【COMPUTEX 2012】ワイヤレス関連機器編
~IEEE 802.11ac対応製品や、WCDMA内蔵SDカードなど

ASUSのIEEE 802.11ac対応無線LANルーター「RT-AC66U」

会期:6月5日~6月9日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



●ASUS、IEEE 802.11ac対応無線LANルータや世界初IEEE 802.11acモジュール内蔵ノートPCを展示

 ASUSは、1.3Gbps(5GHz帯域、理論値)と非常に高速な転送速度を誇るIEEE 802.11acに対応する無線LANルーター「RT-AC66U」を発表し、ブースで展示していた。本体サイズは、207×148×35.5mm(幅×奥行き×高さ)と薄型の横置きタイプで、背面に3本のアンテナが取り付けられている。

 また、Gigabit Ethernetポートも4ポート用意する。2.4GHz帯域にも対応しており、デュアルバンドで利用できる。2.4GHz帯域では、802.11n時で最大450Mbpsとなる。6月中旬に北米での発売が予定されており、USB接続やカード型のIEEE 802.11ac対応無線LANクライアントも今後発売される予定だ。

 ちなみに、日本での発売は現時点では未定だ。日本では非常に強い無線LANベンダーがあるため、なかなか参入が難しいものの、チャンスがあればぜひ参入したいとしている。

 また、ASUSブースでは、IEEE 802.11ac対応モジュールを搭載する世界初のノートPC「G75VW」も展示されていた。ゲーミング向けのハイエンドノートで、CPUはCore i7-3720QM/3610QMを搭載し、外部GPUとしてGeForce GTX 660M(ビデオメモリ2GB)またはGeForce GTX 670M(ビデオメモリ3GB)が搭載される。

 展示機を確認したところ、IEEE 802.11acモジュールはBrodcom製コントローラ搭載のものが利用されていた。そしてブースでは、RT-AC66Uを利用してIEEE 802.11acで接続し、データ転送のデモも行なわれていた。ルーターは、ノートPCのすぐ背面に置かれた状態でのデモだったが、接続スピードは866.5Mbpsに達していた。また、実際の速度は、最高で350Mbpsを超え、平均でも250Mbpsほどとなっていた。ちなみに、同環境でIEEE 802.11nで接続した場合の実効速度は平均135Mbps程度となっており、2倍近い速度が発揮されると考えていいだろう。

 COMPUTEXの会場では、多くの無線LANの電波が飛び交っているため、条件としてはかなり悪いはず。その中でこれだけの実効速度が発揮されるなら、通常では有線LANに匹敵する快適さが得られると考えて良さそうだ。

薄型の横置きボディで、背面に3本のアンテナが取り付けられている。また、USBポート、WANポート、Gigabit Ethernet対応のLANポートが4個ある世界初のIEEE 802.11acモジュール内蔵ノートPC「G75VM」。Core i7-3720QMやGeForce GTX 670Mを搭載するハイエンドゲーミングノートだノートPCの背面にRT-AC66Uを置いた状態で、IEEE 802.11ac接続のデモが行なわれていた
Broadcom製のIEEE 802.11acコントローラを搭載するモジュールを内蔵RT-AC66Uとのリンク速度は、866.5Gbpsだった最大350Mbps、平均でも250Mbpsほどの速度を発揮

●AzureWave、IEEE 802.11ac対応モジュールや、60GHz帯域を利用するWiHD/WiGig対応機器を展示

 台湾の無線機器メーカー、AzureWave Technologiesは、Broadcom製コントローラを採用するIEEE 802.11ac対応Mini PCI Expressモジュールをはじめ、無線LANルーター、PCI Express拡張カード型クライアント、USB型クライアントなど、対応製品を多く展示した。このうち、Mini PCI Expressモジュールの製品化は世界初としており、7月より出荷が開始される。また、IEEE 802.11ac対応無線LANルータは、中国で5月に発売された製品だ。

 ミニカードやPCI Express用拡張カード型クライアント、USBクライアントなどは、OEM製品のため、このまま市場に登場するものではない。ただ、こういったOEM製品の出荷が間近に迫っていることを考えると、今後続々とIEEE 802.11ac対応製品が登場してくるものと思われる。日本では、まだ総務省の認可作業中のため、実際にIEEE 802.11ac対応製品が登場するのはもうしばらく先になりそうだが、多くの製品が登場することを期待したい。

AzureWavwの、世界初IEEE 802.11ac対応ハーフサイズMini PCI Express。アンテナ端子は2個で、データ転送速度は最大867Mbps。ASUSのG75VMにはこのカードが搭載されているものと思われるPCI Express用のIEEE 802.11ac対応拡張カード。同時にBluetoothも内蔵。こちらもアンテナは2本で、データ転送速度は最大867Mbps
USB接続のIEEE 802.11ac対応無線LANクライアント。USB 2.0接続のため、データ転送速度は非公開。速度はフルに発揮されないものと思われる中国で5月に発売された、IEEE 802.11ac対応無線LANルータ。こちらは最大1.3Gbpsのデータ転送速度に対応する

 また、AzureWaveブースでは、60GHz帯域の無線を利用し、HD映像信号を転送したり、PCから映像、USB、SATAなどをまとめて無線で転送するシステムも展示され、実際に動作デモが行なわれていた。

 HD動画伝送システムは、WiHD(WirelessHD) 1.1準拠の、Silicon Image製第3世代コントローラを採用したシステムが展示されていた。第2世代のシステムに比べ、本体の小型化や省電力化が実現されているそうで、実際に送受信モジュールは手のひらに乗る小ささだった。そして、60HzのフルHD(1080p)無圧縮映像信号を、ほぼ遅延なく転送できるとしている。無線規格は802.15.3cで、伝送速度は最大4Gbps、伝送距離は最大10m。

 同じく、60GHz帯域の無線を利用したWiGig(Wireless Gigabit、802.11ad)対応システムも展示されていた。eSATA、Gigabit Ethernet、USB 3.0、HDMI、ミニD-Sub15ピン、Mini DisplayPort、オーディオ出力などを備えるベースユニットに、HDDやディスプレイ、プリンタなどの周辺機器を接続し、それら全ての周辺機器をPCから無線で有線接続時と同等に利用できる。最大転送速度は4.6Gbps。

 ブースでのデモは、AzureWavwが開発したWiGig対応のMini PCI Expressカードが搭載されたノートPCを利用して行なわれていたが、PC側には電源のみが接続されている状態で、外部ディスプレイに映像が転送され、LANもフルスピードで利用できていた。

 このWiGig対応カードは、2.4GHz帯域および2.5GHz帯域にも対応するトライバンド仕様で、IEEE 802.11a/b/g/nもサポートする。WiGigは、PC側に周辺機器を一切接続せずに利用できることから、セキュリティ性を高める用途での利用が想定されており、業務用途での展開が中心となる。実際の製品は、早ければ今年中にOEMメーカーから登場することになるそうだ。

60Hz、1080pの無圧縮映像信号を遅延なく転送できる、WiHD対応ワイヤレス動画転送システム。送信用と受信用のモジュールがセットとなる。伝送速度は最大4Gbpsで最大伝送距離は10m映像信号はHDMI入力で、タブレットやPC、ゲーム機、AV機器などを接続できる。プロジェクタでの利用をメインに想定しているそうだ
WiGig対応のベースユニット。伝送速度は最大4.6Gbpsで、映像やHDD、USB 3.0などのデータを一度に送受信できる背面には、オーディオ出力、eSATA、USB 3.0×3ポート、HDMI、アナログRGB、Gigabit Ethernet、Mini DisplayPortなどの端子が用意され、これらポートに接続した機器をむせんで利用できるデモでは、LAN、外付けHDD、HDMI出力にディスプレイが接続されていた
WiGig対応のハーフサイズのMini PCI Express。イスラエルのWilocityが開発したコントローラを搭載。またIEEE 802.11a/b/g/nもサポートデモは、WiGig対応カードを搭載したノートPCで行なわれていたベースユニットとのスループットは3,080Mbpsに達している

●WCDMA対応のSDカードや、NFC対応のmicroSDカードを展示

 香港のNetcom Technologyブースでは、WCDMAモジュール内蔵SDカードや、NFC内蔵microSDカード、中国版デビットカード「UnionPay」を内蔵するmicroSDカードなどを展示していた。

 WCDMA SDカードは、スタンダードSDカードパッケージに、WCDMAモジュールやアンテナを内蔵し、SDIO対応のPCやタブレットに取り付けて利用するもの。3G通信非対応のPCに取り付ければ、すぐに3Gデータ通信が行なえるとしている。

 対応する通信規格は、HSPA+、WCDMA、Edge、GSMで、WCDMA/HSPA+はI(2,100MHz)/II(1,900MHz)/IV(1,700/2,100MHz)/V(850MHz)/VIII(900MHz)の5バンドに対応。GSM/Edgeは850/900/1,800/1,900MHzの4バンドに対応。SIMカードの利用は想定されていないようで、契約情報はカード内部に記録されるものと思われる。そのため、携帯電話キャリアから販売されることになるだろう。

 次にNFCコントローラ内蔵microSDカード。コントローラとアンテナが内蔵され、携帯機器のmicroSDカードスロットに取り付けるだけで、いわゆるおサイフケータイ的な機能を実現。また、2GB、4GB、8GBのフラッシュメモリも搭載し、通常のmicroSDカードとしても利用可能。

 最後に、UnionPay機能を搭載するmicroSDカード。こちらは、ISO7816準拠のスマートカード機能を内蔵するmicroSDカードで、中国のデビッドカードUnionPayに特化したもの。こちらも、NFC内蔵microSDカード同様、携帯機器に取り付けるだけでUnionPayが利用でき、同じく2GB、4GB、8GBのmicroSDカードとしても利用できる

 これら製品は、全て中国市場をターゲットとしているそうで、日本での発売は未定だ。

SDカード型のWCDMAモジュール。スタンダードSDパッケージで、SDIO対応のPCやタブレットに取り付けるだけで、3G通信が可能としているNFC搭載のmicroSDカード。携帯機器のmicroSDカードに取り付けるだけでNFCが利用可能に。2/4/8GBのmicroSDカードとしても利用できる
カードにはアンテナも搭載。スマートフォンなど奥まった位置にあるmicroSDカードスロットに取り付けた場合には、正常に通信が行なえるか不明だが、説明員は“たぶん大丈夫”と言っていた中国のデビッドカード「UnionPay」対応のmicroSDカード。こちらも携帯機器のmicroSDカードスロットに取り付けるだけでUnionPayが利用可能に

(2012年 6月 8日)

[Reported by 平澤 寿康]