【COMPUTEX 2009レポート】
NVIDIA、Tegraベースのネットブックなど多数のデザインウインを明らかに
〜国内キャリアからも登場か

チューインガムのパッケージサイズのTegra搭載システムボードを掲げるNVIDIA 社長兼CEO ジェン・スン・ファン氏

会期:6月2日〜6日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



 NVIDIAはCOMPUTEX開幕前日の1日に引き続き、初日となる2日にも記者会見を開催し、同社がモバイル機器向けに提供するARMベースのGPU統合型プロセッサ”Tegra"に関する発表を行った。Tegraそのものは、前回のCOMPUTEX TAIPEIで発表されており、今回は特に新しいモデルがリリースされた訳ではなく、新たにAdobeとの協業が公開されたに留まった。

 しかし、今回の発表会では、台湾のOEMメーカーやODMメーカーなどから多数のTegraを搭
載したネットブックなどが公開され大きな注目を集めた。

●次の10億台の市場にビジュアルコンピューティング環境をもたらすTegra

 冒頭でスピーチを行なった、NVIDIA 社長兼CEO ジェン・スン・ファン氏はTegraのことを「携帯機器にとってパーフェクトなプロセッサ」と形容した。

 ファン氏は「我々はTegraを設計するにあたり、省電力とパフォーマンスをバランスよく実現する設計哲学を採用した。Tegraは8つの異なるプロセッサを内蔵しているが、基本的にはすべてがOFFになっており、必要な時だけ必要なコアにだけ電源を入れるアプローチを採用している。例えば、ビデオカンファレンスする時にはHDデコーダをONにし、MP3を再生する時にはオーディオプロセッサをONにするという形で利用することになる。これは家庭で省電力を目指す時に、台所を使う時に台所のライトを点け、使わなくなったら消すという使い方と同じだ」と述べ、ユーザーの使い方をよく調べ、そうした考え方で設計したからこそ、100mW〜500mWという非常に低い消費電力を実現することができたのだとアピールした。

 さらにファン氏は「例えばPCの消費電力は20Wから500Wのレンジとなっている。しかし、このパワーを1W以下の市場にもたらすことで、さまざまな可能性がでてくる。例えば、自動車や携帯電話、家電などさまざまな機器がターゲットに入ってきて、10億台の市場規模があると考えている。その市場にビジュアルコンピューティングの環境をもたらしたい」と、そうした市場にNVIDIAのアドバンテージであるグラフィックス性能を持ち込み、他社との競争に打ち勝つのだという姿勢を明確にした。

ファン氏が公開したTegra搭載システムボード Tegraには8つのプロセッサが内蔵されており、必要な時だけ必要なプロセッサの電源をオンにする 1W以下のTegraを武器に次の10億台のコンピュータ市場に浸透を図る

●Adobe Flash PlayerがTegraのGPUに最適化し、H.264の再生などが可能に

 続いて登場したのはNVIDIA モバイルビジネス事業部 事業部長 マイク・レイフィールド氏で、Tegraの技術的なメリットなどに関して語った。

 まず、レイフィールド氏はIntelのセールス部門のトップであるショーン・マローニ上級副社長が、ネットブックとノートPCの動画性能に関して「ノートPCではスムーズにHDビデオを再生することができるが、ネットブックではスムーズに再生できない」と語っているビデオを流し、「マローニ氏はこんなおもしろいことを言っておられるようだが、事実はそうではない。我々のTegraはきちんとHDビデオをスムーズに再生できる」といって、映画“スタートレック”の予告編のHD動画をTegraによって再生させて見せ、Intelとの違いを際立たせてみせた。

 さらに、Linux、Windows Embedded CE 6.0を実際にTegra上で動かして、安定してインターネットなどにアクセスできる様子などがデモされた。その後、Adobe System プラットフォームビジネスユニット パートナー開発 ディレクターのアヌープ・ムラッカ氏がビデオで登場し、AdobeがNVIDIAと協業し、Adobe Flash PlayerをTegraに最適化し、Tegra向けのFlash PlayerでH.264ビデオの再生などTegraのアクセラレーション機能が利用できるようになったことなどを示した。

 さらにレイフィールド氏は、今後のTegraのロードマップについても触れ、2009年には同じ消費電力の枠内で性能を4倍向上させた開発コードネーム“T2”と呼ばれる次世代Tegraを、さらに2011年には開発コードネーム“T3”と呼ぶ次々世代Tegraをリリースする予定であることを明らかにした。

なぜかNVIDIAの記者会見にIntelのマローニ上級副社長が登場 IntelはネットブックではHD動画を満足に再生できないと主張 Tegraでは映画“スタートレック”予告編のHD動画を楽々再生できると皮肉たっぷりにアピールした
TegraでLinuxを動作させているところ。2008年の段階ではサポートするOSはWindows CEだけだったので、これも1つの進化点である Windows Embedded CE 6.0も引き続きサポートされる、WebブラウザでWebへアクセスしているところ
ビデオレターで登場したAdobe System プラットフォームビジネスユニット パートナー開発 ディレクター アヌープ・ムラッカ氏 NVIDIAはAdobeと協力してFlash PlayerをTegraに最適化させると発表

●TegraベースのODMベンダ製のネットブックが多数展示される
Tegraの発表会で展示された各社のTegra搭載ネットブック

 会場にはODMメーカーがデザインしたTegraを搭載したネットブックが多数展示された。展示されたのはPegatron、Wistron、InventecなどのODMメーカーの製品で、基本的には自社ブランドで販売するセットメーカーではないため、これがそのまま出てくるということはないだろう。今後、これらのODMメーカーが、欧米や日本などのOEMメーカーに売り込みにいき、最終的にはそれらのメーカーのデザインとなり出荷されることになる。

 なお、今回はいずれの製品も電源は入っておらず、どのようなOSが入っているかは確認できなかったが、NVIDIAの関係者によればOSはLinuxとWindows Embedded CEなどがサポートされるようだ。具体的なLinuxのディストリビューションなどは確認できなかったのだが、Tegraがアプリケーションプロセッサであることを考えると、Androidが動作する可能性は高いだろう。

NVIDIAのリファレンスデザイン。なんだか筐体のデザインが、日本でも販売されている某世界最大PCメーカーのネットブックに酷似している(ほぼ同じ)なのは気のせいだろうか……おそらくODMメーカーが一緒なのだろう…… Pegatronの「VIVID」 Wistronの「M5」
Movinnovaの「Mavo」 Movinnovaの「Elan」 Inventecの「Rainbow」

●パートナーのリストの中には日本のキャリア2社の名前も入っている
NVIDIAが公開したTegraの潜在顧客となりうるキャリアパートナー。NTTドコモとイーモバ
イルの名前が入っているのが気になるところだが、今のところそれ以上の公開情報はないようだ

 気になる日本への展開だが、今回は特に日本のメーカーなどはきておらず、具体的にどこのメーカーからリリースされるのかなどはまだよくわからない。しかし、ファン氏の講演のなかでは「Tegraのパートナーは世界各国で獲得している。今日はそうしたパートナー、米国、欧州、韓国、日本などから来てくれたパートナーに感謝したい」という発言があり、日本でもパートナーを獲得していることが示唆されていたほか、レイフィールド氏のプレゼンテーションの最後の方に示されたスライドで、パートナーになる可能性のあるキャリアの一覧の中にNTTドコモとイーモバイルの2社の名前が入っていた。

 また、業界筋の情報によれば、すでに日本メーカーの中にもTegraの開発に真剣に取り組んでいるところもあり、2009年の後半あたりに実際の製品として登場する可能性が高いのだという。それも、今回の記者会見で公開されたようなネットブックのフォームファクタではなく、よりモバイル機器に近いフォームファクタになっているとのことだ。仮にこの情報が本当であれば、インターネットにアクセスして楽しめるというだけでなく、HDコンテンツを再生できるようなモバイル機器が日本でも入手できるようになるということで、期待したいところだ。

(2009年 6月 3日)

[Reported by 笠原 一輝]

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