前者が118,000円、後者が238,000円で、同じく今夏の出荷を予定している。
100を超えるファイルタイプを管理・カタログ化、確認用のサムネールと作業用クリップの自動生成、IPTC、XMP、XMLベースのメタデータを使った検索など | 各種ワークフローの自動化によって、個人そして組織全体の生産性を向上 | 今夏に出荷予定。同時アクセスクライアント数に制限のないアンリミテッドクライアントライセンス版は1,999ドル。国内では238,000円で提供される |
●「Final Cut Studio 2」を発表
続いてSchoeben副社長は同社における「プロフェッショナル向け製品で、これまで最大規模のアップグレード」として、「Final Cut Studio 2」を発表した。その核となるのは「Final Cut Pro 6」で、目玉は次世代のポストプロダクションフォーマット『ProRes(プロレズ) 422』への対応。非圧縮のHD映像に匹敵するクオリティを、SD並のファイルサイズで実現。フルラスターのHD映像1TBが170GBまで圧縮されることになるという。SONY、Panasonic、REDなどプロフェッショナル向けビデオカムメーカー各社が採用に向けて進んでいることで、これが次世代スタンダードであることを各社のコメントやビデオ映像をまじえて紹介した。
Final Cut Pro 6のもう1つの特徴は『Open Format Timeline(オープンフォーマットタイムライン)』。解像度やフレームレートの異なる数多くの映像クリップをトランスコードすることなく、1本のタイムラインのなかでミキシングやマッチングが可能になる。これは実際のデモをまじえて紹介された。
次世代のポストプロダクションフォーマット『ProRes(プロレズ) 422』へ対応。非圧縮のHD映像に匹敵するクオリティを、SD映像並のファイルサイズで実現する | プロジェクションをさらに写真にしてしまうとわかりにくいが、中央で左右に分割された非圧縮HD映像とProRes422では視覚的に区別が難しいという、わからないことこそがポイントとなるデモ映像 |
オプティカルフローベースのSmoothCam(スムーズカム)テクノロジで、不要なカメラの動きを取り除くこともできる | Open Format Timeline(オープンフォーマットタイムライン)は、解像度やフレームレートの異なる映像クリップを一本のタイムラインのなかでミキシングなどを行なう |
○3D環境へと進化した「Motion 3」
○5.1chミキシングも対応する「Soundtrak Pro 2」
ヘッズアップスポッティングディスプレイの採用で、効果音や台詞を正確に映像に合わせることができるようになった。デモでは、タクシーのドアが閉まるバタンという音を追加 | |
1つのプロジェクトでステレオ音声と5.1chサラウンド音声をミキシング。視覚的にサラウンド位置の設定も可能 |
○2.8倍の高速エンコード「Compressor 3」
Final Cut Pro 6のほか、Final Cut Studio 2に含まれる「Motion 3」、「Soundtrak Pro 2」、「Compressor 3」のそれぞれにアップグレードされた各アプリケーションはSchoeben副社長が概要を紹介したあと、各製品担当者が新機能のデモを行なうスタイルが繰り返された。ちなみに「DVD Studio Pro 4」は現行バージョンのままで、Final Cut Studio 2に含まれる。
ここまで紹介した時点でSchoeben副社長は「Final Cut Studio 2」の価格を発表。米国では従来バージョンと価格据え置きの1,299ドルで提供される。アップグレードパスは、現行のFinal Cut Studioから499ドル、あらゆるバージョンのFinal Cut Proから599ドルで用意され、米国では5月に出荷を予定している。日本国内では、フルパッケージを148,000円で販売。Final Cut Studioからは58,000円、あらゆるバージョンのFinal Cut Proから78,000円でアップグレードが行なわれる。日本における出荷は6月の予定。
●用意されたサプライズは「Color」。Final Cut Studio 2に同梱
サプライズとして発表された「Color」。プロフェッショナル向けカラーグレーディングおよびフィニッシングのためのアプリケーション |
スティーブ・ジョブズCEOの講演ほどもったいをつけたわけではないが、Schoeben副社長も彼なりのサプライズを用意していた。それがFinal Cut Studio 2に新たに加わるアプリケーション「Color」である。「Color」はプロフェッショナル向けカラーグレーディングおよびフィニッシングのためのアプリケーションだという。
「Color」もここまでと同様にSchoeben副社長の概要紹介のあとでデモを行なうスタイルとなったが、既存のアプリケーションはApple社内のスタッフの手によるものだったが、この「Color」に限っては、FOX AustraliaのDavid Gross氏によってデモが行なわれた。
同社の製品発表後、NAB 2007の会場となるラスベガスコンベンションセンターには「Final Cut Studio 2」の巨大なバナー広告が新たに掲げられた |
2時間弱のイベントは、Schoeben副社長からの「Editing unleashed」のメッセージで終了した。
米Appleは16日(現地時間)からラスベガスコンベンションセンターで開幕するNAB 2007に出展。SONYに次ぐ、場内2番目となる大きなブースでこの日発表した新製品の展示とデモンストレーションを行なうほか、同社のプロフェッショナル向けソリューションが一堂に展示されることになっている。
□Appleのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□NAB 2007のページ(英文)
http://www.nabshow.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.apple.com/jp/news/2007/apr/15fcstudio.html
http://www.apple.com/jp/news/2007/apr/15fcserver.html
(2007年4月17日)
[Reported by 矢作晃]