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Rambus、訴訟から協調の企業へ変化し「JEDEC加盟で業界に貢献する」
~レンズレスイメージセンサーなどの注力分野を紹介
(2014/5/20 15:29)
ラムバス株式会社は20日、記者説明会を都内で開催。米Rambus本社より来日した、上級副社長兼最高マーケティング責任者のジェローム・ナデル氏、同エンタープライズ・ソリューション部門副社長のスティーブン・ウー氏がIoT戦略や現在の注力分野などを紹介した。
CMOのナデル氏はRambusの戦略が変化していることを紹介。Rambusと言えば主にメモリに関する技術を開発し、特許を取得、それをライセンスすることで収益を上げることを中心としたビジネスモデルであった。しかし、現在は開発した技術をいかにほかの企業が製品へ反映し、利用するかに焦点を当てており、IPコアやアーキテクチャライセンス、製品へ統合するためのツールなどの提供を実施。パートナー企業との関係も「訴訟の関係ではなく、協調する関係へ」へ変化していることを紹介。対象となる製品も、メモリだけではなくなっており、今回の説明会では特にIoTに対しての取り組みが紹介された。
5月14日(米国時間)に発表されたJEDEC(JC-40)への加盟も、そうした変化の1つで、「IoTにおいてはビッグデータが転送、処理される。サーバーやメモリシステムが重要な要素を占めるここに大きなビジネスチャンスがある。JC-40への加盟や他社との協業で規格化に貢献していきたい。そして、我々の専門性を収益に結びつけていきたいと考えている」とした。
注力分野については、これまでメモリインターフェイス、セキュリティソリューション、スマートセンサー、LEDイノベーションという4つの柱に変わり、IoTという大きなトレンドに対して「キャプチャー(取得)」、「セキュア(安全性の保護)」、「ムーブ(転送)」という3つの柱へと戦略を転換している。
これは、イメージセンサーを含むセンサー類でデータを取得(キャプチャ)し、そのデータを安全性を保護して(セキュアに)、クラウド/サーバーへデータを転送(ムーブ)するということである。
説明会では、各分野の技術についてスティーブン・ウー氏が技術解説を実施した。
まずキャプチャについては、特にイメージングセンサーについての紹介が行なわれた。Rambusではセンサーに加えて、いわゆるコンピューテショナルイメージングと呼ばれる、演算によって画像の品質を高める分野にも力を入れている。
1つは「バイナリピクセルイメージャー」(Binary Pixel Imagers)と呼ばれるもので、オーバーサンプリング技術などの画像処理を組み合わせることでダイナミックレンジと低照度イメージの品質を高める静止画向けの技術を開発している。
さらに、デジタルカメラは一般的にレンズを通して被写体(の光)をセンサーに結像させ、そのセンサーが受け取った情報を決められたフォーマットへ変換する処理を行なうが、このレンズを廃した「レンズレススマートセンサー」を開発。2月にスペインで開催されたMobile World Congressで発表した。
これは位相回折格子とらせんパターンを組み合わせた素子を用いて、イメージを入力。センサーはレンズによる結像がないためボンヤリとしたイメージを受光するが、これを演算処理にかけて復元する。被写界深度の調整も可能という。
携帯電話やスマートフォンなどのカメラモジュールは、レンズがあるために一定の高さ以下にできないという制約が生まれているが、この技術では非常に薄型、小型のカメラモジュールを実現できる。また、消費電力も非常に低く抑えられているという。
高解像度のイメージセンサー技術ではないことから、既存のレンズを用いたイメージングデバイスを置き換えられるものではないが、例えばモーションセンサーや、深度/距離測定が可能なことからジェスチャーセンサーへの応用、顔の有無による離席/在籍確認のアプリケーション、ウェアラブルデバイスへの搭載、ほかのセンサーと組み合わせての活用など、IoTのエンドポイントにおいて、この技術には大きなチャンスがあるとRambusでは考えている。
セキュアについては、位相電力の解析(DPA)に帯する対策や、SoCへ埋め込み可能な「CryptoFirewallセキュリティコア」の提供などで、安全性を提供。同社では「Internet of Trusted Things」と表現して訴求している。
ムーブについては、低消費電力で高速にデータ転送を行なう手段に取り組んでおり、最近では、銅線を用いて40Gbpsを超えるデモを実施済みという。また、DRAMの寿命を延ばすなど、現在のメモリ規格の改善も進めている。
メモリについては、消費電力の増大や、ムーアの法則の原則でビット当たりのコスト計算が従来と合わなくなってくるなどの課題があるという。特に電力はデータセンサー、モバイルデバイスの普及のため重要な課題で、Rambusでは「R+」と呼ばれる技術を展開。既存のLPDDR3規格に準拠したまま、同等の性能をより低消費電力に、もしくは同等の電力でより高い性能を発揮できる「R+ LPDDR3」をモバイル向けに提供している。
Rambusでは、こうしたR+ LPDDR3の存在が新しいIoTという市場に対応できることの証明であるとしたほか、今後の新しいメモリアーキテクチャに対してもソリューションを提供していけると考えているとした。