Microsoft Research、豊橋技術科学大学と多言語翻訳処理で連携
~「クラウドマウス」など直近の研究も公開

マイクロソフト加治佐俊一氏

7月26日 発表



 国立大学法人豊橋技術科学大学とMicrosoft Research(以下、MSR)は26日、多言語情報処理の発展寄与に関して協力していくことで合意したと発表した。

 今回の合意は、豊橋技科大がMicrosoftの基礎研究機関であるMSRが開発した共同翻訳フレームワーク(CTF)を利用し、同校ホームページや学内文書を多言語に機械翻訳するとともに、この作業で得られた翻訳事例などをMSRへフィードバックすることで、CTFの品質をさらに高めるのが目的。

 マイクロソフト株式会社最高技術責任者の加治佐俊一氏によると、Microsoftが機械翻訳の研究に取り組み始めたのは1999年。当時は、規則ベースのシステムを採用したが、対応可能な言語が増やせないため、2005年に統計ベースのシステムへと切り替えた。

 すでに存在する翻訳文書を大量にデータベース化し、統計を取るこのシステムは、大規模なコンピューティングリソースを必要とするが、32もの言語への翻訳が可能になった。このシステムは現在では、パブリックAPIが用意され、同社のOffice、Bing、Internet Explorer 8といった製品にも取り込まれるとともに、翻訳の対象を技術文書から一般的な文書へと拡大した。

 例えばWord 2010には翻訳機能があるが、その背後ではシカゴのデータセンターにある同システムが動作している。Bingを使ったWebページの翻訳もそうで、今では毎日450万ページビューの利用があるという。ちなみに、翻訳結果については、ユーザーがフィードバックを返すことが可能となっている。

 このシステムは3月にCTFとして公表された。今後は、音声合成などの機能追加を図るほか、APIを他社にも公開していく予定。

 豊橋技科大は、英語の文書については、人手を使った翻訳を行なっているが、CTFを用いて、中国語、韓国語、タイ語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、アラビア語の7カ国語に翻訳を行なう。

 学内では学生ボランティアが翻訳をチェックし、適宜修正を行なうとともに、その結果はMSRへとフィードバックされる。また、この協業を通じ、自治体や他の団体への協業展開も目論む。

Microsoftにおける機械翻訳の歴史豊橋技科大との連携内容

 また同日、「第2回マイクロソフトリサーチ日本情報学研究賞」の受賞者が決定された。

 これは、MSRの日本におけるアカデミック連携プログラムの一環として、次世代の研究者の育成支援を目的として設けられたもので、日本の大学など公共研究機関に在籍し、博士号取得から10年以内の研究者が応募できる。

 今回受賞したのは、東北大学大学院情報科学研究科准教授の住井英二郎氏(基礎的情報学分野)と、国立情報学研究所コンテンツ科学研究系准教授の宮尾祐介氏(応用的情報学分野)の2名。

 マイクロソフトの社内でその授賞式が行なわれ、審査委員会委員長を務める国立国会図書館長の長尾真氏から盾が授与された。また、両名には賞金400万円と全世界のMSR研究者とのネットワーキング機械が与えられる。

 あわせて、MSRアジア所長の洪小文氏がMSRの最新研究成果と日本のアカデミック界との連携について説明した。

 洪氏は、年末に発売予定のXbox 360用センサーコントローラ「Kinect」がMSRでの研究成果であることを示すとともに、現在研究中の「クラウドマウス」と音声によるリアルタイム翻訳の事例を紹介した。

 クラウドマウスは、3Dマウスと独自の3Dユーザーインターフェイスを使って、Web上の情報を3次元的に検索するソリューション。リアルタイム翻訳は、Live Messengerなどに実装することを想定しており、ボイスチャットをすると、ほぼ瞬時にその訳が文書と音声で示される。こういった技術も、遠くない将来Microsoftの製品やサービスに展開されていく。

 また洪氏は、MSRではコンピュータサイエンスにとどまらず、文化遺産、教育、医療といった幅広い分野でアカデミック連携を行ない、新しい技術/ビジネスを生み出していきたいとの意気込みを語った。

マイクロソフトリサーチ日本情報学研究賞授賞式も行なわれた左からMSRアジアの洪小文氏、受賞者の宮尾祐介氏、審査委員会委員長の長尾真氏、受賞者の住井英二郎氏
洪氏は、MSRが現在研究中の3D検索ソリューション「クラウドマウス」などを紹介した

(2010年 7月 26日)

[Reported by 若杉 紀彦]