イベントレポート

Qualcomm、10nmプロセス/8コア SoC「Snapdragon 835」を正式発表

~820比で消費電力は25%削減、GPU性能は25%向上。Windows 10にも対応

Snapdragon 835のパッケージ(左)、右側のSnapdragon 820と比べて小さくなっている

 米Qualcommは、CES 2017の記者会見日(2017年1月3日~4日、現地時間)の初日に記者会見を行ない、スマートフォン向けSoC「Snapdragon 835」を正式発表し、詳細を説明した。

 このほか、QualcommはSnapdragon 835を利用した、ARスマートグラス「ODG R-8」を紹介した。サングラス型のデバイスで、Snapdragon 835の機能を利用してARを実現するという。

10nmで製造される8コアCPU。パッケージ面積を30%削減

 Qualcomm Technologies製品マネージメント担当上席副社長のキース・クレッシン氏は、同社が2016年12月に10nmプロセスルールで製造することを明らかにした、新ハイエンド製品となるSnapdragon 835に関しての説明を行なった。

Qualcomm Technologies製品マネージメント担当上席副社長のキース・クレッシン氏。手に持っているのはSnapdragon 835搭載スマートフォンのリファレンスデザイン

 Snapdragon 835は、2016年の年CESで発表したSnapdragon 820(そしてその後に追加された821)の後継となる製品で、各社のハイエンドスマートフォンに加え、ARM版Windows 10を搭載したPCなどへの採用が期待される製品だ。

 クレッシン氏は「今回のCESでは、さまざまな半導体メーカーが新製品を発表すると思うが、10nmプロセスルールに基づいて製造される製品を発表できるのは我々だけだ」と述べ、Qualcommが他社に先駆けて10nmプロセスルールの製品を発表できることのアドバンテージをアピールした。

電話から常時接続のコンピュータの時代へ
200以上のデザインウインを獲得して成功したSnapdragon 820
Snapdragon 835を正式発表

 Snapdragon 835では10nmプロセスルールを採用することで、Snapdragon 820より低消費電力かつ小さなチップ面積を実現できた。実際、パッケージサイズを30%小さくできている。これによりOEMメーカーは、基板を小さくしたり、空いたスペースにバッテリを搭載して駆動時間を延ばせる。

Snapdragon 820のパッケージに比べて30%面積を削減している
Snapdragon 830の5つの特徴。バッテリ駆動時間、仮想現実、写真動画のキャプチャ、常時接続性、セキュリティ

 そうしたSnapdragon 835の特徴についてクレッシン氏は、バッテリ駆動時間、仮想現実、写真動画のキャプチャ、常時接続性、セキュリティの5つだと述べた。

 バッテリ駆動時間に関しては、より効率が高まったCPUとなるKryo 280(8コア、4つの高性能コア/2.45GHzと4つの高効率コア/1.9GHz)が10nmプロセスルールで製造されたことにより、消費電力が削減。クレッシン氏によれば、従来世代のSnapdragon 820と比較して25%消費電力が削減されているという。なお、メモリはデュアルチャネルのLPDDR4-1,866MHzまでをサポートする。

バッテリ駆動時間

 仮想現実(VR)という観点では、GPUの強化による性能向上がある。GPUはSnapdragon 820のAdreno 530から強化されたAdreno 540になっており、25%ほど処理能力が向上した。

 さらに、4Kプレミアム動画を再生するに必要なHDR 10にも対応。写真動画のキャプチャでは、新しいISP(イメージシグナルプロセッサ)として、デュアル14bit ISPとなるQualcomm Spectra 180 camera ISPが搭載されており、3,200万画素のシングルと1,600万画素のデュアルカメラをサポートする。

仮想現実
写真動画のキャプチャ

 常時接続性では、Snapdragon X16 LTEモデムが内蔵されており、4x4 MIMOの技術などを利用して1Gbpsの通信速度を実現するカテゴリ16のLTE通信が可能になっている。

 同時にIEEE 802.11ad(WiGig)やIEEE 802.11acのMU-MIMOのWi-Fi機能も標準で搭載されている。セキュリティではハードウェアベースのセキュリティ機能が用意されており、電子商取引などでマルチファクター認証などを利用できる。

常時接続性
セキュリティ

年末登場予定のARM版Windows 10にも採用予定

 クレッシン氏は「Snapdragon 835はCPU、GPUだけでなく、DSPを利用して機械学習が活用できる。フレームワークも、従来はCaffeのサポートだけだったが、現在はGoogleのTensorFlowに対応している」と述べ、QualcommがSnapdragonで機械学習や、深層学習を活用できるソリューションを今後も充実させていくと説明した。

機械学習も強化

 なお、今回は具体的な製品への採用発表は特になかった。Qualcommに近い関係者によれば、今回のCESでは、おそらくSnapdragon 835を搭載したスマートフォンを発表するメーカーはない見通しで、2月の末に行なわれるMWC 2017へ持ち越しの可能性が高いという。

 ただ、既にMicrosoftが12月のWinHECで発表したARM版Windows 10に関しては、最初の製品がこのSnapdragon 835ベースになることが明らかにされており、今年の年末商戦に登場するSnapdragon 835ベースがどのようなPCになるのか、今後も要注目だ。

Snapdragon 835の将来という意味では、年末商戦に登場が予定されているARM版Windows 10の最初の製品に採用される
10円玉との比較
Snapdragon 835を採用したスマートフォンのリファレンスデザイン

 その後、同社QCT製品マネージメント担当上席副社長のラジャ・タルリ氏が登壇し、同社のIOT製品について説明した。

 その中でタルリ氏は、ODG(Osterhout Design Group)が開発したSnapdragon 835を採用したARメガネを紹介。公開されたのはODG R-8というサングラス型のデバイスで、その中にSnapdragon 835が入っており、AR(拡張現実)の機能を実現しているという。

Qualcomm Technologies QCT製品マネージメント担当上席副社長 ラジャ・タルリ氏
タルリ氏のスライド
ODG R-8