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マイクロソフトのクラウドサービス拡大の狙いが分かる「FEST2015」開催

~84型巨大タブレットSurface Hubの実演も

「FEST2015」は従来の「The Microsoft Conference」、「マイクロソフト ジャパン パートナー コンファレンス」、「Microsoft Dynamics Forum」を統合した新しいイベント

 日本マイクロソフトは2日、ビジネスパートナーに向けた自社ビジネスの取り組みとテクノロジを紹介するイベント「FEST2015」を開催した。

 開催期間は9月4日までの3日間となっており、“クラウドを活用したビジネスの変革”といった内容を議題に基調講演やセッションが行なわれる。講演は日本マイクロソフトだけでなくパートナー企業も行ない、クラウド導入による業務効率の改善事例などを紹介する。

日本マイクロソフト 代表執行役社長 平野拓也氏

 FEST2015は、平野拓也氏が日本マイクロソフトの代表執行役社長に就任してから初の大型イベントとなっており、これまで開催されてきた「The Microsoft Conference」、「マイクロソフト ジャパン パートナー コンファレンス」、そして「Microsoft Dynamics Forum」の3つのイベントを統合し、毎年1回開催されることになる。

 初年度のテーマは「革新とその先への共創」。要はマイクロソフトのクラウドサービスを活用して従来のビジネス形態を変革し、互いに協業してビジネスの幅を広げていきましょうというもの。

 基調講演では、まず平野拓也氏が登壇し、6月に締めた決算の好調ぶりに感謝の意を述べるとともに、昨年(2014年)から今年までのトピックを振り返るところから始まった。

 最初に触れたのは「クラウドビジネスの加速」についてで、日本における東西のデータセンターの開設やAzure、Office 365、Dynamics CRMといったサービスがスタートし、顧客からは安心/安全/信頼感という面で今まで以上に高い引き合いが来ていることを述べた。

 次に、近年はサイバー攻撃がより活発化しており、セキュリティへの関心が特に高まっている中で、日本マイクロソフトではサイバークライムセンター日本サテライトを開設し、マルウェアの出所の把握やそれに対する対策方法など、あらゆる攻撃に対応できる体制を整えていることを紹介。Microsoftはアメリカ国防総省に次いでサイバー攻撃を受けているとのことで、それでもこれまで大きな事故が起きることなくビジネスを行なえている堅牢性をアピールした。

 そしてWindowsデバイスについて、PCは一時の駆け込み需要に比べて、それほど多くの販売数を得られていないものの、他社を含めSurfaceのような2-in-1という新しいカテゴリのデバイスに大きな関心が集まっているとし、実際にコンシューマ市場においては、Surface Pro3はPro2よりも初日の引き上げ量で25倍、コマーシャルでは7倍の引き合いがあったことを明かした。

平野氏は日本マイクロソフトの昨年からの活動として、クラウドビジネスの加速、Windowsデバイスへの関心、顧客からの評価について振り返った

 また、本社のCEOがサティア・ナデラ氏になったこともあり、ソフトウェアの無償化を行なうなど、これまでのMicrosoftの閉鎖的で排他的な部分が払拭されつつあり、顧客から変革のスピードが見えるという評価が得られていると述べる。Microsoftの設立から既に40年が経過しており、その間にスマートフォンやタブレットといったデバイス、そしてクラウドが一般化する中で、これからのMicrosoftは、全ての個人と組織が目的を達成できるというビジョンを掲げ、取り組んでいると言う。

日本マイクロソフトがこれから注力していくこと

 平野氏は、日本マイクロソフトがこれから注力していく取り組みとして3点を挙げた。

 1つ目は「プロダクティビティとビジネスプロセス」で、これまでは主にOfficeソフトの有用性をアピールして競争を行なってきたものの、少子高齢化や市場の成熟などが進む中で、各企業が骨太の組織になるためのサポートを行なうための役回りにも注力していきたいとの意向を示した。これは同社クラウド事業を踏まえてのことだが、日本マイクロソフトでは働き場所を制約しないテレワーク週間を導入しており、これをパートナーにも推進する形で現時点では651組織から賛同が得られているとのこと。リーディングカンパニーとして、こうした新しいワークスタイルといった提案に引き続き投資し、徹底的に進めていくという。

 2つ目は「Windows 10+デバイス」についてで、平野氏はWindows 10のリリースによって大きな反響が得られ、好評を博している述べる。社内でも想定していた目標値を大幅に上回る数のインストールがあったとのことで、今後PCだけでなく、タブレットやスマートフォン、IoTなどといったあらゆるデバイスに展開していくという。

 3つ目は「インテリジェントクラウド」に関してで、平野氏は2020年までには約750億のデバイスが存在しているというリサーチ会社の統計を挙げ、これらデバイスが独立して動いているということは考えにくく、クラウドに関わることは間違いない。そのため、コスト削減という面だけでなく、実際にその付加価値をどう出していけるかという部分が重要になる。この点にもエネルギーを投入し、投資をしていきたいと意気込みを語った。

平野氏は日本マイクロソフトがこれから注力していく取り組みとしてスライドで3点を挙げた

 途中基調講演では、日本マイクロソフトのクラウドサービスを導入したことで、どのようなメリットが生まれたかを見せるパートナー企業によるビデオが上映された。パートナー企業への質問には「Googleと比較したマイクロソフトの強み」といったものもあり、ライバル企業に対する自社サービスの優位性を強くアピールするところも窺えた。

 平野氏はクラウド導入のメリットに関して、IDCによるデータを引用。IDCのグローバルの統計によれば、クラウドによる売上げが50%以上の企業は、新規顧客の獲得が従来比で1.3倍あり、1.4倍の売上増、1.5倍の利益増に繋がったという数値が出ており、平野氏はこの傾向は日本でも同様であり、今後顧客がクラウドの導入を検討していく中で、日本マイクロソフトとしては、パートナー企業の高い収益性の確保を手伝い、支援できるようにしていきたいという考えを示した。

 その支援策としては、クラウド事業の立ち上げ支援を行なう「CSP(クラウドソリューションプロバイダ)プログラム」を拡張し、Azureのサポート用相談窓口などの設置、利用率レポートの提供などを行なうことを挙げる。日本マイクロソフトでは、前期と比較してクラウド活用企業が1,000社増えたことを挙げ、さらに同事業の成長を見込んでいるようだ。

クラウド活用によるメリット
顧客のクラウド支援策

 平野氏の次には社長から代表執行役 会長になった樋口泰行氏が登壇。日本マイクロソフトが考える日本での地方創世と、セキュリティへの取り組みについて説明を行なった。

 今後日本では人口が減少し、労働力の供給に期待できない中で、ワークスタイルの変革が必要であり、地方に元気がなければ全体の元気にも繋がらないとし、地方と都市部の距離をITで繋げる仕組みが必要であると説いた。実際に北海道別海町にて行なった、テレワーク実験での例を示し、その成果について触れている。

 そのほか、クラウドを活用することでの懸念材料として、セキュリティ面での心配が多く寄せられていることを話し、前述の日本マイクロソフトによるサイバークライムセンターによる対策が行なわれていることやWindows 10における生体認証によってセキュリティレベルを格段に向上できることを説明した。

代表執行役 会長の樋口泰行氏も登壇。地方創世に関する取り組みや、サイバークライムセンターのセキュリティの高さについてアピールした

Surface Hubによる会議での活用方法などをデモ

 基調講演の最後には、業務執行役員エバンジェリストの西脇資哲氏が登壇し、Windows 10やSurface Hubを用いたデモンストレーションを行なった。

業務執行役員エバンジェリストの西脇資哲氏と84型のSurface Hub。導入によって会議などでのシーンが変革する

 西脇氏はまずWindows 10での新しい使い方に関して、来場者に向けたアピールを行なった。最初に見せたのは「検索ボックス」の利用方法で、起動したいアプリや設定を変えたいといった場合にはタスクバー上にある検索ボックスから探すことを強く推奨。多くのユーザーがスタートメニューをたどるなどして目的に操作を行なっているのに対し、Windows 10では検索ボックスを活用することで即座に目的を達成できることを実演した。

 そのほか、クラウド上から用語を拾うことでトレンドキーワードを認識可能なIMEの設定方法や、Windows Helloを使用した顔認証システム、Cortanaの利用など、Windows 10での特徴的な機能を披露していた。

西脇氏は検索ボックスの活用を強く推奨
設定すれば、IMEはクラウド上に用意されている最新の用語を活用できる
Windows Helloを使用した顔認証の設定
Insider PreviewのCortanaを活用して言葉だけで予定を設定。正式版の登場が待たれる

 Surface Hubの利用デモでは平野氏も加わり、その活用方法について説明を行なった。Surface Hubは84型で4Kの解像度を備えた巨大なディスプレイで、タッチセンサー/人感センサー/カメラなどを備えており、会議室でのプロジェクタやホワイトボードの代わりとして、その利用が想定されている。

 デモではWindowsマップからヨーロッパの都市を表示させ、ある通りにお店を開く場合というシチュエーションでSurface Hubの使い方を解説。ホワイトボードのように直接ペンで書き込んで道路に印を付けたり、それらを表示させたままで、Surface Hub上から別の場所にいる日本マイクロソフト社員を電話で呼び出し会議に参加させる、平野氏のスマートフォン上に表示されている操作画面をワンタッチでSurface Hub上にリアルタイム表示させるなどといったSurface Hubの柔軟性を披露して見せた。

平野氏と西脇氏がSurface Hubの使い方を実演
2人同時にペンで書き込みこともできる
Windowsマップから表示させたヨーロッパの町並みに直接ペン書きしている
地図を開いたまま別の場所にいる人物に電話呼び出し
そのまま会議に参加した状態にできる
平野氏のWindows Phoneの画面を簡単にSurface Hub上に表示させることもできる
スマートフォン上にある情報などをSurface Hubで表示されている地図上に置くような動作も可能

 そのほか、基調講演ではSaaSの「Power BI」を利用した店舗売上の分析方法、その売上を機械学習することで次年度の売上予測を立てる「Azure Machine Learning」についても説明。日本マイクロソフトがただのソフトウェアメーカーではなく、クラウドを活用したソリューションを提供できる企業として、さまざまな取り組みを紹介した。

「Power BI」を実際に利用した企業による海の家の売上を分析表示。店舗上で入力したデータは全てクラウド上に保存されている
機械学習で昨年度の売上から今年度の売上を予測できる
学習させる方法は難しくなさそうで、GUIを使って項目などを並べ替えるなどして設定していた

 明日のDay 2では「企業に求められるビジネス変革」、最終日のDay 3では「ビジネス変革を加速させる企業システム」をテーマに基調講演ならびにセッションが開かれる。

(中村 真司)