日本マイクロソフト、「Windows 8 Release Preview」を6月1週に提供
~Windows Developer Days開催

6月の第1週にRelease Previewを全世界で提供することを発表

4月24日 発表



Microsoft Corporation President、Windows & Windows Live担当のスティーブン・シノフスキー氏

 日本マイクロソフト株式会社は24日、開発者向けイベント「Windows Developer Days」(WDD)を開催。Microsoft Corporation Presidentで、Windows & Windows Live担当のスティーブン・シノフスキー氏が、「次世代 Windows プラットフォームの可能性」と題したキーノートを行ない、6月の第1週にRelease Preview版の提供を開始することを発表した。

 今回のWDDは24日~25日の2日間開催され、初日はシノフスキー氏のキーノートスピーチのみが報道陣に公開された。

 シノフスキー氏は、「Windows 8はWindowsのリビルド(再創造)だ」と宣言。「画面デザインなどが新しくなり、新世代のタッチデバイスの操作に最適化されているだけでなく、キーボード、マウスでも従来以上にスムーズに操作できるよう、妥協せずに開発を行なったWindows」と説明した。そしてWindows 8の重要な要素として次の7つを挙げた。

(1)ほしいアプリがすぐそこに
(2)クラウド統合
(3)Windowsストア
(4)Internet Explorer 10
(5)自宅でも職場でも
(6)どんなデバイスでも最高の使い心地
(7)強固な基盤の上に構築

 強固な基盤とはWindows 7を指し、「Windows 7をベースに構築され、起動がこれまで以上に高速化し、さらに堅牢性、高い互換性については従来通りとなっている」と説明した。

「Windows 8とはWindowsのリビルド(再創造)」Windows 8の7つの特徴Windows 7の強固な基盤の上に構築

 さらに、「パワーユーザーのための機能が強化され、エクスプローラー、タスクマネージャーなどが強化され、従来以上に使いやすく、パワフルになっている。デスクトップについても強化され、ファイルシステム、サーバーとの接続などはWindows 7を大きく凌駕する強力なものとなっている」と強調した。

 こうしたコンセプトを具現化したデモを、日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows統括本部 本部長・藤本恭史氏が行なった。

 まず、Windows 8を立ち上げると、スマートフォンのロック画面と同様のトップ画面が表示されるが、起動していなかった間もデータ取得を行なう「コネクテッド・スタンバイ」機能が働き、メールが何件届いているかなどが表示される。

 起動のためのパスワードとして自分が選んだ写真に線、点、丸という3つの動作を組み合わせて行なうことで起ち上げる「ピクチャーパスワード」も選択できる。

日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows統括本部 本部長 藤本恭史 氏コネクテッドスタンバイによって、起動画面にPCを起ち上げていなかった間に届いたメールの数などを表示ログインパスワードとして自分が選んだ画像に3つのアクションをすることで起動する「ピクチャーパスワード」を採用

 藤本本部長は「写真を触るだけでセキュリティ的に大丈夫なのか? という声もあるが、写真を自分が撮影したオリジナルなものを選び、そこに自分が選んだ動作を組み合わせることで、テキストを打ち込む際と変わらない強固なセキュリティを保つことができる」とする。

 起ち上げた画面には、アプリケーションタイルが表示されたメトロ画面が表示されるが、「画面サイズにとらわれず、隠れている画面もスクロールして表示することができる。さらに、各タイルはアプリケーションの情報を取得して表示するため、自分にとって使いやすいようどんどん画面をカスタマイズして使うことができる」(藤本本部長)と自分の選択次第で画面はどんどん変わっていくと説明した。

アプリケーションを意味するタイルが並んだ画面は、表示されていない画面をスクロールすることによって表示させたり、縮小表示することなどが可能

 また、メトロ画面はタッチパネルでの操作に適したものではあるが、「マウス、キーボードでも操作することが可能。例えば、マウスで操作する場合には、画面下の部分に横スクロールバーが表示され、操作に合わせて最適な画面となる仕組みとなっている」(藤本本部長)とタッチパネル以外の操作にも適していると説明された。

 各アプリケーションの操作については、「チャーム」と呼ばれる共通のメニューバーが用意され、アプリケーション間のデータ交換、OSによるアプリケーションの中継ぎといったものを、チャームが司る。これは、すでに提供が始まっているWindows 8 Consumer Preview版に入っているアプリケーションでも同様だ。

タッチパネルではなく、マウスで操作する場合は下に横スクロールバーが表示される各アプリケーションで共通する操作などを司るチャーム

 クラウド上にあるデータもローカルデータと同様にハンドリングできることもWindows 8の特徴で、Photoアプリからローカルデータ、SkyDriveなどのクラウドデータサービス、Facebookなどクラウドアプリケーションサービスなどをまたがって、欲しい写真を探し出すことができる。さらに、その写真をメールで友人に送付するといった作業も、データがどこにあっても変わりなく行なえる。

アプリケーション間の連携によって、カレンダーとメールといった異なるアプリケーションの連動が可能に写真データはローカル、SkyDriveのようなクラウドやFacebookのようなオンラインサービスなどをまたがって操作することが可能写真データをメールで送付することも簡単に

 「アプリケーションとアプリケーションが連携していくことで、新しい付加価値が生まれ、従来の2倍、3倍もの価値を生み出すことがWindows 8の大きな特徴」(藤本本部長)と自信を見せた。

 搭載されるInternet Explorer 10は、操作ボタンがなくなったことで、コンテンツに集中しやすくなる。

操作ボタンがなくなり、コンテンツに没入しやすくなったInternet Explorer 10メトロで操作するIE10

 こうした新しい操作に対し、Windows 7のデスクトップモードで表示することも可能。その際には、スタートボタンがなくなっていることが異なる点となる。

 操作性の向上については、Office 2010を起動したところ、「特別なアプリケーションではなく、Office 2010を起動させても、従来よりも素早く、高速に起ち上がる」(藤本本部長)ところが実演された。

従来通りのデスクトップ表示も可能Windows 7のデスクトップとの相違点はスタートボタンがないことWindows 7以上に起動の速さを追求し、Office 2010が起動ボタンを押すとすぐに起ち上がる

 企業向けの機能としては、USBメモリに自分が使っているWindows 8環境を登録しておく「Windows to Go」を利用すると、PC側にデータを残すことなく、自分の環境を再現できる。会場ではビデオを再生するデモが行なわれ、ビデオの再生中にUSBメモリを抜くと、ビデオ再生が止まり、再びUSBメモリを刺すとビデオが再び動き出した。

 「こうしたデータ自体はPCには残らないので、PCを持ち歩くことなく、安全に利用ができる」(藤本本部長)とした。

Windows to GOはUSB側を設定しておくだけで、どのPCでも自分のWindows 8環境で起ち上がる
動画を再生している最中でも、USBを抜けば動画の再生はストップ。再びUSBを刺せば動画が再生され、PC側にはデータは残らない

 このデモの後に再び、シノフスキー氏が登場。「デモを見て頂いた通り、Windows 8はまさにアプリケーションが中心となっている。チャームによる情報共有によって、自分の開発したアプリケーションが、自分が知らなかったアプリケーションと連携し合うといった使い方も考えられる。Windows 8においては、アプリケーションをどう連携させていくのかが開発の大きな鍵となる」と話した。

 そのベースとなるプラットフォームについて紹介し、「多数の開発言語をサポートしており、開発者の皆さんは自分の好きな言語を選択して開発できる」と強調した。

「主役はアプリケーション」とシノフスキー氏Windows 8のプラットフォームMetroスタイルアプリの開発

 さらに開発したアプリケーションについては、Windowsストアを通して流通することで、国内、ワールドワイドとも大きなビジネスチャンスがあり、「Android、iOS、Macintosh全てを足しても、Windowsアプリケーションの方がマーケットサイズが大きい」と話した。

 Windowsストアでは、開発者側の意向によって無償版、試供版の提供、独自の広告収入を得る仕組みや、ビジネス向けなどWindowsストア以外のところに誘導することも選択できる。

 「アプリケーションをどう展開するのか、Microsoftにどのようにアプリケーションを提出するのか、その手順はオープン化されている。我々はその上に収入を最適化するためのお手伝いを進めていく」(シノフスキー氏)。

 この説明の後、再び藤本本部長が登場し、アプリケーション関連のデモを行なった。

 現在提供されているWindows 8 Consumer Previewでは、Windowsストアのアプリケーションが全て無償で提供されている。ストア内は検索して利用することも可能で、この検索は国内、全世界垣根無く行なわれるため、日本製ソフトが海外で利用される可能性もある。

Windowsストア日本のWindowsアプリの市場規模世界のWindowsアプリの市場規模

 デモでは、「Seattle」と入力することで、Seattleに関する情報を持っているアプリケーション「エレメント・ウェザー・フォーキャスト」が立ち上がり、Seattleの天気を表示。その結果をメールで送付したるデモや、「NAVITIME」を起ち上げて、地図アプリケーションと連動し、目的地までの道順を表示するデモが行なわれた。

Consumer Previewに搭載されているゲームアプリケーションアプリケーションは検索して探すことも可能「Seattle」と検索するとアプリケーション内部にあるSeattleに関連する情報を持つアプリケーションが検索される
天気アプリの「エレメンツ・ウェザー・フォーキャスト」は選んだ場所の天気を表示し、その結果をメールで送信することも可能「東京タワー」と検索するとNAVITIMEで東京タワーまでの行き方を調べてくれる

 また、カプコンのゲームソフト「バイオハザード」をタッチパネルPCで操作するデモが行なわれたが、「(加速度)センサーを利用し、タッチパネルを振るとゾンビが退治できるといった操作もできる。タッチ以外の操作にも対応していることもWindows 8の特徴の1つ」(藤本本部長)となっている。

タブレットPCでカプコン「バイオハザード」をプレイ

 ビジネス向けアプリケーションとしては、MicrosoftのCRMアプリケーション「Microsoft Dynamics」がデモされた。あがってきているデータを見て、担当者が承認か、非承認かを選択する機能や、顧客向けには見せることができるデータだけを選び出して表示する機能などが紹介され、ビジネス向けアプリケーションにもWindows 8が利用できることがアピールされた。

ビジネスアプリケーションの動作例としてMicrosoftの「Microsoft Dynamics」表示された内容に対して承認する場合は、承認ボタンを押すと上左部分のボタンが赤からグレーに
外部の顧客に見せるためにデータを選んで表示することも可能どんなデバイスでも最適の使い心地

 「ぜひ、色々な形で日本独自のアイデアを盛り込んだアプリケーションを、日本の皆さんに開発してもらいたい」(藤本本部長)。

 最後にシノフスキー氏が登場し、最初に話した「Windows 8は妥協のないOSというテーマで開発を進めた」という点を再び強調。「コンシューマ用のデスクトップマシンだけのもの、キーボードのないタブレットだけのものといったOSではない。パワーを最小限にとどめたいといった使い方にも、ハイパフォーマンスでの使い方にも対応している」と使い方を限定しない開発を進めたことが説明された。

 そして実際にWindows 8が動作するハードウェアとして、現在はWindows 7が搭載されて販売されている東芝のタブレット、オールインワンタイプのソニーの「VAIO L」シリーズのプロトタイプ、レノボ製Ultrabook、秋葉原のショップブランドのPC、シャープの業務用タッチディスプレイ「BIG PAD」などでWindows 8を動かした。

東芝のタブレットPCを手にシノフスキー氏ソニーのVAIO Lのプロトタイプのタッチパネル画面を操作するシノフスキー氏「これは秋葉原スペシャルともいうべきマシン」とシノフスキー氏
レノボのウルトラブックを手にするシノフスキー氏ハードウェアパートナー

 現在提供中のConsumer Previewについては、「Windows 7の時の2倍のインストールベースとなっている」と順調に利用者は拡大していることも紹介された。

 さらにシノフスキー氏は「6月の第1週に全世界で、昔のRelease Candidateにあたる、Release Previewの提供を開始する」とし、「x86向けもARM向けも、全て順調に開発が進んでいる。日本の開発者の皆さんも製品を使って、色々な仕掛けを試して、その可能性を感じて欲しい」とまとめた。

(2012年 4月 24日)

[Reported by 三浦 優子]