イベントレポート

Windows Phone 8.1の秘密兵器「Cortana」

〜日々進化する真のパーソナルデジタルアシスタント

会期:4月2日〜4日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコMoscone Center

 Build 2014の基調講演は、Microsoftの新スマートフォンOSであるWindows Phone 8.1の紹介で幕を開けた。そして、その中で最も時間を割かれたのが、デジタルアシスタントの「Cortana」(コルタナ)だ。本稿では、基調講演でのCortanaのデモ内容に焦点を絞ってお伝えする。それ以外のWindows 8.1 Updateなどについては、関連記事を参照して欲しい。

※基調講演の動画。Windows Phone 8.1の紹介は3分45秒から55分あたりまで

 元々Cortanaは、Xboxの人気ゲーム「Halo」に登場する人工知能で、Windows Phoneに搭載されるデジタルアシスタントの名前としてはうってつけだ。また、そのアイコンは二重の輪っかになっているが、Haloの光輪という意味そのままを表わしている。

 一言で言うと、CortanaはiPhoneにおけるSiriで、音声を使ってスマートフォンを操作したり、検索したりといったことができる。また、Bingを使った検索履歴やメールの内容、利用状況などからユーザーの行動を推測し、それに対する提案をするという点で、AndroidのGoogle Nowに近い要素も多分に含んでいる。

Windows Phone 8.1のスタート画面。真ん中辺りにあるのがCortana
Cortanaの画面。検索ボタンを押してもこれが表示

 後発だけあり、その機能は、かなり洗練されている。Microsoft Operating Systems Group担当コーポレート副社長のJoe Belfiore氏はまず、Cortanaに音声で「自分の名前は好きかい?」と口語調で質問。するとCortanaは「Cortanaですか? 好きですよ。MicrosoftパーソナルアシスタントV1 サービスパック2 2014なんて名前よりは“刺さり”ますから」と答えて見せた。この部分は、事前に仕込まれたデモである可能性もあるが、これから紹介するデモから分かるとおり、Cortanaの自然語解析能力は高く、また各種アプリとの連携機能もよく練り込まれている。また、Cortanaがユーザー情報をどの程度にまで、あるいはどのように把握しているかをユーザーに対して透明化している。

「もっと見る」を押すと、Cortanaと連携しているアプリ一覧が表示

 Cortanaは、同社の検索エンジンBingとバックエンドで結びついており、実際に、これまでの検索機能に取って代わるものだ。しかし、ただの検索エンジンではなく、Cortanaは、ユーザーが気にするモノやヒトに焦点を当てユーザー自身を理解していく機能を持つ。

 実際Microsoftでは、Cortanaの開発にあたり、職業秘書にも聞き取り調査を行なった。そこで学んだのは、良い秘書である秘訣は、クライアントのことをよく知り、それをメモすることだったという。

 Cortanaの右上の「≡」ボタンを押すと、ノートブックが表示。ここには、「関心事項」、「通知」、「沈黙時間」、「内部サークル」、「場所」、「音楽の検索」、「設定」といった項目が並ぶ。そして例えば関心事項をタップすると、日課、交通、金融、旅行などサブカテゴリや具体的な内容が表示されると言う具合に、Cortanaが過去の検索を通じて学んだユーザーの関心事項がノートにまとめられている。ここから、追跡されたくないものや、間違って登録されたものはユーザーが手動で削除できる。

ノートを開いたところ
関心事項を開いたところ。ユーザーはCortanaが把握している情報を管理/制御できる

 また、各種設定を行なうこともでき、例えば沈黙時間とは、電話や通知で邪魔されたくない時間のことだが、家族や親しい友人など内部サークルに設定した人からであれば、その時間でも着信を許可するといったことが可能。場所については、ユーザーの行動パターンから自宅や職場を自動的に推測。情報が間違っていたり、何かしらお気に入りの場所として追加したい場合は手動で設定できる。

 Cortanaのメイン画面で、一番下からスワイプすると、直近のニュースや、天気、友人がアップロードした写真などCortanaがお勧めする情報がずらりと表示される。また、特定のフライトを追跡するかと聞いてくることもある。これは、ユーザーがCortanaにメールを読む権限を与えた場合、メールの内容からフライト情報を検知し、それを追跡するかどうかをユーザーに尋ねているのである。ここで「はい」を押すと、そのフライト情報が自動的に追跡され、変更があるとユーザーに通知してくれる。

Cortanaがお勧めする情報一覧。フライトに関して追跡するかどうかを尋ねる機能も

 このほか行なわれたデモ内容は次のようなものだ。なお、Cortanaに対する指示は全て音声で行なわれ、それに対するCortanaの反応も人工音声で返される。

1)「明日朝7時に起こしてくれ」→アラームを翌朝7時にセット。

2)「土曜日のカレンダー情報を教えてくれ」→その日のカレンダーを表示するとともに、10時にアレックスのサッカーの練習、11時にサッカーの試合、Game of Thronesの本をプレミアショーが始まる前に1日中読む、という内容を読み上げる。

3)「歯医者の予約をカレンダーで10月1日朝10時に入れてくれ」→カレンダーに情報を登録し、間違いないかを確認。また、「その時間はクリスティーナを空港に迎えに行く時間です」と、ダブルブッキングを指摘。

4)「パロアルトの一番のレストランを教えてくれ」→パロアルト4つ星レストラン10件を表示。

 4)で注目すべきは、“一番のレストラン”という表現に対して、“4つ星レストラン”を回答してきた点だ。つまり、Cortanaは一番のレストランの意味を理解している。ちなみに、この4つ星レストランは、ローカルビジネス情報サービスのYelpから取得している。

 そして、その状態から「予約できるのはどれかな?」と聞くと、「4つ星で予約可能なレストランは下記の通りです」と答え、「2番目のお店に電話を繋いでくれ」と言うと、リストの上から2番目に表示されているレストランに電話を発信するのである。

5)「昨日のシアトル・マリナーズの結果は?」→「水曜日、シアトル・マリナーズはロサンゼルス・エンゼルスを下しました」。

6)「(NFL選手の)ラッセル・ウィルソンは何歳?」→「ラッセル・ウィルソンは25歳です」。

7)「バナナは何カロリー?」→「105カロリーです」。

8)「ラスベガスの天気は?」→「現在(華氏)51度で曇りです」。

 8)については、その状態で「摂氏では?」と聞くと、「摂氏の結果はこの通りです」と摂氏に変換した情報を表示する。ちなみに、デモではさらに「絶対温度では?」と聞くのだが、あいにくこれはうまく認識されなかった。

9)「次のHaloゲームのストーリーは?」→「あなたにはその情報に関するセキュリティ権限をお持ちではありませんね」。

 おそらく、Cortana自身や、Haloに対する質問に対しては、ある程度の事前想定がなされており、それに基づいた返答を行なっていると思われるが、9)の回答は人工知能がまた1つ閾値を超えたと感じさせるものと言える。

 もちろんCortanaに対しては、文字入力でも指示を出せる。「テリーからのメール」と入力すると、ローカル検索を行ない、結果を表示する。この場合、音声では返さない。「帰宅したら妻に夕食を作ることを通知してくれ」という複雑な文章にも対応できる。

 「ピープル・リマインダー」と呼ばれる機能も面白い。これは、特定の人に対して、何かが起きた時に通知させるもの。デモでは、「次に姉に会う時、彼女の新しい子犬について質問するように思い出させてくれ」と指示。Cortanaは、「了解しました。次にNancyに会う時に、新しい子犬について質問するよう通知します」と返答し、リマインダーにその件を保存した。

 ここで言う、「姉に会う」というのは、電話、チャット、メールなど、あらゆるコンタクトを差し、いずれかの方法で姉にコンタクトを取ろうとするときに、リマインダーを表示するのだ。また、「姉」=「Nancy」ということもきちんと把握されている。

 Cortanaはサードパーティアプリとも連携できる。「Skype。Daividに繋いでくれ」というと、自動的にSkypeが起動し、Davidに発信。「Hulu。Deadbeatを視聴予約に追加してくれ」、「Facebook。Terry Myerson(Microsoft幹部)のタイムラインを表示してくれ」という指示もできる。

 そして、最後の対話デモでBelfiore氏が、「Jimmy Fallon(TV司会者)は好きかい?」と聞くと、「Jimmy Fallonへの謝辞。TV番組に出してくれてありがとうございました。Cortanaより」という返答が返ってきた。

 Windows Phone 8.1のCortana以外の新機能もいくつか紹介しよう。システム設定→Wi-Fiの中に「Wi-Fi Sense」が追加された。この機能を利用すると、Wi-FiパスワードのWindows PCとの同期や、登録したホットスポットへの自動接続のほか、無料ホットスポットを見つけた際に、利用許諾を承諾し、名前、アドレスを入力して、サインインするまでを全て自動でやってくれる。もちろん、オン/オフはユーザーが設定できる。また、自宅で、Outlook.com、Skype、Facebookなどの連絡先に登録されている友人に対して、自宅のWi-Fiを共有する機能もある。これを使うと、パスワードを教えることなく、Wi-Fiネット接続を共有できる。その際、ローカルネットワークへのアクセスは許可しないため、自分のPCのファイルにアクセスされると言った心配はない。

 電話の着信も機能向上され、通話画面に表示されるSkypeボタンを押すと、通話を維持しながらSkypeを起動してビデオ電話を行なうことができる。ここでのSkypeはキャリアの別のアプリに変更することも可能。

 ちなみに、このデモではBelfiore氏の姉のNancyから電話がかかってきていたのだが、その画面には「新しい子犬について様子を聞くこと」というリマインダーがきちんと表示されていた。

Nancyからの着信。「新しい子犬について様子を聞くこと(Ask her about her new puppy)」とCortanaが教えてくれている

 Windows Phone 8.1は、今後数カ月の間にWindows Phone 8へのアップデートとして配信が開始される見込み。また、4月末から5月上旬の新製品にはプリインストールされる。そして、Cortanaは当面はベータサービスとして機能向上を行ない、ベータが終わった時点で、英国や中国などにも展開していく予定。

 ちなみに、基調講演の終盤には同社新CEOのサティア・ナデラ氏が登壇し、ユーザーからの質問に答えていったのだが、最後の質問はCortanaからだった。

 質問の内容は「こんにちは、Cortanaです。あなたはCEO(Chief Executive Officer)になられたわけですが、Master Chief Executive Officerになる予定はありますか?」という、Haloにひっかけたもの。もちろん、これは台本を読ませただけだが、ナデラ氏は「もちろん。ただし500年後に思い出させてくれ」と言うと、Cortanaは「了解しました。西暦2514年4月2日月曜日にリマインダーを送信いたします」と答え、講演を締めくくった。

最後のナデラ氏とCortanaの掛け合い

(若杉 紀彦)