【COMPUTEX 2010レポート】
Broadcom、理論値450Mbpsの無線LANコントローラを投入
〜日本でも製品が今秋に登場へ

BroadcomのBCM4331の詳細を説明するスライド

6月2日(現地時間) 発表
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 Wi-Fiコントローラでトップシェアを誇るBroadcomは6月2日(現地時間)、COMPUTEXで記者会見を行ない、IEEE 802.11nに対応した無線LANコントローラ「BCM4331」を発表した。

 BCM4331は、受信側、送信側にそれぞれに3本のアンテナを接続可能になっており、最高で450Mbpsの論理通信速度、および300Mbpsを超えるスループットを実現する。さらに、同チップを2つ利用してアクセスポイントを設計した場合、2.4GHz、5GHzという2つの帯域でそれぞれ300Mbpsのスループットで通信可能になり、合計で600Mbpsのスループットを実現できる。

 同社のホーム/ワイヤレスネットワーキング事業部 事業部長兼上級副社長のマイケル・ハールストン氏は、「BCM4331は現在日本で複数の周辺器機ベンダーと出荷に向けて準備を進めている」と述べ、日本の大手周辺機器メーカーを含む数社から今秋(第4四半期の初め頃)にも搭載製品が登場する見通しであることを明らかにした。

●450Mbpsの論理通信速度を実現するBCM4331

 Broadcomが今回発表したのはBCM4331は、IEEE 802.11nに準拠した無線LANコントローラで、MIMO(Multiple Input Multiple Output)と呼ばれる複数のアンテナを組み合わせて利用する仕組みを採用。3×3(送信が3本、受信が3本)という形で組み合わせて利用することで、最大で450Mbpsの理論通信速度を達成した。同じように450Mbpsを実現するIEEE 802.11n無線LANコントローラは、MarvellなどBroadcomの競合他社からも発表されていたが、それに次ぐものとなる。

 BCM4331の仕様は以下のようになっている

(1)ベースバンド、MACなどが1つのチップに収まるシングルチップ
(2)製造プロセスルールは65nm
(3)インターフェースはPCI Express x1
(4)論理通信速度は450Mbps
(5)スループットは300Mbps以上
(6)アクセスポイントのデザインによってはスループット最大600Mbps

LDPCやSTBCに対応することで従来製品に比べてカバーする範囲や距離などが拡大している

 このほか、LDPCや時空間ブロック符号化(STBC)に対応しており、通信可能距離や通信可能範囲を広げる仕組みが採用されており、従来製品に比べて通信可能距離や通信可能範囲が拡大されているなどの特徴を備えているという。

 BCM4331の価格は未公表で、現在OEMメーカーなどにサンプル出荷中であるとしている。



●2つの帯域を利用して合計で600Mbpsを実現

 BCM4331は2つのアプリケーションが検討されている。1つはPCのようなクライアント用途だ。PC用の3×3 IEEE 802.11n 450Mbpsに対応した無線LANモジュールと言えば、Intelから発売されているIntel Centrino Ultimate-N 6300がメジャーどころだが、それに対抗する製品と言うことになる。

 もう1つがアクセスポイントだ。アクセスポイントは現在でもアンテナが3×3でIEEE802.11nに対応した製品が日本でも販売さているが、論理通信速度の上限が300Mbpsだ。クライアント側は450Mbps対応になったものの、アクセスポイント側が450Mbpsに対応した製品が登場していなかったので、450Mbpsのモードで通信することができていない。しかし、今回発表されたBCM4331をアクセスポイントに利用することで、450Mbpsモードで通信が可能になる。

 さらに、2つのBCM4331を搭載し、それにアンテナを5本接続して、2.4GHz帯と5GHz帯それぞれ300Mbpsで通信することで、合計600Mbpsのスループットを得ることができる。実際フルに利用するには利用者の側で通信を2.4GHz、5GHzに割り振る必要があるが、TVへの動画のストリームには5GHzを利用して、ノートPCでインターネットでアクセスするには2.4GHzを利用するなどの使い方が想定できるだろう。

BroadcomのBCM4331を採用したアクセスポイントの試作機。アンテナは合計で5本搭載されている。 BroadcomのBCM4331を搭載した基板。空きPCI Express Mini Cardのスロットにもう1つのBCM4331を搭載したFMCカードが搭載できる アクセスポイントの内部。基板から2本、FMCカードから3本のアンテナがでていることがわかる

●次世代規格のIEEE 802.11acとIEEE 802.11adを策定中

 ハールストン氏は、このほか現在IEEE 802.11委員会で策定が続いている次世代の無線LANの規格についても言及した。「現在IEEE 802.11委員会では802.11ac、802.11adという2つの規格が検討されている。802.11acは5GHz帯を利用して3.2Gbpsをターゲットにしており、家全体をカバーする通信として開発が規格策定が進められている。802.11adは57-66GHzという高周波数を利用して6.7Gbpsをターゲットしており、部屋の中など短距離をカバーする規格として開発が進められている」とした。

 802.11acは、5GHz帯という現在の802.11a/nで利用されている帯域を利用していることもわかるように、既存のWi-Fi器機の置き換えを狙ったものとなる。ハールストン氏によると既存の11nなどのとの下位互換性も確保されるようで、現在の11nの後継規格が11acだと考えていいだろう。

 これに対して、11adは57-66GHzという超高周波数を利用することで、長距離通信は捨てて短距離に特化することで、圧縮されていないビデオをそのまま転送することなどが用途として考えられている。用途としては完全にWirelessHD(AV Watchの記事参照)などとかぶっているので、そのあたりとの切り分けをどうするかが課題となるだろう。

Broadcom ホーム/ワイヤレスネットワーキング事業部 事業部長兼上級副社長 マイケル・ハールストン氏 IEEE 802.11委員会で議論が進んでいる802.11acと802.11adという2つの仕様
802.11acは家庭全体をカバーする 802.11adは部屋だけなど小さい範囲をカバーする代わりに高速

●日本でもBCM4331搭載製品が今秋発売へ

 また、BCM4331を搭載した製品の投入に関して、「現在弊社と関係が深い数社と開発を進めている。第4四半期の初め頃には、日本市場に搭載した製品が投入されることになる」と見通しを明らかにした。ただ、具体的な製品計画については言及がなかったので、それが600Mbps対応なのか、それとも450Mbps対応製品なのかは現時点では不明だ。

 すでに述べたように、現在日本市場で発売されているアクセスポイントは300Mbpsまでに対応した3×3 IEEE 802.11n対応アクセスポイントまでとなっており、早期の投入が期待されていたが、これにより具体的な投入計画があることが明らかになったことになる。すでにノートPCの方は450Mbpsに対応した製品が登場していることもあり、できるだけ早期に市場に投入されることに期待したいところだ。

(2010年 6月 3日)

[Reported by 笠原 一輝]