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最大容量256GBのDDR4互換モジュール「Memory1」のセミナーが開催

Diablo Technologies「Memory1」128GBモデル

 アドテック株式会社は29日、同社が販売代理店を務めるカナダDiablo TechnologiesのDDR4互換モジュール「Memory1」、およびDIMM搭載型ストレージ「Memory Channel Storage(MCS)」についてのセミナーを都内にて開催した。セミナーにはDiablo TechnologiesのSenior Vice President Global Salesを務めるDave Ferretti氏、同社Senior Field EngineerのMike Slavitch氏が登壇。Memory1、Memory Channel Storageについて解説を行なった。

Diablo Technologies Senior Vice President Global SalesのDave Ferretti氏
同社Senior Field EngineerのMike Slavitch氏

 登壇したFerretti氏は、まずITビジネスがいかにサーバーのメモリを必要としているのかについて語った。

 クラウドやデスクトップを含む仮想化などにより、大容量のメモリが必要とされているほか、より多くのプロセッサを搭載すると、システムリソースのバランスとパフォーマンス最適化のためにメモリを必要とするという。

 さらに、ビッグデータや、IoTビジネスによるデータ量の爆発的な増加と、それらリアルタイム分析を行ないたいというニーズに加え、スマートフォンの普及でより素早くサービスを提供する必要が出てきたことから、RAMの低レイテンシを活かし、メモリ上で処理を行なう、SAP HANAやSpark、Memcachedといった“インメモリ”処理のデータベースソフトウェアが登場しており、サーバーに対するメモリへの需要と負荷はさらに高まっていると述べた。

メモリに対する需要の増大
インメモリデータベースの登場

 サーバーにおいて、データ転送速度とレイテンシの高速な順にCache(SRAM)、RAM、Flash SSD(NAND)、Disk(HDD)というのが一般的な認識となるが、昨今ではRAMとFlashの間を埋める存在として「Storage Class Memory(SCM)」という概念が登場した。

 メモリの容量とレイテンシは、サーバー全体の処理速度に関わる重要なポイントで、「コストを無視できるなら全てをSRAMにすれば良いが、そうなると容量の密度も問題になってくる」と述べた。

 現在、Storage Class Memoryの座を争っているのがPCM(相変化メモリ)、RRAM(抵抗変化型メモリ)、STTRAM(スピン注入磁化反転型MRAM)といった次世代の不揮発性メモリ技術だが、Diablo Technologiesでは、SCMにおいてもNANDフラッシュを採用、DDR4メモリ互換の「Memory1」とDIMMスロット搭載NANDフラッシュストレージ「Memory Channel Storage」の2つの製品により、RAMからFlash SSDまでを統合するという。

Storage Class MemoryとなるMemory1とMemory Channel Storage

Memory1

 Memory1は、DDR4準拠のモジュールにDDR4 SDRAMとNANDフラッシュを搭載した製品。DDR4準拠のためそのままDIMMスロットに搭載可能で、認識のためにマザーボードのUEFIでの対応が必要となるが、そのほかのハードウェアの変更は不要だという。

 容量は1モジュールあたり最大256GBを実現しており、1モジュール64GBが最大となるDDR4 DIMMと比較して4倍の容量を実現。計16本のDIMMスロットを備えた2ソケットサーバーなら、総メモリ容量4TB構成が可能となる。サーバー毎の搭載メモリ容量が増加することで、GB当たりの消費電力をDDR4メモリ比で7割削減できるという。2016年には512GB搭載を目指すと述べていた。

 また処理能力に不足が無いにも関わらず、総メモリ容量を増やすために(DIMMスロットを追加するべく)サーバーを追加している場合、Memory1の採用で不要なサーバーを省くことができるため、データセンターそのもののサイズを縮小し、(余剰が生まれていた)サーバー毎のワークロードを高められるという。

 基本的にNANDフラッシュのため、容量が増えてもコストが上がりにくいのも特徴で、DDR4 SDRAMと比較した場合、十数分の1の価格で同容量を導入できるとしていた。

Memory1の利点
コストパフォーマンスに優れる
導入によるメリット

Memory Channel Storage

 Memory Channel Storageは、DIMMスロットに搭載可能なNANDフラッシュ搭載ストレージ。Memory1発表以前から販売している製品で、DDR3/DDR4スロットともに対応している。

 こちらはMemory1と異なりOSにドライバが必要となるため、対応OSはLinux/Windows/ESXのいずれか。容量は200GB/400GB/800GBで、2016年には1.4TBモデルの発売を目指しているという。

 そのほかのNANDフラッシュストレージとの比較では、SATAやSAS SSDのほか、NVMe SSDやPCI Express接続SSDなどと比べても、CPUにより近いため、レイテンシ、転送速度、拡張性の点で優位であるとアピールしていた。

「Memory Channel Storage」
そのほかのNANDフラッシュストレージとの比較

 Slavitch氏によるMemory1搭載サーバーによるデモンストレーションでは、SAP HANAの性能テストをシミュレート。サーバーの仕様は、1ソケットあたりのDIMMスロットが8本の2ソケットブレードサーバーで、1ソケットあたり4枚(2ソケットなので計8枚)のMemory1を搭載し、総メモリ容量は512GBとなっていた。

SAP HANAのパフォーマンステストの様子

 質疑応答では、Memory1に対する質問が多く行なわれた。

 RAMの代用としての性能については、当然RAMとNANDフラッシュでは転送速度、レイテンシともに大きな差があるが、基本的にSDRAMを使用し、溢れたデータをNANDに保持するという動作を行なうという。この振り分けはMemory1側で制御しており、導入に当たってOS、アプリケーションの変更は不要であるとしていた。またNANDからデータを呼び出した場合、最低でも1ms以下のレイテンシだという。

 なお、揮発性メモリ互換のため、電源がダウンすれば保持しているデータも“消える”としていたが、これについては、電源がダウンするとデータが“読み出せなくなる”というのが正しいようだ。具体的にはデータの読み書きに必要な“鍵”を電源のダウンとともに喪失するという動作とのことで、これはSDRAMとして動作させる上で、JEDECの規格に準拠するため必要なものだったという。

 動作期間については、動作保証は5年間とのこと。NANDフラッシュの書き換え回数制限は配慮しており、Memory1上で書き換え回数などを監視/管理しているという。また将来的には、システム上からNANDフラッシュの状態をモニターできるような機能を搭載したいとのことだった。

 なお、アプリケーションからMemory1上のSDRAMとNANDフラッシュのいずれかへの書き込みを明示的に指定できるのかという質問には、簡単に導入できるというメリットのため、特にそういった制御はサポートしていないとしたが、アプリケーション側の変更が必要となるが、需要があれば対応することも可能としていた。

デモ仕様のサーバー。赤い基板がMemory1で、計8枚が搭載されている

(佐藤 岳大)