イベントレポート
Sony、Haswell搭載で9.9mm厚のWindowsタブレット「VAIO Tap 11」
~液晶反転型「VAIO Fit multi-flip PC」やハイエンドスマホ「Xperia Z1」も
(2013/9/5 00:54)
Sonyは、ドイツのベルリンで9月6日より開幕する家電ショー「IFA 2013」に先立って記者会見を開催し、新製品を多数発表した。
新製品の目玉の1つである「VAIO Tap 11」は、第4世代Core Yプロセッサを採用しながら厚さ9.9mmと、一般的なAndroidタブレットに匹敵するような薄さを実現した。また、付属のキーボードと組み合わせることで、クラムシェル型のノートPCのようにも使えるという特徴を持つ。
このほかSonyは、メインストリーム向けのノートPCである「VAIO Fit」の新製品、1月のCESで発表され注目を集めた「Xperia Z」の後継となる「Xperia Z1」、さらにはスマートフォンと連携して動作するレンズ型のカメラ「レンズスタイルカメラ」なども発表した。
VAIOブランドのWindowsタブレット
Sonyが発表した新製品は多岐に渡っているが、大きな注目を集めたのは、VAIO Tap 11、Xperia Z1、レンズスタイルカメラの3製品だろう。
VAIO Tap 11は、VAIOブランドのWindowsタブレット。付属のワイヤレスキーボードと組み合わせて、クラムシェル型PCのように利用することもできる。VAIO Tapシリーズとしては、2012年のIFAで発表された「VAIO Tap 20」に次ぐ2つ目の製品となる。
Sony関係者によれば、VAIO Tapの「Tap」はスレート型PCを意味するサブブランドであり、その11型でVAIO Tap 11という製品名になったとのことだった。最初の製品であるVAIO Tap 20が、タブレットというよりは液晶一体型PCという捉えられ方をされることが多いため、VAIO Tap 11と聞いて奇異な印象を頂いたユーザーも少なくないかもしれないが、VAIO Tap 20も大きなタブレットと捉えれば、シリーズとして矛盾はないと言える。
外観は、「Xperia Tablet Z」やXperia Zと共通のオムニバランスデザインと呼ばれているスクエアを重視したデザインになっている。四隅はラウンド形状で、同日発表されたXperia Z1と共通のデザイン感だ。筐体色はブラックとホワイトで、ホワイトの場合には背面パネルと側面パネルがホワイト、液晶とその周囲はブラックという配色になる。
背面には、動画視聴時や、付属のワイヤレスキーボードと組み合わせて利用するためのスタンドが用意されている。スタンドはトルクがかかった無段階調節式で、ユーザーが自由に角度を変えることができる。このスタンドは3本のネジで簡単に取り外せるようになっており、万が一折れたりした場合も、部品さえ入手すればすぐに直すことができるよう配慮したものだという。
本体に用意されているポートは、Micro HDMI、USB 3.0、microSDカードスロット。いずれもカバーがあり、アクセスするには開ける必要がある。ただし、AC電源端子はカバーされておらず、防水仕様ではない。なお、microSDカードスロットの横には目隠しされている蓋があるが、現時点では使われていないということだった。サイズ的にはSIMカードロットに見えるので、将来的には3GやLTEなど無線モデムを搭載したモデルがでる可能性がある。
ディスプレイは11.6型のフルHD解像度(1,920×1,080ドット)で、デジタイザペンにも対応したタッチ液晶になっている。ペンを収納する部分はないが、ペンを固定するアダプタ(オプションか標準かは現時点では不明)が用意されており、それを装着するとペンを本体に付けたまま持ち歩ける。
背面に用意されているカメラは、VAIO Duo 13にも採用されている「Exmor RS for PC」ブランドの800万画素CMOSセンサーを搭載。画素数などの違いはあるが基本的にはExmor RS for Mobileと呼ばれるスマートフォン向けの裏面照射積層型構造を採用し、高画質を謳う。
第4世代Core Yプロセッサを採用し、本体の厚さは10mm以下
内部コンポーネントは、開発コードネームHaswellで知られる第4世代CoreないしはPentiumになる。現在Windowsタブレットでは、Atom Z2760(Clover Trail)ないしは、第3世代Coreプロセッサ(Ivy Bridge)を採用した製品が一般的だ。Atom Z2760は、10mmを切るような薄型で30Whのバッテリによって10時間を超えるバッテリ駆動が可能だが、PCとしての性能にやや不満が残る。これに対して第3世代Coreプロセッサを搭載したタブレットは、性能には充分満足できるが、バッテリ駆動時間が数時間程度だったり、厚くなるなど、一長一短だ。
これに対してVAIO Tap 11が採用している第4世代CoreプロセッサのYプロセッサは、TDPが一般的なUltrabook(例えばVAIO ProやVAIO Duo 13など)に採用されているUプロセッサの15Wより低い、11.5Wに設定されている。さらに、SDPと呼ばれる特定シナリオにおける消費電力の仕様を利用すれば、消費電力はさらに下がり、ファンレス設計も可能になっている。VAIO Tap 11では、このSDPをうまく使っているものと見られる。本製品はファンレスではないものの、本体の薄さは9.9mmになっており、一般的な10型のAndroidタブレットや、Atom Windowsタブレットなどと同等の10mm以下という基準を突破しているのは称賛に値するだろう。
重量は780gと、正直軽い方ではないが、29Whのバッテリを内蔵してMobileMark 2007で6時間の駆動ができるというスペックは、実用性が高い。ただし、VAIO Duo 13で対応しているConnected Standbyには対応していない。タブレットの使い方を考えれば、対応して欲しかった。
SSDはeMMCのように消費電力は少ないが、やや転送速度が遅いタイプではなく、SATAで接続する形になっているのは、見逃せないメリットとなるだろう。また、展示機ではメモリは4GB搭載されており、OSは64bitのWindows 8となっていた。実際の製品でもこうしたスペックになるのかはまだ分からないが、少なくとも4GBのモデルがあり、64bitのWindowsが利用可能なスペックであるということは言えるだろう。
2.4GHz RFで接続される付属キーボード
VAIO Tap 11に付属するキーボードは、2.4GHzの無線で接続される。Bluetoothのような汎用の無線を利用するわけではないので、出荷時に本体とペアリングが済んでいる形で提供される。このため、ユーザーは、箱から取り出すとすぐにキーボードを本体と共に利用できる。説明員によれば、CTOであってもキーボードなしという構成は選べないということで、キーボードは必ずセットとして提供されるということだった。
このキーボードには、VAIO Proシリーズと同じようなフルピッチのアイソレーションタイプのキーとタッチパッドが用意されている。入力感は、こうしたカバーキーボードにありがちな、ふにゃふにゃする感じが少ないのは特筆していいだろう。こうしたカバーキーボードでは、バッテリが入っていなかったり、重量を軽くするためにプラスチックが素材として利用されていることなどもあり、キー入力が快適にできない製品が少なくないが、VAIO Tap 11の付属キーボードに関しては、VAIO Proのキーボードがそのままタブレット用になった感じと言えば分かりやすいだろう。
キーボードの厚さは4.25mmで、本体と合わせても14.15mmと非常に薄いのが特徴だ。本体と合わせた重量は約1.2kg程度だという。本体とは、ぴったりサイズが合うように設計されており、2つを重ね合わせると、クラムシェルノートPCを閉じたときと同じように持って歩くことができる。キーボードと本体は磁石でくっつくようになっており、不意に外れることは少ない。さらに、このキーボードはクラムシェルのように閉じている時に本体側から充電されるように設計されており、特に個別に充電しなくても1週間ぐらいはバッテリが持つようになっているという。
ACアダプタは、VAIO Tap 11用に新しく起こされたもの。丸コネクタ部分に磁石が入っており、ちょっとぐらい引っ張っても簡単に抜けないように工夫されている。
Sonyの展示員によれば、VAIO Tap 11の発表時期は今秋とのことで、具体的な発表時期や日本市場への投入などに関しては明確にされなかった。価格に関しては、Officeなしのモデルで999ドル程度と示唆されており、日本でもCTOで10万円前後あたりからスタートとなる可能性は高い。日本でも今秋投入と見ていいだろう。日本のソニーからの発表を待ちたいところだ。
ユニークな液晶部回転機構を備えるVAIO Fit multi-flip PC
「VAIO Fit」はVAIOシリーズの中でメインストリーム向けの製品だが、今回のIFAで発表された「VAIO Fit multi-flip PC」は、液晶部分ヒンジにこれまでにない構造を取り入れた。
Windows 8は、OSとしてタッチ機能を優先する新しいユーザーインターフェイスを搭載している。そうした中、PCメーカー各社は、ユーザーに対してどのように使いやすいハードウェアを提供するのかに頭を悩ませている。ユーザーにとって最も分かりやすい対応として検討されているのが、クラムシェル型のノートPCでもタッチ機能を実装させるという方法だ。Intelが第4世代Coreプロセッサ世代のUltrabookの要件にタッチを入れたこともあり、タッチを採用するクラムシェル型のノートPCは増えつつある。
今回のVAIO Fit multi-flip PCは、メインストリーム向けのクラムシェル型のノートPCに、新しいタッチの方向性もたらす製品となる。液晶部分は天板中央の支柱を軸に裏に反転する構造になっており、閉じた時に普通のノートPCのようにも、タブレットのようにもすることができる。また、開いた時は、キーボードに対してディスプレイが反対側を向くようにもできるのだ。Lenovoが最初に発表した「Yoga」シリーズのように、液晶ディスプレイを反転できる製品が人気を集めつつあるが、液晶反転型に対するのSonyの回答がVAIO Fit multi-flip PCとなる。
VAIO Fit multi-flip PCには、液晶パネルが15.5型(VAIO Fit 15A)14型(VAIO Fit 14A)、13.3型(VAIO Fit 13A)の各製品が用意されているほか、近い将来に11型の登場も予告されており、参考展示も行われていた。CPUはいずれも第4世代Core Uプロセッサで、液晶ディスプレイは13.3型と14型がフルHD、15.5型がフルHDないしは2,880×1,620ドットのパネルを選択可能となっている。重量は13.3型が約1.2kg、14型が約1.8kg、15.5型が約2kgとなる。
Gレンズ/2,000万画素カメラ搭載のXperia Z1とレンズだけのデジタルカメラ
Xperia Z1はQualcomm MSM8974(クアッドコア、2.2GHz)、2GBメモリ、16GBストレージ、3,000mAhのバッテリ、LTEモデム、OSはAndroid 4.2というハイスペックのSony Mobile製スマートフォンだ。従来のXperia Zと同じオムニバランスデザインを採用しているが、VAIO Tap 11のように四隅がラウンド形状になるなどの違いがある。液晶は5型のフルHDと同様だが、内蔵バッテリが2,300mAhから3,000mAhへと増やされたことで、従来のXperia Zに比べてやや大柄になっている。
Xperia Z1の最大の特徴は内蔵されているデジタルカメラで、従来のレンズの明るさを示すF値が2.0のGレンズを採用し、2,000万画素のCMOSセンサー「Exmor RS for mobile」を採用するなど、カメラ周りが大きく強化されている。光学系の改良だけでなく、Sonyがサイバーショットシリーズで培った画像処理の技術が惜しみなく投入されており、フルオートでも綺麗な映像が撮れるようになっている。
なお、Sony Mobileによれば、Xperia Z1は日本で販売される予定があるが、現時点ではどのキャリアから発売されることになるのかは明らかにされなかった。ヨーロッパでは9月17日から販売開始が予定されており、発表当日の夜から仮予約が開始されていることなどからしても、日本でもそう遠くない時期に販売開始されそうだ。
このほか、Sonyはレンズスタイルカメラと呼ばれる液晶ディスプレイを持たないデジタルカメラを発表した。鏡胴の内部にレンズのほか、光学センサーやバッテリなどを内蔵し、このレンズ単体で写真を撮ることができる。ただし、ファインダーや液晶は用意されていないので、画像を見ながら撮影したい場合は、スマートフォンをWi-Fiで接続して液晶ディスプレイとして利用することになる。
スマートフォンに取り付けるためのアタッチメントが付属しており、それを利用することで、デジタルカメラのような見栄えになる。NFCに対応しているスマートフォンなどでは、NFCを利用してペアリングすることが可能で、Wi-Fiなどの設定に詳しくないユーザーでも簡単に利用できる。
iOSおよびAndroidに対応し、専用ソフトウェアをダウンロードしてインストールすることで、スマートフォンをファインダー替わりにできる。「DSC-QX100」と「DSC-QX10」の2モデルが用意されおり、DSC-QX100がSonyの小型コンパクトデジタルカメラ「DSC-RX100MII」とレンズ/センサーが同等、DSC-QX10が「DSC-WX200」と同等というスペックになっている。
会場では、発表されたばかりのXperia Z1用のカバーケースアタッチメントなどのほか、参考展示としてタブレットに装着するためのアタッチメントや、デジタルカメラのようにする専用のディスプレイなどが展示されおり、将来的にはさまざまな応用例が考えられそうだ。