編集長の夏モデルお勧めPC「NEC編」
~超絶IPS液晶一体型PCとCore iモバイルノート


●Officeのあおりで埋もれた夏モデル

 夏モデルもほぼ出そろい、PC市場はボーナス商戦の最盛期となっている。

 今年の夏モデルは、例年とは異なり、4月と6月の2回に分けて発表された例が多かった。4月はIntelのCore iシリーズの発表に合わせて発表され、6月はマイクロソフトのOffice 2010の一般販売日に合わせたためだ。おかげで例年になく各メーカーの発表日や出荷日が横並びになったうえに、インパクトも2回に分散してしまい、慌ただしく過ぎてしまったという印象がある。

 PC Watchの記事のアクセス数を見ても、いつも注目度の高いモバイルノートの記事はよく読まれているものの、ちょっと大きめの実用ノートやデスクトップについては、例年より読まれていない。あまりに同じ時期に集中してしまったために埋もれてしまったようなのだ。そこで、大手メーカーの夏モデルの中から、注目される製品をいくつか選びだし、こんな面白いのもありますよ、という掘り起こしをしてみたい。

 とりあえず、今期は国内シェア1位と2位のNECと富士通の製品から選んで紹介したい。今回はNEC編をお届けし、来週中に富士通編を掲載する予定だ。

●迫力有る画質と音質の「VALUESTAR W VW970」
偏光膜3D表示対応の「VALUESTAR N VN790」

 NECのラインナップは、デスクトップの「VALUESTAR(バリュースター)」とノートの「LaVie(ラヴィ)」の2つに分かれている。

 VALUESTARは3機種ある。液晶一体型のAV向けが「W」、スタンダードな「N」、それにディスプレイ分離型の「L」だ。

 この中で、話題性で言えば、Nの3D対応モデル「VALUESTAR N VN790」が一番だ。偏光膜方式の3D表示が可能で、Blu-rayドライブも搭載しており、将来的にはBlu-ray 3Dの再生にも対応する。

液晶TVを思わせる本体の「VALUESTAR W VW970」

 ただ、今回はあえてこれを見送って、「VALUESTAR W VW970」を推薦したい。一見、地味なAVパソコンなのだが、隠れた実力派というべき存在なのだ。

 VW970は、VALUESTAR Wの最上位機種で、価格はオープンプライスで、店頭予想価格は25万円前後する。梱包も大型で、ほとんど32型の液晶TVと同じぐらいのボリュームがある。一人で設置することは腰を痛めるおそれがあるので、止めた方が良い。

 ディスプレイは23型のフルHD(1,920×1,080ドット)のIPS液晶だが、色表現が通常の6bit+ディザではなく8bitになっている。また、専用チップによる高画質化機能「彩りプラス」も搭載されている。

 いや、こういうスペックは承るとしても、正直な話、どうせAV PCのTV機能は、ちゃんとしたメーカーのTV専用機には及ばないだろうと思っていた。しかし、このモデルはかなりヤルというか、イケている。そこらの格安TVよりも絶対に良い画質だ。液晶サイズが23型なので、リビングに置くには小さいだろうが、個人用のAVステーションとして選択肢に入ると思う。

 なお、この製品にはHDMI入力端子も1つ付いている。PC本体とは別にディスプレイだけ電源を入れることもできる。できれば1系統といわず3系統ぐらいほしいところだが、無いよりは全然良い。

 もう1つ、良いのが音だ。これは、ヤマハの2.1chシステムで、スピーカーにはチタンコーンを、ウーファーにはSR-Bassシステムを採用し、云々というのがお題目だが、はっきり言って液晶TVの低価格モデルを上回っている。もちろん、同じヤマハとはいえ、ピュアオーディオ製品とは比べてはいけないが、ヤマハのロゴは単なるバッジではなく、きちんと意味のある内容があることを証している。

 私も含めてPCのファンは、つい画素数や価格や液晶の大きさという比較しやすい数字で語ってしまうことが多いのだが、ちゃんとコストをかけて品質を高めると違うものだなぁと、感じさせられた。こういう液晶一体型PCに興味の無い方も、店頭で見る機会があったら、ぜひ動画の画質と音質に注目して欲しい。

 なお、PCとしての性能は、Core i5-650(3.20GHz)、GeForce GT 330M GPU、メモリ4GB、HDD 1TB、と充分で、インターフェイスもUSB 3.0×2、USB 2.0×6で、パワーオフ時のUSB充電機能付きと、充実している。OSはWindows 7 Home Premium 64bit版で、Office Home and Business 2010も付いている。このあたりにご不満があれば、直販モデルの「VALUESTAR G タイプW」を選べば、BTOでCore i7や8GBメモリを選択できる。OSやOfficeの選択肢も広がるので、自分の用途によって機能とコストをバランスすることができる。

●Calpellaベースのモバイルノート「Lavie M LM550」

 次はノートのLavieシリーズを見てみよう。

 現時点でLavieは、主力の「L」、コンパクトな「S」、CULVモバイルの「M」、ネットブックの「Light」と4つの機種がある。

「Lavie S」ボディカラーはイメージカラーのエアリーブルー液晶背面の光沢仕上げもこだわりの産物

 この中で、一番、基本設計が新しいのは「Lavie S」だ。4月に発表されたばかりで、15.6型の液晶を搭載している。ただ、私にはこの製品を語る資格がない。なぜなら、この機種は女性層をターゲットにした製品で、本体も光沢仕上げで、ツヤツヤしている。製品説明会において、このツヤツヤぐあいとボディの曲面が、店頭で並べられた際の反射を考慮して決められたという話を聞いた時点で、「私には分からない」とまじめに思った。これはPCの話ではなくて、ファッションの話と考えるべきなのだ。

 というわけで、オジサンは、おとなしく、モバイルノートのお話をしたい。

 NECのピュアなモバイルノートは、企業向けの「UltraLite」シリーズはあるが、コンシューマ用はちょっとなりを潜めている。少し前の野心作「Lavie J」が最後だろうか。

 現状では、CULVジャンルに属する「Lavie M」が、この分野を担っている。ここにまた、いい人が隠れているのだ。

「Lavie M LM550」カラーはグロスレッドカラーバリエーションは3種類用意。自分で買うならグロスブラックにするだろう

 Lavie Mは、13.3型液晶でシングルスピンドルのCULVノートだ。3モデルあるが、6月のモデルチェンジで、最上位機種だけプラットフォームが変更された。従来の超低電圧版Core 2 Duo SU9400(1.40GHz)から、超低電圧版Core i3-330UM(1.20GHz)になったのだ。

 Calpellaベースとなったこの製品の型番は「Lavie M LM550」。重量は約1.79kgとモバイルとしては重いが、これは標準でLバッテリを搭載しているせいもある。おかげで、バッテリ駆動時間は約10.5時間と長い。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は約12万円。

 店頭ではCeleron搭載のワイヤレスTVデジタル搭載機の弟分の展示が目立つが、最新のプラットフォームで、デュアルコア/4スレッドのCPUを搭載したLM550は、隠れた実力派である。せっかく、これだけ中身が変わったのだから、外観ももうちょっと変えてもいいと思うのだが、前モデルと見分けはつかない。ちょっともったいないような気もする。自分だけ分かっていれば良いのさというさっぱりした性格なのかもしれないし、誰も気が付かない裏地に凝ることを誇るタイプなのかもしれない。

 実際に使ってみると、キーボードも液晶も過不足のない大きさで使いやすい。タッチパッドがちょっとへこんでいるあたりが私は好きで、在りし日のLavie Jを思い出させる。これで、もうちょっと軽ければなぁ、と思わなくもないが、軽くするにはコストがかかるので、ここは1つの妥協点なのだろう。

 なお、店頭モデルはメモリ2GBでHDD 320GBと、ちょと控えめなので、最初から拡張する人は直販モデルの「Lavie G タイプM」にして、BTOすることをお勧めする。とりあえずメモリは4GBに、HDDは500GBにしたい。ヤル気のある方には、62GB SSD+500GB HDD(しかも7,200rpm)というハードな仕様も用意されている。

●良い物は、ちゃんと伝えたい

 PC Watchの場合、1つの新製品が登場すると、ニュースで伝え、メーカーからお借りしてレビューを掲載し、さらに面白いネタであれば、インタビューをしたり、別のレビュアーがコラムで書いたりという順番で盛り上げていく。新しいところが多かったり、他の製品とは異なった特徴があれば、だいたいこのコースをたどる。NECで言えば、文中にも登場したLavie Jであり、富士通で言えば現行LOOX Uであり、ソニーで言えばVAIO P/X/Zなどだ。

 ただ、光差すところには影があるように、いい人なのに、なんとなく埋もれちゃったという例もなくはない。今回、ご紹介した「VALUESTAR W VW970」と「Lavie M LM550」については、ニュースだけではなくレビューが掲載されたというだけでも、恵まれているのだが、それでもフォローしたくなる製品なのだ。この記事を読んで興味を持ってもらえたら、関連記事にある西川氏のレビューもご覧いただきたい。

 PC業界の慣例として、四季ごとに新製品が一斉に登場して情報の洪水を起こすという状況では、しょうがない面もあるのだが、それを言い訳にせずに、取り上げられるべき製品は、きちんと取り上げられるように努めていきたい。という決意を新たにしたところで、第1回の終わりとさせていただく。

(2010年 6月 29日)

[Reported by 伊達 浩二]