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2014年の電子情報産業は世界経済の伸びを上回る
~JEITAが世界生産見通しを発表
(2013/12/25 06:00)
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は24日、「電子情報産業の世界生産見通し」を発表。これによると、2014年の電子情報産業の全世界の生産額は、前年比5%増の261兆円という。
ここでいう電子情報産業とは、AV機器や通信機器、コンピュータおよび情報端末、医用電子機器などで構成される「電子機器」と、ディスプレイデバイスなどによる「電子部品・デバイス」の2つを合わせた「電子工業」と、ITソリューション・サービスを加えたものとなっている。
JEITAの佐々木則夫会長(東芝取締役副会長)は、「世界経済の高い実質経済成長率をさらに上回ることになる。為替変動の影響などがあるものの、リーマンショック前の2008年の233兆円を上回り、回復傾向にある」と総括した。2014年の世界経済における実質経済成長率は3.6%、日本経済の実質経済成長率は1.4%と見込まれており、電子情報産業の生産額はそれを上回る成長となる。
電子情報産業の内数となる電子工業全体では、2014年には5%増の191兆円、電子部品・デバイスは6%増の67兆円、ITソリューション・サービスは4%増の70兆円と予測。2014年の生産額予測の中では、特に個人向けモバイル端末が13%増、医用電子機器が9%増と、高い成長を遂げるという。
また、電子情報産業における日系企業の世界生産の見通しは、前年比3%増の38兆8,000億円になると予測した。2013年にプラスに転じた日系企業の世界生産額は、2014年も引き続きプラス成長を維持。ディスプレイデバイスが11%増、医用電子機器が10%増、カーAVCが6%増と、これらの分野で世界生産の伸びを上回ると予測している。また日系企業は堅調な成長を維持することで、日系企業の世界シェアは前年同様15%を維持するとしている。
2014年の電子工業の生産額は前年比3%増の33兆4,000億円。そのうち、電子機器は1%増の19兆円、電子部品・デバイスは5%増の14兆4000億円。また、ITソリューション・サービスは3%増の5兆4,300億円と予測した。
佐々木会長は、「過度な円高ドル安ユーロ安からの回復による企業競争力の向上や、アベノミクスによる国内景気の持ち直しなどがプラス要因になっている」としたほか、「電子部品・デバイスは、スマートフォンやタブレットなどの需要を取り込んでいる。スマートフォンは一部の日系企業が省エネに強い液晶を製品化するなどの取り組みがあるが、まだフィーチャーフォンに比べるとスマートフォンの駆動時間は短い。スマートフォンは、機能や操作性だけでなく、省エネ性能などでも改善の余地がある。ここを満足させることで、日本がこの分野でリードできないかと考えている。さらに、端末の後ろにあるデータベースを活用した競争力も必要だろう」などとした。
国内における電子工業の生産額は、2014年には、前年比3%増の11兆8,000億円になると予想。足元の国内生産の回復が顕著であり、2014年はディスプレイデバイスなどの電子部品・デバイスが牽引役となり、4年ぶりのプラス成長に転じると見ている。
なお、日系企業の海外生産比率は、電子工業においては、65%に達すると予測。電子機器は76%、電子部品・デバイスは50%と予測。いずれも前年並みとしている。
佐々木会長は、「日本が少子高齢化の中にあり、世界人口が増えれば、海外生産比率が上がるのは自然のことである。これは空洞化ではなく、伸びるマーケットにおいて、地産地消が推進され、海外比率が増加するということである。だが、設備投資減税などの取り組みもあるが、電力コストなどを含めた産業競争力を維持するようなインフラ政策を推進してもらいたい」としたほか、「日本で育てていくのは技術的な付加価値があるものであり、サービスやシステムを組み込んでいくという仕組みを定着させていくべきである。海外企業対日系企業という構図ではなく、グローバルで戦うための付加価値を指向していくのがいい」などとした。
また、2020年における注目分野についても発表した。同協会では、「M2M/IoT」、「カーエレクトロニクス/カーインフラ」を注目する分野とし、IoTでは、2020年までの年平均成長率を8%増、2020年には308兆円の市場規模になると予測。M2Mについては、2020年までに年平均20%増という高い成長をみせ、3兆1,000億円の市場規模に到達するとした。IoT市場は、IPアドレスを持つ電子機器と、間接的につながる電子機器、および半導体、サービスを加えて算出。電子機器は183兆円と全体の過半数を占めるという。IoTの内数となるM2Mでは、医療ヘルスケアが年平均成長率が60%増、自動車では同30%増という高い成長率を維持し続けるという。
カーエレクトロニクスの世界需要は、2012年には20兆円の市場規模だったものが、2020年までに年平均成長率で7%増となり、2020年には34兆円の市場規模になると予測した。成長の中心的役割を果たすのは車載電気機器で、年平均成長率は6%増。2020年には、30兆円の市場規模となり、全体の8割を占めるなどと予測した。
この分野では、ディスプレイ付き電子インパネなどの情報系、エアバックなどの安全系、エアコンなどのボディ系、エンジン制御などの駆動系に分類。安全系では年平均7.9%増、情報系では6.8%増という成長率を維持するという。
佐々木会長は、「JEITAは、世界に先駆けたスマート社会を実現するために、ITエレクトロニクス技術が、従来のあらゆる分野・産業のプラットフォームとなり、個人や社会システム全般がネットワーク技術を活用して繋がる、快適かつ安心・安全でエネルギー効率の高いスマート社会を実現することに取り組む」としたほか、「スマート社会に向けた税制改正要望、規制改革要望などの政策提言を行なう。また、自動車産業などの他産業との連携も今後は重要になる。政府と一体化した新IT戦略の推進も必要である」などと述べた。
政府が打ち出した95兆円の大型予算については、「消費増税を含め全体の枠組みが変わる中で、抑制ができているところがあると見ており、成長戦略と財政健全化のバランスをとった予算であると考えている」とした。
なお、4K TVに関しては、「すでに1インチあたり1万円を切っており、もう少し高く売りたいというのが本音。試験放送以降のコンテンツ拡大に期待しているのに加えて、放送だけでなく、トータルな対応が4K普及の鍵になる」と語った。