日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は27日、第4世代となるHP Indigoデジタル印刷機をはじめとするHPデジタル印刷機新製品10機種およびグラフィクスソリューションに関して発表。日本市場における戦略を発表した。
同社では、5月にドイツで開催される世界最大の印刷機材展示会「drupa(ドルッパ) 2012」に、これらの製品を展示するのに先駆け、3月13日にはイスラエルで新製品を発表。今回、日本市場における戦略を公表する格好となった。
会見の冒頭、日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括の挽野元取締役執行役員は、先頃発表したプリンティング事業とPC事業の統合について言及。「パートナーにとって、円滑にビジネスが展開てきるものになる。プリンティング事業については、引き続きビジネスを展開していくことになる」としたほか、「プリンティング分野においては、デジタルと紙を組み合わせた顧客ニーズが高まっている。紙とともにテジタルデバイスにアウトプットしたいという要求が出始めており、新時代の流れに対応するという点でも、事業統合は大きなメリットになる」と語った。
発表した新製品は、電子写真式としては業界初となるB2サイズ(750×530mm)にまで対応したHP Indigoデジタル印刷機「HP Indigo 10000」、「同20000」、「同30000」の3機種と、生産強化モード(EPM)を標準搭載することで印刷速度を33%向上させたHP Indigoデジタル印刷機「HP Indigo5600」、「同7600」、「同W7250」の3機種、新開発のインクとプリントヘッドテクノロジーを採用したHPインクジェットデジタル輪転機「HP T230 Color Inkjet Web Press」、「HP T410 Color Inkjet Web Press」、「HP T360 Color Inkjet Web Press」の3機種、およびオフセット印刷機向けにインクジェットのヘッド技術を活用してモジュールとして提供する「HPプリントモジュールソリューション」となる。
3月27日から出荷するHP Indigo 5600デジタル印刷機の価格は、4,620万円。その他の製品の価格は未定で、2012年5月上旬から2013年後半にかけて順次投入されることになる。HP Indigo 10000は、日本では2億円を切る価格設定となり、2013年前半から出荷を開始。初年度10台の国内販売を目指すという。
日本ヒューレット・パッカードが投入するHPデジタル印刷機新製品 | デジタル印刷機市場におけるニーズの変化 |
Indigoデジタル印刷機の製品開発における戦略 | Indigoデジタル印刷機における技術革新のロードマップ | デジタル輪転機の技術革新のロードマップ |
日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括グラフィクスビジネス統括本部デジタルプレスビジネス本部・石川則夫本部長 |
「イスラエルでの製品発表後、日本の企業からも問い合わせが出ており、初年度10台の目標は達成できる数字だと考えている」(日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括グラフィクスビジネス統括本部デジタルプレスビジネス本部・石川則夫本部長)としている。
なお、2012年1月に発表したHP Indigo WS6600は、価格を1億2,750万円から9,492万円に引き下げたほか、同じくHP Indigo WS4600の価格も5,985万円から5,607万円に改訂した。
これまで印刷スピードや品質に着目されていた印刷機市場において、印刷の「後加工」の工程までを組み込むような付加価値印刷ソリューションへの対応、デジタル印刷機における損益分岐点の引き上げ、商業印刷や出版が縮小傾向にあるなかにおいて成長領域である包装領域への対応拡充、従来の常識を覆すB2サイズへの対応、これまでの投資保護、ITとの融合によるオープンエコシステムの提案などを、新製品の特徴としている。
電子写真式としては初めてB2サイズまでの印刷が可能になっている | エンボス加工や抜き加工などの印刷の後工程にも対応する |
日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括グラフィクスビジネス統括本部デジタルプレスビジネス本部市場開発部・小池亮介部長 |
「日本は製造業が多く、軽包装、パッケージ用途でのニーズが高いため、包装用途などでの提案を加速したい。B2サイズに対応することで、日本ではポスターの用途などにも利用できる。当社では98%の印刷がB2サイズで印刷できると考えており、従来の製品では対応できなかったポケット付きフォルダー、観音開きカタログ、大判レイフラット、パッケージといった領域にまで踏み出していきたい。また、デジタル印刷では小ロットジョブの大量生産が中心となるため、管理が煩雑になるという問題が発生しているが、新たなワークフローシステムであるProduction Centerを導入し、ITの力を活用することによって、効率的で、コストを削減した形で印刷が行なえるようになる」(日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括グラフィクスビジネス統括本部デジタルプレスビジネス本部市場開発部・小池亮介部長)とした。
挽野取締役執行役員は、「胸を張って紹介できる新製品」と今回の新製品を位置づけ、「デジタル印刷は、小ロット印刷からスタートし、自費出版や個別のパッケージといったパーソナライゼーションへと進化。ここにきて印刷だけでなく全体のバリューチェーンを展開していくものへと発展している。ヒューレット・パッカードは、ITとプリンティングの両方を事業として展開している唯一の企業。ハードウェアだけでなくトータルワークフローとして提案できるのが特徴である。この分野に対して10億ドル以上の投資を行なっており、10機種もの新製品を出すことが投入できたのもその成果によるもの。drupa 2012では、世界最大のデジタル印刷機企業として、最大ブースを構えることになる」と語った。
前回開催されたdrupa 2008にあわせて、同社では、HP Latexインクを採用した初のワイドフォーマットプリンタや、最初のインクジェット輪転機、HP Indigoデジタル印刷機の新製品を投入した経緯がある。
「ワイドフォーマットプリンタは全世界で1万台以上が設置され、インクジェットデジタル輪転機は60台以上が稼働し、日本では先頃、講談社が導入している。また、HP Indigoデジタル印刷機は全世界で6,000台以上が稼働しており、2008年以降、HP Indigoデジタル印刷機による印刷ページは年間20%増加。アジアパシフィック地域では2倍に増えている」(挽野取締役執行役員)と語ったほか、「drupa 2008以降、Indigoデジタル印刷機は圧倒的な実績がある。第3世代機は1,200台以上を出荷しており、A4カラー印刷に換算すると、2008年には90億枚だったものが、200億枚にまで拡大している。HPの製品がデジタル印刷の増加を支えている。また、インクジェットデジタル輪転機の多くの顧客が複数台を所有しているという結果が出ている。drupa 2012においても、新世代のデジタル印刷機を投入することになるが、昨年(2011年)秋に日本で開催されたIGASでは、Indigoデジタル印刷機を20件受注しており、drupa 2012では、日本の企業からそれ以上の受注獲得を目指す」(日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括グラフィクスビジネス統括本部デジタルプレスビジネス本部・石川則夫本部長)と強気の姿勢をみせた。
(2012年 3月 27日)
[Reported by 大河原 克行]