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パナソニック、「Let'snote AX3」発表会を神戸工場で開催

~リニューアルした工場ショールームも披露

パナソニック AVCネットワークス社神戸工場
6月11日 発表

 パナソニックは11日、「Let'snote」を生産する神戸工場(兵庫県神戸市)において、2013年度の同社モバイルPC事業戦略を説明するとともに、同工場のショールームをリニューアルし、オープニングセレモニーを開催した。

 神戸工場は、国内でも数少ない、実装から組み立てまでの一貫生産を行なう生産拠点。Let'snoteの生産を中心に月産7万台の規模を誇る。今回のショールームのリニューアルは、同社のPC事業をより付加価値型あるいはソリューション型へとシフトするための足がかりの1つと位置付ける。

 パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部の原田秀昭事業部長は、「新たなショールームは、もっとお客様と、しっかりと話をしたいという狙いから一新したものである。海外生産品は、ユーザー自身が個別に仕様を決めても、かゆいところに手が届いていないことが多い。神戸工場における一品一様のカスタマイズや、高品質で、スピードをもった製品提供、日本生産の安心感、キメ細かなサービス対応力を強化するとともに、ショールームを見てもらうことで、どんな提案ができるのかといったことを知ってもらい、どんな提案が求められているのかを勉強したい」などと語った。

 また、パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部神戸工場の清水実氏は、「工場そのものを『見る』だけの工場から、『体験・体感』するための工場に変える。そのための取り組みが新たなショールームになる」と述べた。

 新たなショールームは、歴代製品を展示したり、現行製品のラインアップ展示、ソリューション展示などで構成する「商品ラインアップ・ソリューション展示ゾーン」と、ビジネスシーンごとでの提案や、業種別製品展示、要素技術展示、カスタマイズ事例展示などの「活用ビジネスシーン展示・体験ゾーン」に分かれており、「体験、対話型の工場として、パナソニックのPCと、サポート力、日本のモノづくりの信頼を伝えていく」(清水工場長)という。

 ショールームへの年間来場者目標は、前年比2倍となる、3,000人を目指す。

 一方、同社のPC事業戦略について説明した原田事業部長は、「パナソニックのPC事業は、事業領域の明確化、一歩先を行く差別化商品、そして、最優先事項として、お客様とのパートナーシップに取り組み、狙った市場でのナンバーワンを目指しており、モバイルPC市場では、9年連続ナンバーワンシェアを獲得している」として、「現在、国内販売の約75%がフェイス・トゥ・フェイスの企業向け販売、5%がWeb販売であり、20%が店頭販売。店頭は、ユーザーへの認知度向上、ブランドイメージ向上のためのタッチポイントと捉えている。今後はカスタマイズ需要が増加するとみており、Web販売が増加するだろう。そこに神戸工場の強みを活かしたい。一品一様のカスタマイズや、お客様ダイレクトなソリューション工場を目指し、2012年度には約3割だったコンフィグレーション比率を、2015年度には約7割にまで高めたい」とした。

 神戸工場では生産ラインにおいて、2012年度実績で、Let'snoteで、12シリーズ340機種、「TOUGHBOOK」で4シリーズ408機種の生産を可能としており、さらにコンフィグレーションサービスとして、ハードウェアの各種オプションを事前に組み込んだり、IPアドレスの設定、アプリケーションのインストールなど、企業ごと、個人ごとに環境を設定して、導入する現場に1台単位で届ける仕組みを構築している。

 「届いたその日に、箱を開けたらすぐに使える状況で提供できる」(清水工場長)とし、「今後のパナソニックのPCの姿は、ビジネスマンの生産性向上に貢献するハードウェアそのものの進化に加えて、ハードウェアカスタマイズ、ネットワーク、クラウドによって提供されるソリューションサービスを加えたものになる。お客様の困りごとをワンストップで解決するモバイルソリューションを提案し続けていくことになる」と語った。

 また、同社では、2015年度には、ITプロダクツ事業部の売り上げ計画として、1,200億円を目指していることを明らかにした。同社がPC事業の売上高を公表するのは初めてのことだ。2013年度から業績開示事業の1つにITプロダクツ事業が含まれ、それに合わせて、このほど公表した。

 これによると、2012年度のITプロダクツ事業部の売上高は約1,000億円。また、2012年度は68万台のPCを出荷したという。2012年度は、当初計画で80万台以上を目指していたが、原田事業部長は、「国内コンシューマ市場において苦戦したのが理由。海外は引き続き成長している」とコメント。2013年度は83万台を目標に掲げ、「Let'snote、TOUGHBOOKに続き、3本目の柱として『TOUGHPAD』を展開。新たな市場を開拓することによる成長と、国内法人市場向けに差別化製品を連打することで80万台以上の出荷を目指す」などとし、過去最高となる出荷台数達成に意欲を見せた。

 なお、同事業部の営業利益については開示していないとしたが、「全社の方針として、各事業部は5%以上の営業利益率を目標としている」と語った。2015年度には、「ITプロダクツ事業部として、念願となる年間100万台を目指したい」としている。

パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部・原田秀昭事業部長
パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部神戸工場・清水実工場長
モバイルノート市場では9年連続でトップシェア
パナソニックの今後のPC事業の方向性
パナソニックのものづくりのコンセプト
2015年度にはカスタマイズ比率を約7割にまで高める

 さらに、同社では、Let'snoteの新製品として、タブレットとノートPCの両方で利用できるハイブリッドPCの「Let'snote AX3」を発表した。

 パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンターハード設計1チーム・星野央行主任技師は、「Let'snote初のコンバーチブルPCとなったAX2では、対面営業やMRの情報提供、化粧品店の店頭アドバイスなど、我々が思った以上にさまざまなシーンで利用された。こうしたお客様の声をもとに進化したのが、Let'snote AX3となる」とした。

 AX3では、IPS液晶ディスプレイを新たに採用。1,920×1,080ドットのフルHDを実現するとともに、上下/左右とも170度の視野角を持っていることに触れ、「広い視野角によってプレゼン効果が最大化でき、打ち合わせも複数のメンバーで同時に確認できるなどの効果がある。ビジネスシーンに適したPCだといえる」(星野主任技師)とした。

 また、第4世代Coreプロセッサを搭載。個人向けモデルでは、Core i7-4500U(1.80GHz)を、法人向けモデルではCore i5-4350U(1.40GHz)を搭載。「高性能と駆動時間の延長を実現し、AX2では最大9.5時間であったものを、AX3では約13時間にまで延長。ホットスワップ対応の予備バッテリを利用すれば、約22時間の利用が可能」とした。

 さらに、11.6型液晶搭載のコンバーチブルPCにおいては、法人向けモデルで1.13kgを実現。耐100kg級のタフボディと、動作時の76cmからの底面方向落下や、30cmの26方向落下の試験を行なう頑丈設計を実現したという。加えて、AX2から採用している新たなボンネット構造についても説明。「これによって薄く、軽く、強度が出せる」と語った。

 会見にゲストして参加した日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「私はパナソニックの出身であり、ここを訪れるのには感慨深いものがある」前置きし、「PCはタブレットに押されていると言われているが、タブレット時代のフェーズ1では、タブレットに飛びついたが、新しいことができない、セキュリティに問題があるといった声が出始めている。この理由は明白で、かつてのPC資産を断ち切るところで作られたタブレットであったからだ。これからは新たなタブレットのあり方が問われるフェーズ2の時代がくる。PCとして利用するのか、タブレットとして使うのかといった時のバリエーションが求められており、そこに『Windows PC/タブレット』という提案ができる。管理性、セキュリティ、堅牢性、バッテリ寿命といったところにこだわるのがLet'snoteの哲学である。私もAX2を使っているが(使い勝手は)抜群である。日本の顧客が求める品質、堅牢性を追求した製品であり、こうした製品は、日本そのものを盛り上げることにもつながる。企業用途でのタブレット需要が加速している。一方で、インテルもタブレット向けCPUに対して、本気になって投資を行なっている。これによって、タブレットが大きく進化する。日本マイクロソフトは、パナソニックとインテルと、面と面で付き合っていきたい」などと語った。

 また、インテルの宗像義恵取締役副社長は、「第4世代のCoreは、過去10年で最大の技術革新をPCにもたらすことになる。クリエイティブ、エンターテイメント、ゲーム、教育といった領域において、妥協のないコンピューティングを提供する。そして、PC向け製品としては、初のワンチップSoCを投入し、2-in-1の薄くて革新的なフォームファクタを実現できる。電力効率もインテルの歴史上最高であり、3Dグラフィックス性能は最大で3倍に高まり、高速起動の実現や、セキュリティ機能の強化も図っている。Let'snote AX3は、数多くの技術革新を実現した製品であり、第4世代Coreプロセッサを搭載した製品として、妥協を許さずに開発した、日本が誇るビジネスモバイルPCだといえる」と語った。

日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏
インテル取締役副社長の宗像義恵氏
パナソニック AVCネットワークス社ITプロダクツ事業部テクノロジーセンターハード設計1チーム・星野央行主任技師
Let'snote AX3の特徴
初めてIPS液晶を採用している
第4世代インテルCoreプロセッサを採用
AX2よりも10g軽くなり、11.6型コンバーチブルPCでは世界最軽量となる1.13kg
新ボンネット構造を引き続き採用

 工場や、ショールームのセレモニーなどの様子は以下に写真で紹介する。

AVCネットワークス社神戸工場の概要
多品種変量生産に対応した体制を敷いている
コンフィグレーションサービスは日本生産の強みによるもの
コールセンターを工場内に配置し、サービス品質を高める
新ショールームのテープカットの様子
日本マイクロソフトの樋口社長と、インテルの宗像副社長がAX3の組み立てを行なった
日本マイクロソフトの樋口社長がAX3のネジを締める
インテルの宗像副社長もAX3のネジ締めを行なう
完成させたAX3に自ら乗って耐久性を確認した
新ショールームは「体験・体感」を目指したという
新ショールームの概要
商品ラインアップ・ソリューション展示ゾーン
現行商品ラインアップを展示
歴代のLet'snoteを展示している
1996年に発売となったAL-N1
1998年に発売したトラックボール搭載のCF-S21
2002年に発売したCF-R1
パナソニックのPC事業の歴史が掲示されている
ソリューション商材の展示コーナー
SaaS型情報漏洩対策サービスのEAGISCORP
Windows XPからの移行サービス
HDD遠隔消去サービス
こちらは活用ビジネスシーン展示・体験ゾーン
ビジネスシーンごとの提案展示
「スマートアーチ」によるスマートフォン連携もデモストレーション
圧迫耐久性性能のデモストレーション
ガラス面硬球落下試験の様子
要素技術展示ではボンネット構造の天板に直接触れることができる
軽量モバイルへ標準電圧版CPUを搭載可能にした独自の小型ファン
Let'snoteに搭載された耐衝撃HDD
耐衝撃HDDパックの構造
屋外での視認性を確保する高輝度液晶パネル
水や埃の侵入を防ぐ防塵/防滴ファン
シールド構造により、ファンがあっても水や空気が入らない冷却設計
企業向けカスタイズモデルの数々
企業向けカスタイズモデルの数々
TOUGHBOOKのスタンドモデル
TOUGHBOOKの防爆モデル
天板にもさまざまなロゴを入れることができる
業種別製品展示コーナー
警察/消防/ロードサービス向けTOUGHBOOK
自動車整備業向けTOUGHBOOK
医療分野向けのCF-H2
流通分野の現場端末として利用されるCF-VEBU11
ARフィルム処理を施したものと施していないものを比較
今後の需要拡大が見込まれるTOUGHPADも展示している
新ショールームオープンを記念して社員による三三七拍子が行なわれた
原田事業部長、樋口社長、宗像副社長、清水工場長が、三三七拍子を見守る
新製品のLet'snote AX3
基板の実装ラインの様子
実装基板の動作試験機。手作業でやっていたものを完全自動化
Let'snoteのセル生産ライン
神戸工場のコンフィグレーションセンターの様子
センター内の作業はAVCネットワークス社が認定した個人情報取扱者のみが行なう
カスタマイズされたPCは梱包されて出荷される
5台ずつPCや付属品が梱包できる通い箱。大量導入の際にダンボール箱などを不要にする
防水試験機。IPX4およびMIL-STD810Gの防水試験が行なえる
IPX5防水試験機。実際に水をかけて防水性を確認する
恒温恒湿試験槽。高温や低温、高湿での試験を行なう
熱衝撃試験機。急激な温度変化への耐久性を検査する
落下試験機。Let'snoteでは30cmの高さから26方向の落下試験を行なう
10メートル電波暗室。PCから発生する電磁波などの検査を行なう
電波暗室の内部の様子
【動画】本体に乗った後に実際に電源を入れて動作することを確認
【動画】三三七拍子の様子

(大河原 克行)