UQ、ルーター製品「WiMAX Speed Wi-Fi」2機種投入
~年内に実測30Mbpsの実効速度へ改善

シンセイコーポレーションの「URoad-7000」

6月7日 発表

 UQコミュニケーションズ株式会社は7日、都内で記者会見を開き、商用サービス開始から約1年経った現在の同社の取り組みを紹介した。

 冒頭では、同社代表取締役社長の田中孝司氏が挨拶。過去を振り返り、「私は会社設立時からずっと代表取締役社長をやってきて、第1号基地局の開設や試用サービス、商用サービスなどを見てきた。また、都市部で基地局を増やし、接続性の改善に取り組んできた。長い間務めてきたが、6月からは私の代わりに元KDDIで、米国で経験を積んできた野坂章雄氏が社長になる」と述べ、新社長就任予定の野坂氏にプレゼンをバトンをタッチした。なお、田中氏は今後取締役会長に就任する。

同社代表取締役社長 田中孝司氏UQのこれまでの取り組み新社長就任予定の野坂氏

 野坂氏は、2010年度の事業プランを説明。まず、UQ WiMAXのアドバンテージについて、「申込んだらすぐに開通できることやPCを開けたらすぐに接続できることの利便性、そして3Gと比較しての高速性/無線接続による快適性、さらに、業界最安で安心できる料金プランの3本の柱である」とし、この3本がWiMAXの生命線でもあると述べた。

 特に速度についてはもっとも重要視しており、日経BPのアンケート調査においても、料金と速度においてユーザーからダントツの好評を得たという。しかし、接続できるエリアが狭いという不満の声はやはり挙がっており、「これを改善させるために、2010年度に新たに8,000局を開通し、570市区町村をカバーしていきたい。これにより年度末までに80万の契約者数を目指したい」と意気込みを語った。

 また、2010年8月をめどに、ユーザーの実効速度を30Mbpsに引き上げるシステムのチューニングを行なう。さらに、2012年までには、現在フォーラムで策定中のIEEE 802.16mを導入し、下り速度330Mbpsを実現させる。この802.16mについては、2010年度中にもデモを実施する予定だという。

モバイルWiMAXの特徴2010年度中に新たに8,000局を開設し、合計15,000局へ首都圏エリアも引き続き強化する
契約者数80万を目指す実効速度の改善、8月には30Mbpsへ802.16mも2010年度中にデモ予定

●ルーター製品を「WiMAX Speed Wi-Fi」と命名

 端末製品については、現在9メーカー37機種のノートPCがモバイルWiMAXを標準搭載しており、これらを利用することで、クラウドサービスをいつでもどこでも利用できるとアピール。一方でタブレット端末やスマートフォン、車載製品など「ノンPC(PCではない)デバイスにも展開していく必要がある」とし、そのためにはWi-Fiルーターが有効であるとした。

 無線通信網を利用したWi-Fiルーターとしては、他社から日本通信の「b-mobile WiFi」、イー・モバイルの「Pocket WiFi」、ドコモの「ポータブルWi-Fi」などが発売されており、いずれもブランド化されている。一方、モバイルWiMAXにもNECアクセステクニカの「Aterm WM3300R」やシンセイコーポレーションの「URoad-5000」などが発売されてきたが、ブランドがバラバラであり、ユーザーには訴えにくかった。

 そこでUQでは、7日より、これらをまとめて「WiMAX Speed Wi-Fi」とブランド化し、販売を展開していく。“Speed”と名前がついている通り、下り最大速度40Mbpsや低レイテンシなどをアピールし、ユーザーに訴求していく。また、競合他社が垂直統合モデルであるため、発売するメーカーは1社ずつしかないが、WiMAXは水平分業モデルのため、5社からそれぞれオリジナリティのある製品が発売されることもアピールしていく。

WiMAX搭載PCの増加でクラウドサービスが利用しやすくなるブランドを「WiMAX Speed Wi-Fi」とし、高速性をアピールルーター製品の他社に対するアドバンテージ

 なお、7日に同時発表されたWiMAX Speed Wi-Fi製品は2種類。1つは株式会社シンセイコーポレーションの「URoad-7000」で。本体色にブラック、レッド、ホワイトの3種類を用意して展開を行なう。本体サイズは104×62×14.8mm(幅×奥行き×高さ)と薄型なのが特徴。バッテリ駆動時間は約3.5時間。

 もう1つは株式会社ソフトアンドハードが発売する「egg」で、タマゴ型の筐体と、ホワイト、ブラック、ピンク、グリーン、パープルの5色のカラーバリエーションが特徴。本体サイズは約110×61.8×28.3mm(同)、重量は約130g。バッテリ駆動時間は5時間。発売はヤマダ電機とソフトアンドハード直販のみで、いずれもそれぞれが提供するWiMAXサービス専用のモデルとなる。

シンセイコーポレーションの「URoad-7000」ソフトアンドハードの「egg」カラーバリエーションは5種類

 また、NECアクセステクニカ株式会社も3日に有線対応のWiMAXルーター新製品「Aterm WM3400RN」を発売してきたが、これも「WiMAX Speed Wi-Fi」ブランドに属する。ゲストとして招かれたNECアクセステクニカ 代表取締役執行役員社長の中村隆介氏は、「WM3400RNはイベント会場や小規模事務所などにも好適であり、WiMAX契約者は有効に回線を利用できる」とアピールした。

NECアクセステクニカの「Aterm WM3400RN」NECアクセステクニカ 代表取締役執行役員社長 中村隆介氏「Aterm WM3400RN」によるWiMAX回線の活用

 最後に野坂氏は、「UQは今後も、データ専業で培った高速性、複数のメーカーが参加できるオープンプラットフォーム、そして世界148カ国で展開できるグローバル性を、3本の事業の柱として発展していきたい」と述べ、話をくくった。

携帯電話事業との差別化オープンプラットフォームの推進グローバルの展開

●クラウドサービスの進化でWiMAXがますます重要に

 プレゼンテーションのあと、UQコミュニケーションズの田中社長と、インテル株式会社の吉田和正社長、マイクロソフト株式会社の樋口泰行社長の3者によるトークセッションが開かれ、WiMAXの今後について語られた。

 吉田社長は、「現在のインターネット人口は約15億人だが、2015年には25億人に達する。また、インターネットに接続する機器は、現在の40億台から100億台になる。ネットワーク社会の加速により、WiMAXをはじめとする高速インターネット接続技術が重要になってくる。また、こうした無線通信環境は、日常生活のシーンだけでなく、ビジネスシーンを進化させる要素となる」とした。

UQの田中社長と、インテルの吉田和正社長、マイクロソフトの樋口泰行社長によるトークセッションインターネット人口の増加による常時接続の重要性ライフスタイルの変化

 また、「通信環境の改善で生活や仕事に変化をいったん与えると、従来の遅い通信環境では満足できなくなる。例えばビデオや写真などのコンテンツは、高速なネットワークが要求される。今ある技術を利用して、未来のライフスタイルやワークスタイルを創出していくのがWiMAXの役目である」と語った。

 マイクロソフトの樋口氏は、「5年前に新幹線に乗っていて、全車両を渡り歩いてみたが、誰もPCを使っていなかった。しかし今はWiMAXのようなサービスを利用すれば、オンラインでPCを利用することができる。これからはインターネットサービスのクラウド化が進み、WiMAXによってユニファイドコミュニケーションが実現されれば、我々のワークスタイルにさらなる進化がもたらされる。米国と比較しても日本の企業のIT利用は進んでいないが、WiMAXによってそれが変化するのではないかと期待している」と話した。

クラウド環境によるワークスタイルの変化フォトセッションで握手する田中氏、野坂氏、吉田氏、樋口氏

 なお、UQコミュニケーションズは、1周年を記念して、データカードを半額で販売する「UQ WiMAX 1周年記念 端末半額キャンペーン」を開始した。期間は8月22日まで。

発表会場で展示されたWiMAX搭載ノートPCWiMAXを利用した自動販売機
アイ・オー・データ機器のモバイルルーターの新製品(参考出展)OKIネットワークスのモバイルルーター「BR3101/BR3001」

(2010年 6月 7日)

[Reported by 劉 尭]